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【送料無料】拝金『拝金』堀江貴文/徳間書店収監が決まってしまったホリエモン。ニコ生でやっていた記者会見、ホリエモンのことだから飄々としているのかと思ったら、それなりにショックが大きいようで、やつれていて(少し老けたように見えた)気の毒になった。彼女とかいるのかな。かわいそう。少し『25時』を思い出した。これから収監される(刑期は7年!)男性が恋人や友人と最後の時間を過ごす映画。■さて『拝金』は少し前に読んだ。読む前はまったく期待していなかった。全然期待していなかった小説や映画が面白いことは結構ある。『拝金』もそれ。物語の構成は別として、文章はアラがあるだろう……と思っていたのだけれど、全然そんなことなかった。かえってプロの作家にたまにあるわざとらしい、時代の感覚とズレた文体(何を時代とズレているかと感じるかは人それぞれだけど、ここでは主に20~30代が考える“時代”)よりも良い。山場になっても感傷的になり過ぎない文体。■女性のことホリエモンという人はいろんな面をメディアに見せていて、いろんな人がいろんな風に評する。ホリエモンのことを語る人は多い。有名人から一般人まで、頭の良い人からそうでない人まで、みんなが語りたがる。そういう人なんだと思う。いろんなことを言われている人だけれど、私が『拝金』を読んで感じたことで、しかもあまり世の中では言われてはいないような気がすることといえば、ホリエモンは結構女性に優しい人なんじゃないかということだ。小説の中で、乙部さんと思わしき女性とか、抱いたグラドルに対してとか、ヒロイン的な女性に対してとか、優しい。その優しさはもちろん、女性は男性と対等であるというような目線ではなくて、圧倒的に強いオスがメスを庇護する優しさに見える。そういうのって優しさなのか? と言う人もいると思うが、いいんじゃないの。オスとメスというから話がややこしくなるのかもしれない。集団の中で強いものが弱いものを(外敵から)守るような、ある意味動物的な優しさを感じる。「寵愛」というのは誰にでもできることではなくて、それは「対等な恋愛関係」よりも難しいことなんではないだろうか。今の日本で。
2011.04.26
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【送料無料】街場のメディア論『街場のメディア論』内田樹/光文社新書私は辞書を引くことが好きなのだけれども、内田樹さんの本を読んでいて辞書を引くことは少ない。複雑で含蓄があり(こういうのを含蓄って言うんだろうと思わされる)、ありふれた、使い古された、お茶を濁すような内容の話は一切ないのだけれど、その内容を誰にでもわかるような優しい言葉で、分かりやすい構成で、手順を踏んで書いている。おしゃべり上手な人だ。■これは心に止めたい「ほんとうに『どうしても言っておきたいことがある』という人は、言葉を選ぶ」(P94)自分の言葉を本当に理解して欲しいと思っている人は言葉を選ぶ。逆に、そうでない人は言葉に責任を持たない。自分が言わなくても、誰か他の人が言うならば、説明を尽くす必要がない。私はライターなので、しばしばたとえば凶悪事件の記事のまとめに、「再発防止のために、隣人との絆を強めよう」と書く。たとえば景気動向の記事のまとめに、「先行きの見えない中、各々が不安を抱えている」と書く。たとえば震災関連記事のまとめに、「ひとりひとりが、できることからやっていきましょう」と書く。間違いではない。間違いではないけれど、どこか空虚だ。それはもうすでに何人もの人が言っている言葉で、私が改めて言う必要もないことだからだ。私が一読者ならば、脳が文章を読み取る前に、目が無視するだろう。「この一文に有用なことは書いていない」と思う。アニメの中で使い回される、背景の木の絵のようなものだ。しかしもちろん、たまには自分が「これを言いたい」と思う記事を書ける機会もあるわけで、その記事を書いたときの気持ちよさを知っているから、この仕事を続けているのだと思う。■読者は消費者ではない「読者は消費者ではない」と筆者は言う。消費者とは、できるだけ安く、労力をかけず良いものを求めようという人だが、本を読む人とはそうではない。「『読者は消費者である。それゆえ、できるだけ安く、できるだけ口当たりがよく、できるだけ知的負荷が少なく、刺激の多い娯楽を求めている』という読者を見下した設定そのものが今日の出版危機の本質的な原因ではないかと僕は思っています」(P130)私は中学生の頃から、論説文よりも小説の読解の方が得意だった。これは多くの人がそうだと思うけれど、新書を1冊読むのは同じ長さの小説を1冊読むのの2倍以上の時間がかかる。経済が苦手なので、日経新聞を読む方が読売新聞を読むより時間がかかる。同じ小説でも、現代の国内小説を読むのに比べて、外国の古典を読む方が時間がかかる。けれど、それでは新書や経済的テキストや外国の古典を読まないかと言ったらそなことはない。自分の好物ばかり食べていたらいけないと小さい頃から言われたじゃないか。好きな本、得意な本ばかり読んでいても、達成感は感じられない。自分のレベルより一段高い本を一冊読んだということは、逆上がりができるようになったときや、50メートル泳げるようになったのと同じくらい嬉しいことのはずだ。それが読書の楽しさなのではないか。「お子様ライス」はそれなりにおいしい。でも、それが「お子様ライス」だという自覚があれば、良識のある大人は注文しない。「お子様ライス」だけを供給するばかりではなく、「これは大人の方が食べる『お子様ライス』です」という嘘をつき続けてはいけない。
2011.04.02
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杉浦日向子の江戸塾 笑いと遊びの巻 (文庫) (文庫) / 杉浦 日向子 著『杉浦日向子の江戸塾 笑いと遊びの巻』杉浦日向子/PHP文庫「遊びって、自分の人生なり、命なりを、時間なりスリルなりと取り引きしてやるものですよ。そういう意味では現代人は遊んでないということでしょう」(P133)「プロセスの楽しみ方は、経験とか知識を積んできた年長者のほうが上手なわけです。だから年寄や大人がより多く遊ぶ権利を持っていたというのが江戸時代なんです。若僧のうちは、なかなか遊びの達人にまでは至らなくて、年長者の教えを乞うという形になっている。大人とか年寄が大きな顔ができる江戸時代というのは、それなりに成熟した文化の時代だなと思います」(P140)「江戸の頃の豊かさというのは、天才とか、才のある人が、企業や大組織に取り込まれないで、遊びの中で才能を開花できたところにある。それがすごくいいですね。実学のほうに行かず、ホントの学問になった。私はホントの学問というのは、有益なものじゃないって思っているんです。有益になるのが実学で、役に立たないのがホントの学問。その学問を江戸の有能な人はきっちりできた。それが豊かさの証明になるのではないかと思います」(P145)「江戸の戯作の面白いのは、そのまんまを書かずに読む人のイマジネーションを刺激することに一所懸命になること。どれだけのキーワードでどれだけのイマジネーションが広がるかが勝負であって、リアルに書くってことは幼稚なことであるという理解なんですね」(P147)「私たちは常に右肩上がりでないといけないという強迫観念にさいなまれている。でも本来は去年と同じ年収で暮らせる社会のほうが幸せなんです」(P203)よく大人が「今の時代にあの人が生きていたら、何と言っていただろう」というようなことを言うのを聞いていたが、私が初めて実感を持ってこう思うのは杉浦さんだ。杉浦さんが20代前半でデビューした頃、日本はバブル期だった。バブルが終わる前に「隠居宣言」をして、約10年後の2005年に亡くなった。想像だけれども、アキバ文化を知っていたら(知っていたかもしれないけれど)、杉浦さんは興味を持ったのではないだろうか。内輪的、ガラパゴス的に進化した文化は江戸の洒落本と似ている。AKB48についてはどう思っただろう。twitterとか、facebookについてはどう思っただろう?iPhoneは? 電子書籍は?「東京、なんだかもうつまらないな」と思って江戸に還ってしまったのなら悲しい。■ハイライト私は「影響を受けた人は?」と聞かれたら真っ先に杉浦日向子さんの名を挙げるであろうほど、杉浦さんのことが好きだが、その一方で、「嫌いな作家は?」と聞かれてすぐにその名を思いつくのは林真理子さんだ。それで今回、杉浦さんと林真理子さんの対談があったものだから、これはもうなんて言うか。必見の取り組み。好物を食べるように、ゆっくり読んだ。好きなものと同じように、嫌いなものも気になるのって何でなのでしょう。とはいえ、あんまりこの対談では林真理子さんの嫌みな感じが鼻につきませんでした。冒頭の「まず、江戸時代の結婚のお話しから伺おうかしら」ってとこには思わず、「なんで上からやねん!」と突っ込みましたが、全体的に江戸時代について義務教育の教科書レベルの知識しかない(それでいいと思うけど)林さんが杉浦さんの話を聞いてピュアに驚きっぱなし。本当に単なる生徒役だ。カルチャー講座聞きに来たおばちゃんのようで取り立てて腹が立つこともなかった。あえて言うならば、「これで他の対談相手(田中優子・石川英輔・高橋克彦など)と同じ原稿料もらってんのか!」。
2011.03.31
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見知らぬ場所ジュンパ・ラヒリ/著。急いで読み飛ばしたくない作家・ラヒリ。短編がいくつかと中編が一つ。以前も書いたが、この人のすごいところは、人物の人生を長期間に渡って記録するにも関わらずページを必要としない点で、さらにそれにも関わらず、とても細やかに人物像を描くところだ。まるでドキュメンタリーみたい。扱うテーマ・設定が似ている場合が多いけれど、そうであっても否定する気にはなれない。面白いから。ただし切ないから困る。■こんな作品が日本にあったらそして私が書店員だったら、間違いなく『本屋大賞』で一票入れる。(本屋大賞にそこまで思い入れがあるわけではないけれど、『告白』が大賞を取ったときは心底がっかりした。書店員の人はあれを本当に中学生くらいの子ども含めて多くの人に読んでほしいの? 「文章を読み慣れていない人にも読みやすいから売りやすい本を選ぶ賞」なら納得する)
2010.07.25
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葬儀の日松浦理英子・著。福田和也さんが、(読んだ人は誰でも圧倒的な才能の前に自分の才能の無さに気付くだろう。読んで何も感じられないならば凡人以下)みたいなことを書いていたので(うろ覚えなので表現はだいぶ違うと思う)読んでみた。表題作については、……う~ん? イマイチ?時代が違うせいだろうか。濃密な世界の中に入っていく入り口を見つけられなかった。福田さんも松浦さんも仏文学出身で、確かにどこかフランス文学っぽい。そちらの人にはぴったりしっくりばっちりくるのかもしれない。私江戸だからよう……。私が10代のときに読めば? もっと飢えているときに読めば? 感想は違ったかもしれない。「渇く夏」の方が好きだった。
2010.07.24
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【ポイント6倍対象商品】Kitano par Kitano北野武/著、 ミシェル・テマン/著、 松本百合子/翻訳フランス人記者による北野武のインタビュー本を翻訳したもの。■驚いたのは北野武といえば評価はいろいろあれど、現在世界で最も認められている映画監督の一人だと思うのだけれど、本人はそれを認めつつも、まだ自分への評価の国内からの厳しさに悔しさを滲ませ、繰り返し自分は理解されていない、認められていない、言いたいことが伝わらないと口にするところ。こんなに大物でも、まだ「誰かに侮られている」という悔しさは払しょくできないのだろうか。目立つポジションにいる人ならば仕方のないことなのだろうか。最近の私といえば仕事で悔しい思いをすることが多く、そのほとんどが、「私の会社(※小さな会社を運営している)がもっと大きければ、こんな態度を取られることはないんだろうな」ということ。日々、イライラジリジリ鬱々している。それだけに、「自分が(日本の映画批評家などから)認められていない」と繰り返す大監督の言葉が印象に残った。■前半では自らの生い立ちを後半では日本の社会について語っている。現在の世の中で多くの人は、士農工商制度があったり将軍が統治していた時代よりも自由であり、庶民の人権が守られていると感じていると思う。でももしかしたら、現在の日本も案外、庶民の置かれている現状は過酷なのかもしれない。一小市民の声が政府に届くことなんて、万に一つもないのかもしれない。北野武がこの本の中で語っていることが半分でも当たっているとしたら、教育の仕方を少し考えなければいけないんじゃないだろうか。選挙で一票持っていれば本当に生活は守られるのか。
2010.07.23
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Hon・nin列伝セキララなオンナたち吉田豪/著。プロインタビュアー・プロ書評家、吉田豪さんのインタビュー集。インタビューされているのは荻野目慶子・中川翔子・土屋アンナ・麻生久美子・広田レオナ。荻野目慶子さんがすごい。世代が上の人なのでよく知らなかったが圧倒された。す、すごいー。
2010.07.22
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【中古】芸能・タレント ≪芸能・タレント≫ 元アイドル!【PC家電_171P10】【10P26jul10】吉田豪/著。細川ふみえさんの回が好き。「鉄骨飲料」で踊っていたイメージくらいしかなかったけれども、すっかりこの方が好きになった。
2010.07.21
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岩崎夏海(ダイヤモンド社) 【もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら】岩崎夏海/著。■読みやすいに、尽きる。私みたいな経済オンチでも勉強した気になれる。『マネジメント』みたいな経済書を、「どうやって読めばいいのか」≒「自分の場合に置き換えて読むためにはどうすれば良いのか」がよくわかる。ありがとうございました。100万部突破おめでとうございます。■でも……(ネタばれ)女子高生を殺さないでほしかった……。
2010.07.20
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にじんだ星をかぞえて上原隆/著■ひとこと感想涙とまらん。
2010.07.19
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悪の読書術福田和也/著■この本でまず著者が訴えているのは人はなぜ、服装が自分の印象を左右することについて敏感なのに、どんな本を読んでいるかが自分の印象を左右することについては鈍感なのか。レディコミとかコバルト文庫ならさすがに隠すかもしれないが、「世界の中心でなんちゃら」とか「なんちゃらクイールのなんちゃら」、それは「よそゆき」の本なのかと。それはビーサンで結婚式行くようなもんちゃうんかと。本だって、服装と同じようにか、もしくはそれ以上に「自分を装う」もの。「世界の中心で……」で感動するのはいいが、誰に対しても「私は世界の…が一番好きな本です」というのは、あまりに無垢すぎやしないかと。■あんまり関係なけれど芸能人に好きな本を聞くのって、ほとんど無意味だと思う。■確かに「好きな作家は何ですか?」と聞かれたときにすぐ答えられる人は、よっぽど無垢な人だなあと思う。■江國香織私は江國香織という人の小説が全くダメで受け付けなくて、大学時代に「江國が好き」と言っている友人たちを見て(男の子も女の子もいた)、「なんでこんな優秀な人たちが江國香織を好きなんだろう」と思っていた。わかりやすくて歯ごたえがなくて、ただ一般受けしそうなオシャレな小説だなあというイメージしかなかった。それが本書で江國香織の絶賛を読んで、「……じゃあもう一度読んでみようか」という気になった。新刊で買う気はしないけれど。■須賀敦子私の大好きな須賀敦子さんは「コンサバなワンピース」だそうだ。へぇ~。■物足りない点は挙げられている作家と書籍タイトルがそんなに多くないこと。作家は10人くらい、タイトルは約30冊。もっといろいろ本をおススメしてくれてもいいんじゃないか。『成熟への名作案内』読めってことか。
2010.05.05
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数独はなぜ世界でヒットしたか知人からいただいて。流行りの「なぜ~~か」タイトルだけれど、ビジネス本ではなく自伝。たぶん。楽しそうに仕事をしている人っていいなあと思わされる。外国語をほとんど喋れないけれど、世界各国をまわって現地の人と通訳なしで飲みに行く、話したいことがあればだいたいお互いのことはわかる、という話がすごい。日本のビジネスマンは移動中に寝てばかり、という話も覚えておこうと思った(自戒をこめて)。■メモしておこうと思った一文たとえば儲けや人間関係などのもろもろで、現在あんまりよくない状態が続いて気持ちがマイナス5まで落ち込んでいるとする。しかしマイナス5を知っていればプラス5の状態も予想がつく。ならば自分がゼロの地点にいると仮定して俯瞰すれば、どうすればいいかが見えてくるはずだ。
2010.05.05
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掏摸中村文則/著■一行あらすじスリを生業とする男の人の話■描写がいかにも芥川賞作家、という感じ。ところどころ暗くてねちねちとしていて、ちょっと自分よがり。悪い意味じゃなくて。■展開は芥川賞作家にどうやってエンタメ作品を書かせようか、編集者が頭を悩ませた感じ。悪い意味じゃなくて。面白かった。
2010.05.03
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【新品】[本] 学問 / 山田詠美山田詠美/著■山田詠美さんは本当に天才なのだなあと感じた一冊。読後の余韻が、ここ数年で読んだ本の中で一番だった。ところどころ腑に落ちない点はあるのだけれど(私の理解が浅いために)、それでも物語の世界観にうっとりする。悲しくて、残酷でさえあるのだけれどうっとりする。■一行あらすじあらすじは知らないで読み始めた方が面白いと思う。■ところどころにある仕掛けが面白い。たぶん全部見つけられていないので見つけたい。以下、反転で見つけられた仕掛け。※仁美が最期に一緒に暮らしていたのは心太の息子。※おひな様にいたずらした素子の最期は…。
2009.11.09
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窓ぎわのトットちゃん黒柳徹子/著小学校か中学校の時に一度読んだのかもしれないが、今回読んだらまったく覚えていなかった。もちろんタイトルはよく知っていたので、いつかもう一度(?)読んでみたいと思っていたところ、職場(下北沢)近くの古本屋で見つけたので購入。■一行あらすじおしゃべり好き過ぎて入ったばかりの小学校を退学になってしまったトットちゃんが自由が丘のトモエ学園に転入して……!? 笑いあり涙あり恋いありの、はちゃめちゃ青春ストーリー!■と書くとおちょくっているみたいだが、これは黒柳徹子さんの青春物語だ。「青春」とは、通常、中学生以上のティーンに使われる言葉。だが、たくさんの知識を得て、未知のものを知って、悩んだり笑ったり、特に他者との関わりの上で自分をさらによく知る過程を描いているという意味で、これは単なる小学校低学年の子どものお話ではない。■教育とはとても難しい問題だと思う。私の場合、大学を卒業して大学院で悶々とした日々を過ごしている時期に、初めてじっくり自分の成長過程について考えた(暇だったこともあって考えてしまった)。そして、子ども時代に受けた教育が、思った以上にその後の自分の性格、考え方、起こったことに影響を及ぼしているのに気付いてびっくりした。例えば、小学校低学年の頃に通っていたスイミングスクールでコーチの女の人から言われたきつい皮肉を今でも忘れることができない。思い返してみると、私は生意気なところがあったのかもしれないと思うし、もう半分では、だからって7、8歳の子どもに向かってあんなこと言わなくてもいいだろうとも思う。生意気だったなと自分を反省する背景には、ほかの大人に怒られてしょんぼりした過去とか、でしゃばりすぎて友達に疎まれた過去がある。あんなこと言わなくても良かったのじゃないかなと思う背景には、理不尽に人に傷つけられて腹が立った思い出がある。一つの過去に対してでも、それに関する思いは非常に複雑で、なおかつ自分のそれまでやそれ以降の経験によって、考えることは異なってくる。同じことを経験するにしても、それまでその人物が何を経験し学んできたかによって得られるものはまったく違う。もちろん後から挽回して、起こった事象をより深く理解していくことも可能だと思うけれど、これから経験していく出来事をより好意的に捉えていくならそれなりの過去が必要だ。土台のない場所に草木は芽生えない。■というわけで幼い頃の教育って、本当に重要だ。「一番楽しかったのは小学校のころ。これって変かなあ」と話す友人に、私は密かに羨望を覚えたことがある。幼い頃に受けた教育を最高のものだったと思えるトットちゃんは本当に幸せな人だ。■それにしても本書はベストセラーとなったという話だから、当時の人に対しても訴えるものが大きかったのだろう。それではその後、日本の教育は大きく変わったのか。多くの人が良く変えたいと思っても、なかなか変わりにくいものはある。その最たるものが教育だと感じる。すごく難しい。
2009.11.09
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下北沢藤谷治/著■とにかく下北沢がたくさん出てくる本です文中に出てくるお店はほぼ実在するお店。下北沢に詳しい方なら、出てくるお店をいくつ知っているかをチェックしてみても面白いのでは。■1行あらすじ下北沢でレンタルボックス店を営む「ぼく」の、とある1日。with桃子さん。■冒頭で「下北沢っぽさ」を笑う男の語りが出てくるのだけど、これには下北を好きな人もちょっと近寄りがたく感じている人も「あんまり好きじゃなーい」と思っている人も共感できるんじゃないかと思う。なんだけど、これについての小説としての反論というか答えが結局ラストまで出てこないまま終わってしまって、これはちょっとなんだかさみしい。著者が下北を愛するあまり、思わず「それでも下北は良い」という説明を書き忘れてしまったかのように思えることが残念。■でも良いですよ。清清しい本です。渋谷や新宿のように大きな街ではないけれど、賑わいのある街、下北。自分から中に入ろうと少し努力するだけで、すぐに溶け込むことの出来る街だと思います。
2008.06.01
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明日もまた生きていこう横山友美佳/著■仕事の関係で読みました■元日本代表選手の手記18歳でがんを発病、今年4月に21歳で逝去した元バレーボール日本代表の女性の手記。17歳の時に最年少で全日本シニアに召集されたのだとか。身長187センチ(189センチとも)。読んだ人の多くが、「どうして彼女が?」と思わずにいられないだろう。■出版元はマガジンハウス最近では「余命1カ月の花嫁」も出してました。なんていうか、こういうの、「絶対泣くノンフィクション」シリーズ。■ものすごくストイックな人手記の中で、高校在学時の練習を振り返り、「あの頃は無理をしすぎた。今でも、あんなに無理をしなければがんにならなかったのではと思わずにいられない」という記述がある。それまでに、日本の、そして世界のトップを目指すアスリートとしての練習の様子が描かれているだけに、この記述は胸に迫る。若い人の発症するがんは、多くの場合、ストレスが原因だという。もちろん著者はバレーボールが大好きだっただろうが、それは多くの我慢と引き換えの楽しさだっただろう。自分に対する厳しさが、がんという形で帰ってきてしまったなら悲しすぎる。救いがあるとすれば、彼女の21年間の人生が、誰から見てもとても濃いものだということ。私が世の中で一番憧れるのは、自分をコントロールすることに長けた、ストイックな人たちだ。■なんともはや私が高校生の時なんて……と比べることすら恥ずかしくなるような真っ直ぐさ。
2008.05.28
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イッツ・オンリー・トーク絲山秋子/著■確か芥川賞を取って数年後にすぐ直木賞候補になってなかっただろうか、この人。デビューしてからすぐにトントン拍子で売れたイメージがあります。読んでみたいなーとは常々思っていました。今回、古本屋で200円で買いました。■表題作のあらすじは元エリートOL、現ニートに近い絵描きの女性の鬱々とした日々。ニートの従兄弟やら区議会議員候補でEDの大学の同級生や、893やらが出てくる。■著者の年齢と名前からもっと落ち着いた作品を書くイメージがあったので、ちょっと意外だった。どちらかというとガッカリ寄りの意外さ。女性作家には最近こんなことをこういう書き方いる人たくさんいるんじゃなかったけ?というガッカリ感。■だがしかしもうひとつの短編「第七障害」は良かった。完全に私の好みかどうかの問題ですが。「大会中の事故で騎乗していた馬を死なせてしまった女性の再生までの物語」とあらすじを書くと、ちょっとした映画にでもなりそう。■この印象の違いはただ単に題材の違いでしょう。きっと。乗馬の世界を私はよく知らないので新鮮だった。主人公の女性の馬に対する真摯さに感動するとともに、自分や周囲を嫌う鬱々とした感情に共感。■もう一冊読んでみようと思いました。古本屋にあったら。
2008.05.23
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二都藤谷治/著■あらすじ一人の男が、現在の居住地である東京と、実家のある鎌倉を理由あって行き来する。東京、鎌倉で、それぞれ待つ女がいる。東京での描写は現代仮名遣い、鎌倉の描写は旧仮名遣いで書かれた小説。■感想鎌倉で待つ女の方の終盤の描写で、男が「帰る」「仕事で帰るわけではない」と言った後に、すっと冷めた表情になって毎週見ているドラマを見るためにテレビをつけに行くという箇所がある。女性って怖いんですね、と思った。下北沢の書店店主・藤谷治さんが11冊目の小説-鎌倉と東京舞台に(下北沢経済新聞)
2008.05.12
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てのひらの迷路石田衣良/著■短編集自伝的な短編集が多く、それぞれの編の前に筆者のその編に対しての思いが載っている。どうしてこの短編を書こうと思ったのかとか、この短編を書くときは締め切りが迫っていたどうだとか。■なんというか小説を書きたいと思っている人は読んだらいいと思う。どれだけ売れっ子小説家になると、好き勝手なことを書けて楽しいかとか、お金の自由があって楽しいかとか、自分の作品を自画自賛する場が与えられているって楽しいかとかがわかると思う。■あのドラマ化された長編の方が面白いらしいので読みたい気はするが、人から借りる機会がなければ読まないと思う。
2008.05.08
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アッコちゃんの時代林真理子/著■林真理子さんあまり好きではない。というのはやんわりとした言い方で、本当はとても好きじゃない。例えば数年前、まだホリエモンがイケイケだったころ「彼はもっともっとすごくなるだろう」ということを書いていて、それは別にいいのだけど、その「もっともっとすごくなるだろう」ということを言うために、当時のホリエモンのモデルの彼女(名前を忘れたけれど吉川ひなのではない)を持ち出して「今はあのクラスのモデルと付き合っているけど、そのうち一流の女優さんと付き合うようになるだろう」とか、そんな内容のことを書いていて、単純にそのモデルの彼女を見下した感じとか、そういうことを言っても私なら許されるだろうと思っているだろうところとか、モデル(職業)のランクがそのまま人格のランクにでもなるかのようなくだらない物言いのすべてが嫌いだ。■嫌いだけれどもこの作品は発売された当時から興味があった。バブルが弾けたころ私は中学生だったと思う。だからバブル時代を全然知らない。うちの両親は公務員だから、全然バブルの恩恵なんてなかった。バブルの頃は「公務員なんてダサい」というイメージがメディア全体にあったと思う。少なくとも私は「うちの両親は儲からない職業なんだな」とばかり思っていた。そんなわけで、バブルという時代にとても興味があった。広末涼子の「バブルへGO!」も見に行ったし。■それで読んだよどう好意的に読んでも、出来の良い作品じゃないと思う。林真理子は嫌いだけれど、面白かったら面白いと言います。この作品は面白い面白くないの前に、手抜きばかりが目立つ印象。せっかく、「バブル期の魔性の女」という面白いテーマを扱っているのに、なまじその女性が実在して現在も生きていて筆者が取材できてしまったせいか、中途半端な人物像になってしまっている。好き勝手に人物像を描くことができないのはわかるが、作品中には何度も「これは小説。実在の人物を基にしたフィクション」と書いているのだから、もっと明確な味付けをしないといけないのでは。何を遠慮しているのか。会ったことのないモデルの悪口はかけても、実際に会ったら及び腰ですか。小心者め。それから、端々の矛盾と同じ描写の繰り返しが目立つ。もちろん、作品の技巧としてあえて矛盾する主人公の言動を書いたり、同じような感情描写を繰り返し書くことがあることくらいは私も知っている。だけども、この作品の中でそれは「技巧」であるというよりも「雑」さゆえに思われてならない。忙しかったんでしょうか。美味しいものを食べ歩くのに。■作品の中で何度か「アッコちゃん」が、取材に来た女性小説家(林)を見て、「この小説家は一緒にご飯を食べながらメモも取らない。話も聞いているのか聞いていないのか、ただ美味しそうに寿司をつまんでいる」というような記述がある。自分くらいになるとメモ取らなくても書けますよって言いたいのかもしれないが、書けてませんよ。■作品の最後で手元に本がない上に読んだのが半年前なので不確かだが、確か、「どうせ私(アッコちゃん)の気持ちは、美しくない女(林)にはわからない。美しくない女(林)に書ききれるはずもない」というような記述があるが、確かにそうだったんでしょうね。というか、言い訳するな。■残念なことにアッコちゃんがあまり魅力的に感じられない。残念です。
2008.05.07
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エロ街道をゆく松沢呉一/著。■ひと言感想■人の数だけエロがある。世界の広さを感じました。私なんて全然エロくないんだな、と思った。しょんぼり。
2007.11.19
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キオミ内田春菊/著。■この方の小説を■読んだのは初めてかも知れない。以前にあるとしても8年くらいは前だと思う。こんなに面白いと思わなかったし、面白がれるとは思わなかった。ビックリ。■それで■男の人の小心っぷりとかセコさとか幼さを描かせたら、この人は天下一品だと思った。そんな男を見ている女性の方は、みんな仕事ができて稼いでいてセックス好き。あ、本人か。■表題作は■芥川賞の候補だそうな。妊娠中の嫁さんにいたわる言葉ひとつなく浮気に走る自分勝手ナルシスト男と、旦那に愛想を尽かしてとうとう浮気しちゃう奥さんの話。よくまあ、ここまでイヤな男を描けるもんだと思う。こんなにムカつく男の人は話に聞いたこともない。と、思う私は幸せなんだろうか。それとも、わたしが今までに見たムカツク男の全ての要素をうま~く書くことができればこうなるだろうか。ラストの数行、衝撃的なんだけど、伏線が全くないので「なんでそれ?」という感じがただただ。ただ、ラストがこうでなければ、作品のタイトルが「キオミ」で、この主人公の奥さんの名前だっていう必然がない気もする。自分の人生の成り行きを、客観的に見つめているもう一人がいるような。客観的にならなければ受け入れられないような現実。■でも■もう一冊、この作者の本を手に取ろうという気にはならない。好きなのだけれど、好きだからっていうのもあって、すぐ読んですぐ理解できてすぐ感想が言えるだろうってことが予想できる。嫌いなものを食べなくちゃ。と、いつになったら思わなくてすむんだろう。
2007.11.18
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誰にも見えない藤谷治/著。■あらすじ少し■私立の女子中学校に通う瑠菜の日常。日常はなんてことない。なんてことなさすぎるから、他人にはもっとなんてことない。不安や叫びは誰にも見えない。ただ透明に溜まっていくだけ。■この作者の人は■40過ぎてから小説を書き始めたという男性。それでよく、こんなにしっかりと女子中学生のことを書けるなぁと思う。自分が小学生や中学生だった頃、小学生や中学生を主人公にした小説を読んで、「本当の小学生や中学生ってこういうんじゃないのになあ」と何度も思ったけれど、そのうちに思わなくなった。これは私がもう小学生や中学生の気持ちをわからなくなってしまったっていうことだろうか。それとも、ひとつの事例を通して普遍を描くことの意味を理解できるようになったからなんだろうか。自分が小学生や中学生の頃だって、私は日本の、東京の、あるひとつの公立学校の、ひとりの生徒に過ぎなかったわけで。中年の男性が女子中学生を主人公にして小説を書くってだけで、かなりスゴイことなんではないかと。しかもエロいわけじゃないんですよ。全く。青春小説。服装のこととか、メールについてとか、私立受験のこととか、恐らくよ~く調べたんだろうなあ。■あああ■戻りたいなあ。中学生の頃。でももう受験はイヤだなあ。
2007.11.17
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木原浩勝/著。耳袋シリーズの木原浩勝さん。耳袋って書いただけで、ゾゾゾゾゾゾ。夜だし怖いので詳しく書きたくありません。でも本書はそれほど怖くないよ。怖いところもちょっとあるけど。
2007.11.16
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ドストエフスキー。■むかしむかし■中学生の頃、もー大好きで大好きでたまらなかった塾の国語の先生がいた。だって、中学生の読書感想文に小林秀雄の文章を引用して講評を書いたりするんですよ。その先生に誉められるのが嬉しくって、一生懸命書いたものです。それで、その先生と数人の友達と何かの時にゲームをして、「負けたら来週までに読書感想文を書いてくる」ということになった。確か、先生が書いた「読書感想文」を読んでみたくて、私がそんなことを言い出したんだと思う。それで、そのゲームに負けたのは私と先生で、私は「100万回死んだ猫」で10枚、先生は何か他の本で5枚の感想文を書いてくることになった。どうしてそのタイトルと枚数になったのかは忘れた。その時に先生が書いてきた読書感想文が、『白夜』のものだった。今でも持ってます、その感想文。■それで■何十回もその感想文を読みました。あらすじがほぼわかるように書いてある文だったので、『白夜』を読む前から最初から最後までほとんどストーリーは知っていた。最初に心酔する人の感想文を読んでしまったので、その後で作品そのものを読んでも、その人と同じ読み方しかできなかったのでした。当たり前。■それで■今回、12,3年ぶりに読みました、『白夜』。本とは年齢を重ねるごとに読んだときの印象が変わっていくもの、ってよくいいますが、全然変わってなかった! 全然変わってなかった!やっぱりまだ、どーしても「感想文」の印象が強烈なのかも知れません。でも、この主人公を現代の言葉でひと言で表すならば「ひきこもり」とか「ニート」なのだけれど、そういえば、「ひきこもり」「ニート」って言葉は10年前にはなかった、はず。オタクはありましたね。■でも■すごく多弁なひきこもり、なんですよね。饒舌。
2007.11.15
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永遠も半ばを過ぎて中島らも/著。■この方の■小説を読むのは初めて。■登場人物を並べるだけのあらすじ■不眠症の写植師と、その同級生の詐欺師と、途中から登場する女性編集者のお話。■タイトル■「とわもなかばをすぎて」ってカッコイイですね。タイトルだけで、中身がどんなでも許せてしまいそう。タイトルを聞いただけで最後まで読みたくなります。■人の話を聞いて■友達がこの本を薦めてくれまして、読み終わった後になってその紹介の仕方が上手かったんだなとつくづく思ったので、その紹介を再現してみたいと思います。============================-写植師が主人公なんだけどね、その写植師は不眠症なの。全然眠れないから仕事してばかりいるのね。そんで、クライアントの人が、「いや~、あなたほど仕事が早い人は他にいない、他の人はみんな遅れる」って言うんだけど、その写植師は「それは他の人はみんなちゃんと夜寝てるからですよ」って答えるの。で、その写植師のところに詐欺師がやってくるのね。詐欺師がよく効く睡眠薬をくれるんだけど、それを飲むと確かにぐっすり眠れる。でも、起きてみると、書いた覚えのない文字が写植機に打ち込まれてる。詐欺師がその文章を見て……============================-以下、内容に触れすぎるので割愛。■酒が■美味しそうだ。う~ん。話のポイントにあるのが、ず~っと酒ですね。さすがです。
2007.11.13
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洗面器の音楽藤谷治/著。■あらすじ■一度ヒット作を書いたことがあるが、それからは全く売れず、下町で古本屋を営んでいる作家の元に、馴染みの編集者がやってくる。作家は編集者に、取材のために娼婦を紹介してくれと頼む。実際にやってきた娼婦、麻里に、ひと目で作家は夢中になるが、しばらくして彼女は姿を消す。その後、渋谷のラブホテルで女性の全裸死体が発見される。そのラブホテルが、麻里が仕事で使っていたホテルだったことから、作家は麻里が殺されたのではないかという思いに悩まされることとなる。そして、麻里が姿を消すのと前後して執筆した小説には、自分が書いたとは思えない文面が……。■ひとこと■あらすじを書き出したらとても陳腐になってしまいました。一重に私が阿呆なんだと思います。■ラスト30頁を■何度も読み返したくなる本。軽い気持ちで読み出すと、呑まれてしまいます。■一番の■テーマは他にあるのだと思うけれど、この作品の中の男性と女性の描かれ方が好きです。こういう風に女性を描ける男性は紳士的だな、と思う。充分に観察するけれど、結局わからない。わからないことをわかっている。それだから離れられないこともわかっている。
2007.11.12
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アンダンテ・モッツァレラ・チーズ藤谷治/著。■あらあらすじすじ■帯には「レッツ・メイク・バカ話」。ちょっとしたきっかけから、毎日車で一緒に通勤することになった5人の男女。車内では毎朝、誰かが「バカ話」を始める。どれだけバカバカしく笑えるかにだけ命をかける幸せな日々に、ある日危機が訪れて……登場人物は、一番物知りでバカ話に長けている健次。健次の恋人で全身にタトゥーが入っている由果。下北沢の路上で弾き語りをする美少年、京一。京一にひと目ぼれして入社した清美さん。運転が天才的に上手いけど実は前科持ちの浩一郎。■これぞ■青春小説。暗い小説だけ書く人よりも、明るい小説を書こうとする人の方が好きだ。時に、多く語るよりも語らないことが有効なのと同じように、「明るさ」を書くことで孤独や挫折や絶望がにじみ出る。その方がカッコイイのではないかなあ、などと思ったり。泣かせるより笑わせる方が難しいよと思うんです。■べいびー■由果の息子で猛助という5才の幼稚園児が登場するんだけど、この子が変わっていて、2才の時に既に「僕にはまだ、『気分』と呼べるような感情や心理が、完全に成立されているわけではないんだけれど。僕にある感情っていったら、ママが好きってことだけさ」なんてしゃべり方をするような子ども。この設定、とても気に入りました。もっと猛助くんが登場すればいいのに、と思った。なんだか、続編があっても良さそうな終わり方だったので、ぜひ続きを書いて欲しいーー。
2007.11.11
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川上弘美/著。■あらすじ■13年前に夫・礼(れい)に失踪されてしまった京(けい)。愛娘の百(もも)と母と3人で暮らしているが、行き所のない気持ちを愛人の青磁と過ごすことでやわらげようともしている。そんな京が、なぜか最近惹かれるのが真鶴。気がつくと真鶴の宿で一人、夢を見ている。東京から離れ真鶴で一夜を過ごす京に、いつのまにか一人の女がついてくる……。■まあ■ついてくる女がこの世のものではないってところが、川上弘美ワールド。■う~ん■冒頭から最後まで、全然食いつけなかった。途中で何度か読むのを辞めようかと思ったくらい。嫌いな作家さんではないのだけれど、う~ん。川上弘美さんの本は『竜宮』が一番好き。芥川賞の『蛇を踏む』はあんまり。『センセイの鞄』はまあまあ好き。■まったりと流れる■重苦しいテンションがまず、鬱陶しく感じられてしまった。これは私が読んでいる時の心持ちにもよるのだろうけど。ところどころ特有のユーモアはあるんだけれど、やっぱり暗いなあ。■カラダの話■セックス描写が何度かあって、それがどーにも昼ドラチックで。■余談■「れい」と「けい」という友達がいます。途中くらいまで読んで思い出した。●あああ●もう少し書きたいことがあったのだけど、疲れたやめた。今度時間があったら書こう。
2007.09.17
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昨年亡くなったロシア語通訳者の米原万里さんの公演録。■第一章 愛の法則■米原的、男女論。マリア様は処女で懐妊したっていうのが、単なる誤訳だっていうのにびっくり。ほんと?「女が本流、男はサンプル」と帯にあって、これは簡単に言ってしまうと「子供を産める女性が長生きするために男性は存在する」みたいなことで、あれですね、チン太郎の「ババァ発言」の真逆ですね。言う人が女性で政治家じゃなくって、女性エライ発言ならば問題にならん。っていうのもどうかと思うが。どうかと思うが、米原さんの言っていることが面白く聞こえて、チンさんの言うことがつまらなく聞こえるのは、センスの問題でもある。社会的弱者をもっと貶めるようなことを言うって、発言が差別的だとかいう前に、すごくつまらない、今さら言わなくてもいい言葉。■第二章 国際化とグローバリゼーションのあいだ■日本人の考える「国際化」とは、自分を国際標準に合わせていくことで、他国の考える「国際化」とは、他の国に自国の考え方を習わせようとすること、という話に、目からウロコ。日本人は歴史的に見て、ある一つの国に心酔すると、そこを標準と考えて世界を捉えようとする、とあった。中国しかり、オランダしかり、アメーリカしかり。公用語が英語にならないように切に祈ります。■第三章 理解と誤解のあいだ■■第四章 通訳と翻訳の違い■繰り返し、米原さんはいろいろな著作の中で、母語以外に2つの言語を学んだ方がいい、ということを仰る。特に、英語だけ喋れる日本人に対して否定的。英語すら喋れませんが、言葉を覚えたい気持ちはとてもあります。
2007.09.07
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サブタイトル:「石原慎太郎」という問題。斎藤貴男/著。■この本は■「三国人」「ババァ」などの問題発言の数々が取り沙汰される一方で、圧倒的な人気で都知事の座に君臨し続ける石原慎太郎。彼に直接関わった人たちの証言を集め、その言動の横暴、矛盾点を暴き、その人気に見る日本人の心理の危険性を論じる。■石原慎太郎という人のことが■昔から全く支持できないのだけれど、どーして支持できないか説明して見よ、と言われたらば「なんかエラそうだから」とか「見下した態度取るから」とか「チ○ポに障子小説書くから」とかそんなことしか言えず、これでは「なんかマッチョでカッコイイから」とか「NOと言える日本人だから」とか「太陽の季節? なにそれ」とか言う支持者と同レベルなので、勉強してみようかと。んで。批判本を読んだらば、支持する人の本も読んでみなければ片手落ちなわけで。どんな本があるんですか、支持本。■ひとつだけ言うとすれば■自分を批判してくる人に向き合うことは、いくら権力を持っても、権力を持ったからこそ大切なことではないのかと。この著者は確かにちょっと過激なところもあるけれど、それでも石原氏からの反論を聞こうと何度もコメントを求めているし、石原氏支持者の言葉も批判と同じくらい載せている。何でもかんでも「たかが一ジャーナリスト」「くだらない」と決めつける、その姿勢がせこい。と思うぞ。■あと■芥川賞の候補作、絶対この人斜め読みだと思う。いや、チラ見くらいかも。いや、ちゃんと読んだってどうせアレだろうけど。意味なさ過ぎる。
2007.09.06
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関根眞一/著。■どんな本■百貨店などで「お客様相談係り」として長年、苦情処理にあたってきた筆者による、苦情対応、クレーマー対応の実例と心得。1300件以上の対応ですって。■第一章■が、全体の7割くらいを占めている。クレーマーの実例の数々。「クレーマー」と「苦情を言う人」は明確に分けられていて、「クレーマー」とは、店舗を困らせることに一種の「愉しさ」を感じている人や、度を超えた指図をする人、そして金品をたかろうとする人。お客様係を呼び出しておいて玄関に立たせて、自分は椅子に座って3時間苦情を言い続ける女性とか、10年前に買ったブラウスが破れたから交換してという女性とか、もー、信じられない実情がたくさん。こんな人たちを相手にしてたらほんとストレスが溜まるだろうなぁ~、禿げるだろうなぁ~と思う。けれど筆者は、苦情から勉強させてもらうことがあるのはもちろんだけれど、クレーム対応だって面白い。それは人の生の感情が出るところだから。クレームの真意を見極めることこそ、この仕事の醍醐味、と言ってのける。ふむふむ。冷静に謙虚に対応すること、それが基本だけどとても難しいのだろうなあ。でも、そのテクニックを身に付けたらば、いろいろな応用が利きそうだ。■態度の悪い店員って結構いる■最近年を取ったせいか、飲食店とか雑貨屋さんとかで態度の良くない店員さんのことがすごく気になってしまう。ほんと喉元まで苦情が出かけるのだけれど、言ったら言ったで嫌な思いが残るのでやめる。言わなければ言わないでムカムカするけど。ほとんどの人がそうやって些細な「ムカツキ」はお店側に伝えずに終わるのだろうなぁ~と思う。でも、それって結構、次の来店に如実に響くことなんですよね。私も接客業のアルバイトをいくつかやったことがあって、お客さんに迷惑をかけてしまったことが何度もあるので、わかる。お客さんに嫌な思いをさせるのは、一重に店員のプロ意識不足だと。いえ、自省をこめて言ってるんですけれどね。嫌な思いをしたら過剰にならずにやんわりとスマートに苦情を言ってこちらの立場を主張できる、そんな大人に私はなりたい。
2007.08.17
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松沢呉一/著■好きなブロガーさんが好きだという作家さんだったので■一度読んでみたいなぁ~と思っていた、松沢呉一さん。下北の古本屋で偶然見つけたので買いました。■読みながら食べられない■ウンコとかゲ○とかSMとかスカトロとかゴキブリとかウジ虫とか、この本読みながらモノを食べることはヤワな私にはできません。モノ食べている時に、この内容を思い出すこともちょっとムリー。■けれど■すんごく面白かった。もう10年以上前に書かれたものだけれど、おもろいおもろい。書いていることは、眉をひそめる人もいるであろう「ぐろぐろ」の内容なんだけれど、著者はすごく研究熱心だし、そしてそれをひけらかしてもいないし、エロいことグロいことに真っ向から挑んでいく姿は爽やかですらある。紳士的、そう思いました。雑誌での連載をベースに、その後数年してから付け足された「注」が入っている。これを読むのもなかなか面白かった。「この頃はこう思っていたが、その後考えが変わった」「この時はまだ体験していないが、その後体験できた」という注がいくつかあって、本文で主張していたことをあっさりと「考えが変わった」と言えるその姿勢が、柔軟でいいなあ、などと。面白かったので他に何冊か読んでみようと思っております。
2007.07.21
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俵万智/著■Book offで買ったら■中に、喫茶店で使うような紙ナプキンがはさまってた。キレイだったからいいけど。前の人がしおり代わりに使ったんだろうか。■裏書きによると■伊勢物語を現代語訳した著者が、脱線アリ体験談アリ個人的恋愛論アリでその面白さを伝える、ロマンチックでユーモラスなエッセイ。古典の勉強はちょっと苦手、という人もこれならきっと好きになる、恋する受験生の必読書。だそうです。■伊勢物語って■こんな話もあったっけー、とか、あぁ、これ教科書に載ってたなー懐かしいとか思いながら読みました。そんで思ったことと言えば、やっぱり俵万智さんは紹介の仕方が上手い。面白い。■恋愛■についてなんて、すでにもうこの頃に言い尽くされてますよね。今の恋愛小説やモテ本の類に書かれてることだって、『伊勢物語』にすでに書いてあることだなぁ~と改めて思いました。自分の失恋だって、同じようなことは既にもう何百何千の人が経験していると思えば……。いや、やっぱ辛い。
2007.07.11
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石垣りん/著。以下Wikiより引用。石垣 りん(いしがき りん、大正9年(1920年)2月21日-平成16年(2004年)12月26日)は、昭和・平成期の詩人。代表作に「表札」。東京都生まれ。4歳の時に生母と死別、以後18歳までに3人の義母を持つ。また3人の妹、2人の弟を持つが、死別や離別を経験する。小学校を卒業した14歳の時に日本興業銀行に事務員として就職。以来定年まで勤務し、戦前、戦中、戦後と家族の生活を支えた。そのかたわら詩を次々と発表。職場の機関誌にも作品を発表したため、銀行員詩人と呼ばれた。『断層』『歴程』同人。第19回H氏賞、第12回田村俊子賞、第4回地球賞受賞。教科書に多数の作品が収録されているほか、合唱曲の作詞でも知られる。■石垣りんさんと言えば■毎日通っている銭湯で若い女性に「あのう、襟足のところを剃ってもらえませんか?」と言われる。剃ってあげながら聞くと、女性は明日結婚式なのだという。明日嫁ぐ女性がひとり、銭湯で身を流している。という詩は石垣りんさんの詩じゃなかっただろうか。どっかで読んだ気がするんだけど思い出せない。■それにしても■14歳から定年まで半世紀近く同じ職場で勤め上げたって!すげえ。このまま行くと一生で一度も「職場」を持たなさそうな私からすると、ほんと頭が上がらない。嫌な同僚もいやみな上司もいただろうな。女性の立場もずっと低かっただろうに。■このホンは■2頁程度の短いエッセイを集めたものです。短いんだけど、一編一編にへぇ~~と感じ入るところがある。昔は東京都内の電話料金がいくら話しても一律だったとか(「通じない」)、初任給が18円だったとか(「巣立った日の装い」)とか、そういう具体的な情報に対してもだけれども、垣間見える公害問題や、インスタントラーメンや、卒業式の袴や、家具や、君が代や、両親や、君が代に対しての考え方に、今との差を感じて面白い。ま、サザエマニアの私にとっては「そうそう、そうだったらしいね」ってことも多かったですけどね、フン。■考えたこと■人のブログのコメント覧を読んでいて感じることのひとつに、「どーしてそんな幼稚なツッコミを入れるかな~」と思うことがある。書いてる人はそんなことは自明だと思って、省略して書いているのに、わざわざそこに注目して、「こういう例を知ってますか?」とか「こういう話もありますよ」とか。そういうのを見るうちに、私のブログはアクセス数も少ないし、元々議論を起こすような大した内容でもないけれど、それでもやっぱり、「あ、こう書いたら誤解する人もいんのかもしんない」と思うようになった。自分のノートに書いているものではなくって、ネット環境があれば世界中のどこの人でも見られるものに公開しているんだから、自分と考えが違う人が見て当たり前なのだけれど、ついついそのことを忘れがちになる。だって、普段の日常ではそこまで自分と考え方の違う人に会う機会がないから。会っていても、それに気付くことって案外ない。社会に出たらそれなりに人と合わせてやっていこうとするから尚更だと思う。だから、とんでもなく見当違いのコメントとか、見当違いではなくても全く自分と考え方の違う人のブログを読むたびに、「あ~~、こういう人も読むってことを前提にして書くってしんどいんだろうな~」と思っていた。これって誰でも意見(くだらないものから何から含めて)を発信できるブログ文化ができたからこそ、一般庶民の私にでもこういうことがわかるようになったんだなー、などと思っていた。確かにそういう側面はちょっとあると思う。なんだけど、『焔に手をかざして』を読んだ時に感じたことは、石垣りんさんは、自分と考えの違う人や生まれ育ちの違う人に対しても誤解を招かないような書き方をしているということ。自分の書くことがどういう風に受け止められるのか、全てわかってくれる人ばかりではなくて当たり前という前提を元に、文を補いつつ書いていると思う。そんなことは物書きなら当たり前だという意見もあるかもしれない。だけど私はそう思わない。物書きだからこそ自分の見識に奢って、何を言ってもダイジョウブ、わからんヤツは愚民と切り捨てる人もいるのでは? 控えめに言っても結構多いのでは?継母に育てられて、女性で、ずっと平社員で、未婚で……。辛いことはたくさん言われただろうけど、ちょっとヒドイ言い方をすると、報われない立場の目線からだったからこそ、世の中には多種多様な考え方の人がそれぞれ自分の考え方のままに行動しているということがよくわかったのではないだろうかと思う。もちろん、詩人として名を残した石垣りんさんの人生が報われないものだったとは思わない。
2007.07.10
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乙一/著■このホンは■作者が17歳の時のデビュー作品。■どんな心持ちで読んだか■手軽に数時間で読めて、読んでいる間中ずっと先が気になって、最後に割とスッキリ感を味わえるミステリーを欲している気分でした。■そんな気分だったからかも知れないが■んん~、イマイチ……。オチも読めてしまったしなあ。描写と構成力が優れているって解説に書いてあったけど、そうかなぁ……。■でもね■9歳の夏に殺されてしまった少女の目線で、自分の死体を隠そうとする犯人達の様子を追っていく、という描き方は確かに斬新、かもしんまい。■でもね■その設定が目新しいだけで、最後に響いていないというか、もしかして普通の一人称もしくは三人称で書ききるのが辛っと思ったからなんじゃないかとか、穿った見方。■読んだ人にしかわからないことを■終始怖がっている妹の弥生ちゃんが黒幕だったら面白かったと思います。
2007.07.06
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ジュンパ・ラヒリ/著 小川高義/訳■あらすじ■若き日の父の一生を変えた事件が原因で「ゴーゴリ」という名前をつけられた少年の目を通して、アメリカで暮らすことを決めたベンガル人(インド人)家族の歴史を描く。■ジュンパ・ラヒリという人は■短編集『停電の夜』でヘミングウェイ賞、ニューヨーカー新人賞、ついでに“新人の短編集としては極めて異例ながら”ピュリツァー賞を受賞したのだとか。『停電の夜』がとてもいい! すごく好きな短編集です。この中でも特にいいのがラストの「三度目で最後の大陸」。長編を読んだかのようなスケール感を味わえる、というような評をどこかで読んだように思うが、まさにその通り。『その名にちなんで』と同じく、インド出身の夫婦が異国の地アメリカで戸惑いを感じつつも根を張っていく様子を描いた小説なのだけれど、明らかに著者の来歴を反映して書かれたもの。ジュンパ・ラヒリはロンドン生まれだが、両親ともにカルカッタ出身のベンガル人で幼い頃に渡米した、と著者紹介にあることからそれがわかる。ちなみに、著者の写真はえらくべっぴん。女優かと思うほど。これは一見の価値があります。■それでだからその■「三度目で最後の大陸」がすごく良かったので、『その名にちなんで』が同じ題材で書かれていることには驚かなかった。この人が書きたい根っこはこの部分なんだろう。これからどんなことを書くのかはわからないけれど、小説家として書きたいと思っていたことはコレなんだろう。よく文章読本には、「自分にしか書けないことを誰にでもわかるように書く」のが上手い文章だというようなことが書いてあるけれど、この人にとっての「自分にしか書けないこと」は、「アメリカで育ったベンガル人であること」だ。その目を通して普遍的なものを見つめる使命感というか、そうしなくてはという自覚(自負と言ってもよいかも?)があるだろう。たぶん。■この人のすごいと思うところは■たださりげなく日常を描写しているだけのように見えて、登場人物それぞれの心境が全てすんなりと理解できるようになっているところ。この状況だったらそう考えるだろう、そう決断するだろう、詳しく説明されなくても、登場人物の気持ちが手に取るようにわかる。文化も時代も違うのに、よくわかる。そして、多くの人が漠然と眺めている「運命」というものを当たり前のように掴んでみせるところ。小説家ではない人たちは、自分の過去を振り返って何だか大きな流れの中にいたんだなあと感じても、それを言葉にする場はなかなかない。だから読むことで、自分の頭の中にあった漠然とした「人生」を整理できるように感じるんじゃないだろうか。■飛行機に乗ってアメリカに行けば■本当にゴーゴリが存在するんじゃないだろうか、そんな風に思えるほど鮮やかな人物描写。■読んだ人に聞きたいこと■この物語はゴーゴリの両親がアメリカで暮らし始める1968年から始まって2000年で終わるわけだけれど、9.11のあった2001年の直前であえて終わらせているように思えるのは……私だけ?ゴーゴリの住んでいるところはNYだし。お父さんの事故のこともね、あるわけだし。
2007.07.01
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下川耿史/著。■江戸時代から■江戸末期から日本に存在が確認されているエロ写真、すなわち女性のヌード写真を集めてああだこうだ。そこからどんな日本的感性や庶民的感情が見えるか、あれこれ。そういえば、御茶ノ水でアルバイトしていた時、かなり古いエロ雑誌の自販機が近くにありました。エロ雑誌の自販機を見たのはあれがはじめてだったのだけれど、昔はたくさんあったんでしょうか。■写真がたくさん■載っていました。明治初期のヌードで驚くのは、足の開き方がすごく無造作なこと。自然体を装ってるのかもしれないが、色っぽくない! なんじゃこりゃ。それから、表情も色っぽさが感じられません。扇情的でもないし、恥ずかしがっているようにも見えない。これは一枚を撮るのに露光の時間がたくさん必要だったため? ずっと長い時間笑顔はしてらんないわよ、みたいな?■エロと芸術■エロと芸術の乖離という章。エロか芸術かの議論は明治のころからあり、結果としてこの本が出版された1995年当時では「芸術は高尚、エロは低俗」という意識が広まっていると著者はやや憮然として語る。今はもうちょっとエロの価値が高まっているように感じるのは、私の意識が変わっただけでしょうか。バカっていう人がバカなんです、っていうのと同じで、エロって思う人がエロいんですぅ。ていうか、エロでも芸術でもどうでも良いです。面白ければ。「芸術なんてでぇっきれえだ」と杉浦日向子さんが言っているので、私もゲージュツ好きな人が嫌いです。楽屋落ち下ネタブラボー!西鶴より京伝。■他の目次は■レズ・ブームとエロ写真、日露戦争とエロ写真、パロディ・エロ写真(アホアホで面白い!)の流行、など。戦後のエロ写真が巻末にチラッとあり、そのあたりだけ雰囲気が異なっていて、モデルさんの表情が今風にエロい。そこんとこについての考察を聞きたかった気がします。
2007.04.29
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恋愛相談師マーチン/著■なんで読んだか■仕事の参考のため、読みました。しかし。わざわざ「仕事の参考のため」と書く私。本当に仕事のためなんですが、わざわざそう書くのは、「プライベートな理由で読んでいると思われたら恥ずかしいよぅ」と思う気持ちがあるからで、そんなことを思っているのって、こういう本を作るのに携わるかもしれない状態の上で、買ってくれる人に対して失礼なのではないのん、という葛藤が、ややあったり、いや、それほどでもないけど……、でもやっぱり。■どんな本■恋愛相談師のマーチンさんの元に寄せられたたくさんの女性の悩みを元に、陥りやすい恋愛の危機とその対処法・対策法をレクチャー。■痛い■女性が彼の言動に不安を感じている時、思わず取ってしまいがちな言動に対してマーチンさんはダメ出ししていきます。「あ、コレやっちゃったことあるかも」っていうのを見つけちゃうと、痛い。胸が。気持ちが。過去が。■ひとつだけ言うと■「考えればわかることや当たり前のことを何度も聞くと、彼は怒る」だってわかんないんだもの。知ってるなら教えてくれればいいじゃない。はい。私はB型で次女(末っ子)です。■どうだろう■今までに幾度かあった、「あ、もうこれ別れそう、どうしよう、どうしたらいい」状態の時に、この本を読んでいたら辛い別れを経験せずにすんだでしょうか。それを確かめるためには、これからまた、「あ、もうこれ別れそう、どうしよう、どうしたらいい」状態になるしかありません。しんどいのでイヤです。でも、もしあったら試しにこの本を開いてみようと思います。だってわたしひとりじゃどうにもならないんだもの。
2007.04.15
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リリー・フランキー/著。■どんな本なのか■偉人や英雄ではなく、ふつーの一般人がせっぱ詰まった瞬間に吐き出した言葉にこそ、真実が宿るんじゃないか、みたいな。■つくづく思うこと■リリーさんの本を読むたびに思うことは、男の人同士が(リリーさん周辺が特にヤバイってのはあるだろうが)付き合っている女の子にしろそうでない女の子にしろ、女の子のことを語っている現場の盗み聞きは、したくねぇ。やめて、可憐でいさせて。■でも■松たか子の「キミじゃなくてもよかった」という歌を聴いて、そんなこと女の子に言われた日には死ねる、みたいなことが書いてあった。※参考 松たか子「キミじゃなくてもよかった」一部抜粋キミじゃなくてもよかった そういう恋をしてしまったキミじゃなくてもよかった 本当は誰でもよかったヘコむ? そうなん?私は自分のことをフった男の人はひとり残らず「アイツじゃなくてもよかった」と思っているだろう、と思っている。いやもう、そう思っているっていう自信がある。っていうか、「恋」だったとすらもう認識してないんじゃないかとね。「恋」だったと思ってくれてるならまだいいや、みたいなね。別にそれだから悲しい! とかヒドイ! っていうよりも、「うん、まあ、そりゃそうかも」って受け入れている。悲しいけれども、そうだよねって思う。これは私が女だからか?男の人って意外に繊細?でもさ、「キミじゃなくてもよかった」って言われたら死ぬぐらいヘコむけど、実際自分では別れた後しれっと「アイツじゃなくてもよかったなぁ」と思ってるのが男の人なのではないのん?そう思いつつ「キミじゃなくてもよかった」の歌詞をググってみたらば、コレって、女の子が「キミじゃなくってよかった」って言ってるんじゃなくって、女の子が相手に「キミじゃなくてもよかった」って思われるような恋をしちゃったよ、っていう歌じゃないスか。おい、男。
2007.04.12
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宇野千代/著。中公文庫のものをブックオフで105円でお買いあげ。楽天アフィリに画像がないので残念ですが、表紙は桜を散りばめた模様でまさに春だね。今年は宇野千代さんをようく読もうと思ってます。なんとなくね。「私は何度も離婚した事があるので、離婚と言ふより、男に捨てられた事があるので」んんんんんんん、かっくいい。かっくいいんだけど……中学校の時にこの人の文章を読んだことで、去っていく男の人を追いかけるのは美徳に反することとインプットされてしまった。でもそうなのかな。ほんとにそうなのかな。十年経って、ほんとにそうなのかな、と思ってしまったので今年はよくよく宇野千代さんを読もうと思っておるのです。1897年生まれですよ。まじかよ、と思う。考え方が新しくて。前向きで。スッキリとしていて。
2007.04.05
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町田康/著。■一行あらすじ■貧乏だったり仕事がなかったり飲んだり踊ったり迷ったり困ったり歌ったりのエッセイ、うくく。■どうでもいいことですけど■どこかとぼけている男の人に惹かれる傾向がある。町田康さんはとぼけている。無意識か自覚あってかわからないギリギリのところでとぼけている。好きだぁぁ。■もっとどうでもいい■こないだひとりぼっちでIKEA港北へ行った。行ってから気が付いたけれどIKEAとはひとりで訪れるところじゃない。言ってみればディズニーランドにひとりで行くようなもんです、IKEAにひとりで行くっていうのは。そんでその電車での行き帰り、『耳そぎ饅頭』を読んでいた。そしたらひとりでIKEAに行ってしまったわびしさを町田康風に書いてみたくなった。でもまだ書いてない。
2007.04.01
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山東京伝『傾城買四十八手』○しっぽりとした手 より、一部引用■原文 ()内は原文では小文字(客はむすこ 逢方はつき出し間のなき中三 尤初会)(略)女郎 しづかにしやヨ (ト枕元へたはこぼん引よせたばこすい付るぱつと火たつそのあかりにてむすこのかほをつくづくと見てみぬふりしじぶんが一ツぷくのみ又すいつけてむすこにやる)ムスコ わつちやたばこはきらひサ女郎 おあんなんせんかへ モシヘぬしの内は花菊さんの客人の近所かへムスコ イイヘちがひやす女郎 どこざんすへムスコ 神田の八丁堀サ女郎 うそをおつきなんし よくはぐらかしなんすヨムスコ 跡でしれやす女郎 なぜへ気にかかりんす いつておきかせなんしな おいひなんせんとくすぐりんすよムスコ いはずともいいじやアねへかへね マアとをひのさ女郎 ほんにかへムスコ おめへあててみな女郎 そんならかしら字をいつておきかせなんしムスコ かしら字はにのじさ女郎 まちなんしよにのじだね コウトそんなら日本橋かへムスコ (わらひながら)ちがつたね女郎 (又しばらくかんがへて) そんならにかは丁とやらかへムスコ いんへ女郎 しれつてへどこだのう(トかんざしでまへかみをかく)ムスコ やつぱりほんとうは日本橋の近所西河岸サ女郎 ソレ見なんしよくあてんしたらう モシヘ日本橋へもかんのんさんを通つていきんすかへムスコ しれたことサ女郎 大かた内にはおかみさんがござんせうねムスコ ナアニまだそんなものがあるものだ女郎 そんならどこぞの女郎しゆにおたのしみがあんなんすだらうねムスコ 内がやかましくて出られぬからこつちのほうなぞへはきた事はねへのサ きよねんとりのまちのかへりにつれがあつて外へ一度いきやした わつちが事ばかしいはずともおめへのいろをちつと咄してきかせナ女郎 どふしてそんな事がござんすものか わつちや去年までみのわの寮にゐんして此春からでんしたヨ いろをしたくつてもわつちらがやうなものはだれもしてくれんせんものをムスコ よくうそをつくのうそつつきとつけやせう女郎 ほんざんすよムスコ そんなら客にほれたのがあるだらう女郎 人にほれるのはきらひサムスコ そんならわつちらにはなをだらうね女郎 ぬしにかへ(トかほをみてわらひ)跡は申ンすめヘ(トふとんのすみへつけしくくりざるをひねくつてゐる)ムスコ じらしなさるね女郎 モシヘわつちやたつた一ツねかひがござんすよムスコ どふ云ねがひだ女郎 わつちがほれた客しゆのきなんすやうにさムスコ おめへ今ほれたものはねへといつたじやねへか女郎 たつたひとりござんすよムスコ うら山しい事だのどこの人だへ女郎 (だまつてゐる)ムスコ コウどこの人だへ女郎 おまへさ(トおもひきつていふ)ムスコ でへぶあやなしなさるもんだの(トむねどきどき)女郎 ほんでござんすよ それだけれどわたしらがやうなものだからもうこれぎりでお出なんすめへねムスコ もつてへねへおめへのやうなうつくしひ女郎しゆだものを女郎 あいさ左様サたんとおなぶんなんしムスコ ほんにサ よんでさへくんなさるならくる気さ女郎 うそやムスコ きたらどふしなさる女郎 じつかへムスコ しれた事サ女郎 マアうそにもうれしうざんすムスコ それがうそだ女郎 ほんの事サムスコ どれほんかうそか(トだきついてわりこむ)女郎 エエモつめたいがかんにしなんしへ(後略)■訳します(客は若衆。相手をするのはまだ店に出て間もない中三(遊女の位)。ふたりが会うのは今回が初めて)(略)女郎 (禿に向かって)静かにしなさいよ(と、枕元に煙草盆を引き寄せて、煙草を吸い付ける。ぱっと火が立ったその明かりで客の若衆の顔をつくづくと見る。だけど見てないようなふり。自分でまずは煙草を吸って、相手に渡してやる)ムスコ いや、俺は煙草が嫌いでね女郎 呑まないの。ねえ、あんたの住んでるとこって、花菊さんのとこに来ているお客さんの、近所なの?ムスコ 違うよ女郎 どこ?ムスコ 神田の八丁堀だよ (注)「神田の八丁堀」は架空の地名女郎 もう、嘘つかないで。はぐらかして……ムスコ どうせ後でわかるよ女郎 どうして。気になっちゃう。教えてよ。言わないとくすぐっちゃうんだからムスコ 言わなくてもいいだろう。遠いんだよ女郎 本当?ムスコ 当ててみなよ女郎 それなら、最初になんてつくか教えてムスコ 最初は「に」の字だよ女郎 ちょっと待って 「に」でしょ ええと……それなら日本橋?ムスコ (笑いながら)違うよ女郎 (又しばらく考えて)そんならニカワ町とか言うところ?ムスコ いいや女郎 もう、じらさないで教えてよ(と、かんざしで前髪を掻く)ムスコ 本当はさっき言った日本橋の近所の西河岸なんだよ女郎 ほら、やっぱり! 当たったでしょ。ねえ、日本橋へも観音様を通って行くの?ムスコ そりゃそうだよ女郎 多分だけど、家に帰れば奥さんがいるんでしょ?ムスコ いやあ、まだいないよ女郎 それなら、どこか他にお気に入りの女郎がいるんでしょ?ムスコ 家がやかましいから吉原の中へは来たことがないよ。去年、酉の町の帰りに友達と他のとこへ一度行ったぐらいだ。俺のことはいいから、あんたの男のことを聞かせなよ女郎 どうしてイイ人なんかいるんだか。あたしは去年まで箕輪の寮にいて、この春から働きだしたばっかりだもの。イイ人を見つけようったって、あたしみたいな女郎は誰も相手にしてくれないわよムスコ そんな嘘ばかり言って。お前のことを「嘘つつき」と名付けてやろう女郎 本当よムスコ 惚れた客ぐらいはいるだろう?女郎 誰かを好きになるのは嫌いだよムスコ それなら俺には尚更だろうね女郎 あんたに?(ムスコの顔を見て笑う)さあどうだろうね(と、布団の隅に括り付けてある客寄せの猿のお守りをいじくる)ムスコ じらすねえ女郎 あのね、あたしには一つだけ願い事があるよムスコ それはどんな?女郎 あたしが惚れた客の来ますようにってムスコ お前、たった今惚れた客はいないと言ったじゃないか女郎 ひとりだけいるのムスコ そいつがうらやましいね。どこの人だい女郎 (黙っている)ムスコ オイ、どこの人だよ女郎 あんたさ(と、思い切って言う)ムスコ だいぶ嘘を言うもんだ(内心ではどきどき)女郎 本当のことよ。だけど、あたしみたいな女郎だから、もうこれっきりであんたは来てくれないでしょうねムスコ 何を言うかもったいない。お前のような美しい女郎が女郎 何よ。口から出任せばっかり……ムスコ 本当だよ。お前が呼んでくれるならいくらでも来るよ女郎 嘘!ムスコ 来たらどうする?女郎 ……ほんとう?ムスコ 決まってるだろう女郎 嘘でも嬉しいムスコ それが嘘だろう女郎 本当のことムスコ さてほんとか嘘か……(と、抱きついて割り込む)女郎 いやぁ、冷たい! 堪忍して(後略)
2007.03.13
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ナンシー関/著。■偉そうですみません■ナンシーさんはたぶんあんまり文章が上手くない。だけど読ませるのはやっぱりその分析力のニヒルさ。■以前こんなことが■ちょっと前に、知っている人で、やたら「君ら、メディアの情報に振り回されてたらダメだよ~~」って言うおっさんがいた。自分はグラビアアイドルの誰それが可愛いなんて言う癖に、女の子がちょっとでも「福山雅治かっこいい」とか言うとすぐに、「一時情報を鵜呑みにしてたらダメだって」そんな彼は、来る日も来る日も「ちょいワル」ファッション。■それだからこう思う■マスメディアに流されてしまうのも、マスメディアに穿った視線を送ることができるのも、実は結構、三つ子の魂百まで。大人になってから変えようと思っても難しい。■結論としまして■もっと見たかった。石原真理子とか、サトエリとか、米倉涼子(昨日のHEY!HEY!HEY!をたまたま見ましたが、ひどかった)とか、竹内結子とか、蒼井優(個人的にこの人には裏があると思っている)とか、品川庄司とか、紀香&陣内とか、リア・ディゾンとか、ホリエモンとか、釈由美子とか、エビちゃんとか、小林真央とか、寺島しのぶとか、オリエンタルラジオとかに何て言うのか見たかった。ざむねむ。
2007.03.11
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枡野浩一/著■書評小説■読んだ小説の評を、著者の日常の描写に織り込んで書いた「書評小説」だそうな。書評の部分がなかったら完全に私小説。この時期の「著者の日常」とは、奥さんが子供連れて出てってしまい、もう二度と会いたくありませんえん、子供にも会わせませんえん。いやちょっと待ってせめて子供には会わせてくださいと調停。そんな毎日。枡野さんは初婚だけど、奥さん(『さよならみどりちゃん』の作者)は再婚で、子供のひとりは前のだんなさんとのお子さん。クリエイター同士の結婚って複雑で云々。■なるほど■しかし。書評というものは何で書くかといったらば自分の感覚で書くわけで、自分の感覚って何なのかと言ったらば自分の経験によって存在するもので、自分の経験すなわち日常の積み重ねであるのだから、読んだときの自分自身の気持ちのコンディションを合わせて評するというのは、とても理に適ったことである、のかもしんまい。読んだ本の作者に対しても親切なことかもしれまい。書評という「客観」を間に置くことで著者自身、この現状に対して冷静になれている部分があるという読み方があるかもしれないけれど、まあ確かにそうかもしれないけど、いやヤッパリ冷静じゃないでしょう。冷静じゃないまま読んでるから面白いのもあるわけで。咳をしてもひとり。本を読んでもひとり。■この本を読んだときわたしは■好きだった人の家で、朝方から昼にかけてこの本を読んだ。彼が持っていた本だったのです。それで、その日がその人の家にいった最後の日だった。「離婚はすべての男にとって寝耳に水」っていう一文が本書にあって(確か引用だったか)、わたしが「寝耳に水だった?」と彼に聞いたらば、不機嫌な顔をして肯いていた。そんな意地悪なことを言うつもりはなかったのだけど、なんだか他に言葉がなかった、のです。黙っていたら怖いことを言われそうな気がしたので、そんなことを言ってしまった、のだと思います。その1ヶ月くらい前、先にこの本を読んでいた彼が「重たくて読むのが疲れる」と言っていたのを思い出して、「重いねえ」と言ってみたらば「そう?」と言う返事。それからバスに乗って、最寄り駅の吉祥寺へ。バスに乗るとき、わたしのバス共通カードが切れてしまってた。それまでは切れると運転手さんから1,000円分のカードを買っていたけど、そのときはカードは買わずに210円ぴったりを払った。「もう来ないってわかってるんだよね」と自分に言い聞かせながら。お財布の中を見たら、その直前に行った海外の国の硬貨が入っていたので、それを彼にあげたら「かっこいいねえ」と、思いの外喜んでいて、そういえば彼は前の晩に渡したおみやげも意外に喜んでいて、そんなに屈託なく喜んでくれるならば彼の子供の分も迷わないで買ってくれば良かったなぁ、なんて私は思っていた。吉祥寺の駅前のマックに座って、おそらくふたりともここじゃあ人が多すぎるなあと思っていたんだと思う。その前のバスの中からそうだったかも。それで私は、しなくてもいいのに『結婚失格』の話をした。枡野さんの歌は自己肯定だよ、というようなことを言った。歌を詠むということはその行為自体が自己肯定と言ったのは誰だったか。誰でもいいけど、私がそのとき言いたいのはそんなことじゃなかった。だけど何だか上手く言葉が選べなかった。それに対して彼は「枡野さんは、自分が正しいか正しくないかを一番に考えている人なんだよ。他の人は正しいか正しくないかを気にしていてもそれを一番には考えていないけど、枡野さんはそうなんだよ。そう思った」と言った。その何日か後に、もう会えませんというメールが来て、それから何週間か経った年末に、年末年始の挨拶の一斉送信っぽいメールが来た。「今年はいろいろありがとう! お世話になりました」彼にとってわたしはそういう存在だった、らしい。離婚したときまだ喋れなかったというお子さんは著者のことを覚えているんだろうか。一切連絡をくれないという奥さんは、もう著者とのことなんて思い出したくないだろう。自分しか持っていない思い出にいったい何の意味があるのか。幸せになってくださいと祈っても、相手は関係なくひとりで勝手に幸せになる。その昔、あなたのことが大好きで、そして今では嫌いになった 枡野浩一吉祥寺も『結婚失格』もバサラブックスも嫌いだ。■そういえば■幸せに気がついてしまうと、失うのが怖くなってしまう。怖がると幸せは逃げる。気がつかない幸せが本当の幸せなのかも。■とは言いつつも■今は普通に幸せ。
2007.03.05
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早坂隆/著。帯にはあの有名な船のジョークが。ある豪華客船が航海の最中に沈みだした。船長は乗客たちに速やかに海へ飛び込むよう指示した。船長は、それぞれの外国人乗客にこう言った。アメリカ人→「飛び込めば、あなたは英雄になれますよ」イギリス人→「飛び込めば、あなたは紳士と認められますよ」ドイツ人→「飛び込むことが、この船の規則です」イタリア人→「飛び込めば、女性からモテますよ」フランス人→「飛び込まないでくれ!」日本人→「みんな飛び込みましたよ」わたし、このジョークを初めに聞いたのは中学校の社会の先生からでした。涙がちょちょぎれました。いろんな意味で。それから、民族ジョークのファンです。おそらくはネタ仕込みに有効な一冊かと。
2007.02.28
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島田洋七/著■あらすじ■島田洋七さんの小学校・中学校時代の話です。広島に母さんとふたりで暮らしていた洋七さんは、ある時から佐賀のおばあちゃんの元に預けられます。それからどんどこしょ。■リリー・フランキーの東京タワーって■これを真似たのではないのん?と思ってしまった。熟れすぎているものにはケチをつけたくなります。■B&Bって■よく知らない。「もみじまんじゅう」のネタも知らない。だけども、この本を読むと島田洋七さんは子供のころからすごく人望を集める才能の持ち主だったんだなあと思う。子供のころのエピソードをこれだけ披露していて、人からバカにされたとかイヤミを言われたとか理不尽な目にあったとか、そういうのがほとんどない。ひとつだけ、佐賀の小学校に転校した初日におばあちゃんのことを「お前のかあちゃん、年取ってるなあ」と言われたことだけが書いてある。もちろん、島田さんも人からイヤなことをされたことはあるんだろうけど、そういうことよりも人から受けた優しさを強く心に焼き付けておけるというのは素晴らしいことだと思う。根っから明るいってこういうことだなーと。■それにしても■『モテたい脳、モテない脳』の中に、「男性が過去を語りたがるのは」について説明があったけど、島田洋七さんも多分に過去を語りたがる人だなあ。『がばい芸人』で、プロ野球選手よりも儲けている実態をあっけらかんと語ってらっしゃったのを(結構、いや、かなり自慢めいてた)読んだ後でなかったら、『がばいばあちゃん』の貧乏話や冒頭の「本当の幸せって」という語りかけももっと心に迫ったかもしれない。いや、いいんですけど。もう少し書きたかった気がするが、疲れたから辞めます。
2007.02.19
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ナンシー関/著■ちょっと疲れた■ので、今度ナンシー関さんの本を読んだときにいろいろ書きたいと思います。どちらもすでに10年以上前に連載されたもの。その頃の芸能事情がねぇ、思い出せなくてねぇ。もったいない。
2007.02.18
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ダライ・ラマ14世グレート・ザ・歌舞伎町/写真■せんせい、あのね■ダライ・ラマ14世にインタビューし、その発言をまとめたものです。写真もたくさんついてます。いつくかのことばをピックアップ。「人生の目的は、幸せになることです。」「自分のことしか考えない人は、苦しみのうちに人生を終えます。」「愛情とは他者が幸せを掴むよう望む気持ちです。」「慈悲の心があれば、必然的にチャーミングになります。」「本当の愛と執着を区別しましょう。」「自分を守ろうとすればするほど、自信をなくし、内気になるものです。」「必要なら、その相手から逃げることが最も賢い方法かもしれませんね。遠くまでね!」「私たちの本当の敵は、無知、憎しみ、欲望、嫉妬、傲慢という心の毒です。」いやあ、深いですね。心に沁みます。さて。この本、実はもらいものです。前にお付き合いしていた男性からもらいました。……彼が別れを切り出す直前に。と、いうことを踏まえた上で、もう一度↑読んでみてください。……、わたし、そんなにヒドイことしたのかしら。って別に、本気で彼が私に何かを言いたいがためにこれをくれたとか思ってるわけではありません。たぶんほとんど何にも考えてなかったんだと思います。その何にも考えてなさが、やだ。ちょっとは考えてください、くださっても良かったんじゃないかしら、わたしのこと。まあ、もうわたし幸せだからいいけどねー、フン!って、こんなこと書いていたら、ダメだ。全ての人を愛さなくては。仏の心で。笑顔で。せめて作り笑いで。ダライ・ラマ14世の講演を聞きに言ったことがあります。かれこれ8年ほど前。幕張あたり。ゆらゆら揺れながらしゃべっていた。適当に書いてるようですが、この本の言葉、非常に良かったです。ダライ・ラマ14世の笑顔もとても好きです。
2007.02.17
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