神業デキャンタージュ

「ですからね、デキャンタージュっていうのは・・・」

男はデキャンタ（デキャントゥール）の口にワインボトルの口を近づけ、微妙な角度でワインを注ぎ込む。

「まず、簡単な部分をこのように、取っていき・・・」

次にキャンドルの光をワインを通してのぞきこむ。

「ここは、あせらず慎重に・・・、結局は経験ですが・・・」

最後は、空に近くなったボトルに回転を加え、オリを内側にくっつける。

「後は、一気に・・・」

男がボトルを逆さにすると、なんと最後の一滴までデキャンタの中にすべり落ちた。

パーティー会場は歓喜の渦となった。

近くにいた誰かが男に聞いた。

「いやあ、素晴らしい！　プロのソムリエさんですか？」

男は首を振った。

「いいえ、税務署に勤めております」