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の音を聴いたら、いても経っても居られない。親にせがんでもらった貴重な20円を握り締
め、玄関を飛びだす。まるで飛び出して来るのを予感してたかのように家の斜め向こう側
えた。竹串に刺された一円玉ぐらいの大きさの団子が八つ、それを甘いきな粉にまぶして
くれる。吉備団子自体は今から考えるとそれほど美味しい物ではなかったと思う。ただ甘
さに飢えていたせいか甘いきな粉は途轍もないご馳走だった。それを二本、両手にもって
この上ない幸福感に浸るのである。口の回りをきな粉だらけにしながら、残り10円でわら
び餅を買う。無愛想なオヤジは子供の目から見てもやや汚い日本手ぬぐいで氷の入った
冷水の中のわらび餅を手馴れた感じですくい取り、その薄汚れた手ぬぐいで握り締め水
分を逃がす。少し干からびたわらび餅はきな粉、砂糖、ゴマ、青のりの順に4種類の入れ
物に分けられる。まぶされたわらび餅は、やや大きめの網目の茶越しにかけられる。私
はゴマと青のりが特に好きで、オヤジはそれを見抜いていたのか、いつもゴマと青のりは
比率的にきな粉に比べて愕然と少ない。今から考えればヘンコオヤジのイケズではなくき
っとゴマと青のりはきな粉に比べ高かったのだろう。そう信じてたい・・。杉皮の笹船にのっ
たわらび餅は色とりどりで視覚的にも美しい食べ物であった。その影響を引きずっている
訳ではないけれど時々スーパーに行くとパックに入ったわらび餅を買うがどうも昔のわら
び餅の粘りがない。どうやら聞くところによると今のわらび餅はジャガイモの澱粉質で出来
ているらしい。なるほど、科学の力は素晴らしいと、いやに納得しながら昔食べた粘りある
本物のわらび餅の美味しさを懐かしんで想像していたのである。