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FLOWER GARDEN 2 小山千鶴さん
2009.02.15
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 良子が後一ヶ月間、里中惣菜店をがんばって続ける、と言ってから二週間たったある日の

午後、忙しく働く雪乃のもとに一人の訪問者があった。

 その男性は、戸惑う雪乃に、麻生法律事務所の麻生隆と申します。今日は、村木浩一郎氏の

依頼で参りました、と言い、雪乃に分厚い包みを渡した。

 その中には封書や文書が多く入っていた。封書の一つに、里中雪乃様と記されたものがあり

、差出人は、沢崎尚人だった。




 雪乃様


 お元気でお過ごしのことと思います。

 雪乃さんにお知らせしなければならないことがあります。


 会長が一昨日、亡くなりました。心臓の病でした。

 自宅で眠るようになくなったということです。


 会長は、私が秘書になる前から心臓に持病があり、定期健診を受けておりました。無理を

しなければ、日常の暮らしには何も支障がないようなものでした。ですから、一ヶ月前に会長

が入院したと聞いても、私はあまり動揺しませんでした。その後、すぐに退院して、自宅療養

をすることになったと知らされて、安堵したものです。


 一週間前、私は会長宅を訪問しました。

 会長は庭が一望できる部屋で、籐椅子に座っていました。私を見ると、やあ、と言い、右手

を少し上げました。それは、会長職にいた頃、そのままのものでした。


 会長は私の近況を聞き、そのことをしばらく話した後、実は、君に相談したいことがある、

と言いました。

 それからのことが、麻生弁護士が雪乃さんの所に届けているものの話でした。


 会長は雪乃さんの結婚を心から祝福した一人です。

 雪乃さんが結婚して少したってから、会長は雪乃さんが働く里中惣菜店にそっと行って

みたのだと、私に話してくれました。雪乃さんが元気に働いている様子を見て、本当に安堵

したようです。

 しかし、会長には一つ、心配事がありました。

 雪乃さんから聞いた話の中で、里中家が経済的に苦しんでいるのではないかと思ったの

です。しかし、いくら心配だからといって、里中家の経済状態を勝手に調べることは、あまり

に非常識なことです。

 会長はこのことでかなり思い悩みましたが、自分の顧問弁護士の麻生さんに依頼し、里中家

の状態を調べたのでした。

 会長はこの無礼をどうぞ許していただきたいと、申しておりました。


 麻生弁護士の報告で詳しいことが分かってから、会長は里中家の窮状を何とか援助できない

かと、いろいろ考えていました。

 しかし、会長と雪乃さんに不思議な絆があり、会長が雪乃さんに心から感謝しているから

といえ、会長と里中家には何もつながりはなく、それに、会長が自分の思いのみで里中家に

援助することが、雪乃さんと里中家の方々にわだかまりを生んでしまうかもしれないと、い

うことも、会長の大きな心配事の一つでした。


 しかし、会長は自分が心臓発作で倒れ、自分の余命がいくばくもないと感じた時から、里中

家への援助を決めたのでした。

 それから、会長は麻生弁護士に全てを依頼し、雪乃さんと里中家の方々に自分の気持ちを

したためました。


 会長は私に全てを話し終え、これで大丈夫だろうかと聞きました。

 私は大丈夫です、と答えました。雪乃さんも里中家の方々も、会長の気持ちをそのままに

受け取ってくださるでしょうと、言いました。

 すると、会長は心から安心したように微笑み、雪乃さんに私の気持ちを書いておきました

が、君からも伝えてください、と言いました。

 私は、分かりました、と言い、おいとまを告げました。すると、会長は、ありがとう、と

言い、私に右手を差し出しました。

 私はその手を握り、また来ます、どうぞ、お大事に、と言うと、会長は私を見つめ、また

会いましょう、と言ったのです。


 私は葬儀には参列しませんでした。

 私にとっては、一週間前のあの日が、会長との別れの日でした。それに、私と会長は、また

会えるのだ、という不思議な確信があるのです。


 長い手紙になりました。

 雪乃さん、今回のことは全て麻生弁護士に託してあります。麻生弁護士は、非常に有能な

弁護士です。彼に何でも聞いてください。


 今、深夜の二時です。物音一つしない静かな夜です。

 会長は今、どこにいるのでしょうか。人は死後、四十九日は魂がこの世にとどまると聞いた

ことがありますが、会長はもう娘さんのもとにいっているでしょう。そして、娘さんを自分の

腕の中にしっかり抱きしめていることでしょう。


 雪乃さん、どうぞ元気でいてください。

 こうして、あなたに手紙を書いていると、いろいろなことを聞いてもらいたくなります。

 もし、迷惑でなかったら、もう少し私の手紙を読んでもらえませんか。

 今、研究室で一緒に研究をしている、北川理生という女性のことをあなたにきいてほしい

のです。








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Last updated  2009.02.15 16:02:35
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