Tough Boy-World of cap_hiro(Subtitle:sense of wonder)

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2021年11月22日
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カテゴリ: 絶対存在論
神の存否-237
 スピノザの「エチカ」第二部「精神の本性および起源について」の定理一七の備考後半部には、突如、キリストの弟子パウロとペテロを持ち出してきます。ペテロとパウロなくして今のキリスト教なし。イエス最初の弟子にして復活後の教会指導者ペテロ。迫害者から異邦人宣教者へと変身したパウロを何故に引用するのでしょう。
  続定理一七の備考後半部
 その上我々は(前の系 人間身体をかつて刺激した外部の物体がもはや存在しなくても、あるいはそれが現在しなくても、精神はそれをあたかも現在するかのように観想しうるであろう。ならびに、この部の定理一六の系二 第二に、我々が外部の物体について有する観念は外部の物体の本性よりも我々の身体の状態をより多く示すということになる。これは私が第一部の付録の中で多くの例を挙げて説明したところである。)から、例えばペテロ自身の精神の本質を構成するペテロの観念と、他の人間例えばパウロの中に在るペテロ自身の観念との間にどんな差異があるかを明瞭に理解し得る。すなわち、前者はペテロ自身の身体の本質を直接に説明し、ペテロの存在する間だけしか存在を含んでいない。これに反して後者はペテロの本性よりもパウロの身体の状態をより多く示しており、したがって、パウロの身体のこの状態が持続する間は、パウロの精神は、ペテロがもはや存在しなくてもペテロを自己にとって現在するものとして観想するであろう。
 なお普通に用いられている言葉を保存するために、人間身体の変状(刺激状態/Affectus)、我々はこの変状の観念によって外部の物体を我々に現在するものとして思い浮かべるのである。我々人間は物の形状を実体として再現はしないけれども我々はこれを物の表象像(イマゴ)と呼ぶであろう。そして精神がこのような仕方で物体を観想する時に我々は精神が物を表象(イマギナリ)すると言うであろう。
 それから私はここに誤謬とは何であるかを示す手始めとして、次のことを注意したい。それは、精神の表象はそれ自体において見れば何の誤謬も含んでいないということ、言いかえれば精神は物を表象するからといってただちに誤りを犯しているのではなく、ただ精神が自己に現在するものとして表象する事物についてその存在を排除する観念を欠いていると見られる限りにおいてのみ誤りを犯しているのであるということである。なぜなら、もし精神が存在しない物を自己に現在するものとして表象するのに際し、それと同時にその物が現実に存在しないことを知っていたとしたら、精神はたしかに、表象するこの能力を、自己の本性の欠点とは認めず、かえって長所と認めたことであろう。特にもしこの表象能力が精神の本性にのみ依存しているとしたら、言いかえれば(第一部定義七 自己の本性の必然性のみによって存在し・自己自身のみによって行動に決定されるものは自由であると言われる。これに反してある一定の様式において存在し・作用するように他から決定されるものは必然的である、あるいはむしろ強制されると言われる。)により、もし仮に精神のこの表象能力が自由であったとしたら、なおさらそうであろう。 
 スピノザはペテロの名を上げて、決してイエスとはいっていません。本音はイエスといいたかった筈です。そもそも新約聖書の中でパウロがイエスの復活、つまり、死後のイエスがパウロの目の前に現れたということを何度も述べていることからしても、ここでスピノザがわざわざパウロの名前を出していること自体がその言説を自己の哲学に照らし合わせていたに相違ありません。少なくともスピノザは、パウロはイエスの表象像であり、混乱した観念を十全な観念であると思い込んだのだと主張していることになります。スピノザはニーチェのように「神は死んだ」とキリスト教自体を否定していなかったのは間違いありませが、パウロに対する批判的精神はスピノザのうちにもあったのでしょう。




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最終更新日  2021年11月22日 06時10分05秒
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