2003/06/17
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 詩人・翻訳家である著者の、骨董漁りを楽しく書いた随筆集。藤枝静男や森内敏雄のそれと違い、物語に昇華しないそれらを安心して目で追いながら、物足りなさもやはり感じる。物語が欲しい、虚構が欲しい、と願う。随筆としては高い水準のものだ。それに随筆にはないものを求めるこちらの姿勢こそが勘違いである。あつかましい。小説が好きだ。

 偽物は不自然な色をしている。そのくせ、妙にきらびやかで、人目を惹きやすく出来ている。一つの物に、一箇所だけいいところがあれば、私たちはそれを以て最上とするのに、偽物には、いいところが、むしろ、よさそうに見えるところが、三つも四つもあって、それらが性質を全然異にし、互に張合っているので、全体を見ると、妙に統一がとれなくて、あっちを向いたり、こっちを向いたりしている。(悪い政府のように)。そして、若しそれに臭いがあるとすれば腐った臭いがする。(収賄事件のように)。若しそれに声があるとすれば、それは必ず大声である。(悪宣伝のように)。そして、一度、かかる偽物の美しさの味を覚えてしまうと、悪い女に引っかかった男のように、堅気の美しさ、本物の美しさにはなかなか戻れない。本物はあっさりしていて、つつましく、なるべく人目につかないようにしているからである。そして、道行く人を呼びとめないからである。

「物の美しさ」より


 書くこともないので梅雨を殴りたい。

青柳瑞穂「ささやかな日本発掘」(講談社文芸文庫 この本は現在お取り扱いできません)





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Last updated  2003/06/17 12:13:49 AM
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