August 31, 2004
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今日で夏休みが終わる。

ヮタシはもう、海へ行けなくなる。


台風の去った後の海は、妙なくらい静かだった。

また今日もヮタシとあのヒトは約束もなく海辺で出会う。

あのヒトは今日もただ海を見つめていた。

「今日で夏休み、最後なの」

やっぱりね。返事なんて返ってこない。

「明日からここに来れなくなるわ。学校が始まるから」

別に寂しがる言葉が聞きたかったわけではない。

このあと彼がどうするのかが知りたいわけでもない。


最後の日なら、少しくらい違う反応が返っているなんて、甘い期待だった。

だってこの人は悲しくなっちゃうくらいにいつもの変わらないんだから。

でも

「おれの彼女、かぐや姫だったんだよ」

彼は言った。

どういうことだろう。

彼の言葉を理解できなかったヮタシは、黙って彼を見つめた。

「あはは。いきなりこんなこと言っておかしい人だと思っているでしょ」

彼は、笑ってそう言った。

「そんなことないわ」

だって私の話も聞かないで海ばっかり見てる人だもの。いまさらおどろかないわ。

少しの沈黙の後、彼はぽつり、と話した。

「月に、還って行ったんだ。ひとりで、誰にも告げないで」

彼は遠い海を見ていた。

昼間の月は出ていない。ただどこまでも続く海が広がるだけ。

「・・・じゃぁ、あなたは?」

ヮタシは聞いた。彼女がかぐや姫ならかれはだれなのだろう。

かぐや姫に思いを寄せた貴族か、もしくは帝か。

「おれ?おれは・・・、かぐや姫に思いを伝える勇気すらなかった農民、ってとこかなぁ」

笑いを含んだ声が、切なく思えたのはなぜだろう。

ヮタシは彼の話をこともなげに聞いていた。

かぐや姫なんで物語の中の人を信じるはずがないし、第一かぐや姫はもっと皮肉な女のはずだ。

自分を愛した人を見捨て、自分の罪を軽減するために利用した。

そんなひどい女を、この人は愛したというのだろうか?

「ちがうわ」

ヮタシは言った。今度は彼でなく、海を見ながら。

「あなたの愛した人は、ちゃんと海へ還って行ったでしょ?」

この人の見る海には、きっとこの人の愛した人がいるから。

だからこんなにも寂しそうな目で、海を見ていたんでしょう。

彼は多分今までにいちばんはっきりと、確かな反応を示した。

ヮタシはそれを笑った。


「・・・本当かな」

彼は静かに、海に足を浸した。

「本当に彼女はここにいるのかな」

水かさがひざの辺りになった頃、彼はとまった。

「海は生まれる場所でもあって、還る場所でもあるのよ。すべての生き物のね」

彼は何を思っているのだろう。

「よかった」

そういった彼は、また海の中を深いほうへと進んでいった。

「それじゃぁ、彼女はここにいるんだね」

彼の半分が海中に沈んだ。

「もう会えないかと思ってた」





「それでいいの?」






彼は、長い沈黙の後、ゆっくりとうなずいた。

「さようなら」

ヮタシは海に消えてゆく彼の姿を最後まで見ることなく、走り出していた。

明日から普通の生活に戻る。

ヮタシは毎日忙しく学校に行って宿題をやって。

けれどきっと、海を見たときに思い出すんだろうな。

海に還っていった人のコトを。







なんだろー。このちょっと眺めの続きものの日記・・。
ただなんとなく、夏休みだし、書いてみたぃなぁ。と思ったのデス。

ぁ、ちなみにヮタシの夏休みは30日まででした・・・(*´д`*)





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Last updated  August 31, 2004 08:52:40 PM
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