ken tsurezure

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trainspotting freak

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2006.04.05
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カテゴリ: 音楽あれこれ
 2002年の兵庫県での青少年の性行動調査の結果によると、高校生の男子の約28パーセント、女子の36パーセントがセックスを経験しているという。それは逆にいうと男子高校生の約七割はセックスを経験していないということだ。
 同調査によると高校生のセックスを容認すると答えた高校生は八割に達しているという。つまり高校生の八割はセックスをしたいのに、それがかなえられるのは四割程度だということでもある。
 男子と女子では経験率が違っている。多分年上の男性と経験したという女性が多いのが実情なのだろうけど、こんな事も考えられる。セックスパートナーとしてみてもらえる男子は少なくて、多分そういう恵まれた男は複数の女子生徒とセックスをしている。
 こういうとかなり大げさではあるけど、高校生の約七割はセックスから疎外されている。
 どうしたら女子生徒からセックスパートナーとしてみてもらえるようになれるのだろうか。容姿、身長そういったことも重要なのかもしれないけれど、最近だとコミュニケーションスキルの有無であるのだろう。セックスに辿り着くまでには、まず女子生徒と付き合えれなければならない。お付き合いをするにはコミュニケーションスキルが高くないといけない。
 コミュニケーションスキル。これは最近やたらと強調される言葉だ。企業の人事部の人も取りたい人材はコミュニケーションスキルが高い人だなどといったりしている。
 だからコミュニケーションスキルが高い人々にとって今は天国のような時代だ。それを屈指すれば女性はいくらでもものにできるし、どこの会社もありがたがって採用してくれる。
 人間はもともと色々な個性があるように作られているから、コミュニケーション自体が苦痛だという人だって一定数いる。そういう人も無理に演技してコミュニケーションスキルに長けているように振る舞う事ができるかもしれない。しかしそれは「痛い」。もともとからコミュニケーションスキルが高い人々からしてみると、そういう人はかなり無理している。そういう無理をしている人を見るのは痛々しい。しかしそうしないと女性とセックスはおろか、お付き合いさえもできないかもしれないし、就職すらもできないかもしれない。痛々しい無理をしているとそのうちぶっ壊れる。それはそれで不幸な事だ。
 ならばコミュニケーションをあきらめてしまうというのはどうだろう。それはそれで無理がなくていいかもしれない。そのかわりに、女性とのお付き合いも、よい就職も、安定も無縁になってしまう。最近の世の中はこれまで以上に増してコミュニケーションスキル万能社会になっている。コミュニケーション自体が苦痛だという内向的な人間は今までになく不幸になりつつある。そういう人間を今の世の中は必要としていない。そして内向的な人は総じて分析能力に長けているものだから、そういう自分の未来のない行き先が見えてしまう。それでますます暗くなってしまう。まるでデフレスパイラルのようだ。悪循環。
 セックスできない男子高校生の何割かは近い将来に経験できる可能性はある。でも真性のコミュニケーション苦痛人間にとって、それは遠い未来の話、あるいは一生不可能な夢物語になるかもしれない。しかもそういう人間には雇用すらもないかもしれない。まさしく世界の不幸を背負ってしまうようなものだ。

 銀杏ボーイズの前身バンド、ゴーイング・ステディーの『童貞ソーヤング』のビデオクリップは名作である。セックスから疎外されてしまったティーンネイジャーの闇雲な爆発力、苛立ち、欲求不満、そして将来自分にそういう機会があるのかないのかという不安と希望が入り混じった複雑な心情。そんなものすべてを完璧にパッケージしたようなビデオだった。その暑苦しくてイカ臭さが漂う映像はまさに「約七割」の男子高校生の、心の叫びといっても過言ではない。
 ゴーイング・ステディーから銀杏ボーイズに変わっても峯田の視点は変わらない。自分はコミュニケーションスキルが足りないタイプの人間だ。そんな不安を吹っ切りたいがために峯田はステージで暴れる。ほとんど自傷行為に近いパフォーマンスをする。そんな自分と世界との違和感がギターの音を歪ませる。ほとんど騒音に近い爆音ギターは前衛性とかといった気取った理由からではなく、必然性を持って選び取られたサウンドだ。
 そんな彼も恋をする。絶対にかなうはずのない恋なのにセーラー服姿のあの娘に恋をしてしまう。そしてそれは当然の事のように挫折する。それは恋愛対象の彼女に全く気付かれないまま自爆してしまうし、鬱屈して自傷行為に繋がってしまう。
 歌詞の内容はほとんどがかなう事がなかったセックスに関することだ。好きなあの娘がほかの男といい事をしているとか、自分以外の人間にはセックスにオープンであるとか…。だから屈折するし、苦しいし、痛々しく自己破壊的なパワーにあふれている。
 セックスに疎外されているからこそ、セックスに対してロマンチックになれる。こんな事がかなえばどれほど幸せなのだろうとロマンチックに考えることができる。
 峯田が今も童貞であるはずがない。しかし彼は絶対に自分が童貞であった時のことを忘れようとしない。あの時感じていた不安。それが彼にとっての原風景であると自覚しているからだと僕は勝手に思っている。
 それだから「七割」の不幸な男子高校生に、そして元「不幸な男子高校生」にアピールする。それはザ・フー、デビッド・ボウイ、ザ・スミス、ニルバーナといった典型的なロックによく似ている。「ロックは共通の不幸を共有している人にしかわからない。」そういう意味で古典的なロックバンドだ。
 痛々しいまでに自分を傷付ける峯田をあなたは笑うだろうか。それとも涙するだろうか。彼を笑えるあなたはきっと今まで幸せだったのだろう。彼を見て涙してしまう人や「痛い」と感じられる人はきっと今、あるいは昔に同じ不幸を体験してしまった人だ。そういう「あなた」のために今日も峯田は歌っている。





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Last updated  2006.04.05 16:38:25
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trainspotting freak@ Re[1]:世界の終わりはそこで待っている(06/19) これはさんへ コメントありがとうござい…
これは@ Re:世界の終わりはそこで待っている(06/19) 世界が終わるといってる女の子を、「狂っ…
trainspotting freak @ Re[1]:ある保守思想家の死 西部氏によせて(03/02) zein8yokさんへ このブログでコメントを…
zein8yok@ Re:ある保守思想家の死 西部氏によせて(03/02) 「西部氏の思想家としての側面は、彼が提…
trainspotting freak @ コメントありがとうございます aiueoさん コメントありがとうございます…

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