日々のあぶく?

日々のあぶく?

October 5, 2006
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「対人地雷」ミステリー短編集
「本格推理」に寄稿していた2編+4編で構成されている。
地雷は「不眠の兵士」であり、兵力を削ぐために存在するため、致命傷を与えることが第一の目的ではない。
しかし、戦争後も放置されているため、肢体を奪われた人々が今も増えている。

「対人地雷」に対する知識がなかったため、こういう現状があると知れた、知らせるための小説は良いのかもしれない。
でも、「対人地雷」に関わる人が綺麗事(正論だけでは成り立たず、政治的駆け引きが必要など)ではいられないのはあるとしても、殺人という重石を背負わせるのってどうなんだろう…
いや、ミステリでフィクション、そういう設定だと分かってはいるのだが。

・地雷原突破~事件発生年1996年
NGOに参加している坂田洋は学生時代からの友人・早瀬にベルギーであった事故について語る。
対人地雷全面廃絶に関する国際会議を盛り上げるため、坂田の所属する団体は近くの公園で市民集会を開いた。
そこで、地雷原を体験してもらおうと火薬の代わりに音声ブザーを仕込んだ擬似地雷原を作ったのだが、
最初に歩いて見せたメンバーの一人、サイモンが爆死したのだ。
坂田の話を聞くうちに、早瀬は真相に気付く。

・利口な地雷~事件発生年1997年
自衛隊に納品する地雷を制作する安永工業で罠にかかって社員の山崎が殺された。
居合わせたのは社員の二宮、陸上自衛隊調達実施本部の小川、ジャーナリストの永井綾子。
山崎には軍事機密を流した疑いがかかっていた。
それは二宮が開発した、火薬を使わず、圧縮空気を詰め、本体には生分解性プラスチックを使用し、一定期間が過ぎれば土の中で分解される"利口な地雷"「ドリアン」のことかもしれなかった。

・顔のない敵~事件発生年1993年
カンボジアで地雷撤去作業をするアネットと坂田。
元軍人で、彼らに地雷撤去の仕方を教えたジム、医者のマーガレットもいた。
地雷被害者である少年・コンはお弁当を運ぶなど彼らの手伝いをしていた。
地元選出の国会議員の息子で、地雷を撤去した土地を有効に使おうとしている青年・チュオンが地雷原で爆死した。
事故のように思えたのだが―

・トラバサミ~事件発生年2006年
事故で死んだ新井はNGO「戦争被害者自立支援会」(通称「支援の会」)のメンバーの中でも過激な意見の持ち主で、
ぬるま湯のような日本で暮らす人々を批判し、地雷原の怖さを知らしめるため、人間用トラバサミ(狩猟用の罠)をつくっていた。
どこかに1個だけ仕掛けられたらしいトラバサミについて警視庁の久山警部補は地雷を調達したこともある友人で自衛隊調達実施本部の小川のもとを訪れる。

行動を起こさない、協力しない一般市民を避難するのはNGO団体が最もやってはいけないこと。
地雷撤去のために税金が使われているといった点で、一般市民も知らずして協力している。
このあたりのジレンマは実際ありそう。

・銃声でなく、音楽を~事件発生年1991年
新たなスポンサーになってもらおうとプレゼンテーションに赴くサイモンと坂田。
音響機器ブランドの社長室で、社長ジェシカ・マーチンの目の前には死体が。
彼女は「警察への通報を待て」と言う。彼女が殺したわけではないらしいのだが―

・未来へ踏み出す足~事件発生年200X年
地雷撤去のエキスパートとなった青年コン、ジャーナリストの綾子も立会いのもと、
安永工業の弓削、工科大学(ロボット工学)の谷村、高分子化学工業の岡田らが開発した新しい地雷撤去装置の実演が行なわれる。
ムカデに似た装置についたセンサーで地雷を発見し、接着剤で地雷を固めて爆破しないように処理する。
これが普及すれば各段に作業が早くなり、処理する人の安全も確保される。
実験は成功するが、その夜、頭を接着剤で覆われた弓削の死体が発見される。
犯人は誰か?

ちなみに日本が対人地雷全面禁止条約に署名したのは1997年の終わりらしい。

・・暗い箱の中で
これだけは「対人地雷」と全く関係のない話。「本格推理」に寄稿したもの。
同僚・理恵の送別会に行こうと彼女と会社を出た5人。
店を手配した由紀子がサービス券の付いた本(タウン情報誌)を忘れたため、一同は会社に戻ることに。
5人を乗せたエレベーターが地震の影響で停止・停電。
その中で由紀子が刺殺された。
犯人は乗り合わせた4人の中にいる!

密室での犯行。誰にでもなしえたこと。でも、今、何故?
水島が辿り着いた真実とは―





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Last updated  October 7, 2006 01:56:09 PM


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