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カテゴリ: 水のメモ
町会長のための野良猫講座 というホームページがある。

「のらねこ学入門」のコンテンツでかなり読まれているらしく、冊子化もされている。
町会長のための野良猫講座

内容はかなり分かりやすく丁寧で、多くの人から読まれているのもなるほどだ。

ただ、この方は基本的に「猫が好き」の立場から猫の保護(具体的には地域猫活動)に話を持ってゆきたいようである。

そのため文章に「エサやりを否定しないでください」という意図が見え隠れする。

それ自体は個人のスタンスだからいいが、まっとう至極な文章の中に謎理論がさらりと織り交ぜられている。
それもかなり重要な部分にである。

わざとか、ただ単に知らなかっただけであろうか?

特に気になった謎理論を以下に列挙する。



謎理論(1) エサやり禁止すると捨て猫が増える!?

【本文】 6 「エサやり禁止」で野良猫はいなくなるのか?

 「エサやり禁止」看板が掲示されると、野良猫被害で悩んでいた人の怒りは少しおさまるだろう。ところがそれでエサやりがなくなることはほとんどない。エサやりは見つからないように隠れて行われるようになるだけだ。住人は期待した分だけ怒りが増すかも知れない。
 エサやりを取り締まる法律がないのだから、看板の効果はあまり期待できない。逆に「野良猫が集まる場所」ということを周囲にアピールしてしまうので、 捨て猫がかえって増える副作用もある。


「エサやり禁止」をすると野良猫が集まる場所というアピールになり、逆に捨て猫が増える?
これは本当だろうか?

統計はないはずなので、私の住んでいる街の公園を管理している公益法人に聞いたところ
「効果がないことはたまにあるが、 逆に増えるというのは経験がない 」とのこと。
実はその担当者も動物愛護団体や県庁の動物部署からも「逆に野良猫が増えるかも」と言われたことがあるが
「もう10年以上あちこちで鳩や猫のエサやり禁止看板を出しているので杞憂」とばっさり。

「でも、看板を見た人が子猫を捨てにくるのでは?」と聞くと
「猫を捨てられるのは人気の少ない公園が多い」 「よくエサやりが来るような公園は、鉢合わせたくないので避けるのではないか」 とのこと。

エサやり禁止看板は逆効果かは現場(公園)の職員が一番よく知っているので、自治体の公園管理部署や民間委託業者に聞くとよいだろう。



謎理論(2) エサやり禁止で野良猫被害が増える!?

【本文】 7 エサがなくなると野良猫はどうなるのか?

 毎日エサを運んでくるエサやりさんが来なくなったとしても、 餓死する猫はいない。 強い猫は隣町のエサ場へ移動していけるだろうが、 弱い猫はゴミ袋を漁り、人家へ侵入して食べ物を泥棒するようになる。
 小鳥や金魚を補食するのもいるだろう。動物は生きるためにはどんなことでもやる。ただおとなしく飢え死にを待つ猫などどこにもいないのだ。エサやり禁止は野良猫被害をさらに増やすかもしれない。


エサやりをやめるとゴミ捨て場が荒らされ、逆に被害が増える?
これは本当だろうか?

実はこれ、エサやり人の自己弁護のときの常套句である。

昔、私が住んでいた地域では、道端でネットがかぶせられていただけであったので、カラスにごみが荒らされ、とても困っていた。
そこで、伸縮式の箱型集積所にしたところ、ごみ集積所の被害はパタリと止んだ。

伸縮式ゴミステーション ゴミダス GP-05

伸縮式ゴミステーション ゴミダス GP-05

↑このタイプのごみ置き場に変えた。

ゴミ捨て場の問題は、カラスや野良猫にエサをあげることによってではなく、ゴミ捨て場の管理によって解決すべきだろう。



謎理論(3) エサやりを止めるのは隣町への迷惑行為!?

【本文】 8 隣町へ猫を追い払えばよいのか

 「エサやり禁止」の発想はどこから来るのだろうか。エサがないと猫が煙のように消えてしまうわけではない。子供でも少し想像力を働かせてみればわかる。
 野生動物ならば山へ帰ればいいのだろうが、野良猫には帰る場所はない。つまり隣町へでも移動してもらうか、餓死や病死でいなくなる事を期待しているわけだ。 自分の地域だけがきれいになれば、隣町は迷惑しても良いという考えはいかがなものだろう。 あまりにも利己主義で反社会的な思考ではないか。子供達にいったいどう説明できるのだろうか。


エサやりを止めて、猫が隣町に引っ越したら迷惑がかかる。
これは利己主義、反社会的だろうか?

いや、単にこの方個人の価値観で、社会通念とは言いがたい。

どれぐらいこの価値観が一般的でないかは
「ゴミ捨て場をしっかりしたらカラスが隣町に行くから利己主義だ!」
という非難の妥当性を考えると分かる。
「その町に交番を増やしたら、犯罪者が隣町に行くではないか!反社会的だ!」でも良い。



謎理論(4) エサが少なくなると子猫が増える!?

【本文】 9 死亡率が上がると繁殖力が高まる

 エサが減り栄養が悪くなると猫の寿命は縮まる。抵抗力が落ちて病気になりやすくなるからだ。病死する猫も確かに増えるだろう。
 しかし 動物は生存の危機感が強いほど、より繁殖し子孫を残そうと努力する。 発情の回数はさらに増えて、それに伴うトラブルも増える。そしてたくさん産まれてたくさん死ぬということが毎年繰り返される。住人は 子猫の死体処理 を常にやり続けなければならなくなるだろう。ゴミが荒らされ、衛生状態の悪い不健康な猫が増え、町の不衛生なイメージは拡大する。


エサが減ると、猫がさらに繁殖する?
本当にそうだろうか?

そんなわけはない。
・・・と、思いながら、一応同窓の動物病院長に連絡してみると
「そんなこと、あるわけない!」とやっぱり笑われた。

まぁ、確かに数々の動物がエサの欠乏によって絶滅してきた事実に照らせば、これはよくあるエサやり人のトンデモ主張とすぐ分かる。

医学的な説明を求めると、栄養というよりカロリーが問題で、カロリー欠乏では猫やネズミほど繁殖力の強い動物でも生殖能力が落ちてしまうそうだ。

猫は一度でも交尾するとほぼ100%妊娠してしまう動物( 交尾排卵動物 という)なのだが、ごくまれにこの100%を外してしまう例外がまさに「カロリー欠乏」でオスの精子が減るか、メスが排卵しない状態になるか、または流産が起きるという。発情がなくなることすらあるらしい。

どうやら 「エサが減ると、妊娠しにくくなる」 の方が医学的に事実のようだ。

また、獣医師の彼が指摘するには 「エサやりはオスとメスが出会うのが問題」 とも言っていた。

つまり、猫の繁殖期にオスとメスが一緒の場所でエサを食べていれば、交尾するなというほうが無理で、必ず交尾して子猫が生まれる・・・というのがエサやりをしてはいけない理由とのこと。

エサやりをする、しない。
どちらが「子猫の死体処理」に頭を悩ませる結果となるのかはお近くの動物病院に聞いてみればすぐ分かるだろう。



【重要な事実も指摘している】

一方、町会長のための野良猫講座はある重要な事実を指摘している。

それは

「エサやりを止めても野良猫は移動するだけで餓死しない」

という事実だ。

エサやりを止めたくない人が「死んでしまう!」とよく言うが、天性のハンターである猫が座して死を待つわけがない。

虫、小動物、カエル、何でも捕まえて生きてゆくのが猫だ。



【地域猫がダメというわけではない】

この方は「エサやりを止めさせないで」と言いたいあまり、謎理論を書いているのだろうが、それはこの方の問題にすぎず、 この方がお勧めする地域猫がダメだという話ではない。

地域猫を簡単に言うと 「野良猫を避妊去勢をして、エサやりをしながら寿命をまっとうさせ、自然に数が減るのを待つ」 という方法である。

心理的に抵抗が少なく、理論上は猫が確実に減っていくことになる。

では、実際に効果はあるか?一例。


ある地域で野良猫の問題から、地域猫をとりいれた。
効果は確かにあった。
ただ、、、長続きしなかった。

その地域の場合、まずエサやり人がいて、いくら注意しても止めないので、動物愛護団体に連絡を取って、エサやり人を巻き込む形で地域猫が始まった。

避妊去勢は進み、なかなか仕掛け檻にかからずつかまらなかった数匹が繁殖することはあったが、以前よりはずいぶんマシになった。

しかし、手術費用の捻出が自治会で難しくなり、動物愛護団体が分裂でゴタゴタし、野良猫の捕獲や避妊が滞ると、たちまち猫は増え始めた。



子猫が立て続けに生まれ、元の数に戻るまで時間はかからなかった。

猫の猛烈な繁殖力の前に、焼け石に水だったのかもしれない。

そもそも、全部の猫を捕まえるというのがかなり難しい。
少し頭のいい猫は、ほかの猫が仕掛け檻にかかっているのを見ると近寄らなくなるそうだ。

前出の獣医師によると、全体の半分を避妊去勢して増減ゼロ。8割を避妊去勢してやっと数が減るそうだ。

さらに謎理論「エサやり禁止をしたら捨て猫が増える」のまったく逆で、「あの地域では野良猫の世話をしてくれるらしい」といううわさを聞きつけて、捨て猫が増えるという副作用もあるらしい。

結局、エサやり人の高齢女性が施設に入居すると、野良猫はまったく見かけなくなった。


地域猫活動の効果は欧米でも議論されており、効果がない、効果を維持するのはきわめて難しい(というより、どうも否定的な意見のほうが多いらしい)というお話も他HPで見ている


地域猫が魔法のようにすべての自治会を救うということはなさそうだが、 エサやり人がなかなか意固地で、だったら懐柔して地域猫という折衷案 、という程度の選択肢の一つとしてはいいのではないだろうか。

ただ、それであっても、せめてエサやりの制限は絶対に必要だろう。



追記:この記事を書いた後知ったのだが「のらねこ学入門」の著者は荒川さんという獣医さんらしい。「エサやり禁止で野良猫が増える」以外は主観にすぎず医学的な話ではないにしても・・・先生それはありませんよ・・・。





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最終更新日  2015/08/06 10:46:56 PM
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