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FLOWER GARDEN 2 小山千鶴さん
2009.02.14
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 七月に入り、気温も日に日に上昇してきた。

 汗を拭きながら一日の仕事を追え、雪乃は康平、義母の良子と三人で夕食をとっていた。

 夕食は良子が献立を考えてくれているのだが、今夜はいつもより料理の品数が多かった。


「康平、雪乃さん、いつも本当にお疲れ様。ありがとうね。」

 突然、良子が話し始めた。

 康平が驚いて、ビールを飲むことをやめ、良子を見る。

「どうしたんだよ、母さん、突然あらたまっちゃって・・・・。びっくりするだろ。」

 良子は何も言わず、下を向いた。

 いつも快活な良子らしくない。


 雪乃が初めてこの家を訪れた日、良子は驚き、そして体中で喜びを表し、雪乃を歓待した。

結婚して同居してからも、良子はいつも明るく、どんなに忙しくても弱音を吐いたことは

なかった。その良子が、別人のように沈んでいる。


「母さん、どうしたんだよ。いつもの母さんらしくないよ。ほら、ビール、飲んで、飲ん

で。」

 康平が差し出したビールをコップにつぐと、良子はそれをぐいと飲み干し、それから二人を

見た。

「あのね・・・・、例の借金のことなんだけれど・・・・、やっぱりもうどうしようもなく

なって・・・・・・。」

 康平の顔が曇る。

「そんなら、ここ、とうとう売るのか?」

 良子はまた下を向いた。


 雪乃はあまりの驚きに、何も言えずに良子と康平を見ていた。

 この家の借金のことは知っていたが、この家を手放さなければならぬほど大変だとは思って

もいなかった。今のように一生懸命働けば、何とかなるものだと、雪乃は自分でそう考えて

いたのだった。


「お義母さん・・・・・。」

 良子に何か言わなければならないと思うのだが、言葉が見つからない。


「雪乃さん、新婚さんなのに、雪乃さんには苦労のかけっぱなしで本当にすまないと思って

います。」

 良子はそう言うと、エプロンで涙をぬぐった。

「でも、ここを売ったら少し余裕もできるから、そうしたら康平と二人でどこか良いアパート

を探して住んでもらおうと思っているので・・・・・。」

「お義母さん・・・・・・。」

「そ、そんなこと言って、母さんはどうするんだよ。」

「私は何とでもなるよ。」

 良子はいつもの笑顔になった。

「前から言おうと思ってたんだけれど、ほら、だいぶ前にここで働いてもらっていた山田

人がいたでしょ。あの人が、今一人暮らしで、母さんにしばらく遊びにこないかって言って

くれていて、そうさせてもらおうかなって思っている。その後のことは、またゆっくり考える

よ・・・・・。」

 良子の笑顔は消え、また下を向いた。


 良子は長年働き続けたこの店がなくなるところを見たくないのだと、雪乃は思った。

 今は、良子の思う通りにさせてあげた方がいいかもしれない。


「あと、一ヶ月、がんばるよ。」

 良子はいつもの元気な口調で言った。

「後、一ヶ月、母さん、一生懸命やるからね。だから、康平、雪乃さん、よろしくお願い

します。」

 良子は、二人に頭を下げた。

「母さん、何水臭いこと言ってるんだよ。みんなでがんばるのは当たり前のことだろ。」

「そうですよ。お義母さん、私もがんばります。何でもどんどん言いつけてくださいね。」


 良子はまた涙をエプロンで拭い、

「よしっ、今夜はじゃんじゃん飲もう。」

と大きな声で言った。





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Last updated  2009.02.14 17:08:35
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