マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2011.06.24
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カテゴリ: 俳句



   赤屋根の廂の深し花福木       山城光恵



 青い海に映える赤瓦の沖縄の家。その家の廂(ひさし)はやけに深い。そして屋敷を取り囲む福木(フクギ)の木。季節は初夏。フクギは薄黄色の花を枝いっぱいに広げている。こんなのどかな風景がかつての沖縄ではどこでも見られた。今は離島か、よほどの田舎でしか観られなくなった。

 沖縄の土は赤いものが多い。石灰に含まれる炭酸カルシウムが溶け出し、後に残った鉄分などが酸化して、赤茶色の土になるのだ。テラロッサはイタリア語で赤い土の意味。養分はあまりなく、沖縄本島北部ではパイナップルなどを栽培している。この土が赤瓦の原料。首里城の正殿もこの瓦で葺いてある。

 沖縄は台風が多いところ。猛烈な風に耐えられるよう、赤瓦を白い漆喰で固める。その赤と白のバランスが絶妙。だが、かつての民家では瓦は使えなかった。藁葺き屋根に石を載せて抑え、強風に備えた。同じように強風で苦しんだ韓国の済州島でも、そんな家が多かったようだ。

 沖縄では風だけでなく日差しも強い。その強い風雨と日光を遮るため、家々は「あまはじ」と呼ばれる深い廂を持っていた。文字通り「雨をはじく」のだろう。台風の時は雨戸を閉め、「ソーメンチャンプルー」などを食べながら通過するまでじっと耐えていたようだ。大家族で暮らす沖縄には、生活上の色んな工夫があったのだ。

 フクギは熱帯性の常緑高木で真っ直ぐに生え、太く丈夫な幹を持つ。また葉が密集し、風害や塩害にも強い。このため屋敷林として植えるのに最適の木なのだ。またフクギは「幸福を呼ぶ木」で火にも強く、奄美では「火事場木」の異名を持っている。

 雌雄異株で、花は1.5cmほど。秋には直径3cmほどの黄色い実が実る。木はマンゴーの仲間で、まるでミカンのような実だが食用にはならず、オオコウモリの餌。だが樹皮からは黄色い染料が採れ、沖縄の有名な染色である「紅型」に使われる。まさに「幸福を呼ぶ木」だ。沖縄本島では、本部町備瀬集落の屋敷林、国頭村謝敷集落のフクギ並木が有名。





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Last updated  2011.06.24 17:44:38
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