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彼が会社を辞める日が、あと数日にせまってきた。最終日の二日前が私の休日で、彼も急遽その日を休みに変えたと言う。初めて、朝から二人で出かける事になった。なるべく朝早くね、と約束する彼。車で空港の近くまで遠出。当日はドライブ日和のいい天気。ここ最近の嫌な事が忘れられそうなくらい。フリーマーケットで散策して、その後お昼を食べにショッピングモールへ向かう。階段を上ろうとした私達の前に、小さな女の子とお父さんが歩いていて、女の子の靴が脱げたので、彼が拾って渡してあげた。その瞬間、その親子の微笑ましい姿が、強烈に彼のイメージとダブって見えた。彼が、自分の子供と手を繋いで歩いてる姿が一瞬そこに見えたような気がした。厳密に言うと、彼と奥さんと子供とで、近い将来きっとまたここに来る予感。彼と子供を見守る妻の目線が、私の物であり、これは私の未来でもあるの…?一瞬頭に浮かんだ親子三人の眩しい映像は、単純に未来を予想しただけなのか、私の希望が見せた幻なのかは解らない。そして空港近くの海岸へ降りて、そこから飛行機の離発着を眺める。彼は、小石を海へ投げて遊び始めた。白い小石が飛んだり跳ねたりする様子に、一喜一憂する今の彼は、会社での悩みを抱えてるサラリーマンでもなく、誰かの旦那さんでもない、ただの無邪気な少年の様に、私の目には映っていた。私がずっと写真を撮っていると、彼はおもむろにカメラを取り上げ、二人が入るように構えて写真を撮った。初めてのツーショット写真。『こういうの、普通は彼の方が「困る」なんて、嫌がったりするものじゃないのかな?いいのかしら?』もちろんこの写真は、彼には渡さないし、人目にも触れさせないけど。夕方、海の側の高層ビルに登って、展望台から飛行場を眺めた。眼下にはさっき遊んだ遊園地も見える。双眼鏡を覗いたり、窓から飛行機を眺めたりしていると、思わず二人の顔が近づく。気付くと、慌てるように離れる。彼は私に指一本触れようとはしない。念願かなって、この日初めて二人でカラオケ。彼が唄ったのは、『君のために出来ること』。すっかり日も暮れて、帰る事にしたけれど、「もう少し時間があるなら、翠に見せてあげたいものがある」とまた別の場所に車で向かった。着いた先は、山の中腹にある街一帯が見渡せる夜景スポットだった。駐車は出来ないので、ゆっくりと走ってくれる。幾千の光が宝石箱の様で本当に綺麗。「翠にはここの景色をぜひ見せてあげたくて、何故かなぁ…、どうしても、この子には何かをしてあげたいって思ったんだ。自分にはこんな事ぐらいしかしてやれないけど。」と言った。彼はとても優しい、優し過ぎて、残酷だ。諦めなければいけないと判っていながら、この日一日で、どれだけ彼のことを好きになってしまったか。。。
Apr 22, 2005
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クリスマスイヴは、彼はお休み。その年は、23日が日曜日で24日が振替休日になる為、世間はイベントで盛り上がっていた。23日の晩、彼とメッセンジャーでこんな会話をしていた。「明日お休みなんですね、いいなー。あっちこっちでイベントとかあるみたいだし。私なんて19時まで仕事だし、どこにも行けないなぁ。」「休みと言っても、明日は食料品の買い溜めに行かないといけないだけで、別にどこにも行けないけどね。」(そうは言うけど、彼は明日どう過ごすんだろう?やっぱりそれなりに、クリスマスらしい事をするんだろうか?)退職の事を聞いたあの日以来、港に行ったり、食事に行ったり、ドライブがてらに逢いに来たと突然電話してきたり、こうやって深夜までメッセンジャーで話し合ったり、私達は毎晩のように、何かしら二人の時間を過ごしてきた、それも彼の方から積極的に。それだからこそ、明日彼がどう過ごすのかがとても気になる。逢いに来て欲しい、一緒に居たい。私が望む事じゃないのは解っているけど、それでもやっぱり、"本来一緒に居るべき相手"と当たり前の様に、クリスマスを過ごされるのは、なんだか許せないような気がしてしまう…当日、午前中に彼からメールが入った。「頑張ってますか?今、○○まで買出しに来ていますよ。」「天気よくて、あったかいし良かったですね。街中は楽しそうでいいなー(;_;)」今日はもう本当にこのまま会えないんだ、と帰り支度を始めた19時直後、「もう電車乗った?」とメールが来た。「まだです。エレベーターの所です。」彼は迎えに来てくれた。恐らくギリギリまで迷ったんだろう、こんな日に、抜け出すのはかなり大変だったに違いない。「あんまり時間無いから…送ってあげるくらいしか出来ないけど…」私の為にそこまでしてくれた事、ずっと気にしてくれていた事は正直に嬉しい。でも、やはり彼が自由の身ではない事実を改めて思い知らされてしまう、そんな一言だった。家が近づくにつれ、次第にまた例の問題の話になっていった。私はいつもよりも熱く話し込んだ、意識して話を長引かせた。家より数キロ離れた場所で彼は車を停め、結局更に2時間程話続けた。こんなに長く一緒に居られるなら、どこかに出掛けられたのにとも思ったけど、それでも十分満足だった。だって、行き帰りも含めると、18時半から23時頃までの時間を、彼は私の為に使ってくれた事になる。一番無理だと諦めていた日の、一番貴重な時間。他の人と過ごして欲しくなかった時間。帰宅した彼からメール。「送ってあげる事しか出来なくて、それからまた例の話になってごめんね」私は、彼に私の事でまで、気に病んだり苦しんだりして欲しくなかったので、「私の事は気にしないで下さい。いつも心の友の一人で居ますから!」と返事をした。「翠は心の綺麗な人ですね、そんないい子の翠にはサンタさんから素敵なプレゼントが届きますよ…」と、彼からとても暖かいグリーティングカードが届いた。私はお礼に、彼が以前からすごく知りたがっていたけど、もったいぶってなかなか教えなかった自分のホームページのURLを教えた。お互いの気持ちを確かめる事もしない、好きだとかそういった話は一切しない二人。そんなもどかしさを、日記や詩から彼は読み取ってしまうだろうか?
Dec 28, 2004
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翌日から、それこそ一日中彼の事を考える日々が始まった。それは、恋焦がれて、彼の事が頭から離れない…なんていうものではなく、常に彼の事を気に掛けている状態だった。男とか女とか、結婚しているとか、そんな事は全く関係なく、一人の人間として、彼にとって絶対的な味方であり、安心出来る存在で居たかった。周囲の風当たりや、冷たい視線は想像以上のものだった。私は、出来るだけ彼がそれを感じる事の無いように気を使った。といっても、私が皆をどうこう出来る力がある訳ではなく、以前と変わらない態度で、自然と彼と接したり、時々さりげなく、彼の気が紛れるようなメールを送ったりする事ぐらいしか出来なかった。彼から突然「今日の翠の予定は…?」と誘われて、仕事の後食事に行く。二人で居てこんなに苦しかったのは初めてだった、彼が別人の様に感じてしまう。それぐらい彼は参っていた。「胃が痛い」と言っていた。その後、場所を変え、静かな静かな喫茶店に入った。話題を変えるために、占いに熱中する。携帯サイト上で、質問に答えて行くと、最後にその人の性格を反映したキャラクターが誕生するというものだった。私の結果は『天使くま』・・・人の悩みや相談を親身になって聞いてあげ、 自分も同じ様に心を痛め、天に昇ります。彼の結果は『家出ねこ』・・・家出をしていましたが、実家の八百屋を継ぐ為、 田舎に帰ることになります。しゃれにならない・・・。帰り道に、もう一度自分の心にあの質問をしてみる。「私は彼をどう想っている?」今一番気掛かりな人、彼に必要とされるなら、こうやって傍に居てあげたい。「A.友達として? B.恋人として?」Bかな?と思っていたけど、やっぱりAだよ、当然だよ。「本当に?」ホントの本当は、Bが良かった。でも、彼は今それどころではない。どうしてこんな事になってしまったんだろう?気持ちに蓋をして鍵をかけ、自分に嘘をついた私は天使になれる・・・?
Dec 2, 2004
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私の家に一番近い交差点が見えて来た時、突然彼が、意を決したように、あるいは何かを振り切るように、「翠が時間大丈夫なら、夜景でも見に行ってみようか」と言い出した。そのまま、真っ直ぐに車を走らせる。着いた先は、アミューズメントパークや大きなビルの建つ港。クリスマスシーズンなので、ツリーが飾られている。周りは楽しそうなカップル達でいっぱい。クリスマスソングも、綺麗なライトアップも、今はあまり心に届いて来ないといった様子の彼。「静かな海だなあ…」と柵にもたれて、じっと揺れる波を見つめる。そんな彼を斜め後ろから「この人このまま飛び込みやしないかしら??」と、内心ひやひやしながら見守っていた。自販機で、缶コーヒーを買って来て、彼に渡す。ベンチに座り、海を眺めながら何度も溜息をつく。ここにきて、初めて彼が「本音」を口にし出した。突然あと半月もしないうちに職を失ってしまう事になって、その先どうなるか分からないという不安。明日から最終日まで、何も知らない皆から誤解を受けたまま、色眼鏡で見られる事覚悟で出勤しなければならない苦痛。信用していた人達から陰で仕組まれ、陥れられた悔しさ。自分の人生はなんてツイてないんだろう、今の自分は先が真っ暗だと言う。『でも、次の就職先を見つけるのはそんなに難しくはないだろうし、何より今年結婚したばかりで、人生まだまだこれからじゃないの?』なんて無責任な事、もしかしたら余計落ち込ませてしまうかもしれないので言えない。『そこまで落ち込んで将来を悲観するのは、きっとまだ私には言えない内容の、別の大きな悩みもあるんじゃないのかな?』この想像は、大いに当たっていた。『そもそも家ではこの事話し合ってるの?どういう風に反応されたの?それともやっぱり会話は無いの?私と居るより、早く帰らないで大丈夫なの?』どうしても、私としてはすごく気になる所だけれど、やはり聞けない。本来なら、この事態に一番身近に居る人がどう言ってるのか、こうやって話していると喋りそうなものだけど、彼も一切触れようとしない。ふと、缶コーヒーに目をやる。「明日があるさ、か…」と少しだけ明るい声で彼がつぶやく。他にも色々あったんだけど、ちょっと解り易すぎると思ったんだけど、わざとこれ選んだんだ。元気出して、なんて軽々しく言えないから。彼の落ち込んだ顔を見ると、なぜだか自分の事の様に辛くなってくる。私は彼の為に何をしてあげられるんだろう?どうすればいいんだろう?今はただ傍に居て、一緒に溜息をつく事しか出来ない。「さあ、もう帰ろうか」と、ふと空を見上げると、星が綺麗だった。「ほら、あそこにオリオン座が見えますよ」「ああ、ほんとだね」星空を見てると、人の悩みなんて、ほんの小さなものだと思うというけれど。私が励ましてあげたい、とか、なぐさめてあげる、でもなくて、ただ、彼にいつものあの笑顔を取り戻して欲しい、それだけを願う。あの時、左には曲がらなかったあの交差点は、二人にとっての分岐点でもあった。真っ直ぐに行く事を選んだ二人。本当は、時間の許す限り一緒に居たかったから。でも、そんな気持ちに気付いてはいけないと、必死にブレーキを踏み続けていたのは。。。
Aug 22, 2004
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翌日、彼の居ない間に、退社の事と嘘の事実が職場全員に広まっていった。彼はこの日、元々休みの日だった。休日だったけど、彼はK君と話をする為に、会社近くまで来ることなっていて、K君より私が一時間先に仕事が終わるので、K君の前に私と会う約束をしていた。会社のビルの裏手に停めてある車から、彼が降りてきて手を振る。少しだけ離れた場所に移動してそこで話そう、と彼の車に乗った。『そういえば昨日、彼に車に乗せてもらう事なんてないだろう、そう思ったばかりなのに』でも、嬉しい、とは違う複雑な気分だった。3~40分程話し、K君との約束があるので会社の近くまで引き返すと、「もし良かったら、一時間程どこかで待ってくれたら、送って行くよ」と言ってくれた。お言葉に甘え(というよりも彼の方がもっと話したそうだった)、近くの茶店で時間を潰し、再び彼と落ち合う。彼はK君から退社が本決まりになった事などを聞き、更に落ち込んでしまっていた。「K君も、今回の事は理不尽過ぎると、自分も辞めるなんて言い出して、逆になだめて来たよ」と笑って言った。彼が辞めた後は、K君が彼の役を引き継ぐ事になる。「こういう場合、辞める方がちゃんと悪者になって去るべきなんだ。皆の為にも、K君の為にも、俺はもう黙って行く事にした」彼はこの状況でも、他人の心配ばかりを口にする。実はかなり前から、見方の顔して彼を裏切っていた人物が一人居て、その事を指摘しても「たとえどんな人間でも、自分より年上は敬うべき。あの人も、そうせざるを得なかったんだろう」と、かばう発言をしていた。なんてお人よしなんだろう、呆れてしまうよ。皆、本当の彼を見てくれたらいいのに。間に居て何も出来ない私。もどかしくてどうしようもない。
Aug 10, 2004
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全く予想もしていなかった彼の言葉に、暫く呆然としてしまい、その後彼が話し続けても、聞こえていながら意味が理解できずにいた。彼がどういう風に喋っていたか、当時でさえ頭には入っていなかったので、思い出すことが出来ないけれど、内容はこういう事だった・・・彼が、一部の人達からある疑惑を持たれ、全くの誤解にも関わらず、水面下で話が大きくなり過ぎ、この日の話し合いの結果、彼一人が責任を負わされる形で、退社を余儀なくされてしまった。彼は一切の弁解も、釈明も許されず「これ以上コトを大きくしない為」という会社側の都合で辞めさせられる事になった。こんな大変な話、私は一切知らなかった。しかもよりによって彼が当事者なのに。私はてっきり、噂とはYさん達の事についてだとばかり思っていた事を話すと、彼はそれこそ知らないと言っていた。まだその手の噂を流されるぐらいの方がよっぽどましだったのに。食事が終わると、さすがに早々と切り上げることにした帰り道、「この間K君と飲みに行ったら、彼の終電が無くなって、家まで一緒に行ってまた車で送って行ったんだ」という話をした。私にも「送っていくよ」なんて、言ってくれはしないかな…それは出来ないよね。しかもこんな状況になってしまって、迂闊な事はできないという心境になってるみたいだし。私への接し方を変えようとしている事も、口調が仕事中と同じだったり、いつもは「翠」と呼ぶのに、さっきから苗字で呼ぶ事でイヤというほど伝わってくる。だから、きっと私は彼の車に乗ることはないんだ。この出来事が二人の距離をどう変えていくのだろう?冷やりと光る三日月を見つめながら、いつもより足早の彼と並んで歩く。
Jul 5, 2004
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彼とまた食事に行く当日、私の方は休日だったので、先に待ち合わせ場所に着く。その日はディナーのコースを彼が予約してくれていた。まるでデートみたい、なんてウキウキしていると彼がやって来た。彼もこの日を楽しみにしていた、はず、今朝の打ち合わせメールまでは…。どこか落ち着かない。笑顔もない。取りあえず足早に店に入った。昨日の「話」の流れから、お互いの気持ちの確認をし合うとまでは行かなくても、二人にとって何かの進展が見えるといいな、と思っていた。ワインで乾杯をした後、彼が切り出した。「例の件ですけど、噂話では済まないところまで来てしまいました」少し驚いた『どういう事なんだろう?何故彼がこんなに深刻そうなの?』「今日○○さん(会社の上の人)達とも話し合った結果…」『Yさん達の事、上の人達にまで知られたんだ。噂は本当だったのね。というか、話し合いって大変じゃない?!』「私が身を引くことになりました」「?」『えっと…、それは私の知ってる噂話が前提であれば、何?Mさん(彼)が、Yさんから身を引くって事?Yさんと付き合ってたの??三角関係!?違う違う…有り得ない。付き合ってると噂されるとすれば間違いなく私とだろう、会社でも仲良すぎるし。じゃあそれが問題になって、彼が身を引くと言ってるの?そもそも付き合ってもいないのに、「身を引く」とはおかしい。それとも彼はそのつもりだったのかしら…?』色んな事が頭を駆け巡る、そして彼の次の言葉で頭の中が真っ白になった。「いつになるか分かりませんけど、近いうちに翠ともお別れですね」
Jul 2, 2004
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相変わらず、二人の仲は進展が無く、親睦だけは益々深まっていく日々が続いた。クリスマスの近づいて来た頃、彼は会社仲間と頻繁に飲み会に出掛けるようになる。「先日忘年会で行ったお店、いい感じでしたよ。翠ともまた行きましょうね」と、彼が誘ってくれ、また日を合わせて食事に行く事になった。約束の前日彼からのメールに「翠も聞いていると思いますが、最近社内(女性社員の間)では、スキャンダルの噂で持ちきりらしいですね」と書いてあった。『確かに、同僚のYさんと妻子持ちのNさんが付き合ってると噂が…』と思い、「あの事ですね?おばさん達はああいう噂話が好きですからね、くだらない」と返事をした。「まあ、その事もあって、連日K君(彼の同僚)と二人で飲みに行ってたという訳です。またこの話は明日ね。待ち合わせは少し遠い所でしましょう」と返ってきた。『Yさん達の例の噂について話し合ってたの?実は俺も…なんて相談してたとか?まさかね…。明日彼は一体どんな話してくれるの?』と、何にも知らない私は勝手に一人でちょっと期待までしてしまっていた。
Jul 1, 2004
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彼と親しくなってから、初めの頃に彼が身内の不幸で帰省した数日以外は、ほぼ毎日メールをやり取りしている事に気付いた。そして週に平均して3,4日はメッセンジャーで、深夜まで会話をする。休日前だと明け方近くになる事もあった。彼と仲良くなればなる程、心の片隅にある一つの疑問が気になってくる。ずばり≪夫婦仲は良いの?悪いの?≫私には関係ないことなのかもしれないけど、明らかに私の生活の中で、彼と会話をする時間、彼のことを考える時間の割合が「ただの職場仲間」では有り得ない量になっている。それは彼にとっても同じ事だろう。それならばずばり≪私達の仲は友達?それとも恋人?≫答えが欲しい。最初の疑問に関して、彼の口からは何にも語られない。私も、聞きたいけど聞けないし、むしろ聞きたく無かった。「嫁とあんまり上手くいってなくってさ~」なんてもし言われたら、『だから浮気しようって?ふざけんな』と失望してしまっただろう。それでも、彼のこれまでの発言からいくつか気になるキーワードがあって、勝手に自分なりの解釈と想像を膨らませてみたりした。「今日はたくさん食べて帰らないと、家ではあんまり食べられないから」「カラオケは好きですよ、でも家は基本的にカラオケには行かないです」「音楽は良く聴きます、でも家では聴かせてもらえないので車に乗る時だけです」「トーストは好きですよ、でも我が家では食べさせてもらえません」「アイロンかけはいつも自分でしてますから」「今日も吉牛でやっと晩飯食ったとこです」家の事はめったに話さないけど、たまにこういう、愚痴という程でもないような、でも聞いてるこちらとしては少し同情するようなセリフ。家は不仲なんだということを勘繰らせようとアピールしてるつもりは本人には無くて、ただ話の流れで、日頃の不満がつい出てしまったといった感じ。でもこの発言と、いつも遅くまで付き合ってくれる状況から見て、『あまり構われていないくせに、あれもこれもダメと窮屈な思いをさせられている』『家庭の状態は少なからず冷めていて、あまり会話もないのかも』『共働きで夜の仕事をしているか、もしくは別居中?』という風に、私には思えた。そして≪私は彼をどう想っているの?≫自問自答を繰り返す。
Jun 28, 2004
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彼と初めて食事に行ってから、次回はカラオケに行こうと約束をしていて、お互いに仕事が早く終わる日を一月前から調整していた。ただでさえ二人一緒に早い日は少ないのに、彼の方が「色々と忙しくて」と、月初めの金曜しか空いてないと言われた。その翌日はお互い休日だったけど、「残念ながら丸一日無理ですね」と、あっさり返された。それも、その日は早めに帰らないといけないから、カラオケもお酒もダメ。食事くらいならOK、と言われた。普通ここまで言われると『休日はどこかに出掛けるんだろうな、当然夫婦で。お酒も飲まずに早めに帰るって事は、夜のうちから車で出発するのかも?』なんて想像して、ばかばかしくなって、彼と会うのはもう止めようと思うだろう。それまでの私なら、きっとプライドが勝って気持ちを引き止めていたはず。でも当時は『少しだけでもいいから会いたい、別に何の望みは無くても…』という思いしかなかった。当日、本当にあんまり時間が無いというので、会社のすぐ近くの定食屋で、夕飯を食べて帰る事になった。いつものようなお喋りはあまり無く、会話も殆ど弾まない。彼の早く帰りたそうな態度が辛かった。「今日は早く帰ってきてね」って、言われてるんだろうか?遅くなっちゃまずい、って顔してる…。そこの料理は、少食の私にはかなり量が多いうえに、付け合せには、私の苦手な野菜が乗っていた。彼は「無理しないで残せばいいよ」と言ってくれて、私が食べれそうにないのも分かっていた。私には彼を引き止めたり、やきもちを妬く権利も無い。ただ、彼に「今日も楽しかったね、また行こうね」って言って欲しい。『頑張って食べなきゃ。頑張っている私を見て欲しい』何にも出来ない自分が悲しいのと、なぜだか『今ここで頑張らなきゃ』という気持ちが沸いてきて、一生懸命に完食した。最後まで食べ切った私を、彼はニコニコと笑顔で見つめていた。なんだか、祈りが通じたかのような気がして、本当に嬉しかった。もう帰るのかと思っていたら、「まだ時間まで少しあるから、サ店でお茶でもしよう」と言う。さっきまでは飛んで帰りそうだったのに。喫茶店では、いつものようにたくさん話をして、楽しそうで、段々時間を気にする素振りも見せなくなっていった。結局その日帰ったのは、彼が最初に言っていた時間より2時間以上過ぎてから。家に着くと「今日はありがとう、楽しかったよ。ご飯も美味しかったですね。」と、彼からメールが来た。その後も少し、さっきまでの会話の続きのやり取りをしていた。彼は帰宅してからPCで私の質問した単語を検索したり、私とメールしたりして、深夜1時過ぎの寝る直前まで、私と付き合っていてくれた事になる。あなたも私も、互いの存在がどんどん大きくなっていくのを止められず、でも、心の奥ではそれを望んでいたんだよね。
Jun 25, 2004
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その頃、新しく建ったばかりのあるお店が、ニュースでも取り上げられ、会社でも皆がその話題で持ちきりだった。丁度彼もそこで買いたい物があり、一緒に行く?と誘われた。私が休日で、彼は仕事が早く終わる日に、店の入り口で待ち合わせをした。会社外で二人っきりで会うのは二回目。もちろん今回も誰にも話していない。買い物が済み、その近くで夕食を取った。『会社の人や、知り合いに見られたら間違いなく誤解されるだろうな。そもそも、こうして二人で会ったりする事、彼はどう思っているんだろう。こんな風にしていたら、私に好きになられたりするかも、って考えないの?それは困る?むしろ、それを待ってるの…?』ほんの一瞬、お互い無言の時間が流れる。彼も何かを考えているようだった。店から出て駅へ向かう途中、雨が降り出した。それぞれ、別の傘をさす。彼はもっと遠い人、目に見えない距離を実感してしまった。
Jun 18, 2004
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彼の入社当初、第一印象こそ悪くなかったのに全く無関心だったのは、もちろん彼が既婚だった事と、丁度その頃私はある男の子に片思い中だったから。その年の春から夏にかけてずっと好きだったけど、中々会える相手ではなく、運命のいたずらというか、神様に邪魔されたとしか思えないような出来事が起こり、その恋は終わってしまった。彼の入社の一月後の事だった。辛い恋は二度とごめん。障害のある恋愛なんて望まない。まして夫という立場にある人を好きになるなんて、一番ありえない事。彼とはすごく話が合うし、冗談も言い合える。仕事中にそばに居てくれると、とても安心する。恋愛感情なんかではない、友情なんだ。今以上の関係になんて決して発展するわけない。彼もきっとそう思っているに違いない。私の隣に、また彼が座りに来た。相変わらず、楽しそうに会話が弾む。私の目には、彼の細長い左手の薬指が映る。彼が誰かの夫だという証がそこにある。―この人から、この指輪を、この私が外す事になるかもしれない。何の根拠や自信があったわけでもなく、この時本当にそう感じた。第二の予感と、辛い恋への小さな覚悟を抱いた瞬間だった。
Jun 17, 2004
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会社の同僚のネェさん達に誘われて、生まれて初めていわゆるコンパというものに行った。それまで、仲良しの友達にもなぜか私はコンパには誘われた事が無かった。いつも、後日に「今回はいい人が居た」とか「ダメだった」とか報告のみされていた。正直乗り気ではなかったけど、社会勉強と、ネェさん達と飲みに行くのは楽しいので、付いて行く事にした。はいいけど…、やっぱり性に会わない。二次会のカラオケは、お断りして、私一人帰ってきてしまった。(結局今まで誘われなくって良かったのかも?)といった内容を、帰ってからすぐに彼とメッセンジャーで話をした。カラオケでいつも歌う曲は?なんて色々盛り上がって、「じゃあ今度対決しよう」「いいですね、忘年会シーズンだし」という流れになった。彼は「僕は音痴だけど、カラオケは好きですよ」、「でも家は基本的にカラオケには行かないから」と言っていた。数日後、ボジョレー解禁したけど今年のは美味しいらしいという話から、また一度飲みに行きましょう、と約束をする。「カラオケ」も「飲みに行こう」も、切り出したのは彼の方だった。二人で日程を合わせ、色々お店を検討して、いよいよ当日。就業後に、会社から一つ先の駅前で待ち合わせて居酒屋へ。これまでも、デートはもちろん男の人と二人きりで食事をした事は、何度もあったけど、彼とは一番心から楽しめた。話は尽きない、お互い笑顔も絶えなかった。気付くともう終電がギリギリかもしれない時間。私は地下鉄で、彼の方が私鉄で終電が早い。私鉄の駅の入り口まで、見送ることにした。駅の階段を降りていく彼へ手を振り、背中を見つめる。さっきまでの楽しさが嘘のように、心が冷める。―彼はこれから、新しく作り上げたばかりの家庭へ帰って行く。『分かっているよ、もちろん、彼の入社の時から知っている事だし』でも、どうしてもこの強い違和感が消えない。当時は気付いてないけど、もう私はあなたと別の誰かとの家庭の存在を、心の中で否定し続けていたんだろうね。
Jun 16, 2004
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毎日のメール交換といっても内容は、会社で盛り上がった会話の続きや、「今日はお疲れ様、明日も頑張りましょう(^-^)」といった、男女の意識はまるで無いものだった。一週間が過ぎた頃、会社内で就業後の立食パーティーが行われた。彼は好き嫌いが無いらしく、何でも美味しそうに食べていた。それどころか、人一倍ひたすら料理を食べていて、意外だったし少し驚いた。「普段家ではあんまり食べれないからね、特にこんな美味しい料理。たくさん食べて帰らないと。」と言っていた。私の前にまだ残っている料理がある。彼が(それ、おかわり)という感じで、テーブルの向こうから私にお皿を差し出した。私は「はいはい」と料理を盛ってあげて彼に渡す。なぜだか、この瞬間、この行動が、この関係が、二人にとってごく自然な事のように感じた。『まさか、そんなことないよ』と、気持ちを打ち消すには、あまりにもしっくりきすぎていた。既にこの頃、私がこんな予感を感じてたなんて、あなたにはまだ話していないね。
Jun 15, 2004
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出逢ってから、彼を意識し始めたのかというと、全く逆だった。会社の同僚達が、職場の男性について、誰とだったら付き合えるか?みたいな会話をしていた時、「あたしはMさん(彼)ならありだわ」という人が居ても、自分にとっては彼を恋愛対象には思えなかった。業務上の会話以外殆ど交わすこともなく、3ヶ月が過ぎた頃、ある仕事のトラブルを彼が救ってくれた。とても親身に、そして最後まで責任を持って助けてくれる人だと思った。そんな時、偶然一時間ほど隣のデスクに座ることになり、あんなに今まで無関心だったのに、ちょっと好奇心を持ち、話し掛けてみることにした。人懐っこい笑顔で、楽しそうにお喋りをする。一応上司なのに、おもしろい人。彼の年齢は、同僚の情報では30歳だと聞いていたけれど、実はもっと若く、同級生だと判り、更に話が弾んだ。趣味はドライブと、最近はPC。ホームページも作ってみたいなと言っていた。私は以前からサイトを持っていたので、作り方を教えてあげることと、お互いポスペを使っているので、ポスペ仲間になることに。メッセンジャーを私は使ったことがなく、彼も相手がいないから殆どしないけど、なら一度やってみましょうか、といった話になり、彼はメールアドレスを教えてくれた。私達は一気に打ち解け、この日から、ほぼ毎日メールのやり取りが始まる。彼は私にとってただの上司ではなく、とても仲良しの友人であり、優しいお兄さん的な存在へと変わっていった。
Jun 14, 2004
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あなたを初めて見た瞬間を、私ははっきりと覚えている。少し不安げな、子犬のような表情。「なんだか、かわいらしい人が来たね」これが、彼への第一印象。私達の出逢いは3年前。私の職場に、上司として彼の方が後から入社してきた。ある朝、出社すると、見慣れない細身の男性が座っていた。皆から目線を外し、俯き気味にしている。まつげが長い。彼の、私への第一印象は「夏なのに白いな」だったそう。まだまだ、何も始まらない。
Jun 13, 2004
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