「思考と直覚」形而上学からの離脱(百三十二) デステュット・ド・トラシー等のフランス観念論と同時代に同じフランスのパリで、哲学の主体が、もはや形而上学から離脱する様相を見せます。其の名は市民社会の危機を克服する政治を含む実証する社会動学(Dynamique social)と、現在の社会を解析し予知するための社会静学(Statique social)との双方からのアプローチを実証哲学(Philosophie positive)としとするオーギュスト・コント(Isidore Auguste Marie François Xavier Comte/1798年日-1857年)です。彼が主張するには、人間の知性の発展には諸々の現象を超常的な神の力によって証明しようとする神学的状態、観察される諸々の現象が世界自然の基礎に在るとする形而上学的本質によって説明する形而上学的状態、諸現象を其のもの中に法則を求める実証的状態があり、人間の思考が其々の方向に向かって進むとします。此の中で、特筆すべきことは客観的実在即ち物質的世界を認める唯物論さえ、形而上学的状態に属させ排撃していることです。其の理由は、諸科学における実証的知識が物質世界の認証という形式に成り立っているものであり、反して実証主義は科学を擁護容認しているかのように装いながら、物質的世界の承認をも形而上学として拒否しています。コントは社会学で社会学で完結しPhilosophie Positive(実証哲学)の全体系を集約する学的領域と位置づけ市民社会の危機を克服する政治を含む実証する社会動学(Dynamique social)と、現在の社会を解析し予知するための社会静学(Statique social)との双方からのアプローチを実証哲学(Philosophie positive)とします。其処にはもはや人間の霊性及び霊魂の入る余地はありません。コントは哲学者というよりは社会学の創始者としての社会学者として捉えるのが正解でしょう。フランス革命後の市民社会の危機の克服を目途とし、現代社会の分析と実証により、再組織の原理の確立につとめ、知的要素に重点をおいた姿勢は21世紀に於ける現代の外感覚的快感と物欲至上主義を助長せしめた責任の一端はあります。コントの唱える「社会学」とは人間の内精神の救済には役立つ筈もなく、却って魂の救済を信仰に向かわせる一辺があることは「思考と直覚」からの観相です。