《櫻井ジャーナル》

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2013.01.24
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 安倍晋三政権は不公正な政治経済システムを強化しようとしている。日米の巨大な多国籍企業、金融機関、こうした組織を動かしている一部の金持ち層へ富をさらに集中させようということだ。日本の経済、社会を建て直そうとしているとは思えない。むしろ破壊しようとしている。消費税率の引き上げは勿論、金融緩和も目的は一緒で、そこにある。政治、経済、環境などの政策を決定する権利をアメリカの巨大資本に贈呈するTPP、核兵器と結びついた原発の再稼働にも前向きだ。

 社会的に優位な立場の人間に富が集中するのは資本主義に限った話ではないが、それを「善」だとするのは資本主義くらいであり、その「教義」を極限まで推し進めようとするのが新自由主義だ。

 歴史的に見ると、宗教にしろ、哲学にしろ、思想にしろ、自己中心的な考え方を否定するのが普通。例えば、中国の墨子は「非攻」と「兼愛」を主張した。侵略せず、互いに相手を思いやれということ。カトリックも仏教もイスラムも貧困層を助けることは神/仏の意志に合致すると考えている。コミュニズムにも、共同体の構成員は互いに助け合うべきだという理念がある。

 マックス・ウェーバーによると、ヨーロッパの中世では「世俗の乞食さえも折々は、有産者に慈善という善行の機会をあたえるところから、『身分』として認められ、評価されることがあった」(大塚久雄訳『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』岩波書店、1989年)という。これはカトリックの考え方だろう。

 こうした考え方を否定するのがジャン・カルバンらが唱える「予定説」。アメリカの基礎を築いたとされるピルグリム・ファーザーズはピューリタンの一派で、カルバン派の流れに属している。

 予定説によると、「神は人類のうち永遠の生命に予定された人びと」を選んだのだが、「これはすべて神の自由な恩恵と愛によるものであって、決して信仰あるいは善き行為」などのためではない(ウェストミンスター信仰告白)というのだ。つまり、人間にとって善行は無意味だということであり、自分が「選ばれた人間」だと信じる人びとは何をしても許されるということになる。

 またウェーバーは、プロテスタンティズムの「禁欲」が「心理的効果として財の獲得を伝統主義的倫理の障害から解き放」ち、「利潤の追求を合法化したばかりでなく、それをまさしく神の意志に添うものと考えて、そうした伝統主義の桎梏を破砕してしまった」と分析している。こうして「禁欲」が「強欲」へと姿を変えていった。

 実は、こうした「予定説」はカルバンが登場する遙か以前から存在している。例えば、紀元前に活躍した墨子もこうした考え方を批判(執有命者不仁)、「命(さだめ)」があるという考え(予定説)を政治に反映させるならば「天下の義(是非の道理)」を否定することになり、「上不聴治、下不従事(為政者は政務を執らず、庶民は仕事をしない)」ということになると批判している。(『墨子』、巻之九、非命上)

 新自由主義は社会的に優位な人びとが築き上げた不公正な仕組みを肯定する。社会的な優位さを最大限、カネ儲けへ結びつけるための政策が「規制緩和」であり、社会の共有財産を奪う政策が「私有化」だ。さらに儲けるために行うのが外国への押し込み強盗。いわゆる「戦争」だ。

 かつて、蓄積された富は生産活動に投入するしかなかった。19世紀のアメリカでは、不公正な手段で先住民や国民の財産を手に入れ、巨万の富を築く人たち、いわゆる「泥棒男爵」が登場するが、こうした人々は新たなビジネスを生み出している。

 しかし、今は生産活動に投資する必要はない。1970年代、ロンドンを中心にオフショア市場(タックス・ヘイブン)の巨大なネットワークが築かれ、資産を隠し、課税を回避することが容易になって事態は一変したのだ。

 ソ連消滅後、ボリス・エリツィン時代のロシアでは不公正な取り引きで巨万の富を築いた人びとがいる。いわゆる「オリガルヒ(寡占支配者)」だ。その代表的な人物がボリス・ベレゾフスキー。ウラジミール・プーチンが大統領になってからロンドンへ亡命している。このオルガルヒは溜め込んだ資産を生産活動には回さずに地下へ沈め、投機市場で運用している。その資金ルートになっているのがロンドンを中心とするオフショア市場のネットワーク。

 エリツィン時代のロシアにおける略奪は露骨だったが、ほかの国々も基本的には同じ。日本も例外ではない。「金融緩和」で通貨の供給量を増やしても、その行き先は金融の世界、つまり投機市場。喜ぶのは金融市場の住人、つまり多国籍企業、巨大金融機関、ファンド、そうした組織から利益を得ている富裕層だけだ。

 世界的に経済と金融の問題は深刻になっている。金融の肥大化を止めない限り経済は立ち直らない。金融機関やファンドに情報の開示を義務づけ、規制を強化し、違法行為は厳しく罰する必要がある。ロンドンを中心とするオフショア市場のネットワークにメスを入れなければならない。そうしなければ、金融が肥大化する一方で経済は衰退し、結局は現在の政治経済システムが崩壊する。

 しかし、アメリカやイギリスでは庶民の不満をファシズム化で抑え込もうとしている。監視システムを強化し、逮捕、拘束に対する規制をなくす方向に向かっている。アメリカの「愛国者法」もそうした中で作られた。

 実は、1970年代にオフショア市場が整備されて金融が急速に肥大化する中、経済の破綻と社会不安の増大は見通されていた。そこでロナルド・レーガンは1982年、緊急時に憲法の機能を停止させる「COG」プロジェクトをスタートさせている。このプロジェクトは2001年9月11日の出来事でスウィッチが入り、動き始めた。「愛国者法」はそのひとつの結果。日本も同じ方向、ファシズムに向かって動いている。





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最終更新日  2013.01.24 23:29:25


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