2002/10/22
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 三度目か。四度目か。とにかく二度目ではなく。ましてや一度目ではない。なんのことはない、再読に選んでいるものは既に何度も読んだもの。幅は狭い。まだまだ、まだまだ多くの、想像出来ないほど多くの本が、小説が、作品が、物語が、あらゆるところに溢れてはいるけれど、その中で好きになれるものは少なく、実際に読むものはごく僅か、何度も読むものは極端に言えば数冊程度にまで限定出来る。
 以前読んだ時より、主人公「おれ(ラゴス)」の顔を最初から随分年寄り臭く想像した。

 四ヶ月後、おれは歴史と伝記に読み耽っていた。年代を追って史書を読み、各時代への理解を深めるため、それぞれの時代における重要人物の伝記はその時代の歴史に並行して読むという方法が、なんとぜいたくな、そして愉悦に満ちたものであったかは、かくも大量の書物に取り囲まれているおれにしかわからず、実際おれにしか体験できぬものであったろう。それはまた歴史理解の最も効果的な方法であったことをおれは確信している。それにしてもかの星における歴史は長く、複雑でもあった。いつ読み終えるかしれぬそれらの歴史をおれは散歩する暇さえ惜しんで読み続けた。といっても、焦燥とは無縁だった。かくも厖大な歴史の時間に比べればおれの一生の時間など焦ろうが怠けようがどうせ微微たるものに過ぎないことが、おれにはわかってきたからである。人間はただその一生のうち、自分に最も適していて最もやりたいと思うことに可能な限りの時間を宛てさえすればそれでいい筈だ。


 どうしてあまり本を読みたくなくなったのか。部屋に積まれてる「そのうち読もう」という類の本。殆どがまだ「そのうち」が来ないまま虚しく横に寝ころんだまま。そういう時期はある。これまでにもあった。好きな作家が出来た。幾つか作品を読んだ。まだまだ他に作品はあるが「ここまででいいや」と勝手に線引きをして、「読むものがない」と一人で嘆いた。何度もあった。特に理由があるわけでもない。しかし、自然に──「自然に? 左様 充分自然に!」伊東静雄──手が、目が進む読書以外の、気の乗らない義務的な読書はあまり良くない。次に自然に何かが読みたくなる時まで、あまり新しいものが読みたくない今は今として手を加えないでおこう。他にもいろんなことがある。
「カラマーゾフの兄弟」を今読んでいる。これを境に、何か別の方法で何か別のことに進もう。

筒井康隆「旅のラゴス」(新潮文庫)





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Last updated  2002/10/22 11:43:25 PM
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