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【送料無料】殺生伝 [ 神永学 ]価格:1,260円(税込、送料込) 九尾の狐と言えば我が国の伝説の中でも、最凶の妖と言っても良いだろう。玉藻前という絶世の美女の姿で宮廷に入り込み、害を成していたが、やがて正体を暴かれ、安倍泰親率いる軍勢によって討伐された。しかし、そのためには数万の兵を必要としたという。九尾の狐は、討伐された際に「殺生石」という毒石に変化して、近づく者の命を奪っていたが、玄翁和尚という高僧によって、打ち砕かれ、その欠片は各地へ散って行ったと伝えられている。本書は、この殺生石をモチーフにした伝奇小説だ。作者は、「心霊探偵八雲」シリーズなどでおなじみの神永学である。 ヒロインは、咲弥という亡国の姫。生まれた時から体に殺生石の欠片を宿し、それを狙う武田の軍勢に追われている。咲弥の体に宿る殺生石の欠片は、生き物の命を吸うことにより力を蓄えていき、やがては九尾の狐が復活してしまうという。優しい咲弥は、このことに心を痛めているが、だからといって死ぬこともできない。たとえ咲弥が致命傷を負っても、殺生石が、周りの生き物の命を吸って、傷を治してしまうからだ。ただ一つの希望は、那須岳にあるという、玄翁和尚が殺生石を砕いた「封魔の槌」。咲弥を守るのは、元々の護衛役である紫苑、咲弥を助けた少年の一吾、玄翁和尚の志を継ぐという玄通、そして凄腕の忍者だが、何か思惑のありそうな無明と矢吉。敵は、武田晴信(信玄)を操る魔人山本勘助とその手先の妖魔、これに武田の忍びである百足衆が加わり、咲弥たちの行く手を阻む。 殺生石を宿すという非情な運命を背負った咲弥。育ててくれた真蔵を、妖魔との戦いで失った一吾。二人は、果たして自分たちの運命を切り開いていけるのか。無明たちの思惑は、いったい何なのか。また、この作品では、殺生石は9つに割れたことになっており、ひとつは咲弥の体に宿っているが、後の8つは、果たして物語に大きく関わってくるのか。この巻では、壮大な物語の幕開けといった観が強く、これからの展開に期待を持たせてくれる。 ※本記事は、「本の宇宙」に掲載したものの写しです。
July 22, 2013
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【送料無料】父さんの会社が倒産した [ さる山さる子 ]価格:1,260円(税込、送料込) 会社が急に倒産して、一家の大黒柱が無職になった。住宅ローンはまだまだ。子供もまだ高校生で進学を控えている。そんな時あなたならどうするか。もちろん、そんな事態に陥らないに越したことはないが、このご時世、一寸先は闇、人生とは不条理なもの。いったい何が起きるか分からないのだ。 本書は、運悪くそんな事態に陥ってしまった、さる山家の物語である。会社から帰って来た夫に、会社が倒産したことを知らされた著者は「とうさんの会社がとうさん?」(駄洒落言っている場合じゃ・・・)と驚く。お先真っ暗になった、さる山家だが、そこから再生に向けての奮闘が始まる。 こんなとき、まず何をやったらよいか頭に浮かぶ人は少ないと思う。まずは、年金や、健康保険の切り替え、失業保険の給付手続きだ。生活費をどうしていくのか、ローンがある場合にはそれをどうするのかといったことも重要である。ローンが払えないからと言って、安易に自己破産などをしてしまうと、連帯保証人になっている人の生活まで壊しかねない。また税金にも注意が必要だ。住民税は前年度の収入に対してかかってくるので、今年いくら収入が無くても、「税金払え!」ということになり、これも結構な出費だ。滞納した場合にはかなり高い利子が付いてしまう。 本書からは、こんな場合に大切なことがいくつか読みとれる。まず、自分だけで悩んだりせず、にっちもさっちもいかなくなる前に、役所、銀行、専門家などに相談してアドバイスを受けるということ。あまり知られてないが、こんな時に役立ちそうな制度が色々と存在する。次に、支出を見直し、無駄な出費を抑えるということ。つぶさに見れば、案外と切れる出費というものはあるものだ。そして、専門性を持つということ。さる山家の夫は、元々は義技術者で、その技術を活かして開業し、妻は整体と占いという特技を活かした、整体マッサージという摩訶不思議なことを始めることができた。芸は身を助けるということだろう。 これらのことは、知っていれば、倒産による失業だけでなく、停年退職時などにも役立ちそうだ。普通なら、暗くなってしまうような話題にも関わらず、駄洒落タイトルと、脱力系の漫画やイラストは、ユーモア精神に溢れて、非常に好感が持てる。もしもの時が来ても困らないように、一読しておくのも損はないだろう。 なお、本書は、この本にも登場する広重さまより献本いただきました。ありがとうございます。 ※本記事は「本の宇宙」掲載分の写しです。
July 18, 2013
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【送料無料】リスボン坂と花の路地を抜けて [ 青目海 ]価格:1,575円(税込、送料込) 「リスボン 坂と花の路地を抜けて (KanKanTrip)」(青目海:書肆侃侃房)を読みて作る歌。長歌形式での書評にチャレンジしてみました。長歌は五七を続けていき、最後に七で結ぶものです。反歌もつけています。 目の前の 頁開けば 広がるは 異国の街並 我が心 海をも越えて 飛んでいく 遥かなる地に ポルトガル 美しきかな リスボンは 古き都 アンタンの 通り行きかう たくさんの 異国の人たち 珍しき かの地の言葉 紙面より 聞こえてくるや リスボンは 花の街にて 目を奪う 紫の花 そはこれが あのジャカランダ 美しさ 街を覆いき 窓辺には 白き蔓バラ 咲き誇る 今が盛りと 市場にも 色とりどりに 花売られ 食されるなり リスボンは 坂の街にて 行き通う 路面電車 息切らせ 上り来たりし 坂道で ふと立ち止まり 見下ろせば かのテージョ川 煌めくは 青き水面 映りけり 目に鮮やかに 我が体 邦土にあれど 心飛ぶ まだ見ぬ地へと あこがれは 山より高く 積もりせし 読み進むほど 思い入れ 海より深く 沈み行く 本の世界の 遥かな淵へ 反歌 身はひとつ 東の島に あろうとも 心羽ばたく リスボンの空 ※ 本記事は、2013年07月10日付で「本の宇宙」に掲載したものの写しです。
July 11, 2013
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