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地鳴りのような歓声がいっせいに起こるのだ。ここはある神社の広場。街頭テレビが一台、
仰々しく櫓の上に鎮座しており、テレビの前はくろやまの人だかりである。私も街頭テレビが記
好の番組であった。あの頃の力道山は我々のスーパーヒーローであり、卑怯千万、憎き悪役
レスラーを一撃でリングに沈めるその爽快感は子供の私にも十分理解できた。力道山が吸血
ブラッシーとの”世紀の一戦”を見るたびに当時テレビのある祖母の家に親戚一同が集まり、
今から考えればそれほど大きくない画面に段通織のテレビ掛けをめくり、そわそわしながら皆
で午後8時を待ったものである。端整な顔の力道山の頭に塗ったポマードの輝きがより一層彼
をジェントルマンに見せる。白いガウンを脱ぐと黒いタイツ姿・・・。このタイツ姿こそがスーパー
ヒーローの証しであるのだ。憎きブラッシーは金髪を振り乱し力道山にかぶりつき血まみれに
する・・・・。テレビを見ている男たちは息を呑み手に汗を握る・・・。「卑怯者!」「反則やろ!」
「レフリーは何処を見ている!」完全に魂は後楽園ホールである。女連中は悲鳴を上げ
る・・・。8時50分、力道山は反撃に出る、天下の宝刀、空手チョップが炸裂するのである。な
ぜかテレビ中継が終わる寸前に勝負がつくのである。そんな疑問を考える輩など誰もいない。
力道山が勝つことが何よりも大事なのであり、それによって明日の活力になり、明日の話題に
花が咲くのである。私自身いまだに試合中に裂けたタイツと空手チョップは脳裏に焼きついて
いる。だがそんな力道山も暴力団の男に腹部をナイフで刺されあっけない死を遂げる。1963
年12月の事である。弟子たちにジャイアント馬場、アントニオ猪木、大木金太郎がいた。この
三人が第2次プロレス黄金時代を作っていくことになる。