山行・水行・書筺 (小野寺秀也)

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小野寺秀也

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2022.03.04
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テーマ: 街歩き(652)
カテゴリ: 街歩き

 新型コロナ・オミクロン株のまん延を受けて休止していた脱原発金デモの再開である。宮城県のコロナ感染者数はピークアウトの様相を見せている時期に、ロシアによるウクライナ侵略が始まったこともあって、金デモスタッフがメールを飛ばしあって脱原発というシングルイッシュウに「戦争反対」を加えることにしようと議論されていた。
 その再開金デモの当日に、ロシア軍がウクライナのヨーロッパ最大級のサポロジエ原発を砲撃し占拠したというニュースが飛び込んできた。図らずも、脱原発金デモはロシアによる戦争に反対することでいっそう強く脱原発を訴えることになったのである。どう考えてもシングルイッシュウである。
 「​ ロシアの原発砲撃「やっぱり狙われた」 日本でミサイル攻撃を懸念し裁判した人たち「最大の弱点」と訴え ​」という3月5日付の東京新聞の記事にあるように、脱原発を主張する私たちは、日本の沿岸に50以上もある原発の危険性は原発自体の事故に止まらずいったん事があれば敵に差し出した自滅用の原爆になってしまうことも恐れていたのだ。
 それにもかかわらず、自公政権は敵基地先制攻撃論を語り出しているのである。先制攻撃すれば反撃されるのは戦争の常である。そんな主張を公然としている以上、彼らの仮想敵国のミサイルがどこにロックオンしているのかは容易に想像がつく。日本はあっさりと自滅するような原爆化施設を仮想敵国のためにたくさん用意しているのである。

 今、パソコンに向かってこのブログを書いているのだが、テレビのテロップに「ウクライナのゼレンスキー大統領はロシア軍が南ウクライナ原発を占拠しようと進軍していると発表した」ことを流している。もしかするとロシアはウクライナの最大のエネルギー源である全原発を占拠してライフラインを封じようという魂胆なのかもしれないが、そうであったとしても国家が原発を抱えることは最大の弱点を抱えることになることは間違いない。戦争好きなネトウヨ政権こそ原発廃棄に向かわなければならない。安倍晋三さんあたりが頑張るべきイッシュウだと思うのだが………。











元鍛冶丁公園から一番町へ。(2022/3/4 18:15~18:30)


 元鍛冶丁公園には60人ほどが集まっていた。スピーチには県議会議員の岸田清実さんや市議会議員の猪股由美さんが加わった。運転中のサポロジエ原発が砲撃されたという切迫した危険ということもあって、スピーカーの口調は熱を帯びている。
 戦争反対と脱原発のデモやスタンディング、街頭宣伝の告知が相次いだ。プーチンならずとも原発を持ちたがっている政治家は政権周辺に群がっている。「核共有(ニュークリア・シェアリング)」論を議論すべきだという前首相、非核三原則を持ち出して一応は否定して見せる現首相、日本の政治にも核兵器や核兵器化する原発の危機は目の前で蠢いているのである。切実に深刻である。

 60人のデモは、脱原発と戦争反対の様々なプラカードを掲げて繁華街に向かった。私の印象に一番残ったのは、今日のニュースを聞いて急いで書いたらしい白紙に手書きの「ロシアは 原発への 攻撃をやめろ」というプラカードだった。その率直さに切迫性が溢れている。

















一番町。(2022/3/4 18:35~18:43)


 60人といつもの倍ほどの人数のデモとなり、最初の信号でデモが分断されたこともあって、今日のカメラワークにはときどき駆け足が必要になった。
 足がもつれて転んでも不思議はないほどの十分な年寄りだが、まあ何とか最後まで付き合うことができた。







青葉通り。(2022/3/4 18:53~18:56)

​​​
 脱原発デモのたびに書いたブログを読み直して、かつての私の考えを再確認しているが、まだ9年前のブログ記事にとどまっている。フクシマ事故から2年目には、事故の被害に遭われた人々の話題も多かった。
 「​ 仙台散歩 : 映画「フタバから遠く離れて」、そして「4月28日脱原発みやぎ日曜デモ」へ ​」 というブログ記事にはこんなことを書いていた。


 警戒区域である浪江で、避難を拒否して酪農を営む男性がいる。「こいつらを死なせない。これは意地だ」という。被爆をしながらの戦いは悲壮であるが、彼が近くにある避難した酪農家の牛舎に案内する。「エサも水もなく、死んで、腐ってミイラになった」、「死ぬまで一ヶ月くらいあっただろう。最悪の死に方だ」と吐き捨てるように語る。
 ここは、牛たちのアウシュビッツだ、そう思った。そして、おそらくはそのことに深く絶望的に傷つけられているのは、避難した当の酪農家なのだ、と思うのだ。
 「結局、原発誘致は間違っていた」と井戸川克隆双葉町長は語る。「どんなに補償してもらっても、絶対にプラスにはならない」。そうなのだ。父祖代々、あるいは同じ空気を生きる共同体の一員の家族として生き続けてきた、その〈故郷の全体〉を失ったことを補償できるものなんて存在しない。「不可能な交換」(ボードリヤール)なのだ。「一般的等価物」(ジャン=リュック・ナンシー)が存在しえないものこそ、原発が奪ったものなのだ。原発をたずさえた人類は、思想や哲学が応えることのできない領域に踏み込んだのではないか。

吸ひさしの煙草で北を指すときの北暗ければ望郷ならず
           寺山修司  

 そういえば、タバコを口にしながら望郷を語る二人のおばさんのロングショットもあった。 (2013年4月28日)​



 被害は人間ばかりではない。生命あるものはすべて放射能に曝され、今もされつつある。 「​ 「5月17日 脱原発みやぎ金曜デモ」 30年後を目指して? ​」 と題する記事ではそれについて書いていた。

  被爆地を這ふほかになき山楝蛇(やまかがし)
           (いわき市)馬目空

 昨年の7月くらいから、朝日新聞の投稿欄「朝日歌壇」、「朝日俳壇」から原発事故に関連して詠まれた短歌や俳句を抜き書きしている。上の句は今年の4月8日付の新聞に掲載された金子兜太の選による句である。
 人間も家畜もペットも、放射能汚染と放射能被爆によって悲惨な状況に追いやられている。そして、人間も家畜もペットもその一部は避難できたり救出されたりしているが、多くは見捨てられたままである。それでも、見捨てられていることを人々は口の端に登らせ、不十分とはいえマスコミも時として取り上げることがある。
 しかし、野生であるものたち、おそらくは人間よりももっとずっと太古からその地で生き続けてきた野生の命の被爆は無視され続けている。少数の生物学者が多くの形質異常を発見するのだが、それだけである。被爆地を這うほかに彼らの生のありようはないのである。
 そして、放射能にまみれた地を這うヤマカガシの姿は、様々な事情に阻まれてその地を去ることのできない人々の生に重なってしまう。それぞれの交換不可能な生を、東京電力はおろかどのような政治も贖うことはできない。 ​​ (2013年5月17日)

 文章の巧拙はさておき(さておくしかないのだが)、思いはまったく変わっていない。確認し、確信するばかりである。

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Last updated  2022.03.06 11:08:25
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