岩牡蠣

岩牡蠣（いわがき）は、「夏ガキ」とも言われる。冬季の牡蠣に比べて大きい。

俺は、夏季牡蠣（かきかき）と呼んでいる。

牡蠣臭くなく、牡蠣嫌いでも食べられる場合がある一方、これは牡蠣ではないと牡蠣好きに嫌われる場合もある。

これにはますますシャブリは合わない。レモンや米酢をつかえば更に反発する。

岩牡蠣が泣くと言う人もいれば、シャブリが泣くと言う人もいる。

下記、夏季牡蠣で俺が泣いた話、書きました。

行きつけの居酒屋の水槽に沈んでいた岩牡蠣、

今日行ってみたら、いなくなっていた。

なんだか、さびしい気持ち。

同伴の香水臭いホステスさんとしっとり肩を寄せ、ビールを注がれながら、ボーッと店の奥を見ると、

小上がり席のグループ客の中に見慣れた顔があった。

うわっ、

走り出てきた女房は一発グーでストレートを俺の左頬にめり込ませた。

俺は床に崩れ落ち、女房は大きな足音で出て行った。

ホステスは大きな溜息をついた。

鼻血を出していた俺にハンカチを差し出そうとしたがやめ、店のおしぼりを広げて渡した。

俺は、おしぼりで鼻を押さえながら、痛む口中を舌で確かめながら、ふらふらと立ち上がった。

テーブルに片手をつきながら、水槽を見ながら俺はつぶやいた。

「岩牡蠣死すとも自由は死せず」