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<New Year!>「げっ、何コレ?!」 報告の為に、中央司令部マスタング大佐の執務室に顔を出したエドワードは驚きの声を上げた。「だろ? お役所仕事ってのは書類が多すぎると以前から思っていたが、これ程とはな。 時間と手間のムダだと改めて思うね」 部屋の主がすました顔をして、壁をぐるりと取り巻くように積まれた書類の山を見やる。 年末には不要になった書類を一斉に整理するのが、ここの司令部の習わしなのだとか。「んじゃ、コレは大佐のとこだけじゃねーんだろ? ここの全部合わせたら山となりそ」「その通り。ちょとした見物だから見にいってみるか?」 サボリの口実とばかりに鋼の錬金術師を誘うと、二人で連れ立って中庭へ向かう。 そこには2メートル程度の高さに積まれた書類の小山が出来ていた。 でもこれはまだ序の口だそうで、全部が集まるとこの数倍になるらしい。「で、どうやって処分するわけ?」 疑問を口にすれば、毎年処分に困っているとの答えが返ってきた。 年が改まるからと言ってリゼンブールに帰る理由もないエルリック兄弟は、そのままセントラルに滞在していた。 都会だけあって、年末年始も少しの休みだけで図書館や本屋が開くし、中央司令部に至っては24時間営業、年中無休なので、資料室は許可証さえあればいつでも利用できたのだ。 錬金術オタクと幼なじみに言わせるほどの勉強家でもあるエドワードにとっては、ここは理想的な場所だといえたのもある。 エドワードは宿の部屋で、先日手に入れた資料を読み解いていたのだが、どうしても必要になった辞書が出てきたので、夜も更(ふ)けていたが司令部の資料室に出向いた。 許可証を見せると、すんなりと資料の閲覧許可を得ることができたので、無駄な時間を使うことなく調べ物は終わった。 ついでとばかりに大佐の執務室をのぞいてみようと足を向けると、目指すドアの隙間から光が漏れているのが見える。 もう居ないだろうと思っていたので、少々驚きながらもドアを開ければ部屋の際奥に見なれた姿が一人、何やら書類作成をしている様子だ。 が、ドアが少し開かれたのを感じたのか、顔を上げてこちらを見た。「エドっ? どうしたんだ、入って来なさい」 こんな夜遅くに何が、いや、ちょっと辞書が急に必要になって、という話のあとにロイがため息をつくように言った。「新年を寂しく一人で迎える私のために、愛しいエドが幸せを運んで来てくれたのかと思ったのに……」 わざとらしく言うのだが、でもそれが本音だというのはエドワードにはわかっていた。 こんなスカした顔をして、コイツは寂しがり屋なのだ。「新年ったって、それは人が勝手に決めた歴の上で言うだけじゃんか。 時計の針はいつもの通り動いているし、急に冬が春になるわけでも何でもねぇしさ。 何をそんな事ぐらいでグチグチ言わなくちゃけねーのか、理解に苦しむぜ」「これがだから『鋼の錬金術師』殿は…… もう少し情緒というものも学びたまえ」 チラリと壁に掛けられた時計を確認すると、ロイは机越しに立つ少年のあごを右手で捉(とら)え、その甘やかな唇に口付けた。「新年おめでとう。愛しのエディ。今年はキミの願いがかないますように」 突然のキスは驚いたが、でもこのあいさつは悪い気がしなかった。「お返しは?」 自分の唇を人差し指でさし示しながらキスを強要する。「ああ、新年おめでとな。今年は無能が改善されますように! だ」 ニヤリと悪戯小僧な表情で笑うとチュッと音を立てて、ロイの頬にキスをする。「場所が違うだろうが!」 やり直しとばかりに、机に身を乗り出していたエドワードの体を抱き上げ、まだ書類が散らばるその上におろして、ゆっくりとその唇を味わう。 つかの間の甘い時間が流れた。「な、どうせならもうちょっと新年のお祝いしてもいいかな?」 先程の情緒のない言葉の主とは思えない言葉が、しっとりと濡れた金の瞳の持ち主から発せられた。「私としては嬉しいね。じゃあ今度はベッドの中でお祝いなどいかがかね?」「アンタへのお祝いはアレで終わりっ! そうじゃなくて、他の色んな人へお祝いしたいのっ!」 期待が外れてガックリだが、先程のキスは十分満足がいくものだったので、良しと思うことにした。 それよりエドワードがどんなお祝いをしたがっているのかに興味が湧く。「中庭のヤツ、オレが使ってもイイかな?」 あの廃棄された書類の山の事を聞く。 特に問題はないだろうと了解すると、ロイの手をつかんで中庭へと連れて行かれた。 新しい年を迎えたばかりの外は息が凍りそうなぐらい冷えていたが、夜空では満月に少々欠けた月が明るく輝いている。 エドワードは紙の山に向かって、パンっ! と両手を合わせると、地面に手を置いた。 青白い錬成光の中、紙の山は消え失せた。 どこへ行き、どうなったのかと不思議に思えば、エドワードが空を見上げている。 ロイもそれに習うと、夜空に白い無数の影が見える。「雪?」 まるで雪が降る空を眺めるような風景だと思うと、やがてチラチラと空から舞い降りて、そのうちのひとひらがロイの手の上におさまった。「花びら?」 そう、空から降ってきたのは無数のバラの花びらだった。 ほんのりと薄桃色の丸い花びらは、バラの甘い香りがする。 エドワードは紙をバラの花びらへ錬成させて、空から撒(ま)いたのだ。 はらはらと雪のように降るそれは、月の光を受けて輝きながら甘い香りを四方に放ち、まるで夢の世界のような美しさだ。「幸せな気分になれるな」 舞い落ちる花びらを見つめてロイがつぶやけば、横に立つエドワードがそれは幸せそうに微笑んでいた。 翌日の新聞に『セントラルに奇跡! 神からの祝福か?!』という見出しの記事が載ることになるのだが、そんな事は些細な事項でしかなかった。 Happy New Year ! みなさまの上に幸せが訪れますように! *+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+* あけましておめでとうございます 旧年中はいろいろとお世話になり、またご来訪ありがとうございました。 クリスマスからこちら、全く季節的なお話を上げる事ができず、とうとう新年を迎えるハメに。(>_
2005.01.01
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