徳島県鳴門市と淡路島の間にある鳴門海峡は、瀬戸内海と太平洋とを結ぶ海峡の一つ。幅は1.3キロしかありません。この海峡では、満潮時には太平洋から瀬戸内海へ、干潮時には瀬戸内海から太平洋へ、1日に2回ずつ大量の海水が移動します。
海峡の狭さと海底の複雑さのため、潮流速度は時速15キロ、また瀬戸内側と太平洋側の水位の差は最高1.5メートルにも達します。
大鳴門橋の真下、ぶつかり合う潮流
鳴門の渦潮は、この早い潮流と両岸の緩い流れの境界で発生するのです。
特に、大潮の時期は、満潮と干潮の水位差が大きくなり、潮流もさらに速くなるので大きな渦が見られます。鳴門海峡では3月下旬から4月下旬に、1年で最も大きな渦潮が現れると言われています。
と言われても、東京に住む人間が、大潮に合わせることは簡単なことではありません。
今回の潮見は「中潮」。大潮のときほど期待できませんが、渦潮を見られる可能性はあります。旅行スケジュールに適合し、最も可能性のある時間を狙って乗船することにしました。
11月24日朝9時40分の干潮(南流)時に渦潮観光船に乗ります。さあ見られるか? ドキドキです。
船は大鳴門橋に接近します。太平洋に向かう激しい潮流が、ぶつかり合い、押しのけ合い、ねじれ、波を競り上げます。なんという自然の力! ぶつかり合う潮が突然渦巻きを形成し、渦潮になり、次の瞬間消え去る…中潮でさえこの状態、大潮のときはどれほどの迫力ある光景が見られるのでしょうか!
30分ほどの乗船時間は瞬く間に過ぎてしまいました。
「春の大潮のとき、また来る!」と興奮気味の母ちゃん。私も同感です。
いよいよ、今回旅行の最終行程。鳴門から高松自動車道を経て徳島県板野町へ向かいます。20分ほどで目的のうどん店に到着しました。
さぬきうどん界の「アイドル」るみばあちゃんの店「池上製麺所」で修業し、独立を許された丸池製麺所。店の前には、るみばあちゃん(の似顔絵看板)が満面の笑みを湛えて客を迎えてくれます。
プレハブ造りの店内は、すでにお客さんでいっぱい。まだ11時にもなりません。
常連さんとおぼしき男性は「釜玉うどん(釜揚げうどんに卵を絡めたうどん)」をおかずに「ぶっかけうどん」を食べています。
「すごいねぇ」
「ラーメンライス以上やなぁ」
熱々の釜玉うどん
私たちは「釜玉」。しょっぱさを感じさせない醤油だれをかけ、青ネギをてんこ盛りにして頂きます。コシのある麺はずっしりとした重量感があり、熱がこもっていてなかなか冷めません。
「熱い! 美味い」
さすが、るみばあちゃん直伝のうどんです。
次の立ち寄り先は隣町の藍住町歴史館「藍の館」。
この施設は、地元の大藍商であった奥村家の屋敷が町に寄付され、藍の館として公開されたもの。藍に関する民俗資料や阿波藍の栽培に使われた農業具などが展示されていて、国の重要民俗資料に指定されています。なかでも、藍の栽培から取引き、染色に至るプロセスのミニチュアは圧巻です。
ミニチュアによる藍染めのプロセス展示
館内で、藍染体験ができるというので、何でもやりたがりの私は早速挑戦。木綿のマフラーをグラデーション染めします。数回に分けて藍の壺に布を浸し、その後は大量の水で洗います。一連の工程の中で、藍は酸素に触れて鮮やかな青色が浮かび上がってきます。不思議です。
出来上がった藍染めを広げる私
次は、美馬市脇町にある「うだつの町並み」です。
「卯建(うだつ)」とは隣家との境界に取り付けられた土造りの防火壁のことで、建造のためには相当な資財を要したため、「うだつが上がっている」ということは、富や成功を象徴することだったのです。時代とともに実用よりも装飾性を競うようになりました。
よく言われる「うだつが上がらない」は、地位・生活などがよくならない。ぱっとしないという意味で使われます。
軒を連ねる、うだつの上がった商家
美馬市のほか、岐阜の美濃市、長野の海野宿でも「うだつの町並み」が伝統的建造物保存地区として指定されています。また、同じ徳島県の池田市にも、きざみ煙草で財をなした商家の並ぶ「うだつ通り」が保存されています。
美馬市脇町に残る「うだつの町並み」は、藍、繭、醤油・味噌など商家が400メートル建ち並び、徳川5代将軍の時代からの建造物が保存されています。
観光客はまばら。ときたま団体さんが現れますがすぐに移動してしまいます。
うだつを保存しながら進む大改修工事
工事中の家屋がありました。うだつをしっかり保存して大改修している様子。住民の皆さんのこうした努力が、この町並みを維持しているのだなぁと感じました。
うだつのある民家でコーヒーブレイク。そのあと竹筆を購入して私たちも移動します。
美馬から遠くない吉野川市にある阿波和紙伝統産業会館へ。阿波和紙の紙漉場を再現した会館で、和紙の製造工程が見学できます。また、ハガキなどの紙漉体験もできるということなので寄ってみることに。
到着したときは15時半。紙漉き体験は時間が足りなくてダメ。紙漉場の見学はOKとのことで、鮮やかな手さばきを拝見させてもらいました。
手さばきも鮮やかな紙漉き作業
最後の立ち寄り先は「阿波の土柱(どちゅう)」。
砂礫層が侵蝕され数十の土の柱を作り出している奇勝です。そのうち波濤嶽とよばれる土柱は国指定の天然記念物。アメリカのロッキー山脈、イタリアのチロルとともに世界三大奇勝と称されています。
日没の近い山道を走り現地へ。くたびれ感のある土産物店や宿がある温泉地ですが、あまり宿泊する人はいないのでしょうか。しかし、土柱の展望台はきれいに整備されています。この時間になっても訪れる観光客がいます。やっぱり有名なんだ、と妙な感心をしながら、奇観を眺めていました。
世界的にも貴重な阿波の土柱
オマケの話
この日の徳島発羽田行きのJAL便は、芸能人と追っかけのファンだらけ。淡路島の南あわじ市で開かれた「2012年アジア国際子ども映画祭」の出演者です。
名誉会長を務める杉良太郎御夫妻ほか、EXILE・MATSUさん、MAX・ナナさん w-indsさん、などなど。このJAL便は小さい飛行機で、クラスJのほかはエコノミー席。MATYUさんらはクラスJでなく一般席に座ったようです。
どこでどう情報を得るのか、羽田空港でもファンが出迎えていました。
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