『とんとこひ・セクスアリテ』

December 9, 2008
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書 名 朝鮮童謡選

出版社 発行所=岩波文庫
著 者 金素雲
発行年月 1933年1月15日


“わが郷土の おさなごころの上に---序にかえて”(一九三二年十一月)よりの抜粋にて、この本のご紹介とお薦めに代えさせて頂きます。



 さて、君たちの生活観や現実に対する心構えはどうであろう?
驟雨に晴衣を濡らすことがあっても、足の運びは早めない---、そうした「沈着」と「余裕」を君たちの父祖は人格の本道として愛した。



古い昔から、絵画や工芸美術、衣の紐や舞の手に現れた柔和な線の持ち味が、何よりもよくこの民族性を反映している。閑雅なこの伝統を継承する君たちに、殺伐な武勇の精神が分る筈はない。




「桃太郎」 の凱旋が君たちにとってはこの上なく退屈であるように、君たちには君たちだけが知る心情の世界があり、その世界だけで君たちは思うさま翼を拡げて君たちの精神の高さを翔けることが出来るのだ。



日本の童謡では 「蝸牛(かたつむり)」 を見て「 角出せ、槍出せ 」と言い「 出さなきゃ鋏でチョン切るぞ 」と脅すが、君たちは武骨な注文の代わりに「 長鼓(チャング)を鳴らし、舞をまえ 」と所望する。



この飽くまで温雅な性情は、しかし時として君たちの柔和を「柔弱」と置換えてはいないか?自然児の溌剌たる魂を持ちながら、生活に向けられる君たちの意欲はとかく控え目で遠慮がちだ。---



広くもない三間ほどの、それも草葺の陋屋に、両親を迎えて末永く暮らしたい --- ---。」これは朝鮮全道で膾炙された代表的な君たちの歌だ。日本童謡の「 お月さんいくつ、十三七つ 」に匹敵する歌であるが、君たちは兎の餅搗は「 まだ年ゃ若い 」と擬人的に呼びかける代りに、



漢詩人の名や、金、玉、桂などの財宝を数えている。漢詩人と言えば、儒教文化の移植が君たちに及ぼした影響も夥しいものだ。孝道を基本とした生活の理想や「科挙」「登官」に対する憧憬が到るところで見受けられるのも、李白を隣村の翁ほどに親しく思う君たちなればこそだ。---




しかしながら、・・・ここに訳された童謡も、僅少な例外を除いて大方は忘れ去られたであろう。それはよい。私とて君たちに過去帳の復読をさせようとは願わない。
ただ・・・「きのう」を忘れて成立つ「あす」はない。



古い礎石の上に新たな「今日」を打建てることは、君たちに許された荘厳な権利でもある。
文化の精神の上で迷子となるな。・・・君たちに伝える切実な私の希求はこれだ。



 世紀は開ける。君たちの背後には暗い歴史が続いた。今こそ君たちの手で、君たちの鶴嘴で、新たな光明を打拓くのだ。・・・

 朝の微風が君たちを呼ぶ。蒼空は君たちの上にある。







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Last updated  December 9, 2008 12:58:16 PM
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