2004/01/01
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カテゴリ: 国内小説感想
 いつ通っても客が物を買っている姿を見たことのない、沖縄名物を並べた店の前の貼り紙が、大した風でもないのに剥がれ落ちて飛んでいった。次の日、その店の隣家の二階でボヤがあった。その次の日、年が明けた。
 いつ読み終えたのかも忘れたので、アナタハン事件を題材にした『裸の島』くらいしか印象に残っていない。孤島に取り残された日本軍兵士たちは、一人の女の為に殺し合いをするまでに・・・しかし救出されて冷静にその女を眺めてみれば





 という結末。島で生活するうちに、日本へ帰った後のことを約束した者からは「忘れましょう」と言われ、本来の夫にだけは「僕は忘れない」と言われる哀れな女。実際のアナタハン事件においては、女だけ先に救出されている。アナタハン。
 父方の祖母がなくなり、同じく祖父の痴呆が進んだ頃から、正月に親戚一同が集まるということはなくなり、正月ボーナスもなくなり、祖父母が握る鮨も食えなくなった。おせち料理のことは詳しく思い出せないが、近所の焼鳥屋で大量に買い込んだ串を、一番多く皿の上に並べていたのは私か兄だった。百人一首をやらなくなったのはいつ頃からか思い出せない。祖父はよく響く声で歌を読んだ。男性陣と女性陣に別れて、結果はどうだったかも思い出せない。古い木製の麻雀牌を押し入れの奥から見つけだした時からだったかもしれない。役も分からず、ただ牌を集めてあがるだけの麻雀だった。役も点数も分かるようになってからも、祖父は役のことを気にしなかった。祖父はあまりあがらなかった。後年痴呆に完全に呑まれてしまう少し前の麻雀で、思えば祖父はツモ切りだけをしていたのではなかったか。
 主のいない祖父の家の本棚には、古代史関連の書籍と歴史小説が並んでいる。山田風太郎もあるので持ち帰ろうかと思ったが、本の傷み激しく、ほっとけば夏には40度になる部屋にあったので匂い立ちそうで、置いたままだ。今手に入れるに苦労する本でもないので。
 残された祖父の日記には、正月の日に皆が集まっている様子が楽しそうに書かれていた。祖母とのたまの性交時以外、楽しく書かれていた日はそう多くはなかった。
 今の正月は365分の1日でしかない。ちなみに今年だと366分の1。





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Last updated  2004/10/29 01:07:08 AM
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