マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2007.11.18
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 本を読むのも勉強になるが、現地に赴くのも考古学や歴史学では大切なことだ。縄文時代を代表する三内丸山遺跡(青森)や真脇遺跡(石川)、また弥生時代を代表する吉野ヶ里遺跡を自分の目で実際に確かめたことが実に大きな体験になった。本を読み、現地を確認し、再びその遺跡に関する資料を読めば理解は急速に深まって行くし、自分なりにその時代について考えることも出来るからだ。

 三内丸山遺跡から発掘されたヒスイは新潟県の糸魚川産、接着剤代わりに使われるアスファルトは秋田産、そして石器の材料の黒曜石は北海道産であることが分かっている。いずれも丸木舟で日本海や津軽海峡を渡ってもたらされたものだ。既に紀元前5千年の昔から遠く離れた地方と交流があったわけだ。

 そして物見櫓の材料である栗の丸太の直径は2mあり、それを支えるための基礎には「版築」(はんちく)と言う後世の古墳の基礎に使われた工法が使われていることや、強度を保つために6度ほど内側に傾けていたことなどが大林組の実験で判明している。

 またクリだけでなく、数種類の植物を集落の周囲で栽培していることが、花粉のDNA分析で分かっている。ドングリやトチの実は粉にし水に曝してえぐみを抜いて食料にしたようだ。獲物を追いかけて移動すると思われていた縄文人が、最近の研究では一箇所に集落を構え、集団で暮していたことが分かった。三内丸山遺跡には一片の長さが50mもある大型の家屋跡も出土している。ここは1500年にも亘って、代々人が住み着いていたのだ。

 石川の能登半島にある真脇遺跡からは大量のイルカの骨が出土している。遺跡の前方には小さな湾があり、縄文人はたくさんの丸木舟でイルカを湾内に追い込んで捕獲した。同地では明治以降もイルカ漁が行われていたと言うから縄文時代から延々5千年以上、漁が続いていたことになる。

 ここからはイルカの脂を燃やすためのランプ型の土器や、彼らの主食だったイルカの霊を祀るトーテムポールのような柱、男性器をかたどった石棒、御物石器などが出土しており、縄文人の精神性を窺わせる。また金沢近郊のチカモリ遺跡から出土した栗の丸太を割って立てたものは日時計と思われ、縄文時代の文化がかなり高かったことが分かる。

 佐賀の吉野ヶ里遺跡は工業団地の造営工事中に発見された巨大な弥生時代の遺跡だ。遺跡の周囲を取り囲む城柵と堀、高い物見櫓、高床式の住居、合わせた甕棺に葬られた貴人とその副葬品などの存在はまさしく小国家そのもので、富の集中による身分制度が出現していたことを表している。中には邪馬台国のモデルと考える研究者もいるようだ。

 私が注目したのは2点。一つは小高い丘の上に小さな神社があったこと。これは後世の人が、丘に眠るその地方の祖先を祀ろうとしたのではないかと私は考えた。2つ目は付近から奈良時代の官道跡が発掘されていること。佐賀周辺には弥生時代から卓越した小国家が興り、その後の奈良時代へと繁栄が受け継がれたと私は考えて見たのだ。

 さて、仁徳陵や垂仁陵のような巨大な天皇陵は立派だが、天皇家や宮内庁以外の人間は原則として立ち入ることは出来ない。また深い樹木に覆われて、本来の陵の表面を見ることは不可能だ。これに対して神戸市垂水区にある五色塚古墳は、造営された当時の模様が忠実に復元されていた。

 この古墳は巨大な前方後円墳で、前方部の一部が山陽本線の線路で切られている。そして目の前には明石海峡が見える。ここに眠る大王は狭い海峡を利用して、当時の海上交通を牛耳っていたのだろう。陵の表面には夥しい数の川原石を敷き詰めた葺き石が施され、中段の周囲を巨大な埴輪がぐるりと取り囲んでいる。そして古墳の直ぐ側には、大王に殉死して葬られた者の2つの陪塚がある。ここは天皇クラスの要人の墓ではないかと思ったものだ。天皇陵の中には間違って指定されているものがあるとの指摘があるのだ。

 「百聞は一見にしかず」とはこのことか。現地を訪れ、本物を見ることで得られる知見は、時として読書による知識以上のものだ。長男、次男と一緒に頂上に登った岡山の作山古墳、造山古墳は共に巨大な前方後円墳で、「古代吉備王国」の存在を髣髴とさせるものだった。<続く>





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Last updated  2007.11.18 16:28:46
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