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小説 「 scene clipper 」 最終話
「戻って来たなあ・・・」
「ホント、それ実感したわ、ほんの 1 週間なのに」
「俺も今そう感じてたよ、久しぶりって感じる、何でだ?」
リョウは横断歩道の前で左右に首を振りながらため息をついた。
「甲州街道だぜマリ・・・」
「分かり切ったことを・・・そういうあたしも今そう言いかけてたけど」
信号が変わって渡り始める。
「ん?」
「なに?」
「いや、何か今、不思議な感覚に陥ってた」
「へえ、どんな?」
「なんだか、九州から東京へ戻って来たというより、過去から
今に戻って来た、そんな気分になったんだ・・・変だよな」
「普通なら変だけど、リョウさんならあるかも。だってご先祖が五代将軍に拝謁・・遠くからでも顔を見てる。あたしの家も水城の家だって江戸時代からここに住んでるわけだし、ひょっとしたらあたしたち、その頃にも会ってたりするかもだしね」
「いいねえ、俺そういうの好きだな、ロマンがあるじゃないか・・・」
甲州街道を渡って左に折れ、「大一元」でマリは中華飯と豚の角煮を、リョウはいつもの天津飯と豚の角煮を注文し、先ずはスーパードライで乾杯!
「やっぱ、豚の角煮は『大一元』だよな」 すると、店の大将が、
「まいど、お二人お知り合いだったんですね?」
「あれ、二人で来んの初めてだった?」とマリに振る
「そうだよ、前に言ってたじゃない、『お互い昔っから通ってんのに会ったこと無いよねえ』ってさあ」
「・・・ああ、そうだったそうだった!」
笑いながら
「大将、これからは二人で寄してもらうから、よろしくね」
「そうね、あたしたち揃って大将の豚の角煮、大好きだから」
マリが満面の笑みを浮かべて大将にそう言うと、流石に普段は無口な
大将が軽く頭を下げて言ったもんだ。
「そいつはどうも」
不器用な彼なりの控えめな喜色の浮かべ具合が、リョウは気に入っている。
「よし、先ずは乾杯といくか」
「マリ、お疲れ様。遠くまで付き合ってくれてありがとうね」
「いや、楽しかったよ。今は確かにちょっと疲れてるけどね」
「かんぱーい!」
腹を満たしたら、もう部屋に帰ってベッドに倒れこむことだけが、二人を支配していた。
やがて見慣れた十号通り商店街を抜けて「水道道路」に出た。
ここは昔、杉並区の和泉給水所と新宿区の淀橋浄水場を結んでいた玉川上水路を埋め立ててつくられたため、こう呼ばれているらしい。
水道道路を渡り、見慣れた街並みを新鮮な気分で歩き、抜けて、
ドアの前では鍵を開けるのさえもどかしくて、「ロックしといて」というマリの声が聞こえた気がした。
翌日は二人で冷蔵庫の中を満たすべく、買い物して、午後には水城ファミリーや上妻+彼女に声をかけてささやかに食事会を楽しみ、そして翌日からは南台を中心に新たな日々が始まったのである。
小説 「
scene clipper
」は一先ずこれでお開きとします。
間の空いた話にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
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