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吉田秋生/作■ドタキャンされて■ご飯を一緒に食べる予定だったオトモダチにドタキャンされたので、ひとりで梅酒を買って、このマンガをツマミに読みました。あと、おでん。■吉田秋生さんと言えば■『BANANA FISH』ですよねー、確か。でも読んだことありません。小学校高学年の頃に姉の友達の家で読み、ナンノコッチャで放り出した記憶があります。マンガで意味がわからなかったことなんて初めての経験だったので、「私の読解力はこれしきだったのか」と苦く思った、ような。■プロフィールに■1977年にデビューと書いてありました。ってことはもう30年間も現役でマンガを!それでこのフレッシュさですか。すごいなー。■あらすじ■鎌倉が舞台。親のいない3姉妹と、母親の違う末の妹が一緒に暮らし始める話からスタート。各回ごとに語り手が代わり、4姉妹のうちのひとりだったり、その周辺の人だったり。■一度読み■素直に感動。思ったよりも明るい作風。ストーリーテラーだなぁ。■二度読み■うぅぅん。次女の恋人、「トモアキ」がなんだかなあ。格好良すぎると。「あなたはマトモな人だから、マトモじゃない俺とは付き合ったらいけない」で別れていく男なんて、少女漫画の中にしかいないと思う。あ、少女漫画か。■あれですね■鎌倉で青春時代を過ごすことにはちょっと憧れます。だって、海があって緑があって、キレイなとこだし。あんなところを登下校で歩いていたら、そりゃロマンスのひとつやふたつ。
2007.09.01
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山本直樹/作。山本直樹公式HP『ありがとう』作品紹介ページ■結構前の■1994年頃のマンガ。今から10年以上も前。確かに時代感が。■冒頭から■レイプとか暴力とか監禁とかで、これだけで拒否感を覚える人もたくさんいるだろう。私も結構ダメです。暴力行為の描写とか、映画でも漫画でも小説でもあまり見たくない。だけど、見なくちゃならん時もある、というか、その描写を見てもいいと思えるほどにその作品に興味があったらばやっぱり読む。いたしかたなく。いたしかたないっていうか、まあ。何が嫌って、安易にレイプや暴力や自殺やいじめを扱う作品は嫌だ。「じゃあここでいっちょ、いじめ入れとく?」みたいな。『ありがとう』の作者は、もちろん安易にそれらを扱ってるわけではない。けれど恐らく、それらの犯罪行為に普通の人が感じるような嫌悪感を持って臨むところからはかけ離れたところにいる。単なる事象として暴力や犯罪を眺めて、描くことで社会の中で起こるべくしてそれらが起こってしまった理由を問い詰めている、ような。誰しもがこういう目線を持たなくてもいいと思う。ふつうの人は暴力を恐れ、嫌悪するだけで良いと思う。■女の子の目つきと体が■エロくてとてもいいです。■少し■岡崎京子に似ていると思いました。『ジオラマボーイ・パノラマガール』とか『愛の生活』の頃の。はじめっからちゃんとストーリーを考えているんじゃなくって、結構行き当たりばったりでしょ?と思えるあたり。それが独特な魅力に思えるあたり。
2007.08.18
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森下裕美/著■森下裕美さんと言えば■代表作はやっぱり、アザラシのゴマちゃんはタマちゃんよりもずっと前に一世を風靡していました、よね。それから『ここだけのふたり』なんかも結構好きでした。■ちょっと前に新聞で■この『大阪ハムレット』が第11回手塚治虫文化賞短編賞と第10回文化庁芸術祭優秀賞を受賞したっていう記事に、「『少年アシベ』などの4コマ時代から創作に悩んだ時期を乗り越え作風を変えて、地元大阪の言葉で大阪の街並みを舞台に描いた」っていうようなことが書いてあったと思います。へぇ~~と思ったんだけど、アシベ時代のヤワラカイ曲線を排除してしまった、独特なキモカワの絵柄が生理的に受け付けず、手に取る気がおきませんでした。『ここだけのふたり』の後半あたりからこの絵柄の傾向が見られるのだけれども、どーーにも、あんまり。ぶさいくな人がリアルなのが、あんまり。それから、森下さんは『アシベ』『ここだけ』などで、絵柄は可愛いけど、描いてあることは割とせちがらい感じで、4コマだったからこそオチがあって笑わせてはいたけれど、ちょっとしんどいなぁ~と感じさせる部分もあった。ふつーに笑えるんだけれど、「たぶんこの作者の人、結構細かいことにうるさいだろうな」と思わせる、みたいな。それに昨今の泣かせる人情漫画の波も何だかなぁと。■それで読んだら■今週は仕事頑張ったからもう後は漫画でも読めばいいやーーと思い、お近くのBook offへ。『だめんずうぉ~か~』の一巻と、『大阪ハムレット』を買いました。何度も何度も書店で『大阪ハムレット』を読んでいて、「買うまい」と心に決めていたのですが、やっぱり買ってしまった。そんで帰ってきて梅酒とつまみを楽しみながら読みました。読んで泣きました。泣ければいいってもんじゃないけど。■キモカワな絵も■読み始めてほんの数頁で気にならなくなります。私の場合、好きにはならなかったけど、「ああ、こういう顔の人いるなぁ~」と。「こういう顔の女の人、確かにキレイだなぁ~」とか。■恐らく■出てくるキャラクターの全てが魅力的なことが原因です。第一巻の「女の子になりたいひょろひょろの小学校3年生」と、第二巻の「お母さんが再婚しそうな家庭の、2人の妹を持つ中学生のデブな兄」が好きです。■それにしても■前から思うけど、この作者さんの漫画にはかっこいい男の人が全然出てこない。女の人は可愛い人多いのに。『少年アシベ』でも男の人はもれなく3頭身。作者はかっこいい男の人に何かイヤな思い出でもあるのでしょうか。ないのでしょうか。■おもひで■森下裕美さんの、初期の作品の第一巻、なんていうタイトルのだか忘れてしまったのだけど、もしかしたら『少年アシベ』だったのかもしれないけれど、そのあとがきに、結構森下さんは毒舌を吐いていた。手書きの文字で書き散らしっぽく、「こないだ取材に来た女記者が子連れでやってきて、その赤ん坊が泣いて、しかも途中からその世話を押し付けられそうになって……」という愚痴から始り、「だから取材はイヤだ、女の記者イヤだ、バーカ」みたいな。そして「この間、海外のメディアの取材があった。取材内容は『あなたの描くキャラにはどうして鼻がないの?』。やっぱり外人はいい」。うろおぼえなので違うかもしれないけど、こんなような。もう10年以上前だけど、それを読んだ姉とふたりで「この人、結構、黒い面あるよね」というようなことを言ったのを覚えている。姉もそれをずっと覚えていたようで、「あの作者の人そういえばさー」というような話をこないだもしました。ま、その黒い面が良い方向に出たってことで、ね。というまとめ。■付け足し■よく新聞紙面に載っている、『大阪ハムレット』の広告はあんまり良いとは思えない。作中のカット(セリフも)の切り張りで出来ているのだけれど、そのカットが、「ボク 女のコになりたいと思てます ボク 真剣やから変にからこうたりせんとって下さい」とか、「自分の弱さ、謝って許すな!」とか、「アンタ、お父ちゃんの子供産もう思たら産めんねんな」とか、イチイチどぎつい。このへんが人の目を惹くだろ~~って思ってのチョイスなんだろうが、これちょっと熱苦し過ぎる。本当はもうちょっとサラっとした感じですよ。
2007.07.09
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倉田真由美/作■くらたま作品■雑誌に載っているのは何度か読んだことがあったけれど、じっくり読んだのは初めて。■驚いた■ここまで西原理恵子と芸風が被っているとは。露知らず。■でも■最初に知ってたのが西原さんなんで、西原派だと思います。私、わりと古風なとこがあって。義理堅くて。■それで■写真で何度かくらたまさんを見たことがあったが、それほどじっくり見たわけではなくなんとなくの印象だったため、作中に幾度となく、自分のことを「デブ」「学生の頃はガリ勉」って書いてあるのを読んで、「まあ、そういえば派手目な人ではなかったかも、そうか、モテなさそうな容姿なのか」と思ってた。ンで、一巻のラストにある瀬戸内寂聴さんとの対談での写真を見たら。ふつーに痩せてる美人なんですけど。なんだこりゃ。てめこら詐欺。別にいいけどさー。■いろいろなだめんずの例を見て■いろんないろんないろんなことを思ったのだけれど、ひとつだけ書くのであれば、のぼせあがってウキャーー!っていう勢いで結婚できるうちに一回くらい結婚しておけば良かったかもしんまい。私のような生産力のない頭でっかちが、だめんずでない人をこの先捕まえられることがあるのか、どうか。■でもね、つくづく思うのが■出会う人がことごとくだめんずっていうよりも、出会う相手をことごとくだめんずにしてしまう体質の女性っていると思う。ほんとさー、もうどうしたらいいんだろうね。
2007.07.08
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山岸涼子/著。■薦められて■怖い漫画知りませんか~とたずねて教えてもらったのがこちらです。表題作を含む4つの短編集が収められてます。■タイトルだけで■もう怖くないですか?別に怖いこと言ってないのに怖いっていうのはどうしたことだろう。■一番怖いと評判のは■「汐の声」という作品。読む前からネットの評判で知ってました。あらすじはといえば、幽霊が出るという噂の館に泊り込みで取材をするテレビスタッフと、霊能力者。霊現象が全く起こらずスタッフが苛立つ中、霊能力者のうちのひとり、「少女霊媒師」として名を売っている佐和だけが、館に潜む「少女」の存在に気付いてしまう……。というもの。うぅぅん、怖い……。小さいときに呼んだらトラウマ間違いなし。とはいうものの、実は、購入する前にこの作品の口コミで検索していて、ほとんど内容を知ってました。ネタバレの部分も。一番怖い描写のところも。覚悟ができていたので、まあね。■なぜ■辛いものを「辛い辛い」とヒーヒー言いながら食べてしまうように、怖いものを「怖い怖い」と言いながらも読んでしまう。怖い。■他に■『天人唐草』『夜叉御前』も一気読み。こちらはお化けネタというよりも、(狂気+昼ドラ)×伝説という感じのもの。漫画を読んでいる時が一番時間を忘れます。いやあ。
2007.07.04
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古泉智浩/著。■どこでどう■お台場ヴィーナスフォートにあるヴィレッジバンガードで、閉店間際に読んでいました。なんだか暇でオシャレぶってる大学生みたいじゃないか。「エロこわい」を流行らせたい流行らせたい流行らせたいと言い始めてそろそろ1年になります。このタイトルを見たとき、うわっ、こんなのが!もう!あったのか!と思いました。いえ、全然関係ないですけど。赤い表紙でエロ悲しい。エロエロ悲しいエロ悲しい。■それではどう■「エロ悲しい」漫画二編と、「エロ悲しい」エッセイ三編で構成されています。それぞれ筆者は別。一話目の「ピンクニップル」(古泉智浩)だけ読みました。普段、一部しか読んでいない漫画とか本の感想なんて書かないのだけど、この漫画は面白かったーーーーので書いてしまう。この漫画家さんの漫画、他でも確か一度読んだ覚えが(絵に見覚えが)あるんですが、その漫画はかなりギャグよりだった。舞台とか背景は似通ってるんだけど、「ピンクニップル」はなんだかもう、「お目出たき人」(武者小路実篤)あたりの私小説にも似たやりきれない悲哀を感じる。■一行あらすじ■そこそこな額の遺産をもらっちゃったばっかりに仕事しないでフラフラしている地方在住の男が女子高生の彼女とあーしてこうして。■ひとこと感想■やりまくった後、「あーこんなことしてても何にもならん」って漠然と思っているわびしさ。
2007.03.18
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間瀬 元朗/作。■アマゾンでコピペしようとしたらなかったよ、めんどくさいけどあらすじ書くか■「国家繁栄維持法」という架空の法律が施行されている日本の話。■と、ここまで書いてもう一度アマゾンを見たら2巻の方にはあらすじがあったよ■ある日、突然届けられる死亡予告証“逝紙(イキガミ)”。それを受け取った者に残された時間は、わずか24時間…! 異才・間瀬元朗が渾身の力で描く、魂を揺さぶる究極極限ドラマ!! (Amazon内容紹介より)■感想ひとこと■鼻水が出るほど泣きました。涙が出ればいいってもんじゃないけど。「いろんな経験を積むほど、涙もろくなる」って昔言われたことがあるが、本当にそう。大人になるほど泣ける漫画、なの、では。「泣ける!」がどこでもかしこでも売り文句にされすぎてて萎えますけどね。
2007.01.28
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今やってる映画ではなくて原作を読みました。松本大洋/作。■ひとことあらすじ■暴力と荒廃の進む「宝町」で暮らす孤児クロとシロが町を守ろうとしたり自分を守ろうとしたり。■感想、ファンの方には申し訳ないけど。読んでない人にもわけわからなくて申し訳ないんだけど■随分期待して読んだのだけど、う~~ん……。『AKIRA』みたいなのを期待して読んでしまったからなのかも。もっとスケールのでかいものを。いや、この雑踏のゴチャゴチャ感とかチマチマ感がいいのはわかるんだけど、どうしてこの「宝町」が「冷た」くて「危険」で「他とは違う」町なのかがわからない。登場人物たちが口々に町の印象を言うことで、こちらは「ああそういう町っていう設定なんだ」と思うんだけど、それよりも、クロやシロの言動や物語の運びや背景でここがどういう町なのかをわからせて欲しい。『AKIRA』はたぶんそれが上手いんだと思う。『千と千尋の神隠し』はそんなに好きではないけれど、それでも2時間の映画で、説明がましくなくあの湯屋の設定を見ている側にわからせるのはすごいと思った。途中から、「あ、そうか。町の物語なんじゃなくってクロとシロだけの話なんだ」と思い直したが、それでもあまーり。うーんうーんうーん、理解不足ですけどあまり納得できません。すみません。絵柄は好きです。壁の落書きとか好きです。■映画化についてひとこと■シロの声優を蒼井優って。思い切ったことを考えるものだなあ。イマイチ蒼井優さんが若手実力派と言われている理由がわかりません。演技上手い?
2007.01.10
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現在長期休養中である岡崎京子の、過去の作品を初単行本化。■岡崎京子を知らない方は■まずこの作品から読むのはやめた方がいいです。行間を読み飛ばす危険アリ。「え? フツーじゃん」って思う危険アリ。やっぱりまず『リバーズエッジ』から読むべきでは。『リバーズエッジ』がひとつの到達点だとしたら、そこから休養までは多くが模索の作品だと思う。■岡崎京子フリークっぽい感想(読んでない人にはなんのこっちゃ)■絵の感じは『リバーズエッジ』頃、もしくはそれよりちょっと前の感じ。話の内容は、『万事快調』などに見られる「一家族の肖像」系。奥さんがアルコール依存症なのは岡崎作品に初期から見られるモチーフで既視感ありあり。旦那さんの弟がオカマちゃん(美女)で登場するのも、岡崎作品を読み慣れた人なら、というか、そうでなくても今の時代、「あっそー」って感じで読めるだろう。この作品は岡崎サンの作品にしては珍しくタイトルがばっちり全体の雰囲気を語っている。タイトルを決めてから全体の構想を練った感じ。(他の作品のタイトルの付け方も好きだしキマっているけど、もう少し主観的につけられていると感じてしまうのは、この作品が作者の「休養後」に出されたものだとわかっているからだろうか)奥さん(春美さん)の気持ちも旦那さん(満さん)の気持ちも、いくつかの出来事と慌ただしい日々の中で、流される方向へ向かって流れ落ちてしまう。別に悪意を持ってその方向へ向かわせようとした人がいたわけじゃない。ふたりもそれを望んだわけじゃない。けれど、見えない何かにふたりの行動は引っ張られて、そこで気持ちは置き去られてしまう。起承転結の全ての素早さと、ストンとして暗くも明るくもないラストは、まさに『秋の日は釣瓶落し』。この絵柄にしてこの情緒。本当に岡崎京子は何年も先を走っていた人だった。「それより先に行っちゃダメ」と言って神様に目隠しをされたんじゃないだろうかと感じるのは、私だけではないと思う。
2006.12.06
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ああ、お金がないのに、オールカラーの漫画をまた買ってしまいました。そんなに欲しかったわけでもないのに。西原さんは好きだけど。『ああ息子』読者からの投稿(息子のバカ話)が主。漫画はちょこっと。男の子って本当にこんなにバカなの?男の子の母親になったら、ミミズ投げられたりすることにも耐えられるようになるの?やだ。女の子がいい。『パーマネント野ばら』「どんな恋でも、ないよりマシやん」えーとえーとえーとえーと。さすがにまだその境地には至ってない。
2006.10.01
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岡崎京子/作。高校時代のバイブルが岡崎京子さん。新聞に紹介されていた『pink』に始まり『リバーズエッジ』から何からほぼ全部集めた。最近の『へルタースケルター』ももちろん。高校時代は初期の作品(80年代)よりも、90年代に入ってからの作品の方が好きだったのだけど、今読み返すと、初期から中盤にかけてもやっぱり面白いなあと思う。な、んて言ってたら『危険な二人』も1992年刊でした。てへ。絵柄的には中間地点って感じなんだけどなー、なんて言ってみたりして。二十歳の二人の女の子、セイコちゃんとヨウコちゃんのお話。ぶりぶりに遊んでてボーイフレンドはたくさんいて一見派手だけれど、実は処女で乙女ちっくなセイコちゃんと、ちょっと大人しそうに見えて料理が得意でキャリアウーマンに憧れているんだけどとにかくすぐに男の子と寝ちゃう、お水の才能がずばぬけている女の子ヨウコちゃん。対照的に見える二人の同居生活。夜遊びしたりたまに学校(短大)行ったり、テレビにバカなギャル役でインタビューされてみたり、お金がなくてお水のバイトしたり、けんかしたり仲直りしたり、男の子にダマされたり泣かされたり捨てられたり。この二人の、とくにヨウコちゃんのダメっぷりがとてもリアル。さみしくって男の子に頼っちゃってそれじゃダメだとわかっているけどどうしようもなくて、男の子の方もちょっとさみしげで料理が上手くてエッチなカラダをしているヨウコちゃんに夢中になり、ヨウコちゃんもヨウコちゃんでその時はカレのことを本気で好きになっちゃう、でも結局いったん頭が冷えると過ちとむなしさに気が付いてトボトボとまた歩きだす。セイコちゃんの幼なじみである「うんこミキ」の展開あたり、ややウマクナイ感じでモッタイナイのだけれど、私はこの漫画のラストがとても好き。もう随分前の漫画だから書いちゃうぞ。あ、その前に。岡崎京子さんの漫画はややシリアスなものもあるけど、この漫画はコメディタッチ。コミカルに描かれているので、フラれたり泣かされたり殴られたりぶっ飛ばしたりしてても暗くはないです。それを前提に。ヨウコちゃんは途中で子供を産むんである。でもその子の父親はバックレるんである。「わかってたこーなるのは」そう心の中で呟くヨウコちゃん。セイコちゃんはヨウコちゃんに「それなら二人で育てよう、ママが二人って面白い、私、処女ママなんてかっこいいじゃん」。そんなわけでしばらく3人で暮らすんである。それから、セイコちゃんが突然結婚式を挙げてハネムーン先で離婚して帰ってきたり、ヨウコちゃんも結婚してすぐに離婚して帰ってきたりした後、ヨウコちゃんがまた妊娠しちゃう。ヨウコちゃんはまた産むことにする。ヨウコちゃんの長女みいこが「あのね、みいこ、お姉ちゃんになるんだよ」と、近所の人や道の木や猫やセイコちゃんの友達のピロシやいろんな人に教えてあげる1ページの後。それからきっとまた数年後なのだろう、中学生くらいのみいこと小学生くらいの双子の男の子、それに片手に抱いた赤ちゃんを連れて、セイコちゃんの結婚式に向かうヨウコちゃんの姿のカット。みいこは「もーセイコちゃんの結婚式飽きた! どーせまたすぐ別れる!」なんて騒いでいるのをヨウコちゃんがヤレヤレって顔で引っ張ってる。このラストが好き。男の人と暮らすのもいいけど、やっぱり上手く行かなくてしょうがなくなっちゃうことはあるだろう。でも、そんな時、大好きな女友達が一緒にいてくれたら心強い。とても。今後もこの二人は、恋しちゃあ泣かされたりフったり悩んだりしていくんだろうけど、それでもまたなんとかなるさ、って感じの強さを感じる。人間って喉元過ぎれば暑さを忘れるで、失恋して「もう恋なんてしない!」なんて思っていても、いつかまた恋をする。それで恋をすればまた舞い上がって幸せで、でもそれ程長くは続かなくてまた悲しくて……。生きてれば悲しいことはあるんだけど、それでもなんとか生きていけるんだろう、立ち直れないほど人間は弱くない。オジギソウみたいに落ち込んで立ち直って……を繰り返すのが人間。明るいなー。オホホホ。
2006.09.09
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吾妻ひでお/漫画。昨年刊行されて大ヒットの『失踪日記』を描いていた当初にうつうつとつけていた日記です、という触れ込みの本書。本当にただただ毎日の絵日記なので、盛り上がりやオチは特になし。本を読んで煙草吸ってコーヒー飲んでイヤになって本読んでラーメン食べてイヤになって図書館行って本読んで女子高生見てがっくりして断酒会に行ってイヤになって本読んで……。の繰り返し。はっきり言ったら『失踪日記』の方が面白い。『うつうつひでお日記』はちょっと字が多くて読むの疲れます。どんなことが字で書いてあるのかと言えば、多くが読んだ本のこと。タイトル著者名が書いてあるだけの時もあれば、ひとこと感想が書いてある時もあり。多い時でいちにち2冊は読むというのでふえ~。これで一応お仕事もされてるし。「文學界」とか「本の雑誌」とか雑誌をまるごと一冊読むことも多いらしい。新進作家とかちょっとマイナーな作家がよくでてきて(私は名前を知らない人が多かったので割愛)、村上春樹や吉本ばななは今まで一冊も読んでいない、と書かれているところが面白かった。こういう人っているもんなのだな~。一番ラストで『失踪日記』が爆発的に売れ始め仕事やインタビューが次々に舞い込んでくる。本当に良かったですねぇ~。売れてから彼の生活がどう変わったのか変わってないのかにも興味があります。ちなみに、『失踪日記』はイーストプレス社。『うつうつひでお日記は』角川書店。
2006.09.01
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綾辻行人原作、佐々木倫子漫画。上巻を読んでからずっと楽しみにしてましたがようやく出ました。佐々木倫子は『動物のお医者さん』では獣医志望の学生、『おたんこナース』では看護婦さん、『HEVEN』ではフランス料理店の裏側を描いてそれぞれ大人気の漫画家さん。たぶん絵を描くことと同じくらい取材することが好きな人なのではないかと。一つの隙も許さない考証の行き届いた絵は、最新作になるにつれその緻密さが高まってきていると思います。そしてこのこまっけえ絵が、この度の推理漫画にぴったり。室内の絵のどこに犯人を暴く仕掛けが隠されているのか、誰しも思わず探したくなってしまうのでは。はぁ。精巧ですなぁ。
2006.08.09
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高野文子著。第七回手塚治虫漫画賞を取った『黄色い本』で高野文子さんを知りました。こりゃおもろいと思ったけれど、なにぶん寡作な作家さんらしく、それからあまりその他の作品に出会わずにおりました。そして先日、おじゃましたおうちで発見したのが『るきさん』。やっぱり読みたいと思っている漫画には自然と出会えるものだー、と自惚れてみたり。『黄色い本』は「ジャック・チボー」と女子高生の交流を描いたすこーしシリアスなところもある作品ですが、『るきさん』はゆるゆる~っとした日常。コマ送りのように画面とセリフが移っていく、さまざまにアングルを替えつつ。これが絶妙です。ちょっとクセになります。これといって複雑なことを描いているのではなく、むしろ単純などこにでもある日常なのですが、急いで読んでしまうと展開を見失うことがあります。これは主人公「るきさん」の周りに流れている空気をそのまま切り取っているからで、誰かの日常をフッと覗いてみたらきっとその人の言葉や動作のクセに慣れるまでに少しの時間がかかる、そういうことなんではないでしょうか。高野文子さんのファンは、彼女と「るきさん」を重ね合わせている人が多いんじゃないだろうかと、ちらっと思います。そう思いたくなるほど、「るきさん」の言動はリアルで魅力的です。
2006.07.11
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西原理恵子。少子化の歯止めに効果があるようにさえ思える、子育て漫画。毎日新聞日曜版連載。ごくごく初期の頃から西原さんのことを好きだった人からすると、最近のメジャーっぷりはちょっとさみしいのではないかと。たまに西原さんが、辛くて涙をこらえてる時のことを「喉の奥に小石みたいなのがひっかかってて、飲み込めない」と書くけど、ほんとにそうだよなー、なんて。ちょちセンチな私が言ってるよ。
2006.05.15
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この間、新聞で紹介されていた。そしたらば、母が早速買ってきた。「どんなことでも絶望につなげてしまうモチベーションの持ち主」である主人公の絶望先生。けれども、そんなキャラ設定よりも、登場する萌えなんだか時流に乗ってるのかよくわからない「ひきこもり」「被DV疑惑」「メール依存」「ストーカー」などなど女生徒たちの強烈個性よりも、登場人物たちが時たま口にする、メディアへの毒舌の方が面白い。「その分野では珍しい人並みの容姿、という程度の女性を美人美人と祭り上げる」→例「某ベンチャー企業の元広報担当」ええっと、もっと面白いのがあったんだけども今思い出せない。なんだろー。世の中に真面目に警鐘を鳴らす、というわけではなく、我関せずの立場から世の中の仕組みを面白くバカにする。そんな昨今の風潮をギュッと絞ったような漫画なのではないでしょうか。嫌いではないが、純粋にただ面白がることができない。なぜだろう。1巻と、3巻の途中まで読んだが、これからどんな方向性で行くのか、それってネタ切れにならないのか、不思議。たぶん母(現役中学校教師)は買ったことを後悔すると思われる。でも、中学生の心理を研究するための教材としてはいいかも?
2006.04.18
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安野モヨコの『さくらん』が映画化されるらしい。監督:蜷川実花、主演:土屋アンナ。江戸時代後期の吉原遊郭を描いたお話。タイトルの「さくらん」とは、吉原に咲く「桜」と遊女たちの悲しい「錯乱」をかけているんでしょうか。とか言ってみる。私は遊郭をただ哀しいだけのものとして見る捉え方や、遊女たちを特別視することがあんまーり好きではないので、『吉原炎上』(名取裕子主演)のような痛々しいのはあまり受け付けられません。あれは明治の吉原だったけれど、『さくらん』の舞台は江戸だから、ちょっとはいいだろうか。なんか、もっとふんわりと遊郭を描いて欲しいと思うんだけどな。江戸の男と女はもっと滑稽だったと思うのです。『SAYURI』とかね、そんなかっこよくしなくていいって。やっぱ杉浦日向子さんの描く吉原がいいな。漫画『さくらん』の主人公、きよ葉が土屋アンナだというのは、確かにぴったりなのだけれど、それって、今の人が勝手に憧れる「遊郭像」を象徴したものなのでは??憧れるっていうか、遊郭を今風にアレンジ。遊郭のシステムを都合よく文芸に利用して、面白がる。まあいいか。いいのか。上手くいけばいいのか。『SAYURI』はやだな。見てないけど。あ、土屋アンナは結構好きです。映画『NANA』の主演も彼女がやればよかったのにと思う。
2006.04.03
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南Q太『さよならみどりちゃん』80年代のカリスマ・岡崎京子の信者なので、最近多い現代のリアルLove&Sexを持ちネタにする女性作家さんの漫画にはなんとなく手をつけられない。私の偏見で言えば、安野モヨコ、南Q太、やまだないと、魚喃キリコ…。別に嫌いっていうのでは全然ないのだけれども、岡崎京子さんが事故に遭って休筆状態の今、なんとなく彼女に義理立てするような気持ちがある。でも、時々は買う。今回お買いあげが、こないだ星野真里主演で映画にもなった『さよならみどりちゃん』。映画の紹介を見てから原作が漫画だということを知ったのだけれども、その紹介というのが、星野真里ちゃんが、堂々とおっぱいを…星野真里ちゃんという女優さんは若い女優さんの中でわりと好きな方なので、これはガチンとインパクト。彼女のどこかさみしげな表情で脱がれたら、そしてそれが恋愛映画であるのならば、それだけでなんとなくセツナイ結末が予想できます。そんなこんなでTSUTAYAに寄って『バカ姉弟』の新刊が出ていないかしらと探していて見つけたのが原作漫画『さよならみどりちゃん』。つい買う。少し心がセツナサを求めていたのであります。そんで案の定、心がイタークなったのだけど。みどりちゃんというのは、主人公ゆうこが恋するユタカの彼女の名前。このユタカという男が、体よくうまーくゆうこを束縛するのです。みどりちゃんとは遠恋のくせして別れないし、ゆうこに付き合おうとも言わない。でもセックスはする、みたいなね。そりゃセツナイわよね。後書きによれば南Q太さんは、これが初の長編だった(1997年刊)ようなのですが、そこまで人物描写が上手くない。深くない。典型にあてはめるのは上手いけれども、それだから全体の印象も、「あ、こんな話、前もどっかで読んだな」。冒頭の、ゆうこが「友達はいない。一人でいるのが好き」という設定もあんまり生きてない。はてさて。こういうセツナイ話が支持される背景には、女の子の「共感」があるというよりもむしろ、女の子の「悲劇のヒロイン願望」又は「自虐妄想」があるのではないかと思う。『NANA』についてもそう思うけど。少しだけ恋愛の下手くそな自分を、痛めつけられて悲惨でどうしようもない自分に自分で持って行ってしまう。しまいたい。「やっぱ私はダメだ。何やったって幸せになれない」と思うのは、頑張るよりもラクチン。うーん、セツナクなっていてはいかん。ハッピーに憧れなくては。
2006.03.21
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本当は別のことを、好きな漫画のことについて書くつもりだったのですけれども、テーマで「オススメの漫画」ってなかったっけと探しているうちにこれを見つけたので書いてみましょう。オススメ漫画TOP10!!漫画、大好きだけれど買いだしたらキリがないと思ってあんまり買いません。漫画喫茶も行ったことない。だから、読みたいな~と思って読んでないのはタクサンあります。さーあ、行ってみよう!ワクワク!※画像はただのアフィリエイトです。画像登録作業がめんどかったんです、ごめんなさい。肝心の一位二位の画像がなかった。10位!(もったいぶって逆から…)『火の鳥』手塚治虫作好きというより、幼い頃読んでほぼトラウマ。こわいよ、アレ。でも忘れられない9位『ねじ式』つげ義春作純粋にすごいなあと思う。笑わせるところからいったん離れた、滑稽。違うな、人間とは滑稽で出来てるんだそうなんだ。8位『ホットロード』紡木たく作ちこっと恥ずかしいですが紡木たくには中学生の頃はまっていました。『瞬きもせず』『かなしみのまち』『純』も良いです。矢沢あいより全然いい。と、思うけどなー。7位『ぼくんち』西原理恵子作こないだ朝日漫画賞短編賞かなんかを取った西原さん。うちの姉がこの人好きでだいたい揃ってます。『できるかな』シリーズとか『鳥頭』シリーズもそれはそれで面白いけど、代表作はやっぱこれなのか。汚くて泣ける。けど最近は売れすぎてちょっと。『毎日かあさん』は応援してます。6位『動物のお医者さん』佐々木倫子作この作者さんはすんごい真面目な人だと思う。頭の良い人だと思う。もう、絵が。背景までびっちりでさ。最新作の『月舘の殺人』を読んで、あー、ミステリーにもってこいの絵柄だなあと思いました。『ナースのお仕事』『HEAVEN』はちょっと考えすぎな感じで。『動物のお医者さん』が一番好きです。5位『めぞん一刻』高橋留美子作日本屈指のストーリーテラー。小説や舞台の脚本書かせても書けたと思う。初めて読んだのは小学生の頃。『めぞん一刻』で「契る」の意味を知りました。あと…まあ、いいや。4位『Ero・mara』やまだないと作大学の比較文化かなんかの授業で課題図書だった。これはなかなかすごいです。その時の担当教授曰く、「エイズの漫画」。う~ん、まあそう言えばそう。考えすぎてしまって、やまだないとの作品は他は手をつけてません。あんま考えたくね。一度、高円寺の本屋さんで作者さんのサイン会に偶然居合わせたことがある。髪のなが~い人だった。仲の良かった男の子に「エロマラっていう漫画がおもしろいよ」と言ったらば、「女の子がそんな名前の漫画を読むのはどうかと」と言われた。まあ、そう言えばそうね。3位『サザエさん』長谷川町子作何度も言うが、アニメでしか『サザエさん』を知らずに『サザエさん』を語らないで下さい。杉浦家からのお願いです。2位『百日紅』杉浦日向子作『百物語』も『合葬』も『とんでもねえ野郎』も『風流江戸雀』も『ニッポニアニッポン』も全部好きですよ、もちろん。大好きです、大好きです、大好きです。でも、杉浦日向子さんを知らない人に初めて読む人にオススメするならとか、代表作は…とか、一番円熟した時期の作品は…とか、考えるならやっぱりこれかなー。1位『リバーズエッジ』岡崎京子作岡崎京子さんは、なんというか影響を受けすぎて、簡単には何も言えません。『愛の生活』『UNTITLED』『ROCK』『好き好き大嫌い』『チワワちゃん』『私は貴方のオモチャなの』『PINK』『エンド・オブ・ザ・ワールド』『ヘテロセクシャル』『ジオラマボーイ・パノラマガール』『カトゥーンズ』などなど…。ほとんど全部集めたのに、いつのまにか手元に残ったのは数冊。もう一度買い集めたけど、やっぱりなんでかなくなりました。おそらく、もう2回くらいは全部買いをするんじゃないかっていうくらい、強烈。この人の印象が強すぎるので、安野モヨコとか、「岡崎京子に続く」と言われるような女性作家さんの漫画をあまり読むことができない。義理立てのような気持ち。知ってる方も多いと思いますが、もう何年も前にずっと事故に遭われて療養中です。回復を祈るファンのなんと多いことか。女の作家さんばかりだなあ。男の人のも読んでますよ、『モンスター』(浦沢直樹)とか、『リアル』(スラムダンクの人)とか。『バカ姉弟』(安達哲)も『シガテラ』(古谷実)も好きなんだけど今の気分ではベスト10はこの十作。20才をこえた頃から、小難しい漫画、切なくなる漫画はなんとなく読むのがかったるい。昔はそこまで好きではなかった、ただ笑えるだけの漫画が好きな気がします。私の尊敬する教授のオススメは、みなもと太郎『風雲児たち』です。歴史漫画。あのね、カバーは↑こんなだけど、ギャグマンガなんですよ。作者は『ホモホモ7』の人ですよ。確かに面白い。子供には読ませたい。
2006.01.31
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う~ん、なんかいきなり登場人物増えすぎてませんか。引き延ばし作戦もいいけど、こんなことじゃああと一体何巻かかるのやら。人気の漫画も大変だ。人物相関図の→がまた一つ増えたようで。しかも過去の。あまりにも、あまりにも。でも気になるから買うのだけれど。そういえば、矢沢あいの初期の短編作品に、紡木たくの短編のまるまるパクリ(今ならインスパイアというべき?)が2,3あるって誰も言い出さないのだろうか。「天使なんかじゃない」のトオルさんとひろこさんの名前もホットロードから取ってるあたり、かなり紡木たくに影響を受けた人だと思う。
2005.12.14
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みなさんはマスオさんの特技がお中元の中身を当てることだというのを知っていますか?サザエさんが婦人警官をしたことがあるのを知っていますか?タラちゃんがお経を聞くとトランス状態に陥るのを知っていますか?ワカメちゃんがマスオさんの絵のモデルでヌードになったことがあるのを知っていますか?カツオくんは修学旅行先の旅館で気に入られて養子縁組を申し込まれたことがあるのを知っていますか?フネさんが英会話を習っていたことがあるのを知っていますか?ナミ平さんにはそっくりなお兄さんがいるのを知っていますか?イクラちゃんの名前は「ナミエ」だったかもしれないことを知っていますか?(漫画にイクラという名は出てきません)ノリスケさんはタイ子さんとは二度目のお見合いだったことを知っていますか?アニメのサザエさんだけを見て、サザエさんを知った気になってはいけません。漫画サザエさんの毒の部分をみなさんに知ってほしい。「毒」って漢字はじーっと見てると、ほら、サザエさんの髪形に見えてきませんか?長谷川町子さんは「毒」という漢字から、サザエさんのキャラクター設定を考え付いたんだそうです。ウソです。でも、サザエさん」だけでは思う存分、毒を吐けないから「いじわるばあさん」を書いたんだそうな。これはホント。長谷川町子さん、絵からも字からも相当に几帳面な人だったのだろうと思わされますが、同時にかなりニヒルな人だぁよと、尊敬しています。
2005.11.21
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矢沢あい「NANA」音楽部門・映画部門・コミック部門と3つ揃って1位を獲得したと先日報道されていた、大人気少女漫画コミック「NANA」。私も読んでます。去年の夏だったかに人から借りて11巻くらいまで一気に読み、それからも新刊が出るたびにチェックしてます。初めて読んだ時の感想を語弊を恐れずに言えば、「ティーンがこんな過激な漫画を読んでいいのか」です。巻を増すごとに頻繁になる性描写だとか、未成年の喫煙とか、ヒロインの彼氏が変な薬を飲んでるとか、そういうことが過激だと言ってるのではありません。ええと、比較としてあげるなら。私が高校生の頃、一番はまっていた漫画は岡崎京子のものでした。どのくらい一般に知られている漫画家だかわかりませんが、彼女の漫画にも性描写や喫煙だとか高校生の覚醒剤服用とかが出てきて、それはもう「NANA」とは比べ物にならないほどで、特に性描写についてはちょっとあんまりここには書きたくないようなものもあります。「うわ~」「あちゃ~」と思いながら読んだものですが、その過激さと、「NANA」の過激さとは違う。岡崎京子の漫画にあるのは、普通の女の子の普通の日常がどこかで狂っていく、そんな怖さ。始めは読者と同じように普通に学校に通う女の子が、ちょっと階段を踏み外してしまって、もうどうしたらいいのか、どこに行ったらいいのか、何をしたらいいのかわからなくなるような、そんな破滅。「怖いなあ」「イヤだなあ」と、リアルに感じはするけれど、その時に感じる「リアル」は、新聞の記事で同い年の女の子が殺されてしまったのを見るような、そんな感じのリアル。もちろん、これだって充分に怖くて、一冊読み終えるたびに放心してしまうことがしばしばでした。けれど、「NANA」のリアルはそれを超えた。上京した主人公・奈々が早々に偶然出会った気の合う女友達(もう一人の主人公・ナナ)と二人でお洒落な部屋に住み始めたり、ナナのバンドのメジャーデビューが決まったり、奈々は有名バンドのメンバーと付き合うこととなったり。設定は少女漫画の王道。十代の女の子が誰しもちょっとは夢に見る世界。けれど、その状況を二人のNANAが楽しんでいるかと言えば、その正反対。自分の意思で進んでいるというよりは、状況に抗いつつも流されているようにしか見えない二人。彼氏に振られたり(しかも、自分にも過失アリ)、ちょっと遊ばれただけの相手の子供を妊娠してしまったり、過去のトラウマをひきずって幸せに怯えたり。二人が抱える辛さやさみしさは全て、普通の女の子が共感できる範囲内。非現実的な舞台で起こる、自分にも有り得る悲劇。私にはその落差がどうにも過激に感じられて。矢沢あいという人は、ごく普通の女の子の感情を丁寧に描写するのが上手い人だ。だけど、それ以上に読者の想像する斜め上を行くのが上手い人だ。読者の想像する斜め上とはすなわち、読者が本当に「読みたい」と思っているストーリー展開。あざとい、と言ってもいいほどに、矢沢あいは二人のNANAを苦しませる。それは、読者がそういうものを読みたいと思っているからだ。「NANA」が国民的人気を得たとはいえ、やっぱり一番人気のある層が十代の女の子であることに変わりはないだろう。十代の女の子が、破滅的な苦しさを読みたがる、言い換えれば自分のみに置き換えて楽しむ、なんだか今の世の中のムードを象徴しているようだ…と、書こうとして、思いとどまる。十代の女の子が悲劇的主人公に憧れるって、そういえば太古の昔からある自然現象かもしれませんね。まあ、いいか。でもくどいようだが、こんな可愛らしい今風の絵柄を描いて、お洒落な洋服を主人公達に着せて、登場人物に自傷行為をさせたり、中学生の年齢の男の子に売春をさせたりするのは、巷の話題に追随するようで、あざといなあと思ってしまう。人気が過熱してからのストーリー展開は引き延ばし作戦というか、どうも場当たり的なものを感じてしまったりもするが、まあ、いいか。なにはともあれ、読者を感情移入させまくることに関しては天下一品「NANA」。おじさんおばさんに今の子って何考えてるのか、コワイわ~と言わせないためにも、ティーンが世を儚んで自殺したりしないためにも、ハッピーエンドを強く望みます。望む会、一人で発足であります。
2005.09.25
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古谷実「ヒミズ」こないだまでヤンマガに連載されていた「シガテラ」もそうですが、稲中の古谷さんがこういった方向に行くとは誰が思っていたでしょか。内容にはあえてあまり触れません。古谷さんは、現代の青少年を取り巻く状況の虚ろさや過激さや危険さやどうしようもなさを一人で背負い込んで悩んでいるように思える。正解はたくさんある。正義もたくさんある。なにが正義かわからない。出口がない。いくら考えても考えても、結局は狭い十代の世界。その狭さに気づいてみてもどうすることもできない。じっと十代が過ぎるのを待つしかない。人類普遍の問題だけれど、古谷さんがそれに重ねて描くのはいつもの日常のすぐ隣にある異常。残酷なことは世界のどこでも起こるけれど、「平和な秩序が保たれている」日本で、「一見つながっているように見えて実は個々に、狭いコミュティに断絶されている」都市で、それは前触れなく訪れる。そう書くと岡崎京子を想起するが、岡崎京子の描くものは「ヒミズ」「シガテラ」に比べるとまだ整然としている。彼女なりの答えを彼女は漫画の中に示している。「ヒミズ」の作者はまだ迷っている。彼は深い絶望を持っているのではないだろうか。「自然の正義には、秩序がない」そう思っていないだろうか。漫画のストーリー展開のセオリーから外れた彼の作品を読んでいると、そう感じる。
2005.08.29
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西原理恵子「毎日かあさん」や杉浦日向子「百物語」など、最近うちにある漫画をせっせと餌付けのように恋人プーさんに貸しているワタクシ。プーさんが今はまっているのがこちら、「めぞん一刻」。我が家でトイレに入ったプー、出てくると片手に「めぞん一刻」。「これ、おもろいね、貸して」と言ってそのまま持っていきました。うちのトイレには「サザエさん」全巻と「いじわるばあさん」全巻と「エプロンおばさん」全巻と「めぞん一刻」全巻と、「ちびまる子ちゃん」「じゃりんこチエ」「小さな恋の物語」がそれぞれ何巻かずつ置いてあるのです。家族揃って漫画大好き。かっこつけて「愛読書はチ、チボー家のジャック、オホホホホホ」なんて言ってますが、本当は父も母も姉も私も漫画の方が好きなのです。そんな我が家でアンケートを採ったら、必ずBEST3に入るであろう「めぞん一刻」。母も、「(作者の)高橋留美子さんは小説家顔負けのストーリーテラー」と絶賛してます。知らない方のために簡単にストーリーを説明いたします。おんぼろアパート「めぞん一刻」で起こるドタバタ劇。全十巻(昔出ていた少し大きめの版では全15巻でした)。以上。ええと…去年くらいに電車の中で「めぞん一刻」の広告を見まして、それだと「ちょっと切ないほんわかラブストーリー…」みたいなことになってたのですが、純愛ブームの中で売り出す側としてはそういうことにしたかったのかもしれませんが、「めぞん一刻」はそんなチンケなもんじゃないぞ!と私は言いたい。確かに、主人公五代さんと管理人の響子さんがくっつくかくっつかないかが核にあるのだけれど、二人を取り巻く人間モヨウの面白さにこそ「めぞん一刻」の神髄があるのではないかと。憎めない登場人物達。喜怒哀楽の全てを、ギャグが包む。つくづく、滑稽でなければ悲哀もないと思います。作者は恐らく人の心の揺れ動く様を掴むことがとても上手い。でもそれをあからさまに描写するのではなくって、軽いノリで描いている。あくまで漫画。その押しつけがましくないとこがいいんです。女性の裸をとっても可愛く描くのもこの作者の特徴。小学生の頃は、大人になったらこういう体になれるんだと、勘違いしていたものです。ほんとにオススメ「めぞん一刻」。漫画喫茶にでも行ったら読んでみて下さい。検索してみたらマニアの方の「めぞん一刻」研究HPがたくさんあって、べべべっくりしました。付け足しになりますが、そして読んだことのある方にしかわからないことでありますが、響子さんの父は我が家の父に生き写しです。モデルはうちの父ではないかと思うくらい。5頭身の体格といい、頑固で涙もろい性格といい、もうそっくり。
2005.08.25
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杉浦日向子著。新潮文庫。1988年文春漫画賞受賞作品。川柳にちなみながら江戸っ子の生活を活写。「屁をひって おかしくもない 一人者」「ほれたとは 女のやぶれ かぶれなり」「こわい顔 したとて高が 女房なり」「くどかれて あたりを見るは承知なり」「あいさつに 女はむだな 笑ひあり」このあたりは現在にも通じるおかしさですね。次にあげるものは江戸の風俗を知らないとちょっと解読が難しい。「寒い時 おまえ鰹が 着られるか」→当時、初鰹は庶民の感覚からするとべらぼうに高かった。杉浦日向子さんは「大江戸美味草紙」の中で、一本で大体下級武士の年俸くらいしたと考証されてます。 そのべらぼうを買ってみせるのが江戸っ子の粋。女房を質に入れてでも買いたいものでありんした。 そんなわけで、これは冬物の服を質に入れて初鰹を手に入れようとする主人に意見する奥さんの一句なわけです。「死なぬかと 雪の夕べに 下げてくる」→寒い時期は鍋物。鍋の材料でおそろしいものといえばやっぱり河豚なわけで。「おそろしき ものの喰いたき 雪の空」という句もあり。「紅葉見と 聞いて内儀(おかみ)は 子をさずけ」→紅葉見の符号と言えば吉原遊郭。吉原とほんの目と鼻の先に紅葉の名所正燈寺があることから。「ほんとに紅葉見に行くんなら、この子も連れてってあげなさいよフフン」と奥さんは意地悪をしているわけで。「二日の夜 浪のり船に 梶の音」→句の世界で一日と言えば一月一日、二日と言えば一月二日、三日と言えば一月三日ですが、正月二日の行事としては年始・初荷・鳥追い・初夢の他に姫始めがあるんだそうです。私は知りませんでした。梶の音だから「ぎいっ…ぎいっ…」ってわけですね。そんなわけでちょっとエッチな句です。今でも共感できるような男と女の句や、日常のささいなことを詠んだ川柳を、日向子さんが風情を持って漫画化。江戸も今も変わらない人情の機微を感じたり、やっぱり江戸と今は時間の流れ方が違うと思ったり。「昔も今も同じだね」と「こういう情景は今はないね」の間をゆっくり行ったり来たり。「百物語」や「百日紅」よりも江戸の庶民が身近に感じられて読みやすいです。日向子さんはやっぱり短編の名手です。若い人には渋く感じられるのかな??
2005.07.30
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杉浦日向子著。ちくま文庫。解説夏目房之介。諧謔にあふれた著作の多い日向子さんの作品の中で、哀切というか人と人との別れを主題に扱ったものが多い短編集。ピンとこない人はこない作品が多いかもしれない。オススメを一つあげるなら一番最後の「吉良供養」。ご存知「忠臣蔵」の討ち入りを吉良側の目線で書いたもの。ほぼドキュメンタリー。よくこんな記録が残ってたなと思うのですが、どの部屋でなんと言う名前の家来でどのくらいの給料をもらっていたものが、どんなふうに斬られて、負傷、又は死亡したのかということを仔細に書いてある。美談として書かれる忠臣蔵だが、全く無防備だった吉良側からすれば、寝耳に水の大量殺戮。どこか他のところで読んだのだが、日向子さんは吉良家の子孫の遠縁(記憶が曖昧ですが)とかいうこともあり、忠臣蔵賛美・大石蔵之介万歳には容易に賛成できないところがあるのだそうな。最後に「赤穂主従の墓所泉岳寺も大そうな景気だが、片や吉良家の「忠臣」は、その埋骨の地点さえわからない。曰く 大義悉くを滅す と」私の知識ではどちらがどうということもできないし、する必要もないと思うのですが、それはさておき、こういうものを漫画して、しかも面白く読めるところがすごい。どんなドラマよりも討ち入りの場面がリアルです。15才の茶坊主は「子供だから」と斬られずにすみそうだったところを、忠義を立てて応戦したために斬られてしまったとか。「私は菓子蝋燭の役人ですからどうぞ命だけは…」と命乞いした者がいて、その蝋燭のために邸内は明るくなり、討ち入り陣もつまみ程度に菓子を頂いたらしい。そのことを書いたコマの横に小さく「ヒナコ談もし自分が当事者ならばさしずめこんなだらふと思ふ」と書く日向子さんが可愛い。
2005.07.28
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杉浦日向子著。ちくま文庫。解説北方謙三。吉原の遊女達を主人公とした短編集。表題の「二つ枕」はシリーズで四編から成る。「初音」…大店のまだ若い売れっ子花魁と、「遊び人の叔父」に初めて吉原に連れてこられた商家の箱入り息子との一夜。「麻衣」…中店かそれよりも下位の店の女郎と、今日で家から勘当されたという間夫との一夜。「萩里」…中店の女郎と、雨に紛れてやってきた初会の客との一夜。「雪野」…大店中の大店、花魁と金持ちな問屋の主人との年季の入った掛け合いで更けていく一夜。色々な客と遊女との組み合わせを描いていることも、舞台は全て遊郭の二階、花魁の部屋で、会話に頼った進行であることも、「それがウソだ」「ウウ、あいつめがにくいの」「コレサあやまった」などの台詞も、「二つ枕」が洒落本を踏まえて書かれたものであることを示している。踏まえて書かれた、というよりももはや洒落本の映像化であろう。洒落本を初めて読んだ時、まるで舞台の脚本だと思った。それほど台詞ばかりなのである。ト書きのように台詞よりも小さい文字かつカタカナで「フト抱キツキ口ヲ吸フ」なんて書かれてたりする。会話だけでそれぞれたった一夜のことを描いているだけなのに、奥行きがある。花魁の粋やさみしさや優しさや愛嬌が読みとることができる。「吉原は男の天国、女の地獄」という言葉がある。恐らく明治になってからの言葉ではないかと思うけれど。「かごの鳥」の逃げられない遊女達。借金が終わるまで客を取らされて、折檻が日常茶飯事の苦界。そんなイメージを持っている人も多いかも知れない。そう説明する解説書もたくさんあるし。確かに吉原にはそういった一面もあっただろう。けれど、吉原の遊女達を「可哀想」「みじめ」という言葉でだけ捉えるのは彼女たちに失礼だ。それこそ、彼女たちの尊厳を傷付けることだと思う。悲しいことばかりではなくて、客と恋することだってあったし、その駆け引きを楽しむこともあっただろうし、自分の美しさに対する自信もあっただろうし、粋を極めることを面白がっていたはずだ。「性」のとらえ方が今よりも大らかだったということもある。少し話がずれるけれど、西洋にあるような性の隠匿性は江戸にはない。厚い壁ではなくて、一枚の襖、一枚の屏風の向こうで行われるセックス。決して特別ではない、日常のヒトコマ。「二つ枕」にも遊郭遊びを描いた洒落本にも性描写はほとんど出てこない。客と遊女のだましだまされ、惚れて惚れられの会話の掛け合いを楽しむものだ。遊女の体のことだけを考えて、「哀れなる女達よ…」なんて言ってしまうオジサン達ってほんとイヤラシイッ!!と思うのであります。◇◇もうすこ~し軽やかにおもろくレビューを書くつもりでしたが、ついつい暑苦しくなってしまいます。日向子さんはそのへんのとこが上手くてほんとに粋なんでございます。◇◇
2005.07.27
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杉浦日向子著「百物語」珍しい伽羅の線香をもらったご隠居が、九十九話の怪談を訪れるお客たちに語ってもらう。外国の人からすると、日本の幽霊・物の怪は、その脈絡のなさがコワイのだそうな。もちろんお岩さんのように恨みのある対象にメラメラメラ「いちま~~い」っていうのもありますが。「百物語」に出てくるものをあげると夜道に突然天からふんどしが下がってるとか「妖怪墓磨き」を見てしまった町人が家へ帰ってきたら、幼い娘の歯が真っ黒に塗られて(お歯黒)いたとか女房が徐々に胞子(?)に乗っ取られるとか女房が突然叫びながら家を出て山から戻ってこないとか障子の一隅にいつも人の顔が浮かんでるとか巨木の精が娘を連れ去ったとか月の夜には蔵の壁から真っ白な手が伸びてるとかいやあ、わけわかめですね。そのわけわかめさに不思議なリアルを感じてしまうのはやはり日本人だからでしょうか。それにしても、話によって絵のタッチの変わること。大きな手に山に連れ去られる女房の話は荒々しい筆遣いだったり、沼から美少年の現れる話は細緻に書き込まれていたり。日向子さんは本当は絵を描くのはあまり好きではなくて、でも漫画という手法でしか自分の江戸は表現できないと思ったから漫画を描いたと聞いたことがあります。もちろんタッチの違いはその話の雰囲気に合わせてのことなのでしょうが、もう一つ、日向子さんは他の漫画家とは違い、自分のスタイルがあってストーリーを作るのではなく、ストーリーに合わせるために、その時の江戸に合わせるために自分のスタイルを変える漫画家だったのではないでしょうか。「ぐにゃり」とした感触。一見、あっさりした印象の話が多いですが、想像すれば想像するほどおもろこわいです。【7/26追記】「いちま~い、にま~い」は番町皿屋敷のお菊さんでした。お岩さんは「四谷怪談」です。臼の字さん、ご指摘ありがとうございます。
2005.07.26
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杉浦日向子さんが亡くなってしまいました。ネットで見て目を疑いました。あまりにも早すぎます。46才…。初めて読んだのは高校の時に「百物語」。その後、大学で江戸文学を専攻し、洒落本を研究した際に教授にすすめられて再会。「二つ枕」「合葬」「風流江戸雀」「ニッポニアニッポン」「百日紅」…恐らく漫画は全て買いました。私の江戸観は多分に日向子さんに影響されています。見栄っ張りで可愛い江戸っ子、粋の中にもさみしさを感じさせる花魁、偏屈だけど憎めない北斎、文明開化の頃、戸惑いつつも明るく真っ直ぐな若い学生達…滑稽で馬鹿馬鹿しくて寂しくって少し怖くて、だけど、明るい江戸の明るさを教えてくれたのは日向子さんだと思います。タイムマシーンで江戸に行けたら…日向子さんがよく仰っていた言葉です。大学院で遊び半分に勉強している私ですら、一瞬でも江戸に行ければどれだけ多くのことがわかるだろうと「江戸行き」に憧れます。ましてや日向子さんはどれだけ行きたかったかと。今頃、悠々と江戸を散歩されていればいいなと思います。数年前から「隠居」と称して漫画家を引退しておられましたが、思えばこの死期の早さをどこかで知ってのことだったのかもしれません。私は、こんなに好きならいつかお会いできるものだと呑気に考えていました。悲しいです。もう葬儀は身内で済まされてしまったようです。一ファンが手を合わせられる場があればと思うのですが。ということで、明日からは追悼杉浦日向子さん特集をやるしかありません。
2005.07.25
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少女漫画界の今や筆頭、安野モヨコが旦那さんでエヴァンゲリオン監督の「オタクのカリスマ」庵野秀行との新婚生活を赤裸々に描く!!内容はそんなとこ。「なんとなく評判だから」で買ってみたものの、ご夫婦どちらの作品にも触れたことはありません。あんまり。安野モヨコさんは80年代を代表する天才漫画家岡崎京子の元アシスタントということを最近知ってちょっと興味を持ちましたが、漫画は吉原遊郭を題材に扱った「さくらん」しか読んだことがありません。エヴァンゲリオン監督についてはなんともはや。全くしらにゃい。二人とも名字の読み方が「あんの」っていうのすら漫画中で知りました。「やすの」かな「あんの」かなと思ってたし、「鹿野」かと思ってた。そんなわけで、読んだ感想としては。・仲が良くっていいなあ。・やっぱりすげえお金持ちなのね。・オタクって言ったってお金があるんだからいいなあ。・楽しそうだし、お金もあるし、仕事もあるし、家もあるし、別荘もあるし…あっ、暗くなっちゃった。安野さんが何故「パンパース」なのか疑問でございます。
2005.07.18
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いろんなとこで話題になってたので読んでみました。人気漫画家が連載をほっぽり出して、「失踪」→ホームレス生活(ホームレスという言葉は作中で一回も使われていませんが、便宜上)を送った際の生活を描いたノンフィクション。おまけな感じで、ホームレスから一歩進んで(?)ガテン系の職を得た編、編集者の作る筋立てと自分自身の表現との間で悩み鬱におちいってく編、アル中病棟編がついてます。初めに「この漫画は人生をポジティブに見つめ、なるべくリアリズムを排除して描いています(リアルだと描くの辛いし暗くなるからね)」と書いてあります。その通り、↑の内容だけ見ると、うわーやべーって感じですが、漫画は暗くありません。主人公の表情にも暗さはなし。ただ、野宿生活を淡々と。コマ割も淡々と。ドラマチックな出来事も過剰な感情表現もでてきません。これだけの事実があれば「!」マークなんていくらあっても足りなさそうなのにほとんどで出てこない。主人公も泣かない。嘆かない。むしろちょっと楽しそうとさえ思える。しかし、そうすると読者としては余計に「さっくりと描いてあるけど、辛かっただろうに…もちろん想像を絶するほど悩んだのだろうな」と考えてしまうのであります。キャンキャン泣いて「もうダメ、私死ぬ!!」としょっちゅう騒いでいる人よりも、辛いことがあっても笑顔で頑張る人の方が同情を買う、みたいな。ちらっと「このへんのことは、シャレにならないのでカット」(捜索願を出した奥さんとのこととか)と書いてあるあたりに見てはならないくら~い影を見てしまうのです。漫画の仕事がイヤでホームレスになって、ホームレスに飽きて住み込みで配管工をはじめた作者が、その会社の社内報に漫画を投稿してしまうあたりが泣かせます。泣かせる意図はないと思われますが。作者の漫画をリアルタイムで読んでた人だと面白さ倍増なのだと思います。私はちこっと年代が違うので知りませんでした。でもおもろいです。リアルなつげ義春っぽいです(と、書くと安易と言われそうですが)。□夕飯は海苔巻きとおだんご□
2005.07.06
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昨日の朝日新聞で丸谷才一さんが、サザエさん全巻を拾ったことがあるという体験を書いていた。赤塚不二夫論だったのだけれど。サザエさん全巻、いいな。うちにも全巻あるのだけど。ふふ。でもやっぱり、サザエさん全巻がごみ集積所に出してあったら持って帰ると思う。そして知人に無理矢理あげて、その素晴らしさの普及に一役かいます。それがフアンというものではないでせうか。でも古本を人にあげるのは失礼かな。でもタダならいいんじゃないかな。前にも書いたけれどサザエさんをアニメでしか知らない人は絶対読むべし読むべし!1巻や2巻読んだことある程度じゃダメですよ、やっぱり全巻読まないと。サザエさんを読んでないなんて戦後の日本に生まれた意味がない、とすら言っちゃうよ私は。赤塚不二夫さんが今も意識不明で眠り続けているというのは知りませんでした。バカボンもちょっくらじっくり腰を据えて読んでみるかなあ。
2005.06.08
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平成16年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞作品、こうの史代作「夕凪の街 桜の国」を読みました。「ヒロシマ」をテーマにしたものです。誤解を恐れずに言うと私、あんまり戦争の作品て好きではありません。漫画にしろ小説にしろ映画にしろ。やっぱ怖いですし、悲しいし、それから今現在自分が戦争に巻き込まれていないのだから、見なくて良いなら見たくないという気持ちもあるかなと思います。小さい頃、うちにある世界名画集で終わりのページにある「ゲルニカ」の絵が怖くて怖くて仕方なかったです。もう最後のページにその絵があるだけでその本自体、本棚の奥の奥の方へ封印してました。学童保育に通ってたんですがそこにあった「はだしのゲン」も何回も読んだけれど、もう今読みたいとは思いません。悲惨です。小学校の頃とか学童保育でとかその前の保育園でも、東京大空襲とか「アンネの日記」とか結構戦争教育があったように記憶してるんですがどうでしょう。我が家にも何冊も戦争に関する本ありました。もう物心着く前から「ヒロシマ」「ナガサキ」についても東京大空襲も「疎開」「鬼畜米兵」「欲しがりません勝つまでは」という言葉についても知ってた気がします。絵本や漫画やアニメ映画で。すり込みのようにして映像とともに私に備わった記憶です。その結果、今、戦争がテーマの作品は苦手に感じています。積極的に読みたいと思いません。でも私はそれでいいんじゃないかと思っています。私は自分自身で戦争を体験したことはないですが、本能的に戦争が嫌です。怖いです。恐ろしいです。お気楽な平和主義者と言われるかもしれませんが、なにがあっても戦争には絶対反対です。理屈ではないです。苦手、と言いましたがやっぱりこれからも機会があれば戦争に関する本も読むだろうし漫画も読むと思います。子供が生んだらやっぱり子供のうちに戦争を学ばせたい。生意気になる前に。「夕凪の街 桜の国」には戦争の生々しい描写はでてきません。戦後十年がたってからのお話。去年公開されてた井上ひさし原作の「父と暮らせば」(宮沢りえ主演)と重ね合わせるとより、主人公の気持ちが理解できるような気がします。ちなみに「父と暮らせば」は映画が絶賛されてましたが、もととなった舞台作品もべらぼうに面白いです。DVDかなんか出てたら必見です。アメリカ人の子供には「はだしのゲン」「蛍の墓」を、大人にはこの作品を読んで欲しい。あ、でもアメリカはコミック文化が発達してないから無理かな。惜しいな。
2005.06.05
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大変お暑うございました。タンクトップの人も見かけました。さて、今日は好きな漫画のお話。近くに「バカ兄弟」があったので撮ってみました。これは去年の誕生日プレゼントにもらいました。古谷実の「シガテラ」も一緒にくれました。知ってる人は知ってると思うのですがどちらもヤンマガに掲載されてます。あんまり漫画は自分では買いません。なぜ買わないのかというと、興味のあるものを全部買って読んでると果てしないからです。あいにく、思う存分漫画を楽しめる時間が今のところありません。また、金銭的余裕もありません。なので今のところ、よっぽど読みたくてしかもずっと手元に置いときたくなるであろう予感のするものしか買いません。あとは借ります。読みたいな~と思っていた漫画を知り合いが持っていて、しかも勧めてきたりしてくれる時、私は一期一会を感じ嬉しくなります。やっぱりアナタとは出会う運命だったのねと思います。アナタとはもちろん漫画でごわす。読みたい読みたいと気になっているといつか出会えるものなのです。気長に待つのがコツです。ま、早く漫画を心ゆくまで楽しめる時間的金銭的精神的余裕が欲しいのですけれども。さて、「バカ兄弟」なのですが、おでこの広いおねいちゃんとぎざぎざ頭のおとおとが、周囲の人を巻き込み惹き付けいたずら狼藉癒し癒され触られ触って泣いたり食べたりさみしく楽しく生きる日常のヒトコマを何気なく集めたものであります。気合いの抜け具合がなんとも良いです。宮崎駿監督が「となりの山田君」制作にあたって、「今の映画は描き込まれすぎている。昔の四コマの、まわりは白くぼかされて描かれない、なぜか暖かみを感じさせる、そんなところを大事にしたかった」というようなことをおっしゃっていたかと思うのですが(全然違うかもしんまい)、宮崎監督が「バカ兄弟」に先に出会っていたらこっちを映画にしたのでは。いや、しないか。でもしてほしかったな。いや、そうでもないかも。とにかく、いい気持ちのする力のぬけ具合です。刺激の少なさが心地よく粋に感じられるのものは、今のメディアにおいて貴重なのではないでせうか。これを書いている安達哲さんという方は確か昔「お天気お姉さん」を書いていたと思うのですが。子供心にエッチな印象をうける絵柄・タイトルだったように思うのですが。でも読んだことありません。知ってる人いたら教えてください。確か深夜に放送されてた気も…?気になる木になる~。「シガテラ」は「稲中」の古谷実さんですが、面白いんだが今のところ何をしたいのかいまいちわかりません。ハラハラはします。誰か深読みに深読みしているマニアがいたら教えてもらいたしです。(^-^)今日はこれから寿司を食べに行くわいな(^-^)
2005.04.29
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こないだ買っておいた「古典落語100席」を読み始めました。大学で江戸文学を研究しているんですが、落語はまだ聞いたことがナシ。「江戸文学勉強してるなんてよそで言うな」と多分研究室では思われているとではないかというくらい不勉強なんですけどね。さて、この前書きで立川志の輔師匠は、落語の笑いは決して古いものではない、さらに今読んでさえ、新しく感じるというようなことを書いてらっしゃいます。「古く感じるけど実は新しい!」ってよく聞くフレーズと思われるかもしれませんが、確かに江戸の文学「洒落本」や「黄表紙」を読んでいる時に私ももそう思います(ものすごーくくだらないものも多いですけど、そこがまたいいんです)。「落語」とか「江戸」とか聞いただけで「あ、私はいいです。」と思ってしまう人にこそこの面白さを知ってほしいなーと思います。まあ、別に知らなくても生きていくのになんの問題もないですけどね。それを言ったらおしまいです。やっぱり「落語」「江戸」は敷居が高いという人は。まず「サザエさん」を全巻読んでください!特にアニメだけで「サザエさん」を見て「サザエさん」をわかった気になっている人!あれは漫画とは全く違います!アニメでは、明るくて健康的などたばたした一家ということだけ強調されていますが、漫画では、時事問題あり、ひがみあり、ブラックユーモアあり、果ては破廉恥あり。何を書いても、嫌味なくまとめているところが作者の腕だと思います。おそらく長谷川町子さんは、日本人の良いところもアホなところもよく観察していた人なのだろうなあと。見栄をはったり、いらないおせっかいをしようとして失敗したり、情にもろかったり、すぐ人に迎合したり・・。ギャグのセンスや落ちのつけかたには、今の漫才にもつながる部分がありますよ。四コマ目で時折見られる「ツッコミ」も見事です。思うことは笑いの根元て、昔から変わってないんではないかと。そして日本の笑いは、毒もあるけど人情があって、また、エロも明るい笑いにできるものではないかと。エロの話になるとまた内容が変わって長くなるのでやめときます。一言だけ言うと、江戸文学はエロ文学です。嘘です。偉い研究者の人、江戸好きの人ごめんなさい。あ、サザエさんの話ですが、文庫本で初めの頃はかなり絵が違うので、まず23巻あたりから読み始めるといいかもしれません。うちのトイレには昔から「サザエさん」が全巻置いてあるのがちょっと自慢です。 (^^)今日の夕飯はハンバーグ肉じゃが(^^)
2005.04.24
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