Emy's おやすみ前に読む物語

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Mar 29, 2009
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カテゴリ: 連載小説・中編
「藍の言いなり 紅のぬくもり」**Scene 6-7**


三村は席を立ち、自分の食べた皿を持ってキッチンに入る。

「そこ、座ったら。

 今、コーヒーいれてやるから。」



私は三村が座っていたカウンターの丸いすに座る。


コーヒーをいれてくれるなんて・・・。


三村にいちいち驚き感激する。




コーヒー豆の香ばしい深い香りにうっとりする。

コーヒー豆をミルミキサーで一気にひく音。

湯が沸くのを待つ。



三村が部屋の明かりを消す。

キッチンカウンターの、細く短い蛍光灯だけの明かりになる。

青白くて冷たい光・・・。


三村は何もしゃべらず、簡単な首のストレッチをしている。

私はそんな三村を見ている・・・。



三村の、ボタンを留めてない白のポロシャツ。

ストレッチで襟がはだけた時、左側の鎖骨にほくろを見つけた。

襟がはだけた時だけ。

襟が直れば、ほくろは服に隠れてしまう。



その見え隠れするほくろをじっと目で追っているうちに、

口で強く吸ってみたくなる。


私は孝夫の鎖骨を強く吸った事はない。

だって、それは許されないし。



三村の彼女は、三村の鎖骨のほくろを吸った事があるのだろうか。

三村はそれを許す男なのだろうか。



私は本当に今夜三村とセックスするのか・・・

孝夫は・・・




三村がコーヒーの周りからゆっくりお湯をかける。

コーヒーをゆっくり蒸らしながら、少しずつ湯を注ぎ、

コーヒーを落とす。

私も、落ちるコーヒーを見ている。




――青白く冷たい光と、沈黙。



三村が大きめのマグカップにコーヒーを注いで、

私に渡してくれた。


一口飲む。

インスタントとは全く違う。

「美味しい。」




三村はキッチンの壁に寄りかかりながら、コーヒーを飲んでいる。


「名倉さん、これ飲んだら・・・しよっか。」

「・・・。」

私の心臓がドキンと飛び上がる。




孝夫が悪い。

今日の里美との会話は他愛のないものだったけど、

藤坂に守られて、赤ちゃんを心待ちにする喜びが

表情に表れていた。


孝夫に私もこんな顔で誰かに話できるようにして欲しい。

昼間手をつないで街を歩いてみたい。

私の話を真剣に聞いてくれて、ねだれば忙しくても

1時間だけでも会いに来てくれる日もあって。

いつも私の隣にいてくれて、私だけの孝夫で・・・。



人の気配や温もり、そして心の抱擁。

それが私の欲しいもの。


それを的外れな三村に求めてしまった。

たった一度、駅でジュースを買ってくれて、

一緒に電車を待ってくれた三村に。


私は孝夫を裏切りたいんじゃない。

ほんの少し反抗してみたかった。


しかし三村は違う。

今夜三村が欲しいのは私の身体。


もう自宅までついて来てしまったし、食事も食べてしまったし、

コーヒーもいれてもらってしまった。


人恋しさは満たしてもらった事になるのだろうか。

次は三村の望むものを・・・。

でも・・・今はポロシャツの襟元からは、

あのほくろは見えない。



「・・・もう黙るなよ。

 あのさ、冗談とかで切り返して来てくれない?」


「・・・。」


三村の顔を見る。


「もう、そんな顔するなよ。

 分かってるよ、桐原と付き合ってるんでしょ。

 安心して、俺、そこまで節操なくないから。」


「・・・。」


私は今、どんな表情で三村を見ているのだろう。



「あの桐原が気に入ったくらいだから、名倉さん、

本当はギリギリの駆け引き上手いのかなって、期待してたのに。」


一番言われたくない事を言われた。

会話さえ続かない私が、ギリギリの駆け引きなんて――――。


三村が大きくため息をつく。




「桐原は、名倉さんのどこが良くてつきあってんだろ。」


そう独り言のように言うと、一気にコーヒーを飲み干した。


「――クルマで送っていくよ。

 下、ジーパンに履き替えてくるから。」


そう言うと、キッチンを出て行った。

シラけたから帰れって事だ・・。




私はもう、コーヒーを飲めなかった。















三村さん、キッツ~!!
このくだり読んで最初に思ったこと。
そして・・・色々考えちゃいました。
皆さんはどんなこと考えたかな。
ではまた次回をお楽しみに!






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Last updated  Mar 29, 2009 05:09:32 PM
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