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「時をかける少女」、「魔法少女」、「文学少女」のように、「少女」と言う言葉が付くタイトルを見ると、どこか心ときめくような思いのする殿方は多いのではないか。もっとも、「地獄少女」とか「壊れた少女」となると、少し微妙かもしれないが。こういった場合の少女とは、たいてい「美少女」を指しており、美少女が、一生懸命何かをやっている姿というのは、おじさんたちには(いやおにいさんたちにも)非常に好ましく映るのであろう。 もちろん、こんな物語がつくれるのも、少女が活躍できるという社会が前提になっているからであり、「○○少女」というタイトルは、現代社会特有のものかと思っていた。ところが、封建社会である江戸時代にもそんな本があったことを知って少し驚いた。「算法少女」である。ここで紹介する「算法少女」(遠藤寛子:筑摩書房)は、その江戸時代に著された同名の本をモチーフに、作者が豊かな想像力を使って、和算好きな少女のお話として織り上げたものだ。 主人公のあきは、町医者である父の千葉桃三から上方流の算法を習っている、利発な少女である。ある日、神社の算額の間違いを指摘して、それが、久留米藩主の耳に届き、姫の算法指南役にという話がもちあがるのだが、江戸の算法の権威で関流の宗統である藤田貞資から横槍が入る。 江戸時代は、多くの分野で家元制度があった。実力の差がよく分からない、最後は見解の相違で終わらせることが可能な芸事と違って、実力がはっきりと分かる将棋などにも、家元制度があったというのは、今の感覚からは不思議なことである。ましてや数学の世界など、家元制度とは一番遠いと思うのだが、この作品の舞台である安永年間では、関流から分かれた諸流派を中心にして、勢力争いをしていたようだ。作品中にも、円周率の計算方法などが、まるで流派の秘伝のような扱いで描かれており、苦笑してしまう。 政治学者の故丸山 眞男氏によれば、日本はタコつぼ文化だそうだ。この時代は、算法もまた各流派が自分のタコつぼに閉じこもっていたのだろう。それは、上方流算法を学んだあきの父親も例外ではなかった。父親の算法に関する考え方に納得がいかなかったあきだが、関流を学びながら和洋の算法を広い視野でく研究している本多利明と出会うことにより、自分の本当の生き方を見出す。この作品は、江戸時代の「算法少女」成立までの話だけではなく、あきの成長の物語でもあるのだ。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」(本記事は「本の宇宙」と同時掲載です。) 楽天ブックスの「ブログネタ」をブログで紹介して10万ポイント山分けに参加しよう
October 31, 2010
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QEDシリーズなどで知られる高田崇史の「麿の酩酊事件簿」シリーズの第1弾、「花に舞」(講談社)。 舞台は古都鎌倉。主人公の勧修寺文麿は、旧家のお坊ちゃまである。何しろ、家に執事がおり、実際に「お坊ちゃま」と呼ばれているのだから掛け値なしのお坊ちゃまだ。もっとも、お坊ちゃまといっても三十歳を超えているのだが。文麿は、ベンチャー企業のオーナーで旧家のボンボンなのに、いまだ嫁の来てがない。ただ一人の肉親である祖母から、早く嫁をもらうようにせっつかれているのだが、嫁の来てが無いのは、必ずしも彼のせいであると言う訳でもないようだ。 なにしろ、勧修寺家には、婚姻家訓というとんでもない家訓があるのだ。 1.見合厳禁 2.手助け無用 3.独力発掘 ・ ・と、この調子で、前文7条と本文86カ条もあるのである。こんな嫁取りに関して悲惨な状況にある文麿だが、女性との出会いはもちろんある。ところが、どういう訳か、出会う女性は皆、何か心にわだかまりのようなものを抱えているのだ。彼女たちのわだかまりを文麿が解決するのはよいのだが、結局はふられてしまうというのが、この作品の基本的なストーリーである。 収められているのは4つのエピソード。○ショパンの調べに 美人ピアニストの人生を変えた事件○待宵草は揺れて 茶会で起きた毒殺事件○夜明けのブルー・マンデーを 女性バーテンダーのわだかまり○プール・バーで貴女と 女性ハスラーの悩み ところで、文麿には、変な性質がある。酒に弱いのだが、究極まで酔っ払ってしまうと、キザ男君に変身してしまう。しかし、このキザ男君、やたらに頭が冴えている。素面の時より、頭の働きが格段にあがり、名探偵になってしまうのだ。 水戸黄門の印籠ではないが、この作品のパターンも決まっている。思いを寄せた女性と飲みに行ったのはいいが、酩酊して呆れられているときに、急に、キザ男君に変身して、見事に彼女たちの悩みを解決してしまうのだ。これも、日本的な様式美のうちだろうか。しかし、文麿が彼女たちの悩みを解決することは、彼女たちが新たな人生に踏み出すきっかけを与えることにもなってしまい、結果は失恋というのは、少し悲しい。(笑)○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」 (本記事は「本の宇宙」と同時掲載です。) 楽天ブックスの「ブログネタ」をブログで紹介して10万ポイント山分けに参加しよう
October 30, 2010
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JR宇部線の宇部新川駅前の通りの風景。向こうに見える円筒は、宇部興産の工場。○ランキングの順位は? ○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
October 29, 2010
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写真は新下関駅で見掛けたフグ君。フグは下関の名物だ。こちらでは縁起を担いでフクと呼ぶ。○ランキングの順位は? ○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
October 28, 2010
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写真は広島駅に入って来るこだま号。こちらでは珍しい16両編成のこだまだった。○ランキングの順位は? ○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
October 27, 2010
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写真は、高梁市内を流れる紺屋川。風情のある小さな川だが少し下ると、岡山県を代表する大河である高梁川に続いている。かっては、備中松山城の外堀の役割を果たしていたとのことだ。この道筋は、情緒のある風景が続いており、「日本の道100選」にも選ばれている。春に来れば桜が綺麗らしい。 下の写真は、紺屋川河畔にある高梁キリスト教会堂。こちらもなかなか風情がある建物だ。○関連過去記事・高梁市郷土資料館(備中高梁6)○ランキングの順位は? ○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
October 26, 2010
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うちの子といっしょに本屋に行った時に、教えられて出ていることに気が付いた「真月譚月姫 (9)」(佐々木少年/アスキー・メディアワークス)。「直死の魔眼」 を持つ志貴と、吸血鬼の「真祖」の姫君アルクェイドらの数奇な運命と、戦いそして愛を描いた作品だ。もともとは、うちの子が買っていたものだが、最近はなぜか親が引き継いで買っている。まあ、この手のものは、昔から嫌いではないので、それはどうでもいいのだが、この巻についていえば、何とも表紙が地味だ。奥付を見ると、発行は9月27日だが、先日気がつくまで、何度もこの本の置いてあるコーナーを覗いているはずなのに気が付いていない。表紙が、周りのコミックスにすっかり溶け込んでいる感じで、「保護色か!」と思わずツッコミ。色合いも地味なら、書かれている人物も地味だ。いくらその少年が主人公でも、やはり表紙は、華やかな美少女の方が目立つだろう。 そんな戯言はさておき、今回は強敵ロアとの最終決戦。ロアの攻勢に前に、アルクェイドは力尽きるが、最後の最後で志貴は、本来の力を見せつける。主人公はまだ自分の能力を十分に引き出せていないまま敵と戦いに臨むのだが、大事なものを傷つけられて、初めて真の力が目覚めるというのは、青少年向けのこの手の作品の伝統的なパターンである。とはいいながら、決してこの手の話は嫌いではないので、「そんな力があるんなら、はよう出さんかい!」とツッコミながらも、展開を楽しみながら読んでしまう。作者の筆が走り過ぎて、1巻に収まりきらず、フィナーレは次巻への持ち越しになったようだが、発売が待ち遠しいものだ。○関連過去記事・真月譚月姫(8)○面白かったらポチっと1票! ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」 楽天ブックスの「ブログネタ」をブログで紹介して10万ポイント山分けに参加しよう
October 25, 2010
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藤原祐の「レジンキャストミルク」(メディアワークス)。「アカイロ/ロマンス」のひとつ前のシリーズの第1巻に当たる。 この作品世界では、虚軸(キャスト)と呼ばれる存在が、実軸(ランナ)と呼ばれるこの世界に入り込み、脅威的な力をふるう。虚軸とは、人の思いによって生まれた仮想世界、パラレルワールドである。本質的に不安定なもので、やがては崩壊して、実軸に吸収されてしまう。ところが、強い思いによって出来た虚軸は、この実世界のだれかに寄生もしくは強制することにより実軸への存在固定を行うのである。虚軸が寄生もしくは強制する実世界の誰かを固定剤(リターダ)と呼び、寄生型とは、虚軸と固定剤が一体となっているもので、共生型とは、虚軸と固定剤が別々の個体となっているものだ。そして、彼らもしくは彼女らは、何かしら欠落を抱えている。 主人公の城島晶は、見かけは平凡な高校2年生。超美少女の従妹である城島硝子と二人暮らしである。実は、硝子は形式名(モデリング)を「全一(オールインワン)」と言う虚軸であり、晶は硝子の固定剤なのだが。彼らの通う高校には、他にも柿原里緒(形式名「有識分体(分裂病)」)、舞鶴蜜(形式名「壊れた万華鏡(ディレイドカレイド)」といったような虚軸たちがおり、彼女たちとともに、敵である虚軸、「無限回廊(エターナル・アイドル)」一味と戦うというのが基本的なストーリーだ。 主人公の男子とそのパートナーの美少女が仲間の美少女達と敵方と戦うと言うのは、この後の作品の「アカイロ/ロマンス」の原型とも言える。前作の「ルナティック・ムーン」では、まだ仲間の美少女軍団といったものはなかった。また、この作品では敵方は男女半々といったところだが、「アカイロ/ロマンス」では敵方も美少女だけといったように進化?しており、前作とこの次の作品を繋いでいる作品としての性格が強いだろう。 こちらも、他の作品同様、椋本夏夜のイラストがすばらしい。表紙は、城島硝子。虚軸で、感情が欠落しているという設定のため、しゃべり方が機械的なのだが、結構ツッコミがうまく、晶と夫婦漫才のような掛け合いをしたりしているところが何とも面白い。 もう一人、魅力的な人物が舞鶴蜜。虚軸のため、敵意でしか自分の感情を表せないため、ツンデレではなくツンツンキャラという設定だが、敵と戦う時に、黒づくめのゴシックドレスに身を包んで戦う姿は、きっと、その筋のマニアを萌えさせるに違いない。 ○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」(本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。) 楽天ブックスの「ブログネタ」をブログで紹介して10万ポイント山分けに参加しよう
October 24, 2010
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山口県萩市にある萩バスセンターというところで、帰りのバスを待っていると、たまたま目の前に停まった、ループバスの「晋作くん」。 萩市は、東回りと西回りの2系統のループバスが循環しており、「晋作くん」は西回りの方だ。東回りは「松陰先生」という愛称が付けられている。観光地も回るようなので、「龍馬伝」で明治維新に興味を持った人は、話の種に乗ってみるといいだろう。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」
October 23, 2010
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写真は新山口駅の新幹線口に屋外展示されている、D51(デコイチ)の動輪。新幹線開通記念のモニュメントらしい。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」
October 22, 2010
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藤原佑による新シリーズ「煉獄姫」(アスキー・メディアワークス)。絵師が、これまでずっとコンビを組んできた椋本夏夜でないのは、少し寂しいが、表紙のkaya8によるイラストも素晴らしく、旅先で見かけて、思わず衝動買いだ。 本来煉獄とは、キリスト教において、一応の救済は約束されているものの、小さな罪があって、そのままでは天国に行けないような人が、浄化を行う期間身を置く場所である。しかし、この作品の煉獄とは、現世に隣接した異世界のことであり、キリスト教徒は直接の関係はない。煉獄の毒気を含む大気は、人の意思により、あらゆるものに変化し、それを行うことのできる者は「煉術師」と呼ばれているという設定だ。 アルテミシア(アルト)は、瑩国の第一王女でありながら、煉獄の扉をその身に宿しており、近寄る者に死をもたらすために、普段は幽閉の身だ。彼女に近づける者は、煉獄の大気に完全態勢を持つ少年騎士フォグただ一人。アルトが外に出られるのは、王家からの密命で、「煉術師」としての働きをする場合だけなのである。 藤原佑の作品に登場するヒロインたちは、誰も「訳あり」だ。アルトはその体質のために、生まれるときに母親を殺してしまい、父王からも疎まれている。しかし、特異体質はアルトのせいではない。父親に喜ばれようと、汚れ仕事に手を下すアルトの姿は、いじらしくも痛ましい。 ところで、アルトの相棒のフォグだが、彼の正体もまったく意外なものだった。こういった設定なら、二人は理想的なコンビだろう。裏切りと陰謀渦巻く世界で、これから二人がどのような戦いを繰り広げていくのか、目が離せない。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」(本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。) 楽天ブックスの「ブログネタ」をブログで紹介して10万ポイント山分けに参加しよう
October 21, 2010
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冒頭にいきなり 「天城さんは鷺森神社の近くに住んでいた。」というフレーズがあり、思わず買ってしまった「きつねのはなし」(森見登美彦:新潮社)。鷺森神社は、修学院の近くににある古い神社で、私も学生時代にこの近くに住んでいた。 読んでいくうちに、自分の学生時代の行動範囲と重なる部分が出てくるためか、どんどんと話に引き込まれていく。なにしろ、作品中に出てくる骨董屋・芳蓮堂のある一乗寺は、私の学生時代住んでいたところだし、出てくる大学は森見氏の経歴からも、私の通っていた京都大学がモデルであることが推測できるからだ。京都大学のすぐそばにある吉田神社も重要な役割を果たしている。 作品は、芳蓮堂とケモノを主なキーワードとした連作短編になっている。また、この他にも、狐の面、からくり幻燈や龍などもサブ的なキーワードとなっているように思える。収録されているのは、以下の4編。・きつねの話 芳蓮堂でアルバイトをしていた学生が体験した恐ろしくも不思議な話。・果実の中の龍 先輩の語る、ほら話。しかし、ほら話ながら、内容は、他の話とリンクしている。・魔 ケモノにとり憑かれた男の話・水神 実業家の葬式で起こった不思議な出来事の話 いずれも、かなり不気味な話だが、京都という舞台には、よく似合っているように思える。風水には四神相応という考え方がある。「東に青龍、南に朱雀、西に白虎、北に玄武」という結界をはるというものだ。京都は、この考え方に基づいて、鴨川、巨椋池、山陰道、船岡山が四神に見立てられていると言われている。1200年以上の歴史を誇る古き都。その古さゆえに、どんな魔が潜んでいても不思議ではない。そんな京都の一面をよく描いた作品だろう。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」(本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。) 楽天ブックスの「ブログネタ」をブログで紹介して10万ポイント山分けに参加しよう
October 20, 2010
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写真のしゃれた建物は、高梁市の郷土資料館。1904年(明治37)に建設された、旧高梁尋常高等小学校の本館を利用したものだ。高梁市の重要文化財でもある。 昔、一度訪れたことがあるのだが、既に記憶からはすっかり薄れている。今回は夕方の散歩で前を通っただけであり、当然閉館時間を過ぎているので、入館はできなかった。中は、江戸時代から昭和初期ごろまでの生活用具が展示してあるようだ。機会があれば、また中に入ってみたいものである。○関連過去記事・高梁市役所(備中高梁5)○ランキングの順位は? ○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
October 19, 2010
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大きな話題を呼んだ「ブラックスワン」だが、それに先立つタレブの著作「まぐれ」( ナシーム・ニコラス・タレブ/望月衛:ダイヤモンド社)。これは面白い。私が普段思っていることにも通じるところがあり、まさに「壺にはまった」ような感じのする著作である。 この本での主張は、成功の多くは、結局は「まぐれ」だということである。昨日までの勝者は、明日の敗者なのだ。恐るべきは確率のなせる技である。たまたまの「まぐれ」を自分の実力と勘違いした者はいつかは確率に裏切られるのだ。副題に「投資家はなぜ運を実力と勘違いするのか」とあるように、タレブはトレーダーを例にとって、このことを説明しているが、これは、色々な分野でいえることだろう。しかし、このような勘違いは世の中に溢れているのではないだろうか。 よく知られているように、論理を展開する方法には、演繹法と帰納法がある。演繹法は、厳密に形式論理を積み重ねていくもので、出発点となる原理が間違っていなければ、そこから得られる結論は正しい。一方、帰納法の場合は、たった一つの反例でひっくり返ってしまう恐れがある。タレブの言うように、人間の脳は、帰納的推論を行う機械なのだ。だから、実務的には色々な場面で帰納法的な推論が使われている。しかし、いつ「ブラックスワン」の出現で、根本から覆るか分からないのだ。よくビジネス本などで紹介されている著者の経験則だって、所詮は帰納法のひとつにすぎない。話半分くらいで聞いておいた方がよいのである。くれぐれも、ランダム性のもたらしたいたずらである可能性があることを忘れてはいけない。 それでは、ランダム性にもてあそばれないためには、どうしたらよいのだろうか。吉田兼好の徒然草百十段に「双六の上手といひし人に、その手立を問ひ侍りしかば、『勝たんと打つべからず。負けじと打つべきなり。』」という一節がある。タレブの言うことも、これに繋がるのではないだろうか。「ブラックスワン」はどこにいるか分からないのだ。これまで、「まぐれ」によって勝ち続けたとしても、それが「吹き飛ぶリスク」をとっていることに気が付かなければ、いつかは足をすくわれてしまうということだ。そして、そんなリスクの確率は、決してベルカーブのような左右対称の綺麗な確率分布でなどで表すことはできないのである。だが、そんなブラックスワンの存在を考慮に入れて行動すれば、普段は勝てなくても、負けは小さく、その時が来れば大勝ちすることができるのだ。 全体に、いかにもタレブらしいシニカルな文体で書かれているが、その内容は多くの警鐘に満ちている。100のビジネス本を読むよりは、まず読んでおくべき本だろうと思う。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」(本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。) 楽天ブックスの「ブログネタ」をブログで紹介して10万ポイント山分けに参加しよう
October 18, 2010
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日本テレビ系列の「金曜ロードショー25周年記念月間」の第3弾として放映していた、「カイジ 人生逆転ゲーム」。 観た感想だが、何と言っていいのか・・・・・。ストーリーは、友人の借金の連帯保証人だったカイジが、借金返済のために文字通り命を賭けたゲームをしたり、地下のタコ部屋で強制労働させられたりという、ハチャメチャなストーリー。一体どこの国のいつの時代の話だと思うことはさておき、いくつかのツッコミを入れてレビューに代えたい。1.敵の親玉である兵頭は、借金を返せないものを地下で強制労働させて、地下王国を建設していたが、見た感じかなりの高齢のようだ。果たして、彼が生きている間に完成できるのか?2.無理に感動的な場面を挿入しているが、内容がハチャメチャなので、感動は無理。3.強制労働させられるものは、焼印を押されたりマイクロチップを埋め込まれたりされていたが、そんなことしたら、犯罪組織の存在を自ら証明するようなものだ。また、いくら負債を負っている者でも、あれだけ人間が大量に行方不明になれば、世間で目立たない訳はないだろう。4.藤原竜也の顔が時々、郷ひろみに見えた。5.天海祐希演じる遠藤凛子。最後のオチ、お前は峰不二子か!? 本日は以上。(原作)・福本伸行:「カイジ」(講談社ヤンマガKC刊)(監督)・佐藤東弥(出演)・藤原竜也(伊藤カイジ)・天海祐希(遠藤凛子)・香川照之(利根川幸雄)・松山ケンイチ(佐原誠)・山本太郎(船井譲二)・佐藤慶(兵頭和尊) ほか○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」
October 17, 2010
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上の写真は、備中高梁駅からほど近いところにある「高梁市役所」。別にここを訪れた訳ではないが、せっかく前を通ったので、敬意を表してパチリ。一応この辺りを通ったという記念だ。 そして、上の写真は、高梁市に行った時に食べた弁当。確か値段は400円だったと思う。仕事で外に出ているときは、大体、こんなつつましいものを食べている。○関連過去記事・安正寺(備中高梁4)○ランキングの順位は? ○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
October 16, 2010
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架空の村雛見沢村を舞台に、昭和58年に繰り広げられた惨劇を描くいた「ひぐらしのなく頃に解 皆殺し編」(桃山ひなせ/竜騎士07:スクウェア・エニックス)の第5巻と「皆殺し編」の最終となる第6巻。 雛見沢村で祀られる神・オヤシロさまの生まれ変わりとも言われる少女・古手梨花は、惨劇が起こるたびに、彼女だけに見える守り神・羽入(オヤシロさま?)の力で、時を巻き戻し、少しずつ位相のずれた世界をやりなおしてきた。何度も絶望を繰り返して来た梨花は、こんどこそはという手ごたえを感じていたのだが、物語は、後半で大きく動いていく。 この「皆殺し編」を一言で表せば、「鷹野三四の暴走が止まらない」ということだ。自分を地獄のような境遇から救ってくれた老科学者の故鷹野一二三の遺志を受け、雛見沢症候群の研究を世に出そうとした三四だが、最初の高潔な志を持った少女が、いつの間にか、目的のためなら、手段を選ばないような人物に変わってしまった。その姿は、もはや人間ではなく鬼女である。 「祭囃し編」では、便所の糞ツボにたたき込まれたりしているのを鷹野一二三に助けられた三四だが、いっそあのまま、ウ○コの中に沈んでしまっていた方がよかったのかも(失礼)。そう思わせるような悪逆非道ぶりである。間違いなく、シリーズ中で最低最悪のキャラといっても過言ではないだろう。 それに対し、決してあきらめない梨花の心の強さは対照的だ。事件は、巻き戻された世界の中で、少しずつ真相を明らかにしながら進んでいる。どうも今残っている「祭囃し編」が最終になりそうだ。 ○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」 楽天ブックスの「ブログネタ」をブログで紹介して10万ポイント山分けに参加しよう
October 15, 2010
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小市民を目指してどうしてもなりきれない高校生二年生の二人、小鳩くんと小山内さんを描いた、青春スイーツミステリー「夏期限定トロピカルパフェ事件」(米澤穂信:東京創元社)。「春期限定いちごタルト事件」に続くシリーズ第二弾だ。 二人は、一緒に行動していることが多いが、恋愛関係にある訳ではない。二人ともその性格と頭が切れすぎるために、中学時代共にいろいろとあったようだ。そのため、小市民こそ理想だとして、共に小市民を目指す互恵関係にあると言う設定である。だから、学校の外で、ましてや夏休みに会うような必然性は全く無いはずなのに、なぜか、小鳩くんは、小山内さんに誘われて、<小山内スイーツ・セレクション・夏>につきあうことに。つまりは、二人で夏休みの間に甘いもの屋巡りをする訳だ。 「今年の夏の計画を完遂するには・・・・・・、どうしても、小鳩君みたいな人がいて欲しいの」 ところが、実はここに、小山内さんが、大きな仕掛けを仕込んでいたのである。 小鳩君は、前作で、友人の堂島健吾にこう言っている。 「ぼくが狐だったとたとえるなら、あれは昔、狼だったんだ。」 しかしこの二人、狐と狼というよりは、息のあった夫婦狐のように見える。狼なら、智恵を使うよりは、もっと力技が出てきそそうなものだ。実は、小山内さんが、見かけによらず、カンフーの達人だと言うことなんていうことは全然ない。動作は素早いようだが、体はちっちゃくて、どう考えても肉体派ではないのだ。その分智恵の方はよく回り、ずる賢いといっても言いすぎではないだろう。そんな小山内さんは、まさに女狐といった表現がぴったりだと思うのだが(笑)。 今回のお話は、小山内さんの女狐ぶりがいかんなく発揮されている。しかし、これにより、最後に二人の関係に大きな変化が生じて、後は次回作のお楽しみといった終わり方だ。いったい、この二人、本当に小市民になれるだろうか。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」(本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。)
October 14, 2010
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ここは、備中高梁駅からそう遠くないところにある「安正寺」。備中松山藩主である板倉家の菩提寺であり、旧制高梁中学校発祥の地だということだ。夕方散歩中にたまたま通りかかったのだが、知らない街を歩くと言うのは、色々な発見があって良いものである。○関連過去記事・阿部神社(備中高梁市3)○ランキングの順位は? ○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
October 13, 2010
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ミツバチというと、苦手な人もいるかもしれないが、よく見るとなかなかかわいい姿をしている。スズメバチと違って、基本的には穏やかな性質なので、こちらが刺激しなければ刺されることもない。もっとも、アフリカナイズドミツバチ(別名キラービーともよばれる。アフリカミツバチとセイヨウミツバチの交配種で攻撃性が非常に強い)のような例外もあるのだが。一面の花畑の間をミツバチが飛び交っている風景は、心が癒されるのではないだろうか。 ミツバチというのは、昔から人間の役に立ってきた。それは、単に蜜を集めるというだけではない。ミツバチがいないと、農業がなりゆかなくなってくるのだ。植物が受粉して、実をつけるためには、自家受粉で結実するものを除けば、誰かが花粉を運んでいく必要がある。風で運ばれるのが風媒花であり、虫によって運ばれるのが虫媒花だ。そして、ミツバチは花粉を運んでくれる代表的な昆虫である。ところが、アメリカを中心に蜂群崩壊症候群(ほうぐんほうかいしょうこうぐん、Colony Collapse Disorder、CCD)という不思議な現象が広がっているという。一夜にして、巣箱のミツバチのほとんどが失踪してしまうという現象だ。この現象を紹介して、警告を与えているのが、「ハチはなぜ大量死したのか」(ローワン・ジェイコブセン/中里京子:文芸春秋社)である。 本書には、その原因として、寄生虫、病原体、農薬、さらにはそれらの複合汚染などについて考察が加えられているが、その真の原因はまだ分かってはいない。しかし、これが広がっていけば、農業への大きな脅威であり、それはそのまま人類への脅威なのである。 自然に敬意を払い、自然との相互作用の中でその恵みを受け取るのが本来の農業である。ところが、次第に農業が工業化されるにつれ、自然にはひずみがだんだんと蓄積されていく。そのひずみが、あるとき急に顕在化する。その一つがミツバチの大量失踪であるように思える。 私たちの身の回りを見ても、自然がどんどんと復元力を失っているのが分かるだろう。例えば、昔はどこにでもいた、タガメ、ゲンゴロウやミズスマシといった昆虫も、すっかり姿を消してしまった。人間と自然の関係は、すっかりゆがんでしまっているのだ。ミツバチの大量失踪は、自然が人類に与えた警告の一つなのだろう。そんなことを感じさせてくれる一冊である。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」(本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。)
October 12, 2010
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オコーネル一家が、蘇った古代のミイラと対決すると言う 「ハムナプトラ」シリーズの第3弾、「ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝」。2008年のアメリカ映画だ。全2作ではエジプトでの出来事だったが、今回は、がらりと所を変えて中国が舞台になっている。しかし、やっぱり相手はミイラだ。 古代中国の皇帝シーは、不老不死を求めて、将軍を女妖術士のもとに派遣する。将軍と女妖術士は、恋に落ちるが、シーは美しい女妖術に横恋慕し、将軍を処刑してしまうが、自分も呪いをかけられてしまう。 そして、時代は、第二次大戦が終わって間もない1946年。オコーネル夫妻は、国から中国にブルーダイヤを返還するという任務を託され上海に向かう。ところが、中国では、大学で勉強しているはずの息子・アレックスが、大学を中退して皇帝シーの墓を発掘していた。ところが、シーの墓の発掘も、ブルーダイヤの返還も、裏では、シーを蘇らせようとする一団が糸をひいており、オコーネル一家は、いつものように、ミイラとの戦いに巻き込まれているというストーリー。 この皇帝シーのモデルは、明らかに秦の始皇帝だろう。彼も不老不死に大層な興味を持っていた。日本各地に伝来伝承のある徐福を、不老不死の霊薬を求めて、東方に派遣したのは有名な話である。シーの墓の様子も、始皇帝の兵馬俑の様子にそっくりだし、万里の長城も作品で重要な位置を占めていた。 ところで、前作では僅か8歳だった、オコーネル夫妻の息子アレックスだが、この作品では、立派な青年に成長して、皇帝の墓を母親と見張っていたリンという娘と恋に落ちている。しかし、彼女は、不老不死で、もう2000年以上もシーが蘇らないように、墓を見張っていたのである。いくらかわいくても、2000歳の彼女というのはちょっとと思うのが普通の人だろうと思うが、アレックス君、案外大物で、それほど気にならないようだ。 全体はコミカルでドタバタなアクションシーンも多く、色々とツッコミをしながら楽しめる内容だった。特にリックとアレックスの父子が銃自慢をしあったり、リックがアレックスに自分が「ミイラとの戦いのベテラン」と自慢しているのは笑ってしまった。一番ツッコミたかったのは、古代の兵なんていくら甦らせても、もはや槍や刀で世界制服などできはしないだろうというところだったが。 (監督)・ ロブ・コーエン(出演)・ブレンダン・フレイザー (リック・オコーネル)・マリア・ベロ(エヴリン・オコーネル)・ルーク・フォード(アレックス・オコーネル)・イザベラ・リョン(リン)・ミシェル・ヨー(ツイ・ユアン)・ジェット・リー(皇帝シー・ホワンディ) ほか ○関連過去記事・ハムナプトラ2 黄金のピラミッド ○ランキング参加中 ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」
October 11, 2010
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写真は、高梁市の落合地区というところにある「阿部神社」。ネットで調べてみたが、詳細はよく分からなかったものの、岡山県には、これ以外にも阿部神社があり、阿部清明ゆかりというということなので、案外ここも関係があるのかもしれない。たまたま見かけた神社仏閣でも、色々と推理しながら眺めるのは案外と楽しいものだ。○関連過去記事・備中高梁で見たヒガンバナ(備中高梁2)○ランキングの順位は? ○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
October 10, 2010
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大学受験や資格試験の受験などで勉強をしなくてはならないが、勉強法がよく分からないと言う方も多いのではないだろうか。 「1日1分からはじめる速読勉強術」(宇都出雅巳:PHP研究所)は、いかに勉強を効率的かつ効果的にやったらよいかを教えてくれる一冊である。 この本で述べられている勉強法の肝はただ一つ、「高速大量回転法」というものだ。これに付随することも色々と述べられているのだが、要点はこれだけと思ってもよい。コンセプトは単純明快、出来るだけ早くテキストを読んで、それを何回何回も回転させると言うものだ。 実はこれ、単純だが非常に理にかなった方法だと思う。実は私も、誰から教えられた訳でもないのだが、大学受験のころからこの方法に極めて近い方法を使ってきたし、今でも資格試験の受験の際には使っている。その結果、田舎の高校から、難関の京都大に合格できたし、これまで80以上もの資格試験にも合格してきた。 重要なのは、途中で考えこんではいけないということだ。どうせまた、次のサイクルで同じところを読むのだから。全体を人通り読んでおけば、全体像がある程度つかめているので、次に読むときはもっと分かりやすくなる。そして、何回も繰り返していくうちに、だんだんと理解も進んでいくという訳だ。人間の脳の特性として、一度読んだくらいでは、いくら熟読しても、すぐに大部分は忘却の彼方にいってしまう。しかし、何回も繰り返すという方法だと、漆を重ね塗りしていくように、少しずつ本当の知識というものが蓄積されていくのである。 この本はタイトルに「速読」とあるが、特に速読のテクニックなどは述べられていない。ここでの速読というのは、できるだけ早く読めという位の理解でよいだろう。回転させていくうちに、次第に読む時間も早くなっていく。3回や4回ではいけない。隙間時間なども活用して、できるだけ多くの回数を繰り返すのだ。著者はCFP試験の受験の際に、過去問を100回以上回転させたという。方法は極めてシンプルで誰でもできるものである。しかし、案外と実行している人は少ないのではないだろうか。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」
October 9, 2010
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「遠耳」、「遠目」、「つむじ足」、「発火能力」、「飛行能力」など、常人には無い様々の能力を持った常野(とこの)一族を描いた「常野物語」シリーズのひとつ「蒲公英草紙」(恩田陸:集英社)。 主人公は中島峰子という少女。峰子は、地元の大地主槙村家の末娘である聡子の話し相手として、槙村の屋敷の通うようになる。聡子は病弱で学校にも行けず、成人するまでは生きられないと言われていたが、優しく美しい少女で、不思議な力を持っていた。槙村家は常野一族の血が入っていて、その力が隔世遺伝のように聡子に出ていたようだ。 時代は、日清戦争に勝利し、ロシアと緊張が高まりつつある20世紀の初めごろ。まだまだ、峰子たちの住む集落にはのどかな雰囲気が漂っている。槙村家の主人夫婦の人柄も良く、生真面目な書生の伊藤、プチマッドサイエンティストの池端、洋画家の椎名、仏師の永慶など、なかなか面白い人が寄宿していたのだが、さらに、常野一族である春田一家が、槙村家が所有する天聴館に住むようになる。この物語は、そんな人々が繰り広げる日常を描いたものである。 「蒲公英草紙」とは、そんな日々を記した日記に付けた名前だ。もちろんその中心となるのは、聡子の物語。病弱ながらも凛として美しく生きた少女。過ぎ去った穏やかな日々に対するノスタルジー。それはセピア色の思い出。 タンポポの花で埋め尽くされた表紙の美しさに目を奪われてしまうが、この作品もタンポポの花のように美しく、しかしタンポポの綿毛のように儚いそんな思いを抱かせてくれるような物語だった。 聡子との悲しい別れの後、日本は、日露戦争から第二次大戦と、激動の時代に入っていく。この穏やかな風景も壊れていく運命だったのだ。幸せな時は、永遠には続くとは限らない。だから私たちは、その時々を懸命に生きておかないと、悔いを残すことになってしまうだろう。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」(本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。)
October 8, 2010
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写真は、新山口駅で売っている「みずず潮彩弁当」。みずずとは、山口県長門市出身で夭折した天才童謡詩人の金子みすずである。長門市仙崎駅近くの、みずず生家跡は、現在「金子みすず記念館」となっているので、近くに行かれることがあれば、ぜひ訪ねて欲しい。 さて弁当の方だが、包み紙には、みずずの代表作である「私と小鳥と鈴と」が印刷されている。みずずの詩を御存じない方は一度読んでみて欲しい。そのすばらしさにきっと魅了されることだろう。 中身の方は、みずずの故郷を表してのことか、海の幸ずくしといったところだ。酢飯を中心におかずは鯨竜田揚げ、小河豚唐揚げ、鰯天麩羅、有頭海老具足煮、焼鯖など、なかなかに豪華だ。○ランキングの順位は? ○関連過去記事・JR山口駅 (山口市お散歩7)○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
October 7, 2010
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元刑事で刑事専門のフリーライターである、柚木草平が、名探偵となって、事件を解決していくという「柚木草平」シリーズの一つ「初恋よ、さよならのキスをしよう」(樋口勇介:東京創元社)。 柚木は、娘を連れて訪れたスキー場で、20年ぶりに高校時代の同級生だった卯月実可子に出会う。実可子は、高校のマドンナ的存在であり、柚木の初恋の相手でもあった。ところが、その1ヶ月後、実可子の姪である早川佳衣から電話がかかってくる。実可子が何者かに殺害されたというのだ。彼女は、自分に何かあったら柚木に相談するように言い残していた。いったいなぜ。柚木は事件の真相を探り始めるが、それは、高校の同級生たちの傷を抉ることでもあった。 鴨長明の方丈記の冒頭に、「行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず」という一節がある。まさに人生は無常」。20年の歳月は、転校生でストレンジャーだった柚木の眼からは仲よしグループだった同級生たちの人生に、いろいろなことがあるのには十分だったということだ。更に、クラスの女王様だった、実可子自身も相当迷惑な人物だったことがだんだんと明らかになってくる。そして明らかになる事件の真相。ペーソスを感じさせるストーリーながら、柚木のシニカルなくせに、どこかコミカルで、殆ど減らず口のような女性たちとの会話が面白い。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」(本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。)
October 6, 2010
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「彼岸」と「此岸」の境目はどこにあるのだろうか。そもそも、そんな境などあるのか。珍しくそんな哲学的な事を考えながら読んでいたのが、「幽式」(一肇:小学館)である。といっても、この本は、哲学書なんかではなく、オカルトミステリーを扱ったラノベなのだが。○「幽式」(一肇:小学館) この作品を一言で言うと、「彼岸」と「此岸」の境に横たわる「異界ヶ淵」を除いた高校生男女2人の物語だ。主人公は渡崎トキオという高1の少年。オカルトマニアだが、なぜか「鉄塔」に恐怖心を持っている。ある日彼のクラスに神野江ユイという美少女が転校してくる。ところがこの美少女、いわゆるデンパ系の人であり、誰もがひくような奇妙な行動を繰り返すのである。おまけに、所構わずに、すぐゲロを吐く。ヒロインがこれだけゲロを吐いていると言う作品は珍しい。いくらデンパの人でも、美少女だったら、多少の行動は許せるが、さすがにゲロはだめだろう(笑)。ユイは霊だけでなく悪意も見えるのだが、「怖い」という感覚が欠如している。しかし、それでも、霊や悪意と向かい合うと、神経は摩耗しており、それに耐えられなくなったときにゲロという形で現れるようだ。一方トキオの前に、暴力癖のため母親と離婚した父親とユイよりさらにデンパな愛人が現れ、物語は思いもよらないような方向に進んでいく。 かってデカルトは言った。「我思う。故に我あり」。思索する自分自身の存在は疑いようはないが、周りを取り巻く世界は本当に実在するのか。それとも、マトリックスの世界のように、全て脳内の虚構なのだろうか。そこまで極端でなくても、自分の眼に映っているものが、全て真実とは限らない。 「見ようと思うから、見えるのだわ」 これは、ユイのセリフであるが、人は見えるものを自分の脳で選んでいるのではないだろうか。もっともこれは、テツオがユイに「パンツ見えるぞ」と注意した時の反応なのだが(笑)。 テツオは、ユイのデンパ的な行動に巻き込まれていると思っていた。しかし巻き込んでいたのは実はテツオの方だった。この作品は、ユイの助けにより、心に鍵を掛けてしまっていたトキオがそのカギを開け、過去に囚われていたユイもまたテツオにより、その過去から決別できるといった一種の相互救済の物語だろう。本作では、テツオとユイの物語はちょっと奇妙な関係だったが、これから二人のラブコメが始まるんだぞという予感を感じさせるエンディングはなかなかよかった。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」(本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。)
October 5, 2010
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写真は、JR山口線の山口駅。JR山口線は、新山口駅と益田駅を結ぶローカル線だ。山口線で、県境を越えて島根県に入れば津和野になる。 山口市は室町時代から、大内塗という塗りものが盛んである。この大内塗を使った愛らしい人形が大内人形だ。山口駅にそれを模したものが飾ってあった。○ランキングの順位は? ○関連過去記事・山口市のマンホールの蓋 (山口市お散歩6)○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)○関連ブログ記事・やまぐち市観光キャラバン隊ブログ・やまぐち地ブログ
October 4, 2010
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ガルバトリックス王の圧政に苦しむ帝国アラゲイジアで、ドラゴンライダーとして運命に選ばれた少年エラゴンの戦いを描いたファンタジー映画「エラゴン 遺志を継ぐ者」。クリストファー・パオリーニの小説を原作として、2006年に公開されている。 独裁者により人々が苦しめられている世界に、突如抵抗のシンボルとしてのエラゴンが現れるという一種の救世主者といっても良い内容だと思うが、色々とツッコミどころも多かった。・エラゴンって、主人公の名前だったとは思わなかった。○○ゴンという名前から、てっきりドラゴンの方の名前かと思っていた。・追い詰められて、アーリアがドラゴンの卵を転送したところに、ドラゴンライダーの素質を持つエラゴンがたまたまいたというのは安易だと思う。それだったら、持って逃げないで、最初から転送していれば、リスクは少ないだろう。・日本人の感覚からみると、ドラゴンの顔がヘンだ。日本人ならもっとかっこいいドラゴンにするだろう。・そのくせドラゴンの声が可愛すぎる。・敵の雑魚キャラの格好が、「北斗の拳」に出てくる雑魚の悪党の格好に似ていた。・敵の大将であるダーザがゾンビのような顔をしている。そういえば、外国映画では、敵の魔術師でイケメンはあまりみたような記憶がない。 とはいいながら、決してこの手のファンタジーものは嫌いではないので、一人突っ込みながら、面白く観ていたのだが(笑)。(原作)・クリストファー・パオリーニ:「エラゴン 遺志を継ぐ者」(監督)・シュテフェン・ファンマイヤー(出演)・エドワード・スペリーアス(エラゴン)・ジェレミー・アイアンズ(ブロム)・シエンナ・ギロリー(アーリア) 他○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」
October 3, 2010
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「禍家」、「凶宅」に続く、三津田信三の「家」シリーズの最終章「災園」(光文社)。 主人公の奈津江は6歳の少女である。近くの森で変質者に襲われたが、お稲荷さまの祠から出て来た何かに助けられた。その時以来、お狐さまのお告げを聞くことができるようになるのだが、蕎麦屋を経営していた両親が亡くなり、「祭園」という施設に引き取られることになる。その祭園の経営者である祭隆利こそ、奈津江の実の父で、奈津江を探していた深咲という美少女は彼女の姉であった。 実は祭家は狐使いの家系であり、狐使いの女が初産で産んだ子供の肩口には狐火のような痣が現れ、優れた狐使いになると言われていたのだ。右肩なら陽、左肩なら陰。陰の狐火を印す者は、闇に魅入られる恐れがあるという。しかし、奈津江は2番目の子でありながら左肩に狐火の痣があった。そして死産だったもう一人の子の左肩にも狐火の印が。 祭園で暮らすようになった奈津江だが、彼女の部屋に狐面をかぶった不気味な灰色の女が現れる。更に新入りが受ける恒例の肝試しで訪れた廻り屋という建物でも、灰色の女に襲われたのだ。そして、祭園の子供たちが一人一人いなくなっていく。 ここで言う狐とは「管狐」のことだろう。「地獄先生ぬ~べ~」の登場人物でイタコ見習のいずなが使っている妖怪ということで知っている方も多いだろう。そういえば、いずなが活躍するスピンオフ作品「現代都市妖鬼考 霊媒師いずな」で、なかなかセクシーな女子高生霊媒師姿を見せているので、こちらも美少女という設定の深咲の姿が、つい重なってしまったのは余談(笑)。しかし、最初の頃は、奈津江がお狐さまの声を聞いたりして、それらしい力の片鱗は見せていたものの、祭園に行ってからは、狐使いの才能を持った者らしい場面が無かったのは少し残念であった。 最初は、不思議な力を持った少女が恐怖体験を通して成長していく話かというような想像をしていたが、読んでみると、だいぶ予想が外れた。 [イヤミス」という言葉がある。イヤな気持ちになるミステリーという意味で、最近では大人気の「告白」などがその代表であるが、この作品も十分「イヤミス」の資格があるだろう。なにしろ、最初はホラーサスペンスと思っていたものが、最後の方で一転して、どろどろとした背徳と狂気の物語に様変わりしてしまう。ホラー的な部分は、大部分証明されてしまうのだが、それでも、最後は、寒々とした恐怖の余韻を残した終わり方だった。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」(本記事は「本の宇宙」と同時掲載です。)
October 2, 2010
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上の写真は、美祢市の(一応)メインストリートの歩道上に設置してある化石のレリーフのひとつ。いろいろな化石のレリーフがあるので、化石ファンなら、何があるか探して見るのも面白いだろう。 それでは、なぜ化石かと言うと、実は、美祢市は石灰石や石炭が豊富で、たくさんの化石が出てくるからなのである。しかし、これがなかなか観光には結びつかないようで、街はかなりさびれた感じだ。秋吉台・秋芳洞のある旧秋芳町、サファリのある旧美東町を合併したこともあり、ぜひとも総合的な観光戦略を練って、街の発展に繋げて欲しいものである。○ランキングの順位は? ○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
October 1, 2010
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