マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2012.06.26
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カテゴリ: 生活雑記
 M仙人が数年前に連れて行ってくれた獅子ケ鼻湿原のブナ林には、「あがりこ大王」とか「ロウソク台」とか呼ばれる不思議な形をしたブナの木があった。それは炭焼きをしていた時代に、20年ごとに木を切った痕なのだ。地上1mほどのところで切ると、20年後には再び炭焼きが可能な枝が伸びて来る。つまりはブナを有効に使う思想が、不思議な形のブナの木になった訳だ。

 また秋田と青森の県境にある白神山地には、天然のブナの森がある。まだ一度も伐られたことのない手つかずのブナ森はとても貴重で、世界自然遺産に登録されることになった。太いブナの幹に耳を当てると、地中から水を吸い上げる音が聞こえるのだとか。私も妻と共に訪れたことがあるが、穢れのない深い森に魅了されたものだ。

 ガイドのSさんが植物の名前を教えてくれる。タニウツギ、ギンラン、ギンリョウソウ、ツクバネソウ、ツルウルシ、トチバニンジン、フタリシズカ、サワハコベ、エンレイソウ、ミツガシワ、コバギボシ、ヤマゾエゼンマイ、ウラジロヨウラクなどなど。この他にも10種類は聞いたのだが、覚え切れなかった。彼は生物の先生かと思って尋ねたら、教えたのは体育とのこと。まあ、凄い記憶力だ。

 話しながらどんどん前へ行くSさんは長靴を履いている。だから水の中でも平気なのだが、必死で追いかける我々はトレッキングシューズがほとんど。だから次第に泥まみれになるのだ。やがて木道が現れ、湿原になった。低く垂れこめた雲の間に、鳥海山の雪渓が見えた。1週間前まではレンゲツツジが満開だったとか。

 4年前、この湿原がテレビで紹介されたそうだ。晴れ渡った空に、数多くの雪渓を残した鳥海山が聳え、その手前の湿原には全面を覆うレンゲツツジとワタスゲの群落。それから連日アマチュアカメラマンが押し掛け、100人もの人が湿原の中に入り込んだためワタスゲは3分の1に減ってしまった由。慌てて市が木道を敷設したのは、そんな理由らしい。

 泥んこ道も同じこと。大勢の観光客が来る前は歩き易い落ち葉の道だったのが、踏み潰されて土が露出し、さらに溝が出来て降雨後には水たまりが出来る。元々が粘土質の土のため、雨が降るとあんな泥田になってしまうのだろう。

 レンゲツツジの花には毒があるとSさん。だからこの花が咲いている時期は、養蜂家は来ないそうだ。蜜にも有害の成分が混じってしまうのだとか。それはトリカブトの花も同様。猛毒成分が含まれているのは根っこだけではないのだろう。

 湿原の終わりに雑木林があった。その枝に白い泡の塊。天然記念物モリアオガエル(森青蛙)の卵だ。その真下に小さな池。泡の中で孵化したオタマジャクシはポトリと水溜りに落ち、そこで育つ。だが水中ではイモリが待ち構えていて、木から落ちたばかりのオタマジャクシを捕えて食べてしまう。それでもモリアオガエルが絶滅することはないそうだ。きっと絶妙なバランスが働いているのだろう。<続く>





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Last updated  2012.06.26 08:22:41
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