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米国株を取り巻く環境を考えるにあたって、米国長期国債利回りの動向は非常に重要です。国債というのは満期まで保有する限り、利払いも元本も保証されています。いわばリスクのない証券である国債の利回りが高い時に、配当も元本返済も保証されていない株式にどんどん資金が向かうとは思えません。米国の住宅市場にも同じ事が言えるでしょう。即ち米国長期国債の利回りの低位安定は多くの投資対象にとって非常に重要な要素と言えます。そして現在、私は米国長期国債の利回りは今後長期に渡って低位安定すると考えています。背景には「国際化の配当」があります。 1990年代、ベルリンの壁崩壊やソ連崩壊をきっかけに冷戦構造が終焉を迎えたことにより、米国の国防費は1980年代半ばのGDP 比6.5%から1990年代半ばまでに3.0%近くにまで低下。国防に費やされていた資金が民間に還流するようになった結果、長期金利が低下しました。もともと国防技術であったインターネットは民間で利用されるようになり、優秀な技術者が民間に流れるようになりました。これがいわゆる「平和の配当」と呼ばれるものです。「平和の配当」のメリットを享受する形で、米国の代表的株式指数であるS&P500指数は1995年から2000年にかけて3倍以上に上昇しました。 ここ数年、中国やインドが本格的に国際労働市場に参入してきています。1996年アメリカの通信自由化はバブルとその崩壊をもたらしました。しかし地球何周分もの光ファイバーが張り巡らされ、稼働率が10%にも満たないという状況が生み出された結果、通信コストが大幅に値下がりする事になりました。この結果、米国大企業を中心に新しい貿易の形、「オフショアリング」(海外へのアウトソーシング)の動きが活発化しました。これまで利用できなかった新たな低コストの労働力が市場で利用可能となりました。またこれによりアメリカには、少々景気が良くなってもそれが賃金上昇やインフレに繋がらない仕組みが出来上がるようになりました。2004年から2006年にかけての短期金利上昇にもかかわらず長期金利が低位安定しているのは、このようなインフレ抑制装置が働いている事による所が大きいと思います。90年代の「平和の配当」に対し、私はこれを「国際化の配当」と呼んでいます。 「国際化の配当」は既にあらゆる所に結果として表れています。2005年に引き続き、2006年も世界的に株式市場が堅調であったのもその一つの結果でしょう。米国株式市場の中でもよりオフショアリング、国際化を積極的に進めてきたダウ採用銘柄が2006年、他の指数を上回るパフォーマンスを示した事もその証左だと思います。しかし、オフショアリングの動きが本格化し始めたのはほんの、ここ数年の話です。これらは今後さらにもたらされるであろう大きな「国際化の配当」の序章に過ぎないと考えています。今一度、「シンプルな株価評価モデル」を思い出してください。 一株当りキャッシュフロー株価=―――――――――――――――――――――― 国債利回り+リスクプレミアム - 成長率 国債利回りの低位安定というのは、株価にとって一つの非常に重要な要素である事がお分かりいただけると思います。「平和の配当」と理由は異なるにしろ、結果的に長期金利の低位安定に繋がる「国際化の配当」は中長期的に米国株の大きなサポートの役割を果たすと考えています。
2007.01.23
新年あけましておめでとうございます。 今年も皆様が健康で、投資が上手くいく年である事をお祈りいたします。 昨年の当コラム、第150回 2006年の見通し(2006年2月2日) で申し上げた通り、私は2006年は米国株を買うのに最適の年になると考えていました。それは2006年に米国株が上昇するというよりも、その後数年続くであろう上昇相場を前に、格好の買い場が到来する可能性が高いと考えていたからです。 昨年は私が当コラムのみならずTVやラジオ、講演会等でも一貫して強気のコメントばかり述べていたので、「堀古はいつも強気の人」と思われたかもしれません。しかし上記コラムの冒頭でも記している通り、決していつも強気な訳ではありません。ただ2006年は私自身、数年前から待っていた格好の「買い」のタイミングであり、日本の投資家の方にもそのチャンスを逃して欲しくないと考えていました。実際2006年になって当コラムのコーナー名に「~米国株の魅力~」と付け加えていただいのもその為です。 2006年に格好の買い場が来ると考えながらも、2006年の何月から上昇が始まるという事はもちろん分かりませんでした。しかし金融引き締め終了がきっかけになる可能性が高いというのは、上記コラムや講演会で繰り返し申し上げてきた通りです。案の定、8月8日の米連邦準備理事会の利上げ見送りをきっかけに米国株は上昇を始め、それから年末までにS&P500指数は11.5%、ナスダック総合指数は17.2%の上昇率を示しました。 2006年10月、ダウが6年9ヶ月ぶりに史上最高値を更新してコメントを求められた際、私は「史上最高値更新がテーマだったら、これから毎日のようにコメントしないといけなくなりますよ」と申し上げました。記者の方が不思議そうな顔をされていたのが印象に残っています。その後、新聞やTVで毎日のようにダウの史上最高値更新が報道されるようになりました。「ダウ史上最高値更新」と聞くと、日本にいる多くの方は「NYはバブルだ」とか「高値は近い」とかいうイメージを持たれているのではないかと思います。それは「不思議そうな顔をした記者の方」が書かれた記事を読まれているからかも知れません。 中長期的視点で投資を行う私にとっては、2006年の上昇など、まだ序章に過ぎません。詳しい理由は1月20日(土)の楽天証券新春講演会でご紹介したいと思います。しかし一つの基準としていつもご紹介しているFEDモデル(一株利益を10年債利回りで除したもの)によると、S&P500指数の適正水準は2007年予想ベースで2070近辺となっています。これは現在よりも47%高い水準です。米国では特に2003年以降、様々な理由があってこのような適正水準からの乖離ができてしまったのです。しかしこの先数年は、少なくともその乖離は解消されるような動きになる可能性が高いと思います。 格好の買い場であった2006年が終わった今、昨年のように手放しで「強気」という訳にはいかないかもしれません。しかし適正水準に戻るだけで47%の上昇が見込める米国株、「良いビジネスを安く買う」事でさらにリターンを伸ばす事ができる、魅力的な投資対象であると考えています。
2007.01.05
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