今が生死

今が生死

2020.11.05
XML
カテゴリ: 健康
どの職業でも仕事がうまく運んで喜んだり、お客さんに喜んでもらって自分も嬉しくなったりと時によって悲喜こもごもがあると思う。
医師の場合は患者さんが良くなれば喜び、悪化すれば気落ちしその原因を考え対策を立てる。しかしよくなる見込みのない患者さんが多く心休まる時は少ない。朝の回診で63才のパーキンソン病の患者さんから毎度の事ながら、蚊の鳴くような小さな声で「いつ退院になりますか?」と聴かれた。回診の度にそれを言われており早く退院させてやりたいが、先日のご主人との面談では「膀胱カテーテルを抜いても良い状態になってから退院させて欲しい」と言われているのでそれを伝えたら涙ぐんでしまった。そのために重い気分で今週の月曜日に入院した76才の同じくパーキンソン病の患者さんの部屋の回診に移った。その患者さんの入院時の様子はか細い声で「食事の中に虫がいる」「あそこに誰かいる」などありもしないことを何度も話し幻覚が強いと思った。立つことも歩くことも出来ず、食欲もない。また今日も何か幻覚を言われるのかと恐る恐るその人のベッドに近づいた。意外ににこにこしていていろいろな普通の会話ができて、私が「幻覚」がありますねと言ったら「はいあります。幻覚があることが分かりました。消せるものなら消しゴムで消したいです」との返答だった。何ということだ月曜日には無表情で暗い顔して幻覚の内容を話してくれたが今日は表情豊かに笑顔で上記のことを話してくれた。日によって病状の違いはあるものだがこれほど違うのは珍しいと思った。またすぐ幻覚の世界に戻ってしまうのかもしれないが、一時的でもこんなに生き生き喋ってくれて嬉しかった。当院はリハビリ病院なので、PT,OT,STそれに受け持ち看護師が加わってその4人が主として対応してくれるので主治医は全体をまとめる役割だけだが、一時的でもこんなにも良くなって会話が出来て嬉しかった。医師の喜びは受け持ち患者さんがそれ以前よりよい笑顔を見せてくれる時が最高に嬉しいひと時である。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2020.11.05 21:13:04
コメント(6) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X

Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: