《櫻井ジャーナル》

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2013.01.10
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 24歳のスリランカ人女性、リザナ・ナフィークがサウジアラビアで斬首された。9日のことだ。

 ナフィークは2005年、つまり17歳のときにサウジアラビアでハウスメイドとして働きはじめたのだが、間もなくして殺人容疑で逮捕される。働いていた家の生後4カ月の赤ん坊を殺した容疑だった。

 結局、有罪判決を受けるのだが、公正な裁判だったとは言い難い。ナフィーク自身が容疑を否認していたこともあるが、事件当時、彼女はアラビア語が話せず、逮捕後も弁護士や通訳がつかなかったという。雇い主の意向に添う形で処刑したと言われても仕方がないだろう。

 実は、 サウジアラビアで処刑されるメイド は少なくない。メイドとして働いている外国人の出身国はフィリピンやインドネシアが多いという。夜明け直後から14〜16時間、月に1万5000円から3万円の給料で働いているのだが、雇い主から暴力やレイプを受けることは珍しくないと言われ、雇い主の許可がなければ出国することもできないともいう。奴隷的な環境の中におかれているわけである。

 そうした環境から逃げ出した人びとのためのシェルターもあるが、理不尽な扱いを受けた人の中には反撃し、殺人罪に問われて処刑されるケースがある。殺人は重罪であるから厳罰に処す、という姿勢が正しいとは言えない。犯罪を生み出している根本原因はサウジアラビアの社会システムにあるからだ。

 こうした国だからこそ、傭兵に他国を攻撃、破壊と殺戮を行えるのかもしれない。リビアにしろシリアにしろ、NATOや湾岸産油国はイスラム武装勢力を使って体制転覆を図っているのだが、資金を出しているのはサウジアラビアを中心とする湾岸産油国だ。

 ゲリラ戦の主体が外国から入った傭兵であり、その中心にはアル・カイダ系の戦闘員がいることも明らかになっている。少なくともリビアやシリアの場合、「アラブの春」とは民主化運動でも革命でもなく、軍事介入、あるいは軍事侵略にすぎない。

 調査ジャーナリストの シーモア・ハーシュ は2007年に書いた記事の中で、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアは協力関係にあると指摘している。つまり、サウジアラビアの侵略行為はアメリカやイスラエルが背後にいるということ。言うまでもなく、アメリカとNATOは結びついている。

 サウジアラビアは他国を侵略しているだけでなく、労働者を奴隷扱いしているのだが、実際、奴隷制が残っている国でもある。そうしたサウジアラビアが「国際社会」から批判されない理由のひとつは石油が生み出す資金力にある。

 サウジアラビアとビジネスをしたい日米欧の企業はサウジアラビアの体制が揺らぐことは嫌い、そうした体制に批判的なメディアに広告を出さない。「人権擁護団体」もスポンサーである企業、基金の意向に逆らうような言動は避けている。勿論、サウジアラビア自体が中東にある大多数のメディアを支配しているということもある。

 「民主主義を世界に輸出しているアメリカがサウジアラビアに対して」・・・などということを言うつもりはない。アメリカはかつて海兵隊を使って他国を侵略、戦後は情報機関を使い、軍事クーデターなどで民主的に選ばれた体制を倒してきた。「反植民地」を掲げたフランクリン・ルーズベルト政権や「平和の戦略」を訴えたジョン・F・ケネディ政権は例外的な存在である。

 サウジアラビアの状況に沈黙している人物、団体に「民主主義」や「人権」を語る資格はない。「民主主義を世界に輸出しているアメリカ」などという表現はブラック・ジョーク以外の何ものでもない。





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最終更新日  2013.01.11 02:17:30


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