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私たちが日常的に目にする食材の多くや、世界各国の代表的な料理に使われている有名な食材も、大航海時代以降にようやく世界中に広まったものです。
たとえば、サツマイモは中央アメリカ、南メキシコ、ジャガイモは南米のペルー南部チチカカ湖周辺、トウガラシはメキシコ、ズッキーニは中米が原産で、
ピーマンは熱帯アメリカ、カボチャは南北アメリカ、トマトは中南米のアンデスの高原地帯、インゲン豆は中央米、ピーナッツは南米、ヒマワリは北米が原産です。
”新大陸が生んだ食物 ”(2015年4月 中央公論新社刊 高野 潤著)を読みました。
いまの日々の献立に欠かせなくなった、いろいろな中南米原産の食物をカラー写真と文章でたどっています。
高野 潤さんは1947年新潟県生まれで、写真学校卒業後、1973年からペルーやボリビア、アルゼンチン、エクアドル、コロンビア、チリなどを歩いてきました。
アンデスやアマゾン地方の自然 、人間、遺跡などを撮り続けています。
山野を歩きつづける生活を通して、中南米原産植物の数の多さを知ったといいます。
高度差数千メートルを持つアンデス山脈の地形や気候気温の変化が、それぞれの地で植物を育み、原産種の宝庫といっていいほどの豊かさを生んできたに違いありません。
15世紀末から16世紀にかけてのコロンブスの新大陸到達や、スペイン人によってマヤ、アステカ、インカなどの文明か征服されました。
それから、中南米原産植物かヨーロッパへ伝わり、やがて、アフリカ、アジア、そして日本へと伝播しました。
中南米原産種の味覚はその発祥地や経由地を含めて、多くの人たちか何千年も受けついで育てつづけてきた努力の結実といっていいでしょう。
アンデスやアマゾンを歩きながら、植物の存在が不思議に思えてしかたかなかったそうです。
陸地上の大小無数の動物たちのほとんどか棲息していられるのも、植物が用意してくれる環境かあるからこそといってもいいでしょう。
そうした環境への動物たちの依存は、そのまま、そこで食べ物が得られるという依存に重なっているところか多いです。
人間を含めて、すべての生を応援している植物が、密接に人の生活に結びついてきた例もあります。
一つが日本の稲、一つがアマゾンのヤシ、もう一つがチチカカ湖内にあるウル族の浮島一帯に密生しているトトラです。
米は昔から日本人の食の中心を支えつづけてきただけではなく、神事に供えられ、日本の酒文化を育てた日本酒を生みました。
稲はしめ縄に使われるほか、縄、藁ぶき屋根、藁靴、草履、草鮭、雨具、畳の台、俵、燃料、家畜の飼料、畑の肥料など、たくさんの用途に使われてきました。
ヤシは、もしヤシがなかったら先住民か果たして生活してこられただろうかと疑問に思ったほど、昔から生活の基本に関わってきました。
固い樹皮は床、壁という建材に、吹き矢の筒、弓とその矢に取りつける鏃、投げ槍などの狩猟具に使われてきました。
葉は屋根、壁、寵材などに用いられ、葉の骨のような芯部は吹き矢、新芽は繊維になって袋やハンモックなどに利用されてきました。
食の面では多くの果実が果物として食べられたり、なかには酒に加工されたり油か採取されたりするものもあります。
また、新芽が生野菜として食べられる種類もあります。
トトラはウル族たちの住の根底ともなる居住地を確保するために敷きつめられ、住居は屋根や壁を含めてまるごと、そのなかに敷く寝床にも利用されてきました。
ほかに、大小の小舟や魚獲りのための簾状の網などをつくっていました。
また、近くの密生地に好んで棲む水鳥の卵や親鳥を採取狩猟し、茎の根本部分を生食用にしたり花部分を胃腸薬に用いたりしてきました。
この三つは、生きる、活かされるというところで、人間と植物が同盟しあったような関係にあります。
これら以外にも、日本の稲と類似しているものとして、アンデスのトウモロコシがあります。
薪の入手が難しい高地では、茎や穂軸を燃料としていました。
牛馬か飼われるようになってからは、収穫後の茎を飼料に使ってきました。
似た多面性は見られないものの、ジャガイモはアンデス高地で生きる人たちの生活の基本となる輪のなかに組みこまれていました。
アルパカやリャマの糞が、燃料以外にも肥料としてジャガイモの成長と結びつき、家畜に優れた獣毛を育ませている寒冷気候が、ジャガイモの保存食づくりに結びついていました。
このように高地ではジャガイモ、アルパカやリャマ、寒冷気候か、ここだけにしか生まれないというセットの形で連鎖しているのです。
何千年も前からつづけてきた人間の努力の積み重ねにも驚かされますが、その期待に応えて、人間がもっとも必要とする食べ物を産んでくれた栽培植物の偉大さにも驚かされます。
地球上に多くの人たちが生きてこられたのも、大昔に自分たちを見つけてくれた人間の側に寄り添って、芽を出して実ることを怠らなかったそれらの植物かあったからこそです。
そうした作物や果実類のなかに中南米の原産種か含まれているのです。
本書では、世界へと広まったもののなかから、日本人の生活に浸透したもの、あるいは浸透しつつあるものを、原産地の地形環境や気候、食利用などを含めて紹介しています。
第1章 作物や果実との出会い
驚きだったジャガイモ食/自炊生活とともに知った現地の作物や料理/温暖な山間のトウモロコシ生産地/豊富な作物が実るバージェ地方/アマゾン域と海岸地帯
第2章 トウモロコシ
栽培地の広がり方/時代とともに変化した川の流域とアンデネス栽培/寒冷気候対策のパンキイ栽培/文明の要所とトウモロコシ栽培地/昔のトウモロコシ食/インカ時代から飲まれていた濁り酒チッチャ/食材としてのトウモロコシ
第3章 ジャガイモ
祖としての野生種/ワルワルやコチャ方式によるジャガイモ栽培/アンデス世界を変えたチューニョやモラヤ/ジャガイモ農地の今昔/自然が与えた困難と試練/古典種系ジャガイモと出会う/地中の芸術品を試食する/保存食用品種のクシ、ワニャ、ルキ/ジャガイモ利用の料理
第4章トウガラシ
アンデス側を代表するロコトの栽培地/南北に広がるロコト/「水棲亀の子亀」というトウガラシ/代表的な激辛トウガラシ/料理とトウガラシ利用/ロコトが支える食文化/幅広いトウガラシソースの素材
第5章 豊富な原産作物と果実類 `
奇跡の植物キヌア/サツマイモやカボチヤ、マカやヤコン/色も形も違うさまざまなアボカド/パパイヤとパイナップル/チョコレートの原料カカオ/カシューナッツとブラジルナッツ
おわりに 人と結びついてきた植物の不思議