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2024年05月21日
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テーマ: ニュース(99797)
カテゴリ: ニュース
愛媛県の片田舎の町で、議会多数派が提案した議案に対して何回質問しても納得できる満足な答弁が得られず、多数派が質問を遮って採決するというので、納得できない議員が採決時に退場すると、それを問題視した議会多数派が、退場した議員に対して「問責決議」をするという事件があった。それを問題視した少数派の市民団体が「安易な問責決議」に異議を訴える署名運動を行い、議会に提出したところ、多数派のボスと見られる古参の議員が、その署名簿のコピーを持って、署名した市民の家を一軒一軒訪ねて「どういうつもりで署名したのか」などと恫喝して回るという事件があった。ジャーナリストの藤野かな氏が、「週刊金曜日」1470号に、次のように書いている;





 2022年1月、高知との県境に位置する愛媛県南宇和郡愛南町で、1人の町議が民主主義の根幹を脅かす行動を取った。住民グループの要望書に添えられた賛同者の住所と氏名が記載された紙を手に、1軒1軒訪問してまわったのだ。

 本当に署名したかを確かめるためだった-。そう主張する石川秀夫議員の行動を、裁判所は「表現の自由や請願権を侵害しており憲法に違反する」と指弾。識者も「法令意識が低い行動だ」と唖然とした。

◆発端は理不尽な問責決議

 そもそも、住民が要望書を提出するきっかけは何だったのか。愛南町議会では、21年12月17日、石川議員が金繁典子議員に対する問責決議を提出し、議決された。過去、採決を2回退席したことなどが問題とされたが、金繁議員は退席理由を「資料の内容と質疑の答弁が不十分で判断ができない」と丁寧に説明していたのだ。

意思表明として国会でも行なわれる採決時の退席の何がおかしいのか。議事録を読んでみても納得できる理由はなく、議会の多数派が結託して1人の議員を追いやる構図は、いじめとしか思えない。

 決議の対象とされた金繁議員は、同町初の女性議員だ。トップ当選し、1期目から多数派に迎合せず、積極的に質問して議会の改革に努めている(本誌23年3月17日号で紹介)。ベテラン議員たちは自分たちの既得権や支配力が失われるのではないかと彼女の存在を疎み、恐れたのだろう。

住民グループは、根拠なく問責決議を行なうことは議員活動を抑圧する危険があるとして住民380人の署名を集め、議会に十分な説明を求める要望書を提出した。 グループの代表吉田かおるさんは決議を「理不尽だと思いました。今後もそういうことをするのかどうか聞きたかった」と話す。

◆萎縮効果を認めた重要性

 要望書を提出した日の午後、吉田さんのもとに同級生から電話がかかってきた。「大丈夫か?石川が(名簿を)持ってまわりよるで」。当時の町議会議長から要望書を見せられた石川議員は、添付の名簿を手に、知人宅を訪問し「何でしたん」「本当か」と聞いてまわっていた。

 住民グループはすぐに議長に抗議した。吉田さんは「うちにも来るんやない。署名しなければよかった」と賛同者に言われ、「愛南町では署名してくれる人がいなくなってしまうのではないかと思った」と当時のショックを振り返った。 愛媛大学教育学部の中曽久雄准教授(憲法学)は石川議員の行動について「個人情報の目的外利用はしてはいけないと社会では浸透しているのに、非常識だ」と指摘し、名簿を見せた議長の行為も「軽率だった」と非難する。

要望書に署名した住民男性(80歳)は精神的苦痛を受けたとして22年、町に慰謝料50万円を求める国家賠償請求訴訟を提起。 町は「(石川議員の)政治活動の自由も憲法上保護する必要性がある」「正当な政治活動で意見封じが目的ではない」などと争っていた。

 今年3月25日、松山地裁宇和島支部は、石川議員の一連の行動を「署名行為を萎縮させる効果を生じさせる態様」で「表現の自由を制約する行為」と認定し、町に5万円の支払いを命じた。

 議員から問い合わせがあったことを知り、今後は署名しないでおこうと、表現行為を差し控える――中曽准教授は萎縮効果をこのような空気感のようなものだとする。 「萎縮効果をどのように権利侵害として認定するかは実務上困難だったが、本判決は態様からダイレクトに萎縮効果を認めている。今後表現の自由を考える上では重要な判決だ」 と意義づける。

◆「十分な説明」はまだない

 町議会は判決を受けて全議員を集めた全員協議会を開催。控訴しない方針を決定した。一方、 原告男性は、石川議員に署名の名簿を見せ、コピーすることも黙認した議長にも責任があるのに、その責任が認定されなかったのはおかしいなどの理由で高松高裁に控訴した。

 定年を機に京都から愛南町に移住した原告男性は「町議会議員としての基本的な知識が欠けている。自然条件は良いところだが、このままでは若い人が出て行く。もっと住民が発言力を持たなければ」と裁判にかける思いを語る。

 県庁所在地の松山市から車で約3時間かかる人口1万9000人足らずの町の議会では、法治主義ではなく地縁血縁や感情論が優先されていた。地元紙の記者が1人しか常駐せず、メディアの監視も十分だったとは言えないだろう。

 今年4月時点で、要望書で依頼した「議会が町民へ問責決議についての十分な説明を行う」ことは実現していない。1議員の軽率な行動が耳を傾けるべき町民の真摯な声をかき消してしまった。

 380人の署名について吉田さんは「圧力がかかったらいけないから短期間で集めようと3日位で集めた」と明かした。この言葉に、町の空気感が集約されているように感じた。議会側に署名運動が見つかれば、つぶされるかもしれないと無意識に思うのだという。それでも「言いたいことの言える町に変わるところが見たい」と、声を上げる人々がいることに希望を見出す。


2024年4月26日・5月3日合併号 「週刊金曜日」 1470号 36ページ

 県庁所在地から車で3時間もかかるような田舎では、民主主義の憲法に変わってからもうすぐ80年になるというのに、いまだに町を牛耳っているつもりの「ボス」が時代遅れの親分風を吹かせて、気に入らない署名運動に応じた有権者を一人ひとり脅して回るというのは、まったく呆れ話です。一審の判決に対して、町議会が全員協議会で控訴しない方針を決めたのは立派であるが、提訴した有権者が言うように、有権者から受け取った署名簿のコピーを議員に渡した議長の責任も重大であり、不問には出来ないはずで、控訴は当然だと思います。このような裁判によって、真の民主主義が日本の隅々まで浸透することを願います。





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最終更新日  2024年05月21日 01時00分08秒


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