2月28日(月)
岡井 隆「私の文学」(80)
(対談:聞きて田中和生)
三田文学(2003年夏季号)より
一九八〇年代以降の多産の時代(6)
岡井:…
小説家の世界でも、小説を書いて食べていらっしゃる人と
いうのは本当に一握りで、ほかの人たちはみんなほかのこと
をやって食べていらっしゃると思いますけれども、短歌の世
界ももちろんそうで、一首一首の歌が百円とか千円とかいう
値段ですから、歌を売って食べていくわけにいかないでしょ
う。そうすると啓蒙のしごとですね。学校の先生まで含めて、
啓蒙の仕事はお金が出ますから。それで、生活上の必要があ
って少しずつ少しずつやっているうちに、入門書を次々に書
くことになったんですね。啓蒙の仕事って、自己啓蒙ですか
らおもしろいんですけれども、自分でもわからない部分があ
りますね。短歌ってなんだろう、五七五七七ってなんだろう
ということを人にわかりやすく書くということは、よほど自
分がわかっていないと書けない至難のわざだということが、
書いているうちにわかってきた。
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