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家の近くにハトやパンという屋号の小さなパン屋さんがあった。店の入り口の上には"ハト
ヤ"の古ぼけた看板が架かっていた。老夫婦二人で経営しており店主はいい顔の爺さんだが
な祖母さんでいつもニコニコしており人当たりもよく、私はそこのパンが大好きだった。そこの
パンは毎日、店で焼いているのでいつも香ばしい風味を漂わせ、とても美味しい。ただ品数は
アンパン、メロンパン、コッペパン、チョコロールなど数はしれている。いつも決まってコッペパ
ンを買うのである。当時20円か・・・。その買ったコッペパンに10円出せばジャムやクリーム、
チョコ、ピーナッツクリームなど好きな物を挟んでくれる。私はこの"システム"が大のお気に入
りでいつもチョコかピーナッツクリームを挟んでもらう。日頃この類のものは滅多に口にできな
いし、とても貴重な味覚の一つである。それを今から考えると懐かしい薄い紙袋に入れてくれ
る。それを頬張りながら隣の本屋で漫画の立ち読みをする。食べ終わると何故か紙袋を膨ら
ませて両手で紙袋を叩き割る。大きな音が出ればすべてよし。あの店が閉まってもう何十年と
なるがあれほど素朴で純な美味しいパンは残念な事に不思議と未だにお目にはかからない。
最近のパンは日が経っても、やたらと柔らかく、口当たりが良い。でも何故かみたくれは悪い
が素朴な町のパンやさんの味を忘れることが出来ない。たぶん今のパンのように添加物が入
っていなかったのだろう。焼きたてはファファ、一日も経てばもう硬くなる。これが本当のパンの
味かも知れない。小学校の通学路の横に立っていたハトヤパンはいまやマンションの一部とな
り面影すらない。