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街を撮るためにカメラを持って歩き回っていて、これはもちろんカメラ趣味のためだが、闘病のための必要な運動量を確保するための散歩でもある。カメラを持たないでひたすら歩く散歩ももちろん行っているのだが、それ以外に「筋トレ散歩」と称するものもある。
4日に1回の筋トレ散歩は、まずわが家から15分ほどのところにある亀岡神社の370段ほどの石段の上り下りをする。亀岡神社は仙台城跡のある青葉山丘陵の北端近くにある神社で、青葉城跡の天守台の高さとあまり変わらない。石段の上り下りのあと、青菜城跡の坂道を天守台まで登る。この筋トレ散歩は、下半身の筋トレと心肺機能の強化(というよりは老化防止)が目的なので、とにかくできるだけ大股で急ぎ足で歩くのである。脈拍を110~120くらいになるようなスピードで歩くようにしている。
4日に1回というのは、私の年齢では使った筋肉を休めるためには中3日空けるのがいいという経験からである。じつは、この筋トレ散歩は以前からやっていて、かつては毎日だったのが、年齢に応じて2日に1回、3日に1回、そして2年前から4日に1回と体に相談しながら変えてきたのである。
ネフローゼ症候群で3週間の入院治療で10㎏も痩せて、筋肉が激減した(ネフローゼ症候群では尿と一緒に多量のタンパク質が排出される)ので、この筋トレを恐る恐る始めたのだが、何とか1か月半前くらいから4日に1回のペースで続けられるようになった。
というわけで、今朝も朝5時に家を出て亀岡神社に向かったのである。神社の石段を一定のペースで登るのはやはり苦しいのだが、なにかまったく別のことを夢中になって考えていると気が付いたときにはけっこうな高さを稼いでいることがある。今朝は1週間分のレシピのこと、それぞれのレシピの材料や手順のことを考えながら石段を踏み上がっていったのである。
このごろ、食事が本当においしいのである。何を食べてもおいしいし、切除胃で小食なのだが、食欲そのものはとても旺盛なのである。自分で食べたいものをメニュー表に乗せて自分で作って食べるので、三度の食事がおいしくて当たり前なのだが、10㎏も痩せた体が栄養を要求しているのが旺盛な食欲につながっているのだろう。
じつは、腎臓を病む前から年々美味しく食べられるものが増えていると感じてはいた。人間はそんなふうにできているのではないか、そう思っているのは同居していた義母がそうだったからである。115歳まで生きた義母の最晩年あたりの食事も私が作っていたのだが、私の拙い料理、ときには見た目の悪い誤嚥防止食なども含めて食べるものすべて「おいしいね、おいしいよ」と言いながら食べてくれるのだった。「食べるものがおいしくなったので、私もそろそろかな」と言って妻に睨みつけられるのだったが、やはり人間に備えられた能力の一つではないかと思うのだ。最後は少しなりともいい思いをしておしまいになるというのは悪いことではないだろう。
石段を踏みながら「おいしい生活だよな」などと考えていた。しかし、「おいしい生活」というのはたしか糸井重里氏の作った何かのCMのキャッチコピーではなかったか、それは使いたくないな、そんなふうに思いなおした。左翼崩れで新自由主義風の言説で名を成すことへの嫌悪感が私のなかにはまだ生き残っているようだ。
糸井重里氏が登場したあたりで現実に戻ると、かなり段数をこなしていて神社の屋根が見え出した。朝5時40分の太陽が背後から照らしていて、私の影が石段に伸びている。石段を下り始めると、太陽はほぼ真正面、樹々の葉に見え隠れしている(写真はスマホで)。
6時10分ころ青葉城跡手天守台に着くと、太陽は雲に半ば隠れながら仙台市街の一部だけを照らし出し、高層ビルの多い中心街は雲のなかのように煙っている。
さて、急いで仙台城跡の坂道を下り降り、朝食を作らなければならない。それでも妻が起き出す前には着くだろう。出社時間の早い息子はたぶんどこかで朝食を都合するに違いない。
そんな今朝の筋トレ散歩だった。
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