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別ヴァージョンの人間史 by はやし浩司
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2005.10.09
●過酷な職場
カテゴリ:
カテゴリ未分類
講演会で行った小学校で、みやげにもらった花。みごとな花ですね!!!
ありがとうございました。
●過酷な職場
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学校の先生たちが、悲鳴をあげている。
あなたには、その悲鳴が聞こえるだろうか?
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教育は、重労働である。とくに、小学校教育は、そうである。
たとえば水泳指導したあと、生徒たちといっしょに着替え、つぎの時間には、クラスで算数を教えなければならない。
そのためかなりの体力と気力を、必要とする。
で、現実問題として、この浜松市でも、55歳をすぎて教師をしている、女性教師は、ほとんどいない。女性教師のばあい、たいていの教師は、50歳前後に退職していく。「水泳指導ができなくなったら、教師はやめる」というのが、一つの目安になっているという。
学校の教師のばあい、50歳少し前に、管理職に向うかどうかが、決まる。管理職になれば、学級担任からはずされるが、それは校長と教頭、教務主任のほか、あと1名程度。そこでもっと、女性教師を管理職に回せばよいということになるが、これもむずかしい。
浜松北部の、旧HK市のばあい、小学校は18校あるが、去年まで、女性校長は3人いた。しかし2人、退職したので、現在(05年度)は、1人のみ。
そうでない教師は、学級担任をつづける。が、50歳過ぎてからの、学級担任は、きつい。男性教師にとっても、事情は、同じ。
ますます拡大する教師の仕事。今では、家庭問題にまで教師が駆り出される時代である。「子どもが警察につかまった。いっしょに行ってくれ」「子どもが家出をした。いっしょにさがしてくれ」と。
本来なら、教師は教育に専念すべきである。またそれをもって「教師」という。しかし雑務、雑務の連続。これでは、本来の教育がおろそかになって当然。「これでいいのか」と疑問をもつのは、私だけではないと思う。
●家庭問題が、そのまま学校に!
++++++++++++++++++++
以前、荒れた学校が、問題になった。
しかし今は、問題になっていない?
実は問題になっていないのではなく、
荒れた学校が、当たり前になってしまった。
++++++++++++++++++++
今どき、荒れた学校を問題にする人はいない。教師も、父母も、そして評論家も。それが当たり前の現象になってしまったからである。
しかし「荒れ」は「荒れ」でも、以前とは、少し質が変わってきた。H市で小学校の校長をしているN氏は、こう話してくれた。
「以前は、荒れというと、暴力事件を言いました。しかし今は、少し質が変わってきたように感じます。つまり今は、家庭問題が、そのまま学校へ持ちこまれるようになりました。
家庭騒動、親の離婚、貧困などなど。親の心の問題が、そのまま持ちこまれることもあります。引きこもり傾向を示す生徒がいたので、家庭訪問をしたら、親が出てこない。つまり親自身も、引きこもってしまっているのですね。
そういう子どもが、学校の内部で、いろいろな問題を引き起こします。最近の荒れは、そうして起こるものが多いです」と。
ついでに言うと、その校長も、あの「金P先生」を、鋭く、批判していた。「ああいうありもしない教師像を、マスコミが勝手につくり出すから、かえって、現場は混乱してしまうのです。
たとえばあの番組の中で、非行グループが、自転車のチェーンを振り回したとしますね。するとつぎの日には、本当にそのチェーンをもって、学校へ来る生徒が出てきたりします」と。
金P先生については、私も、たびたび批判してきた。ああいう教師を見て、「教師とは、こうあるべきだ」と考えるとしたら、それはまちがい。よくテレビドラマの中で、警官と悪党が、ピストルでバンバンと撃ちあうシーンがある。
それと同じくらい、金P先生の世界は、ありえない。たとえば金P先生は、非行少年の家の中にあがりこみ、その少年の父親といっしょに、酒を飲んで、人生論を語りあったりする。
しかしそれが教師のあるべき姿なのか。そこまでしてよいのか。あるいは、それこそまさに、教師の(おごり)ではないのか。いや、その前に、体力そのものが、つづかない。20~30人もの子どもを相手にすることだけでも、重労働である。その上での、教育である。
その金P先生について書いた原稿が、つぎのものである(中日新聞掲載済み)。
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教師が10%のニヒリズムをもつとき
●10%のニヒリズム
教師の世界には10%のニヒリズムという言葉がある。つまりどんなに教育に没頭しても、最後の10%は、自分のためにとっておくという意味である。でないと、身も心もズタズタにされてしまう。
たとえばテレビドラマに『三年B組、金P先生』というのがある。武田T也氏が演ずる金P先生は、すばらしい先生だが、現実にはああいう先生はありえない。それはちょうど刑事ドラマの中で、刑事と暴力団がピストルでバンバンと撃ちあうようなもの。ドラマとしてはおもしろいが、現実にはありえない。
●その底流ではドロドロの欲望
教育といいながら、その底ではまさに、人間と人間が激しくぶつかりあっている。こんなことがあった。私はそのとき、何か別の作業をしていて、その子ども(年中女児)が、私にあいさつをしたのに気づかなかった。30歳くらいのとき、過労で、左耳の聴力を完全になくしている。
が、その夜、その子どもの父親から、猛烈な抗議の電話がかかってきた。「お前は、うちの娘の心にキズをつけた。何とかしろ!」と。
私がその子どものあいさつを無視したというのだ。そこでどうすればよいのかと聞くと、「明日、娘をお前の前に連れていくから、娘の前で頭をさげてあやまれ」と。こんなこともあった。
●「お前を詐欺で訴えてやる!」
たまたま5月の連休が重なって、その子ども(年中女児)の授業が、一時間ぬけたことがある。それについて「補講せよ」と。私が「できません」と言うと、「では、お前を詐欺で訴えてやる。ワシは、こう見えても、顔が広い。お前の仕事なんかつぶすのは、朝飯前だ!」と。
浜松市内で歯科医をしている父親からの電話だった。信じられないような話だが、さらにこんなこともあった。
私はある時期、童話の本を読んでそれをカセットテープに録音し、幼稚園児たちに渡していたことがある。結構、骨の折れる作業だった。カラオケセットをうまく使って、擬音や効果音を自分の声の中に混ぜた。音楽も入れた。もちろん無料である。そのときのこと。たまたまその子ども(年長男児)が病気で休んでいたので、私はそのテープを封筒に入れ郵送した。
で、その数日後、その子どもの父親から電話がかかってきた。私はてっきり礼の電話だろうと思って受話器を取ると、その父親はいきなりこう言った。「あなたに渡したテープには、ケースがついていたはずだ。それもちゃんと返してほしい」と。
ケースをはずしたのは、少しでも郵送料を安くするためだったが、中にはそういう親もいる。だからこの一〇%のニヒリズムは、捨てることができない。
これらはいわば自分を守るための、自分に向かうニヒリズムだが、このニヒリズムには、もう一つの意味がある。他人に向かうニヒリズム、だ。
●痛々しい子ども
一人の男の子(年中児)が、両親に連れられて、ある日私のところにやってきた。会うと、か弱い声で、「ぼくの名前は○○です。どうぞよろしくお願いします」と。親はそれで喜んでいるようだったが、私には痛々しく見えた。4歳の子どもが、そんなあいさつをするものではない。また親は子どもに、そんなあいさつをさせてはならない。
しばらく子どもの様子を観察してみると、明らかに親の過干渉と過関心が、子どもの精神を萎縮させているのがわかった。オドオドした感じで、子どもらしいハキがない。動作も不自然で、ぎこちない。それに緩慢だった。
こういうケースでは、私が指導できることはほとんど、ない。むしろ何も指導しないことのほうが、その子どものためかもしれない。が、父親はこう言った。「この子は、やればできるはずです。ビシビシしぼってほしい」と。母親は母親で、「ひらがなはほとんど読めます。数も100まで自由に書けます」と。
このタイプの親は、幼児教育が何であるか、それすらわかっていない。小学校でする勉強を、先取りして教えるのが幼児教育だと思い込んでいる。「私のところでは、とてもご期待にそえるような指導はできそうにありません」とていねいに断わると、両親は子どもの手を引っ張って、そのまま部屋から出ていった。
●黙って見送るしかなかった……
こういうケースでも、私は無力でしかない。呼びとめて、説教したい衝動にかられたが、それは私のすべきことではない。いや、こういう仕事を30年もしていると、予言者のように子どもの将来が、よくわかるときがある。そのときもそうだった。やがてその親子は断絶。子どもは情緒不安から神経症を発症し、さらには何らかの精神障害をかかえるようになる……。
このタイプの親は独善と過信の中で、「子どものことは、私が一番よく知っている」と思い込んでいる。その上、過干渉と過関心。親は「子どもを愛している」とは言うが、その実、愛というものが何であるかさえもわかっていない。自分の欲望を満たすため、つまり自分が望む自分の未来像をつくるため、子どもを利用しているだけ。……つまりそこまでわかっていても、私は黙って見送るしかない。
それもまさしくニヒリズムということになる。
++++++++++++++++++++++
熱血教師が悪いというのではない。しかし一つまちがえば、熱血教師は、子どもの問題にせよ、家庭の問題にせよ、さらにその問題をこじらせてしまう。その教師の独断と偏見、思いこみと早とちりが、かえって騒動を大きくしてしまうこともある。
反対の立場で考えてみればわかる。
ある日、突然、子どもの問題にかこつけて、あなたの子どもが通う学校の教師が、ズカズカとあなたの家にあがりこんできたら、あなたは、どのような反応を示すだろうか。いくらあなたの家庭に問題があったとしても、あなたはこう言うだろう。「失敬だ」と。
話が脱線したが、こうした「荒れ」もあって、学校の教師は、ますます疲れる。ある女性教師(小学校)は、はからずも、私にこう話してくれた。
「授業中だけが、心と体を休める場所です」と。
こうした現実を、どれだけの親たちが、知っているだろうか?
(付記)
参観日に参観授業を見てきた親の中には、よく、こう言う親がいる。「すばらしい授業でした。先生も、あそこまで教材を用意して、授業をしてくれるとは、思ってもみませんでした」と。
しかしそれは、参観日だから、である。「参観日のあと、数日は、何もやる気が起きません」と、その(疲れ)を訴える教師が多いことも、忘れてはいけない。
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Last updated 2005.10.09 10:05:27
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