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2008年05月26日
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テーマ: 精神の世界(125)
カテゴリ: 宗教
原始仏典『サンユッタ・ニカーヤ』第四編「悪魔についての集成」第二章第三節「岩の破片」の中の詩句を読む。

尊師は、岩の破片で足を傷め、激しい痛みと不快感に耐えていた。そこへ近付いてきた悪魔との応酬である。

   ☆   ☆   ☆
〈悪魔〉あなたは、ものぐさで臥ているのか? あるいは詩作に耽って臥ているのか? あなたの為すべきことは沢山あるのに。人里離れた休息所で、独り眠りに耽っているのはどういうわけか?

〈尊師〉私は、ものぐさで臥ているのではないし、詩作に耽って臥ているのでもない。私は目的を達成し、憂いを離れている。

矢が胸を貫いて、心臓が激しく動悸している人々でも、眠ることができる。煩悩の矢を離れた私が、どうして眠らないということがあろうか。

目覚めているが気掛かりもなく、また眠るのを恐れることもない。夜も昼も、私を後悔させて苦しめることがない。世の中のどこにも、私は害いを見ない。それ故、一切の生きとし生けるものどもを憐れみながら、私は眠る。
   ☆   ☆   ☆

斯かる悪魔の誘惑は、現世の柵への誘き出しとして読む。例えば尊師は悟りの心を説き歩く行を行ずる者であれば、こうして臥している間にも、迷苦に陥って、救いの仏法を求めている衆生も多いのだから、日頃の行を続行せよとの意味にも取れるだろう。

尊師は足を傷めて、暫時の休息を取っているところである。その痛みは身体上のものであって、因と縁とを取り込むが故に、衆生が受ける痛みと異なるものではない。それ故「一切の生きとし生けるものどもを憐れみながら、私は眠る」は、痛みの空なるが如く、自他の分別を超えたところの慈悲でもある。

「矢が胸を貫いて、心臓が激しく動悸している人々でも、眠ることができる」もまた、自他の分別を超えて意味を為す言葉として解する。これによって、悪魔の誘惑は退けられているからだ。

もし本より有るのではないところの自他の分別に心が動ずれば、悪魔の誘惑が某かの意味を持つかもしれない。しかし「目覚めているが気掛かりもなく、また眠るのを恐れることもない」によって、分別界を超え出た仏界に、常に安らぐことを、どんな声にも妨げられることがないという境地が語られているのである。即ち悪魔の声の如きは、仏界内に於いては、言葉無き風の微音に化すが如くであるのだ。

現世は衆生の無明と情意の妄執に満ちているが、それらの柵が仏界に及ぶことは一切無い。その故に「夜も昼も、私を後悔させて苦しめることがない。世の中のどこにも、私は害いを見ない。それ故、一切の生きとし生けるものどもを憐れみながら、私は眠る」と語られる。即ち「憐れみ」とは、柵を憐れむ心にも通じるからである。





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最終更新日  2008年05月26日 13時40分59秒
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