ふらりかずたま ひとり言 

ふらりかずたま ひとり言 

2011年01月25日
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カテゴリ: 旅行・山関係
熊本から戻ってきました。

4月に熊本のケアハウスへ入所した義父母。親類が入所しているし、自分たちが選んで決めた施設だから、落ち着いて暮らせるだろうと思っていましたが、悶着が起こりました。母親の方の認知症が高進したにもかかわらず、施設側の対応があまりに事務的で、「凶暴だから精神科に入院させた」と。

昨年12月のある日、それまで喜んで行っていたデイケアで、職員が思いやりのない言葉を発したため、母親は「帰る」と施設から出ようとしました。それを阻止しようとした職員が右肩を押さえたため、事態は悪化してしまいました。

母親の右肩は骨粗しょう症のため骨が欠けていて常に痛みがあります。痛くてたまらない肩を押さえつけられたため、職員を払いのけようと母親は激しく抵抗しました。それが「凶暴」と判断されてしまったのです。

話を聞いた私たちは、施設の過剰対応に憤りを感じました。「精神科に入院させ、薬で抑制し続けていると廃人になるのではないか、早く退院させてくれるよう」依頼しました。病院の方は、本人が落ち着いているので安定剤などの投与は必要ないと判断し、父親が訪問した時には外出もOKという緩やかな措置をとってくれましたが、ケアハウス側は「凶暴」であるとの見解を取り続け、戻ることを承認しませんでした。

私たち夫婦は、熊本にいる必要はないので東京に戻った方が良いと判断。父親もそのように決心しました。年末から大慌てで施設を探し、自宅からそう遠くない場所で12月にオープンする施設を見つけました。家から車で10分程度の距離です。東京から熊本、熊本から東京。無駄な支出が発生しますが、近くにいてくれればひと安心。

今回、熊本へ行ったのは両親を東京へ連れてくるため。母ちゃんは休めない状態なので、私が1人で迎えに行きました。夕方の便で熊本入り。お城のライトアップを見に行く勢いもなく、ホテルでぼんやり。遅くなってから近くの居酒屋へ。
「すみません、酒は飲まないけど、食事いいですか?」
「酒を飲ませるとこだからねぇ、まあいいですよ」
ブリかまの塩焼き、おでん、野菜などの煮物盛り合わせ、ごはん。味噌汁を作ってくれました。親切な女将さんでよかった~。

kuma.jpg
熊本城のライトアップ。遠くから携帯で

翌朝、早目に朝食を済ませ両親に合流。母親は前日に精神科から退院し、父親とホテルに宿泊していました(施設が受け入れを拒否したのです)。8時半から引っ越し作業が始まるので、母親も同行して立ち会います。11時、施設に退去の挨拶。

14時30分の飛行機に乗りますが、居場所がないので3人で空港へ。JALカウンターで本人たちの症状を伝えます。頭脳は明晰だが神経痛で歩くのがつらい父親は羽田空港で車椅子のサポートが必要であること。母親は認知症で何度も同じ質問をするかもしれない、トイレに何度も立つかもしれない、右肩に触れてはいけないこと。私がJクラスの席を取れなくて離れていることなど話しました。

カウンタースタッフから、Jクラスに1席空きが出たので移動できる、使用機種が変更になったので席を入れ替え3人並べられると、親切なアドバイス。それができれば母親を窓際に座らせられ、私の目も届きます。Jクラス1列目に席が確保できました。

早目の昼食を摂って、早々に保安検査を終え、搭乗口のベンチで2時間近く待機。その間、母親は「どこへ行くのか、何時に飛行機に乗るのか」と何回も訪ねてきます。また、「長い時間飛行機に乗るのだから」という本人の強迫観念からか、何度もトイレに立ちます。

思わず笑ってしまうようなことも。売店でキャンデーを買うのにウロウロしている父親を見ていた母親が「バカなんだから、あの人は!」。JALスタッフにも、しっかりと挨拶できています。頑張っているのが伝わってきます。「そんなに頑張らなくていいから」と心の中で呟く私でした。

飛行機は定刻に離陸。熊本は曇りでしたが窓から地上の様子を見続ける母親。雲の上に出てからはしばらくは目を離していましたが、雲が切れはじめた愛知あたりからはまた眼下の景色を見て喜んでいます。心配したトイレに立つこともなく、CAを質問攻めにすることもありません。
あまりのシッカリさんぶりに何となく不安感が…。

羽田空港からは定額タクシーで私たちの自宅(元々両親が住んでいたマンション)へ。母親は全く覚えておらず「ここはどこ?」「誰の家?」を繰り返していました。夕食後、施設近くのホテルまで移動します。熊本からの荷物は翌日にしか着かないので、とりあえず1泊。またも見たことのない場所に移動したため、母親の緊張はピーク。それでもフロント・スタッフに「お世話になります」と。

翌日午後、熊本からの荷物が到着し、私たちも施設に入りました。
ここで、緊張の糸が切れたのでしょうか。トラブル発生です。
この施設は1人部屋しかなく、夫婦でも別室になってしまいます。それが納得できなかったようです。熊本では納得していた母親が急変したのは、この数日間の環境変化・連続移動で混乱をきたし、新しい施設に自分だけおいていかれる、と思い込んでしまったからでしょう。熊本で、強制的に夫と引き離されたことが生々しく記憶に残っているようで、それぞれの部屋を見せ、「部屋は違うけれど、2人一緒に暮らせるんだよ」と何度説明しても、「ウソだ」と言って納得してくれません。

あげくに「この人は私を捨てて、若い女と一緒に暮らす気なんだ!」「ここに私を泊めるんだったら死んじゃうからね」とまで言い出す始末。施設長さんから「ご主人と一緒に夕食を摂り、就寝まで一緒に居れば、きっと落ち着くでしょう。娘さんたちが居るとご主人を連れていってしまうと思ってしまうから、食事中にそっと帰ってしまってください」とアドバイス。それに従って、私たちは退去しました。

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新しく入居した施設。小さな中庭がほほえましい

夜、父親から「落ち着いた」と連絡が入りました。「明日の朝、6時に部屋に来て手足をマッサージしてくれってさ」。リウマチで痛む手と足を1時間くらいもマッサージするのが父親の日課だったのです。母親は、それをしっかり覚えていて、マッサージ=一緒に住んでいると、認識しているようなのです。

まあ、とりあえずは安定した様子なので、ひと安心です。熊本往復の繰り返しと「引率」で、いささか疲れモードの私ではあります。母ちゃんも役所関係の手続きのため昨日は有休を取りました。 

許せないのは熊本の施設の態度。認知症老人への思いやりもなく問答無用で精神科に隔離したことだけも腹立たしいかぎりなのに、退所する旨を伝えに行った父親に、施設理事長は「(母親は)どこの施設でも受け入れないだろう。行ってもすぐに退去させられる。病院から出さない方がよい」と発言しました。
福祉関係者とは思えない無配慮な発言に抗議した父親に対し、他の職員は「理事長に暴言を吐いた。謝罪してくれ」と迫ったと言います。退去の挨拶に行ったときも職員が父親に「理事長に謝ってください」と。私の常識では、「お世話になりました」と私たちが(東京の土産も手渡して)挨拶しているのだから、ウソでも「いいえ、こちらこそ力不足で…」くらい言ってもいいのではないかと思います。

新しい施設の責任者が、2人の健康や生活について熊本の施設に問い合わせたときも「父親は非常識で激しやすく、母親は凶暴なので扱いきれないでしょう」とコメントしたそうです。
ちなみに、新しい施設の責任者と私たちが面談しているとき、このことが話題になりました。私たちとしては不安です。施設長は「そうしたことに適切に対応するために私たちが居るのですから任せてください」と心強いお言葉。ありがたかったです。オープン早々で入所者もまだ10人程度。入所者よりスタッフの方が多い状態ですから、ケアも手厚いと思います。

…………………………………………………

高齢化が急激に進むなか、シルバー産業花盛り。大したノウハウもなく、なんとか基準を満たしているだけの施設、カネ儲け優先の施設が雨後のタケノコ状態で出現しています。高額な入所一時金と毎月の支払い。
足はおぼつかないが頭はしっかりしている義父の計算では、入所後夫婦が15年生きるとして、最低でも貯金(退職金含め)3000万円、年金は夫婦合わせて40万円。あるいは貯金5000万円、年金30万円なければ、民間施設でそれなりの生活をし、生命を全うできないそうです。つまり約1億円必要だということです。
民間の施設を利用できる高齢者は元公務員か学校の先生、大企業の役職者くらいではないでしょうか? 中小企業に40年勤めても貯金も退職金も年金もたかだか知れています。

民間の施設に入れない人は公的な施設に入れるのか? 入所まで3年4年待ちは当たり前のありさま。
施設に入れなくてもなんとか安定した老後をおくれるのか? 介護認定基準を引き上げ、75歳以上の高齢者を「後期高齢者」と名付けて差別し、どんどん生き辛くしています。民主党政府は、後期高齢者医療制度を廃止する代わり、さらに過酷な新制度を用意しています。とりあえず1年先送りになりましたが…。
こんなありさまで、高齢者はどうやって生きていけばいいのでしょうか? 要するに、カネのない奴は「自宅で介護、自宅で看取れ」、あるいは「自宅で孤独死せよ」ということなのですね。





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最終更新日  2011年01月26日 02時25分54秒
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