今日の気持ちを短歌におよび短歌鑑賞

今日の気持ちを短歌におよび短歌鑑賞

2016.01.29
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鑑賞:歌集「悲しき玩具」(四十三)(下書き)            後藤瑞義
(注)歌の順序は歌集の順序によります。

人がみな

同じ方向に向いて行く。

それを横より見てゐる心。


 大きく、二つのセンテンスからなっています。「人がみな同じ方向に向いて行く。」

と「それを横より見てゐる心。」の二つの文章です。最初の文章を「人がみな」と

「同じ方向に向いて行く。」と行を分けているのにもそれなりの意味はあると思

います。「ひとがみな」ということと「同じ方向に向いて行く。」ということをはっき

り分けたい意図があったのでしょう。


 それにしましても、私たちは(私ではなくあえて私たちと言わせてもらいます)、

この世の中で社会生活をするうえで、なるべく角がたたないように、なるべくス

ムーズに世渡りが出来るようにと必死になっているのが常識だと思います。

そのために、目立たず、みんなと同じような行動をとって身を守っているので

す。たとえ少しばかり違和感のあることでも自分を抑え必死に世の中の流れ

に乗るように努力しているのです。これは当たり前のことです、常識です。も

っとも、最近の若い人は多少変わってきているかもしれませんが。

この常識を啄木は問題視しているわけです、なんでみんな同じようにするんだ

ろうか、同じ方向を向いて行くんだろうか。ここに啄木の啄木らしさがあるのだ

と思います。個人主義が叫ばれ、個性が尊ばれるようになった昨今でさえやは

り私たちは、あるいは、私は同じ方向に向いて行こうとしている自分に気が付く

のです。まして、明治時代ですので、啄木のこの個性といいますか、先進性を

高く評価したいとわたしは思います。ただ、「それを横より見てゐる心。」に啄木

の哀しみが滲み出ているのを感じるのです。なぜ、自分だけこうなんだろうか。

そんなうめきにも似た啄木の深い孤独感をわたしは感じるのです。


人がみな

同じ方向に向いて行く。

それを横より見てゐる心。







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最終更新日  2016.01.29 08:29:46
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