Tough Boy-World of cap_hiro(Subtitle:sense of wonder)

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2024年07月30日
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カテゴリ: 霊魂論


ルドルフ・シュタイナー
「精神科学と医学」(GA312) 第一講(本文・解説付)本文 1920年 3月21日/ドルナハ 1-5
 私たちが本来人間の本質にあるものを見い出そうとするならば、このような、一面においては形態観察であり、他面においては質の観察であるような観察を出発点とせねばならないでしょう。ここで再び、失われてしまったものへの帰路が、病気の本質を単に形式的に定義することにとどまりたくなければ、ぜひとも必要なものへの帰路が開けてくることでしょう。実際形式的な定義のみでは実践においてあまり多くをてがけられないのです。なぜなら、考えてもみてください、非常に重大な問題が発生するのです。私たちは根本的に、私たちの環境から、地上的な薬物のみを取り入れてきました。その薬で変化をきたした人間の生体組織に働きかけることができるのです。けれども人間においては、地上的でないプロセス、あるいは少なくともそのプロセスを地上的でないプロセスにする力が作用しています。従って次のような問いが出てくるのです、つまり、私たちが病んだ生体組織とその物質的な地球環境との間に相互関係として引き起こすもののなかに、いかにして、病気の状態から健康な状態へと導く相互作用を呼び起こすことができるのかという問いです。私たちがいかにしてこのような相互関係を引き起こすことができるのか、その結果、この相互関係を通じて実際に、人間の生体組織の中で活動している力に影響を及ぼすことができるのかということです。この力は、たとえそのプロセスが食餌療法のための指示などであったとしても、私たちがそこから薬物を選べるようなプロセスが現れているもののなかには現れてこない力なのです。最終的に特定の治療へと導かれ得るものが、人間の本質を正しく把握することといかに密接に関わり合っているかがお解かりだと思います。そして私たちをこの問いの解決へと上昇させることができるはずの、まさに最初の要素を、私は人間と動物の差異から全く意識的に取って参りました。勿論、動物だって病気になる、場合によっては植物も病気になるではないか。最近は鉱物の病気についてすら議論されていますし、だから病気になることについては動物と人間を区別すべきではないという非難は非常に容易なのではありますが、この非難は後で取り除かれるでしょう。人間の医学において前進する目的で動物の本性を単に調べることからは、長い間には医師たちは得るところが少ないということがわかってくると、この差異が認められるでしょう。人間の治療のために動物実験から達成できることが若干あるのは全く確かなのですが、なぜそうなのかもいずれ判明するでしょうが、それはやはり、動物と人間の組織の間には極めて細部にいたるまでどんな根本的な差異があるかについて、徹底して明確に認識されている場合のみなのです。従って問題なのは、医学の発達にとっての動物実験の意味をそれに応じた方法でますます明確にしていくことです。さらに引き続き皆さんに注意していただきたいのは、このような地上を越えた力を指摘せねばならない時は、いわゆる客観的法則、客観的自然法則を常に指摘できる時よりもはるかに、人間の人格が要求されることが多いということです。むろん重要となるのは、医学の本質をずっとインテュイション的なもの(Das Intuitive)へと調整すること、何らかの関係で病気であったり、健康であったりする人間の生体組織、個々の生体組織の本質を、形態の現象から推論する才能によって、形態観察のための直観が鍛えられているということが、医学の発展においてまた未来に向けて、よりいっそう大きな役割を果たさねばならないということなのです。こういう事柄は、先に申しましたように、一種の前置き、方向付けのための前置きとしてのみ役立てようと思います。と申しますのも、きょうはここで、化学や通常の比較解剖学によっては到達できないもの、精神科学的な事実の観察に移行する時にのみ到達できるものに、医学は再び目を向けなければならないということを示すことが問題だったからです。このことに関して今日人々はまだ多くの錯誤に身を委ねています。医学の霊化のために物質的な薬に霊的な薬を置き換えることが重要であるはずだと考える人もいます。けれども、特定の領域で正当なことは、全体としては正しくないのです。なぜなら、とりわけ重要なことは、物質的な薬剤にどのような治療価値を置き得るのかを霊的なやり方で認識すること、すなわち物質的な薬剤の評価に精神科学を適用することだからです。つまりこれが、私が先に挙げた、人間と他の世界との関係を認識することによる治療の可能性を探すことという部分の課題となるでしょう。
記:医学の霊科学化は、神経神学や認知神経科学、心理学、哲学など、さまざまな学問分野との結びつきにより、人間の科学性と宗教性を活用し、自己や世界をよりよく理解することを目指しています。このアプローチは、科学的知識の発展を通じて、霊や精神に関連する現象を理解するための新たな視点を提供しようとしています。
 私は、これから特殊な治療プロセスについて語るべきことができるだけ基礎のしっかりしたものであるように、また個別の病気において、これもひとつの自然のプロセスにちがいないいわゆる異常なプロセスと、これもまた自然のプロセスに他ならないいわゆる正常なプロセスとの関連についてひとつの見解が得られることを、できるだけ全てが目指すようにしたいと思います。病気のプロセスもやはり自然のプロセスであるということと、そもそもどうやって折り合っていくのかという問い、この根本的な問いが生じてくる時はいつでも、これは謂わばちょっとした付け足しとして触れておきたいことなのですが、人はいつもできる限り早くこの問題から逃げ出そうとするのです。例えば、トロクスラー(☆15)はベルンで教鞭をとっていましたが、興味深いことに、すでに19世紀の前半に非常に熱心に次のようなことを指摘していました。すなわち、いわば病気の正常さということが探究されねばならないこと、それによって、ある方向へ、つまり私たちの世界と結びついていて、正当でない穴を通ってくるように私たちの世界へすべり込んでくるある種の世界を、結局は認知することに行き着くような方向へと導かれること、そしてそのことによって病気の現象に関して何らかのものに到達しうることを指摘していたのです。考えてもみてください。ここではざっと図式的に説明するだけにしておきますが、何らかの世界、つまりその世界の法則からすれば全く正当な事柄が、私たちの世界では病気の現象を引き起こすようなそういう世界が背後に存在するとしたら、その世界が私たちの世界に入り込んでくるある種の穴を通じて、別の世界においては全く正当な法則が、私たちのところでは災いを引き起こすことも可能なのです。トロクスラーはこういうことを目指して努力していました。たとえ彼の述べたことが、少なからぬ点において曖昧で不明確であったにせよ、彼が医学において、まさに医学という学問の健全化を目指す道の途上にあったことは注目に値します。私はかつて、かのトロクスラーがベルンで教えていた頃、ある友人と、トロクスラーが同僚たちの中でどのように見られていたか、また彼の提案によって何がなされたかを調べてみたことがありました。しかし、大学の歴史について多くの事柄が記されている事典の中でトロクスラーに関して発見できたことはただ、彼は大学で何度も騒動を巻き起こしたということだけでした。記載されていたのはそのことだけで、彼の学問上の意義については何ら特別なことは発見できなかったのです。さて、先に述べましたように、きょうはこういうことだけを指摘しておくつもりでした。皆さんの希望されることを取り入れつつ私の意図するところを述べることができるように、どうか明日か明後日までに皆さん全員が希望を書いて提出してくださるようお願いいたします。そうして初めて、皆さんの希望から、この連続講演に必要な形式を与えることができるのです。それが最も良いやりかただと思います。どうか実り多いものにしてくださるようお願いいたします。
参考画:病理解剖学/pathological anatomy



    (第一講・終了)
□編集者註
☆1 ヒポクラテス:Hippokrates 紀元前460-377
☆2 ロキタンスキー:Karl Freiherr von Rokitansky 1804-1878 病理解剖学教授。『病理解剖学教本』3巻、ウィーン、1842-1846
☆3 ガレノス:Claudius Galenus 131ー200頃 ガレノス著作全集20巻、ライプツィヒ、1821-1833
☆4 パラケルスス:Philippus Aureolus Paracelsus Theophratus von Hohenheim1493-1541 著作全集多数、たとえばズートホッフ[Sudhoff]版。
☆5 ファン・ヘルモント:Johann Baptist van Helmont 1577-1644
☆6 パラケルススのようにアルケウスについて語る:『オープス・パラミールム』
☆7 シュタール:Georg Ernst Stahl 1577-1644 アニミズム(物活説)の代表者。
☆8 エルンスト・ヘッケル:Ernst Haeckel 1834-1919
☆9 ヨハネス・ミュラー:Johannes Mueller 1801-1858  ベルリン大学生理学教授。
☆10 モルガーニ:Giovanni Battista Morgani 1682-1771  主著『解剖所見による病気の所在と原因について』ヴェニス、1761、ドイツ語版 アルテンブルク、1771-1776
☆11 ロキタンスキー:☆2参照。
☆12 ハーネマン:Christian Friedrich Samuel Hahnemann 1755-1843 ホメオパシー[Homoeopathie]の創始者。 主著『合理的治療学のオルガノン』ドレスデン、1810
☆13 シュヴァン:Theodor Schwann 1810-1882リエージュおよびレーヴェン大学解剖学ー生理学教授。 主著『動物と植物における構造と成長の一致に関する顕微鏡研究』ベルリン、1839
☆14 ウィルヒョウ:Rudolf Virchow 1821-1902  ヴユルツブルクおよびベルリン大学病理解剖学教授。 「病理解剖学および生理学、治療医学のためのアルヒーフ」をフロリープと共同で設立。『生理学および病理学的組織学に基づく細胞病理学に関する講義』(ベルリン、1859)において細胞病理学を詳述。☆15 トロクスラー:Ignaz Paul Vital Troxler 1821-1902  著書『人間の本質へのまなざし』アアラウ、1812 『人間の認識の自然科学または形而上学』アアラウ、1828 『哲学に関する講義、人生に関する内容・教育の限界・目的及び応用に関する講義』ベルン、1835
□訳註
*1 ヒポクラテス:Hippokrates 紀元前460-377
   ヒポクラテスはBC460年頃エーゲ海の一島コスCosに生まれ、父はヘラクレイデスという医者であった。コスにはアスクレピオスの大きい神殿があり、ギリシャ医学の中心地であった。若いヒポクラテスは初め父からコス派の医術を学び、それからギリシャ国内を巡歴して遠くエジプトの北部まで足をのばし、いたる所で他の流儀をも学び、豊かな経験を身につけた。遊歴する医者Periodeutとして生涯を送ったが、アテネやコスには比較的長く住んだと言う。晩年にはテッサリアに行き、ラリッサにおいて没した。
*2 ロキタンスキー:Karl Freiherr von Rokitansky 1804-1878
*3 ガレノス:Claudius Galenus 131ー200頃
  ガレヌスはヒポクラテスと並んで西洋の古代医学の二大巨匠とされる。古代の医学を集大成し自らも多くの価値ある実験を行い、著作の量も膨大であり医学を系統だてた。彼は実験生理学の創始者ということができ、その学説は十数世紀にわたって欧州やアラビアで金科玉条とされた。
*4 パラケルスス:Philippus Aureolus Paracelsus Theophratus von Hohenheim 1493-1541
  スイスのチューリッヒ近郊アインジーデルンに1493年に生まれる。フェラーラで医学をおさめ、その後欧州各地を遍歴して実地医学を身につけ、自然の観察と実験にもとづく独自の医学を確立する。1527年、市医および大学教授としてバーゼルに招聘されたが、アカデミックな環境、伝統的な生活様式や職業的慣例に順応できず、結局市議会と衝突してバーゼルを去る。その後も各地を遍歴しつつ診療と著述をなし、1541年、ザルツブルグで没した。独特の文体を駆使したその著述は、生理学、病理学、衛生学、内科学、外科学といった医学の全分野から、錬金術、一般博物学にまで及ぶ。 
*5 ファン・ヘルモント:Johann Baptist van Helmont 1577-1644 
  ブリュッセルに生まれて、まずルーヴァンで哲学を学び、ついで法律に転じてその後に医学をおさめた。二十二歳でドクトルとなり、五年間諸地をめぐって後に郷里で開業した。化学実験を多く行なったが、パラケルススと同様自然神秘思想的傾向を強く有している。
  1624年異端の疑いを受けてその裁判が二十年も続き、投獄されたこともある。酵素作用の重要性を認め、またガスという言葉を創始したと言われる。
*6 アルケウス
  K.ゴルトアンマー『パラケルスス』(みすず書房)より;
  植物にも、生命の精気(Lebensgeist)は与えられており、「表徴者アルケウス」(ArchaeusSignator)がすでに植物の外形に、その本性と治癒力との表徴を刻印している(たとえばアザミは内蔵の刺痛に効くとされている)。「アルケウス」は、世界の大いなる原理の一つなのだ。やはりアルケウスも、宇宙的な生命力であり、原動力なのである。それは、自然における秩序原理、もしくはエンテレヒーと解することができる。アルケウスは、「諸力を秩序だてる者」であり、「配置者」(dispensator)であり、アルケウス直属の「職工」が、水銀・硫黄・塩なのである。アルケウスを配置したのは神であり、それはパン職人やブドウ栽培者と同じ働きをする。その仕事は、アタナール(化学炉)内での錬金術的課程に模することができる。ついには大宇宙全体がアルケウスと同一視されることにもなる。とはいえ、アルケウスが一個の個体原理であることに変わりはない。(P53)
*7 シュタール:Georg Ernst Stahl 1660-1734
 ホフマン、ブールハーヴェとともに、医学界の三巨匠とされた。彼らは体系学者と呼ばれる。物理派と化学派を統合し、ライプニッツの思想を加えて、生命や病気の解釈を体系化しようとした。  
*8 ヨハネス・ミュラー:Johannes Mueller 1801-1858
 ライン河畔のコブレンツに靴屋の子として生まれた。ボン大学で医学をおさめるが、そのときの解剖学への深い傾倒が、その後実物に即してのみ考える習慣をもつのに大いに役立ったという。ついでベルリンで生理学者のルドルフィに学び、またボンに帰り、1830年正教授となる。3年後にベルリン大学に転じて、解剖学、生理学、病理学を一人で兼ね教えた。生理学では神経系と感覚器に関する研究を多く行い、解剖学ではとくに生殖器の発生などについて業績をあげた。動物学、発生学、比較解剖学、生理学、化学、心理学、病理学など、あらゆる方面で活躍した。病理解剖学では顕微鏡を用いる方向に深く進んだ。その著書『人体生理学全書』は、この世紀の金字塔と言われる。
*9 モルガーニ:Giovanni Battista Morgani 1682-1771 
 フォルリに生まれ、ボローニャで医学をおさめ、19歳のとき、解剖学者ヴァルサルヴァの助手になった。29歳の時パドアの解剖学教授となり、90歳の高齢で没するまでその職にあった。多数の人体解剖を生前の病状と照らし合わせながら地道に行い、それをまとめた大著「解剖所見による病気の所在と原因について」を、1761年80歳のときに出して、一挙に病理解剖学を打ち立てた。
*10 ハーネマン:Christian Friedrich Samuel Hahnemann 1755-1843 
 ホメオパシー(類似療法。健康な人に投与すると、ある病気の症状と類似した症状を引き起こす薬物を、実際に病気にかかっっているひとにごく少量希釈して投与することによって患者の体内の治癒力を呼び覚ます治療法)の創始者。ドイツのマイセンで生まれ、ライプツィヒ大学で医学を学びウィーンで臨床医の研修をした後、エルランゲンで学位を得る。マラリアの治療薬であるキナ皮を健康な人間が服用すると、マラリアと類似の症状を引き起こすという事実を確認し、それをもとに、ホメオパシーの考え方を発展させた。
*11 シュヴァン:Theodor Schwann 1810-1882
 細胞説を樹立。1839年の「動物と植物の構造と成長における一致について」という論文において、動物も植物と同じく細胞からできていることが初めて述べられる。
*12 ウィルヒョウ Rudolf Virchow 1821-1902
 ポメラニア生まれで、ベルリンの軍医学校に学んだ。病理解剖学をめざしてすすみ、これと臨床医学との提携を生涯の仕事として大きな成果をおさめた。1849年にヴュルツブルグの教授となり、7年後ベルリン大学に転じた。そして1858年に『細胞病理学』を著した。ガレヌスの液体病理学は遠く過去のものとなり、モルガーニは病気の座として器官を考え、ビシャーはそれを組織においた。ウィルヒョウはさらに生活体の単位である細胞にその座を置いたのである。彼は「すべての細胞は細胞より生ず」という生物学の鉄則をつくった人である。
 1863-68年には『病的腫瘍論』を著わす。ウィルヒョウは長い間病理学の法王ともいえる最高の地位にあった。人類学にも造詣が深く、政治的にも活躍して民間政党の率い、ビスマルクと渡りあったといわれる。
 ■参考:『医学の歴史』(小川鼎三 中公新書)
  『ドイツ「素人医師」団』(服部伸 講談社選書メチエ)
  『パラケルスス』(K・ゴルトアンマー/柴田健策・榎木真吉訳 みすず書房)
   「精神科学と医学」(GA312) 第一講本文 1-5了 ・1完了

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最終更新日  2024年07月30日 06時18分21秒
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