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April 10, 2022
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カテゴリ: 書評

RAGE 怒り

ボブ・ウッドワード  伏見威蕃

国際ジャーナリスト 春名 幹男評

トランプ氏が引き出したもの

原書が米国で出版された昨年 9 月、ドナルド・トランプ前米大統領はコロナ禍を「つねに軽く見せたかった」ので、わざと「コロナ」の問題で注意を引かないような発言をしていたとの記述が大きく報道された。

このことは 1 か月半後に迫った大統領選挙に大きい影響を与える。予想通り選挙結果はトランプ氏敗北となった。

しかし、興味深い記述は他にいくつもある。

もっとも注目すべきは、ミサイル発射や核実験を繰り返した北朝鮮と米国が戦争の崖っぷちに追い込まれた、とする経緯だ。

北朝鮮は 2017 7 月以降、米国本土に到達可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を繰り返した。 9 月には水爆と見られる核実験を行った。これに対してトランプ氏がツイッターで、金正恩総書記のことを、「ロケットマン」などと罵った時期のことである。

2019 年に当時を振り返って、トランプ氏は、「彼(金総書記)は全面的に戦争準備をしていた」と明かし、「私が大統領ではなかったら、……大規模な戦争になっていたはずだ」と語ったという。だが、直接の会談をして「会った」ので戦争を回避したというのだ。

2018 年に初の米朝首脳邪五段を実現した陰の立役者は、韓国生まれで、米中央情報局(CIA)の元工作員から挑戦ミッションセンター長に就任したアンディ・キム氏だった。

彼は 20 年前に開拓した北朝鮮情報筋と「浦チャンネル」で連絡を取り合い、韓国の協力も得て、シンガポールでトランプ・金会談が実現した。これで「北朝鮮の核の脅威は、もはや存在しない」とトランプ氏は成功を宣伝した。だが、それも含めて、現実には「非核化」は達成されなかった。

電話や大統領執務室での会見を含め、インタビューは全部で 18 回。題名は「人々の怒りを引き出す」という彼のポピュリズムから取った。それが米議会議事堂突入事件を引き起こし、癒しがたい「分断」を残した。

(日本経済新聞出版  2500 円)

ボブ・ウッドワード 米国を代表するジャーナリスト。 1943 年生まれ、イェール大学卒。 49 年間にわたりワシントン・ポスト紙の記者、編集者を務める。

【読書】公明新聞 2021.3.22






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Last updated  April 10, 2022 05:23:20 AM
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