マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2007.11.17
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 初めのうちは考古学や日本の古代史にしか関心が無かったのが、本を読んでいるうちに段々興味の対象が広がって行った。また考古学には聖書考古学とか水中考古学などと言う分野のあることや、人類学などとの関係が深いことなども分かって来た。歴史に関しても文化人類学(民族学)、民俗学、宗教学、神話学、言語学などの知識があればさらに理解が深まることを知った。

 残念なことに私は正規の授業でそれらを系統的に学んだことはないし、例え学んだとしても理解は困難だったと思う。素人の私に出来ることと言えば、仕事上で図書館に必要な図書を選ぶ時に自分の読みたいものをチェックし、自費で買うことくらいなものだった。こうして色んな分野の本が徐々に揃って来た。

 買った本の大半は専門書で、専門家が専門家のために書いた本は当然ながら難解だ。最初の頃はたった1ページを読むために3日間ほどもかかった。それでも分からない箇所は飛ばして読むしかない。そんな風にして少しずつ専門書に慣れて行くと、素人なりにも理解できる部分が段々広まって行く。また、一般向けに書かれた本は早く理解が深まって助かるし、子供向けに書かれた本は基本的なことが分かりやすく表現されているのでさらに理解が容易だった。

 欠点は私が自分のために選書した本が、果たしてそれぞれの学問分野で正当に評価されている研究者が書いたのか分からないことだ。それに考古学や歴史学の分野でも時としてトンデモナイ事件が発生する。

 考古学の分野では「東北考古学研究会」とか言った学術団体の副理事長だった藤村新一が起こした「偽石器」事件。これは日本考古学史上最大の汚点で、あれによって30年間は学問の進展がストップすることになるほどの出来事だった。彼の全く個人的な名誉欲が、自分で作った偽物の石器を埋めては発掘して新発見する繰り返しで、55万年以上も年代を遡らせてしまったのだ。日本の旧石器時代を代表するとされた馬場壇、座散乱木、新高森など宮城県内の遺跡が、全てインチキだったのだから開いた口が塞がらない。

 歴史学の分野でも東北人が偽古文書事件を起こした。青森県に住む和田喜八郎が、自分の家の天井裏から出た古文書を基にして書いたと言う「東日流外三郡史」ほかの図書が、実は史実に基づかない全くのデタラメだったことが出版の十数年後になってようやく確かめられたのだ。

 これまでに類書のない同書ほかの記述は、古代東北の姿を髣髴するとしてマスコミに取り上げられ、それに味を占めた和田は次々に新書を世に送り出す。いずれも天井裏から出た古文書が原典だと言う。和田が書いた本の内容はやがて東北各県の市町村史にも引用される。また岩手在住の小説家である高橋克彦の歴史小説「炎立つ」などにも和田のストーリーが取り入れられ、いかにも史実であるかのように広まって行った。

 だが彼はその古文書を誰にも見せることはなく、彼の家を建てた大工からは天井裏にそんな資料があるはずが無いとの証言も飛び出した。和田の著書が偽書であることは、やがて聖和女子短大の千坂教授の著書である「だまされるな東北人」や「東北を語る~偽りのない社会をめざして」で徹底的に解明された。古文書のコピーの字体と和田の字体が大変良く似ていることもその手がかりになったようだ。こうして和田の著書を引用した何百、何千と言う図書が何の価値も無い紙屑と化したのだった。

 考えて見れば「邪馬台国論」などもその一例かも知れない。自分に都合の良い点だけ抽出して邪馬台国があった場所がここだと言い張る。結局邪馬台国は沖縄から東北辺りまで、さまざま説があるようだ。私の「歴史研究」の危うさもそれに似ている。私が読んだのはほんの一部分だし、新しい事実が次々と現れ研究されていることを知らないからだ。<続く>





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Last updated  2007.11.17 21:20:53
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