2018.05.02
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皆さんの中にも、次世代の成長をリードすると見られる米国の大手ハイテクの代表的銘柄群、いわゆる「 FAANG 銘柄」(フェイスブック、アマゾン、アップル、ネットフリックス、グーグル)に投資していらっしゃる方は多いと思います。当コラムや私の講演等でも、この中でネットフリックス以外についてはしばしばご紹介しています。

 ニューヨーク証券取引所には FAANG 銘柄によって構成されている「 NY FANG 指数」というものがありますが、この指数は 2017 年、 56 %もの上昇率となり、米国株をより広くカバーする S&P500 指数の上昇率 18 %を大きく上回りました。しかし、 NY FANG 指数は 2018 年初から 3 月半ばにかけてさらに 24 %上昇。さすがに調整なしにそのまま上昇できないペースとなったところで今回の調整を迎えることになりました。

 今回の調整について、「上昇ペースが速い」以外に市場で言われている理由はさまざまです。フェイスブックは大きく報じられたケンブリッジ・アナリティカを通じた個人情報漏洩問題、グーグルはこれをきっかけとしたインターネットに対する大規模な規制導入懸念、アマゾンは連日に渡るトランプ大統領からのツイッター攻撃、そしてアップルは iPhone の売上成長鈍化懸念です。

 確かにこのような理由はあるのですが、そもそも 2 カ月半で 24 %と言うと、 1 年間で 115 %の上昇ペース。いくら FAANG でも、これは維持は不可能でしょう。そこにちょうど良い調整理由が出てきたというのが、自然な受け止め方ではないかと思います。

 このような観点から、 FAANG 銘柄が現在どのような位置にいるのかを見てみたいと思います。なお、 FAANG 銘柄のうちネットフリックスは当社として分析の対象外なので省かせていただきました。

●フェイスブック( FB

 確かに今回のケンブリッジ・アナリティカを通じた個人情報漏洩は深刻な問題であり、フェイスブックは責任を逃れられないと思います。ただ今回の失敗をきっかけに、フェイスブックは今後二度と同様の過ちを犯さないような措置を取るでしょうし、中長期的にそれはかえって非常に強固で、安心感が持てるものとなるでしょう。

 1日当たりアクティブユーザー数が 15 億人に迫るプラットフォームは全メディアにとって脅威であり、今回のスキャンダルを各メディアがより大きく取り上げるのは当然です。メディア報道によってより不安心理が高まり、 2019 年予想 PER 16 倍台と、 S&P500 指数平均とほぼ変わらない水準にまで下がっている現状では、悪材料はかなり織り込まれたと思います。

●アマゾン( AMZN

FAANG 銘柄の中で、ビジネスにしている市場規模が最も大きく、そしてそこから予想される成長率が最も高いのがアマゾンでしょう。従って当然のことながら PER も高く、調整局面が訪れたときになかなか下値を読みにくい銘柄かと思います。

 ただ私は今回、トランプ大統領が下値を教えてくれた感じがしています。一企業にとって、世界最強の国の大統領が連日ツイッター攻撃する以上の悪材料はあるでしょうか? アマゾンは 3 月末にかけて連日トランプ大統領のツイッター攻撃を受けて株価は 1,300 ドル台。今後よっぽどのことがないと、この水準を下回る状況は考え難いのではないでしょうか。

●アップル( AAPL

iPhone の需要が多くて生産が追い付かないと「供給不安」、店頭に iPhone が並んでいると「需要減少」――これはメディアがアップルについて報道するときの常套手段となりました。私もアップルや iPhone の売上動向についてはもう 10 年近く分析していますが、繰り返される一定のパターンがあり、メディアはその波を捉えて報じているだけというのがよくわかります。

 保有する現金から税金を差し引いた時価総額で 2019 年予想 PER を計算すると 11 倍を割り込みます。ビジネスの上下動をよく理解し、これに耐えられる中長期的な投資家は、引き続き十分報われる状況だと思います。

●アルファベット / グーグル( GOOGL

 検索以外の事業を拡大しつつあり、それによって中身がわかりにくくなってきているのが一因で、比較的高い成長率の割に 2019 年予想 PER 20 倍と、市場平均を少し上回っている程度です。

 検索エンジンと並んで傘下の YouTube は「金の成る木」に近い良いビジネスであるほか、現在進行中のさまざまな投資・開発案件が将来芽を結んでくることによって得られる収益はほとんど評価されていない状況です。もちろん割安な株価がさらに割安になる可能性はありますが、こちらも長期の投資は報われる可能性は高いと考えています。

 このように 2000 年のネットバブル期と異なり、昨年の非常に高い上昇率にもかかわらず、利益成長率も高かったおかげで、今回株価調整後の大手ハイテク銘柄はバリューの観点から見ても、調整前とほとんど遜色のない水準だと思います。もちろん、市場が再び評価してくれるようになるまでには時間が必要でしょうが、その時間を待つ(=リスクを取る)価値はあると考えています。

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最終更新日  2018.05.02 01:56:21


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