マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2007.11.09
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<ランナーの意地とプライド>

 追い風を背に受けてH多夫人を追う。かなり前に行ったのか、なかなか姿が見つからない。やがて1人の女性ランナーが目に付いた。真っ直ぐな姿勢にしっかりした足取り。足の筋肉も相当鍛えられている。若々しい後姿なのに手足に刻まれた深い皺だけが妙にアンバランスだ。その超ベテランランナーの横を静かに走り抜ける。

 ASを過ぎた辺りでH多夫人の姿を発見。道路にしゃがんでシューズの紐を直してるような感じだ。彼女の名前を呼び、「行くよ~っ!」と声を掛けた。暫くは来ないと思っていたのに彼女は直ぐに追い着いた。それどころかダムの堰堤でとうとう追い抜かれてしまった。彼女に抜かれたのはこれで6度目か。

 昨年の「奥武蔵」、今年の「立山登山マラニック」と「佐渡島一周」で、彼女は途中リタイヤしている。それを聞いて淡白なレースをする人との印象が強かったのだが、今日の彼女はその印象とはまるで違っていた。この粘りはどこから来るのだろう。ひょっとしたらこれが彼女の本当の姿だったのかも知れないと思い直す。

 堰堤の端まで来ると、残り2kmの距離表示があった。ここからゴールまでは激烈な下り坂になる。膝に弱点を抱える私の足が果たして最後まで持ってくれるかは分からないが、テーピングをしたことがせめてもの慰めか。勇気を奮ってスピードを出す。H多夫人に追い着いたのは坂の途中辺りだったろうか。

 その時、さらなるスピードで私達を追い抜いて行ったランナーがいた。女性の超ベテランランナーだ。「頑張って~!」。急いで後を追う私にH多夫人の声が響いた。「よ~し、どこまで行けるか分からないが、行けるところまで行ってみよう」。坂の途中に残り1kmの表示。

 ついに超ベテランランナーを捕らえた。一気に抜いて前に出、そのままのスピードで角を曲がった。ゴールはまだ見えないが残りは少ないはず。前に見えたランナーを全て抜きゴールへ飛び込んだ。タイムは4時間17分ちょうど。自分の体調、コースと風の厳しさを考えれば良く頑張った方だと思う。一安心してシューズのICタグを外す。

 ゴールした超ベテランランナーが誰かと話している。切れ切れに「私は70代」とか聞こえた。「やっぱりそうだったか」。超ベテランランナーに敬意を表しようと「お疲れ様でした」と言ったが、返事はなかった。2度も私に抜かれたのが悔しかったのか、それとも単に声が聞こえなかっただけなのか。

 ランナーにだって意地もプライドもある。最後まで全力を尽くすのが自分の信条なのでゴール直前で他のランナーを抜くのは良くあることだが、レースが終われば相手を讃えるだけの余裕は持っている積りだ。それにしても苦しいレースだった。あの強いS藤さんも最後は苦戦していたように見えたし、レースの後半までトップグループにいた筑波大の院生が最後は歩いていたくらいだから、ほとんどのランナーが苦しんだのだと思う。

 サービスのトン汁を手に、荷物預かり所まで行く途中にT田さんと会った。話をすると、超ベテラン女性ランナーと話していたのは彼だと分かった。女性は北海道の方で、「サロマ」を連続20回完走したと話していたそうだ。道理で足の筋肉をはじめ全身が鍛えられていた訳だ。そしてその実績に相応しいプライドも持っているのだろうと改めて思った私だった。<続く>







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Last updated  2007.11.09 16:55:44
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