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『ここにあるのは荒れ果てた細長い礒だ。
うねりは遙かな沖なかにわいて
寄りあいながら寄せてくる
そしてここの渚に
さびしい声をあげて
秋の姿で倒れかかる
その響きは奥深く迫った山の根に哀しく反響する
頑丈な汽車さえもためらいがちに
しぶきは窓がrすに霧のようにまつわってくる
ああ 越後のくに 親知らず市振りの海岸
ひるがえる白波のひまに
旅の心はひえびえと湿りをおびてくるのだ』
(中野重治=白波)
亡くなった彼女との思い出の旅の記憶は
今、出張や外出を重ねて、こうしてみるとかなりの所に残る
特急列車に乗って、車窓を過ぎる駅
出張に行った時、降り立った雪の駅
冬の日、富山で仕事を終えての帰り、彼女の故郷の長岡に向かう
北陸本線の車上で、長い電話をしたことがあった
その時、車窓を、親知らずの暗い海が流れていた
温かな声に、僕は、無性に会いたさを覚えた
しかし、帰郷中の彼女に会うことはできず
東京へ帰ってからの再会までの時間の長さ
悶々としたときが今は哀しい。
長岡の花火を見ようねと
約束してくれたのに果たすことはできなかった。
しかし、ほかでは本当に彼女と二人でよく花火を見た。
いつも見飽きることはなかった。なぜかな。
群衆の中でも、心が二人だけになれたからだろうか。
夏が終わり、花火を見ることのない2度目の秋が来る。
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