混沌の本棚
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【送料無料】くるみ割り人形とねずみの王様 [ エルンスト・テ-オド-ル・アマデ-ウス・ ]E. T. A. ホフマン作 種村季弘訳河出文庫☆☆☆☆ 表題作のほか、「見知らぬ子供」「大晦日の夜の冒険」の三作収録。「くるみ割り人形~」と「見知らぬ子供」は子供向きの童話で、「大晦日の夜の冒険」はもう少し対象になる読者年齢は上で童話という内容ではなく、幻想文学というべきだろう。 「くるみ割り人形とねずみの王様」はバレエの原作となったアレキサンドル・デュマが下敷きにしたもの。ストーリーはデュマのフランス語版とあまり違わないが、トルートヒェン嬢がお人形の一つの名前だ。デュマの作品では「トルーシェン」嬢はマリーの家庭教師の名前になっている。でも、デュマの設定の方でも特にストーリーに違いはないと思う。バレエのストーリーとは結構違うのはいうまでもない。バレエの方には出てこないが、諸悪の根源のようなネズミの女王様はフランス語版では「スーリソンヌ夫人」だったがドイツ語版では「マウゼンリンクス夫人」になっている。 「見知らぬ子供」は森で見知らぬ子供と遊び始めたフェーリクスとクリストリープの兄妹のストーリー。森の中でおもちゃで遊んだり、怪しくて気に食わない家庭教師の正体を暴露して懲らしめたりする。くるみ割り人形もそうなのだが、この作品も結構ストーリーが込み入っていて、読み応えがある。そして、空想の世界と子供の現実の家庭環境が入り混じっている。 「くるみ割り人形」でも「見知らぬ子供」でも少々気になったのは、兄フリッツ、あるいはフェーリクスの粗暴な遊び。今の時代の日本で、軍隊の隊長になって馬や兵隊のおもちゃを支配し、懲罰を与えたり軍事教練をしてしごいたりして遊ぶのって、どうも粗暴に思えてしまう。この兄も将来立派なユンカー(悪い意味)かよと思ってしまう。ただこの二つの話はホフマンの友人の子供たちに実際に話して聞かせたストーリーが元になっているようで、くるみ割り人形の兄フリッツのモデルでもある子供らしい。この子は頭の固い軍人になどならず高名な建築家になったそうだから、まあ子供の遊びなんだろうけど。でも、こんな遊びばかりしてる子供って怪獣でウルトラマンごっこして遊ぶ今の日本の男の子より先が思いやられるように感じてしまう。 「大晦日の夜の冒険」は女房ほったらかして、他の女にうつつを抜かし、自分の鏡像(鏡に映った像)を取られた男の話。正統的な大人向きの幻想小説だろう。この小説もストーリーが複数作中に織り込まれていて、ちょっと人物関係が分かりにくかった。 三作ともそれなりに面白かったが、特に子供向きの二作は面白かった。子供向きということでストーリーが簡略化されず、ちょっと不気味な因縁話もあって子供だけでなく、大人も楽しめる。
January 3, 2013
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