片桐早希 おむすびころりん

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2009.03.29
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 3月最後の日曜日、僕と理生はまたK公園の海が見渡せる丘にいた。


 初めて理生とK公園に行った日の翌日から、僕達の研究室はまた慌しくなった。

 Kの後任の准教授が着任し、新たな体制がスタートしたからだった。後任の准教授は

Kのような出世志向はあまりないようであったが、非常に几帳面な性格だった。

 理生は新しい状況の中で、研究が始められるようにてきぱきと段取りをした。

 それは、いままでも理生と何の変わりもない姿だった。髪を切ったことを除いて。


 Kが理生ときまずい関係になっても、彼女を研究室においていたわけが僕にはよく分かる。

理生ほど段取り良く行動する人間は、他にはいないのだ。

 僕は十年間の秘書生活で有能な人間を数多く見てきたが、それでも理生ほど無駄なく

仕事を進める人間はいなかった。


 そんな慌しい日々を送りながら、昨日の夕方、理生が、明日、またK公園に行かないかと

言ったのだった。


 K公園はいつにも増して家族連れで賑わっていたが、僕達がいる丘の周辺は閑散としてい

た。それは僕達にとって好都合なことだった。

 理生は僕が着いた時にはもう来ていて、一人椅子に座り海を見ていた。

 そして、僕を見ると、今日はおむすびを作ってきた、と言った。

 理生手作りのおむすびは、少々形がいびつではあったが、塩味の加減はなかなかよかった。


「子どもの頃からね、嬉しいことがあってついはしゃいだりするとその後、必ずといって

いいほど悲しいことや惨めなことがあるのね・・・・。何故だか分からないけれど、そう

なってしまうの。それで、いつの頃からか嬉しいことがあっても、それを顔に出さないよう

になってしまった・・・・。」

 理生はおむすびを頬張りながら突然話し始めた。

 初めて聞く話だった。

「でも、アイツと初めて会った時はそのことをすっかり忘れて、今から思うと本当に恥ずか

しいくらい浮かれてしまっていた。だから、やっぱりあんな嫌なことがあったのよね。」


 僕は黙って聞いていた。


「でもね、いいこともあったよ。ほら、走ってきた子どもをよけようとして私たちのテーブル

にワインをこぼしてしまったウエイトレスのこと、話したでしょ。あの人と友達になった

の。」

 僕は思わずおむすびを食べることをやめ、理生の横顔を見た。

 理生に女友達がいるという話は初めてだった。


「彼女は何も悪いことはないのに、あのことでもしも辛い目にあっていたら申し訳ないと思っ

てね、心配だったの。アイツがあんなに怒ってしまっていたし・・・。それでしばらく

して、私、もう一度あのホテルに行ったの。」

 理生は海を見ながら話し続ける。

 僕はその横顔から目が離せなくなっていた。







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Last updated  2009.03.29 20:16:14
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